病みつきセイバー |
朝、俺は起きて何時ものように朝食を作る。
俺しかいない家には不釣り合いな量の朝食を――――
朝食を作り終わると同時にチャイムが鳴る。
……何時もと同じ時間だな。
俺は玄関に向かい扉を開けた。
「おはようございます」
そこには、俺が通っている学校の制服を着た彼女――――セイバーがいた。
セイバーはここ最近毎日のように我が家に訪ねてくる。
俺が学校の時も俺の家にいて、夜になると士郎の家に帰る。
最近では帰る時間も長くなり、何もない日は1日のほとんどを我が家で過ごしている。
「おはようセイバー、朝食出来てるよ」
「そうですか、では早速いただくとしましょう」
俺はセイバーを家に入れると食卓に着く。
――――最近は毎日この調子だ
まぁ、誰かが傍にいるのは嫌じゃないけど。
―――――
「おかわりをお願いします」
そう言って茶碗を差しだしてくるセイバー。
「わかったよ」
やれやれと言った感じで応えて俺はセイバーの茶碗を手にする。
「今日は何処かに出掛けないのですか?」
唐突に聞いてくるセイバー。
今日は祝日のため学校は休みだ。
「予定はないし、家にいよかな」
祝日なのに予定がない。
寂しい人間だな、俺。
「それでしたら、デートとやらに行きましょう」
デート?
俺が理由を聞こうとするとセイバーは口を開く。
「勿論、貴方は付いて来てくれますよね。
私が誘ってるんですから、貴方が断る理由が無い。
デートとは彼氏彼女の関係にある者達が行くものなんでしょう?
でしたら、私達は行くにふさわしい場所ではないですか。
私達のような好きあってる者達が行くべき場所なんでしょう。
ですから、貴方も来てくれますよね。
最も貴方の優先順位は私がトップなんでしょうから、予定があってもそれを断りますよね」
……どうやら、デートは強制らしい。
行くっつっても……
「デートに行くとしてもさ、何処に行くの?」
「何を言ってるのですか、デートに行くに決まってます」
……えっ?
セイバーは真面目な顔つきで俺の目を見ながら言う。
「なぁ、セイバー」
「何ですか?」
首を傾げながらも真っ直ぐ俺の目を見るセイバー。
不覚にも可愛いと思ってしまった。
「デートって何なのか知ってるか?」
「好きあってる者達が行く場所のことでしょう」
「……どんな場所か知ってるか?」
「知りません。
ですが、私は貴方に全てを委ねてますから不安ではありません。
私は知りませんが貴方なら知っていると思いました。
ですので、全て貴方にお任せします」
……なるほど。
まぁ、セイバーの口からデートなんて単語が出たことに軽く驚いたけど、やっぱり知らないか。
「セイバーはデートを何処で知ったの?」
「凛が読んでいる雑誌です」
雑誌を読んでだいたいは理解した……って感じかな?
「いいかいセイバー、デートっていうのは場所じゃないんだ」
「なっ! それではデートに行けないじゃないですか!?」
「デートってのはね、付き合ってる者同士の人達が何処かに出掛けることを言うんだ」
「つまり、私と貴方が何処かに出掛けたらその時点でデートになるんでしょうか」
「……付き合ってる者同士ならね」
「それならば、先ずは何処に行くのか決めましょうか」
セイバーはそれだけ言うと手を差し出す。
「その前にまずはおかわりをください」
「……はいはい」
ため息混じりに返事をしながら、俺はセイバーを見る。
――――今日は穏便には終わりそうにないな
そんな不安を抱きながら。
―――――
その後、セイバーが制服姿ということで俺も制服に着替え、彼女と共にデートを行うことにした。
といっても、俺もデートスポットだなんて余り知らない。
無難に行くしかない。
つまり――――
「ここは遊園地……ですか?」
「まぁ、そうだね」
遊園地
カップルが行くなら無難な場所を選んだつもりだ。
といっても、ここは俺の家から少し離れた場所にあり、遊園地といっても小さめだ。
俺は周りをキョロキョロと見回しているセイバーに聞いてみる。
「セイバーは遊園地に来たのははじめて?」
「はい。 話は士郎や凛から聞いたことはあります」
……まぁ、そりゃそうか。
セイバーは聖杯戦争というのに関わっていたらしい。
らしいと言うのは、それは士郎から聞いたことで、俺がセイバーとこんなふうになる前には終わっていたことだからだ。
……まぁ、ゆっくりする暇もなかったんだろうな。
士郎からセイバーのことは軽く聞いている。
かつての英雄だとか
サーヴァントだとか
どれも信じれないものばかりだ。
「遊園地ってのはね――――」
でも、全てが本当だと言うのなら――――
俺は今ぐらいはセイバーを普通の女性として接してあげたいな。
―――――
「次もあれに乗りたいです!」
そう言ってセイバーが指差したのはジェットコースターだ。
小さい遊園地だからと舐めてかかったら見事にやられてしまった俺とは違いセイバーは再度乗ろうとする。
俺はベンチに腰掛けながらゆっくりと首を横に振る。
「次は、違うのに乗ろう」
「駄目です。
貴方は私の言うことを聞いてください。
私の傍で私の言葉だけを聞いてください。
私はあれに乗りたいですから、貴方もそれに付き合ってもらいますよ」
そう言うと俺の手を取り無理やり立たす。
……英雄は我が儘なのが多いのか?
そんなイメージがある。
俺がどうやって断るか考えていると子供の泣き声が聞こえた。
「どうかしましたか?」
「悪いセイバー、少し待ってて」
「……あっ」
俺はセイバーから離れると子供に近づく。
「どうしたの?」
子供は俺を見るとすぐに俯く。
「お母さんとはぐれた……」
……迷子かな
「それじゃ――――」
俺は周りを見渡すと係員を見つけた。
……探してあげたいけど、セイバーを待たせるわけにもいかないよな。
俺は係員を呼び、子供を任せ、セイバーの元へと戻った。
「ごめん、セイバー」
「私よりもあの子供のほうが大事ですか?」
俺が口を開くと同時にセイバーは言った。
「……ごめん」
謝罪の言葉を聞くと彼女は再度俺の手を取る。
「次は離しませんよ。
貴方が私の傍から離れると言うなら、私は貴方の四肢を切り落としてでも阻止します」
セイバーは真顔で言うと俺の手を引っ張っていく。
「貴方は私だけを見てればいい」
セイバーの言葉を聞きながら、俺は彼女に付いていった。
―――――
遊園地に来て早数時間、日も落ちかけてきた。
「そろそろ帰る?」
セイバーはそれを聞くと脚を止める。
「まだ帰るには早いのでは?」
「そうなんだけど……さ」
セイバーは見た目に反しよく食べる。
そんなセイバーの晩飯を作るのは俺だ。
今から家に帰り、途中でスーパーに寄ろう。
買い物はセイバーにも手伝ってもらおうかな。
セイバーの晩飯を作り終える時間を考えるとそろそろ帰りたい。
「……1ついいですか」
俺はセイバーの方を見る。
「最後はあれに乗りたいです」
そう言ってセイバーが指差したのは――――
―――――
「これはどういう乗り物なんですか?」
「知らずに乗ろうって言ったんだ」
目の前の席に座るセイバーに苦笑いを浮かべる。
「観覧車は乗ってるだけでいいんだよ。高いところから街を見下ろすんだ」
そう言うとセイバーは窓ガラスから冬木の街を見下ろす。
「セイバーはなんで観覧車に乗りたかったの?」
何でセイバーは知りもしない観覧車に乗りたかったんだ?
「この間、凛が見ていたドラマにこの乗り物に乗っていたので」
ああ、なるほど。
……待てよ、ドラマで見たってことは――――
「何故私から離れるのですか?」
俺がセイバーから少しでも距離を取ろうとしたところを彼女に肩を掴まれた。
「何故私から離れようとしたんですか?
貴方が私から離れようとする理由がわかりかねますが……」
セイバーは俺の両肩を強く掴むと俺を押し倒す。
やっぱり――――!
頭を床に強く打つ。
倒れた俺にセイバーは馬乗りする。
「これで私から逃げれませんね。
貴方は私の言うことを聞いて、私の傍にいればいいのです。
それが、今の私の幸せです。
愛する人が幸せなら貴方も幸せですよね。
私は貴方が幸せなら幸せです。
貴方も私が幸せなら幸せですよね。
私も貴方も互いに傍にいたら幸せですね。
違いますか?」
セイバーはそう言うと立ち上がる。
「そろそろ地上に着きます」
そう言うとセイバーは倒れている俺に手を差し出す。
「どうしました?」
優しい笑みを浮かべるとセイバーは俺の手を取ると、引っ張る。
「……ありがとう」
「お礼なんて言わなくてもいいですよ。
貴方のためになるなら私は何だってするんですから」
セイバーが言い終わると観覧車の扉が開く。
セイバーが俺の手を取ったまま歩きだす。
「今から行きたいところがあります」
此方を見ずに、黙々と彼女は言う。
「着いてきてください」
セイバーは強く言う。
そんな彼女の言葉に俺は拒否することもできずに、ただ着いていった。
……拒んだら、どうなるかわからないから
―――――
セイバーに着いていくと、見覚えのある場所に着いた。
「ここっ……」
「大河の道場です」
そう
ここは、士朗の家にある道場だ。
お互いに制服のまま道場の中心に立つ。
「今日、士朗と大河は出かけていて帰りが遅いとのことです」
そう言うとセイバーは何処からか取り出した竹刀を俺に向ける。
セイバー……?
俺が口を開くよりも早く彼女は手にしていた竹刀で俺の右手を叩く。
――――ッ!
右手に激痛が走ると、俺は両膝を床に着けて彼女を見る。
「セイバー、どうして――――」
「私の手を手放した手はどちらでしょうか。
どちらにせよ、貴方には少しきつめのお仕置きをせねばなりませんね。
彼女たる私の手を手放した罪は重いですよ」
そう言うと左手も右手同様竹刀で叩く。
「セイバー!?」
両手に走る激痛に耐えながら俺は彼女の名前を叫ぶ。
そんな俺を恍惚とした表情で見てくるセイバー。
「あぁ、貴方のそんな顔も素晴らしい」
そう言うとセイバーは俺の両頬に手をあて押し倒す。
「貴方の笑みも好きですが、貴方の苦痛に歪む顔も大好きですよ。
貴方がその顔をしていると貴方が私しか見ていないというのが実感できますから。
……貴方が私だけを見てる
幸福です」
セイバーはそれだけ言うと顔を近付ける。
「貴方が私以外を見ないようにしないといけませんね」
そう言うと彼女は動けない俺に無理矢理――――キスをする。
「貴方は私以外見なくてもいいんですよ」
セイバーは何を考えてるんだ……?
「私が貴方を正しき道へと導いてあげますから。
何も心配はいりません。
貴方はただ、黙って私の傍に居ればいいのです。
私はそれだけしか望みません。
それ以外のことは何も要求しません」
セイバーの考えてることをよくは理解できない。
――――でも
「お願いです。
何時までも私の傍にいてください。
何時までも私の言葉を聞いてください。
何時までも私の手を取っていてください。
何時までも――――
私だけを見ていてください」
セイバーの思いはわかる。
「セイバー」
俺は短く彼女の名前を呼ぶ。
彼女はきっと、どうしようもないぐらい俺のことが好きなんだろう。
――――だったら
「俺はセイバーの傍にいるから」
なるべく優しく言う。
「だから、こんなことやめよう。
こんなことされなくても、俺はセイバーのことを見てるから」
セイバー見たいな彼女に好かれるのは光栄なことだ。
……そう、思っておこう。
「本当に見ていてくれますか」
セイバーは確認するように言う。
「セイバーが俺の傍にいてくれるなら」
俺が言うと彼女は優しく笑みを浮かべ、顔を近付ける。
「でしたら、間違いないですね――――」
セイバーは俺と2度目のキスをした。
「私から貴方の傍に離れることはありえませんから」
そんな彼女の言葉を聞きながら、俺は彼女を見る――――
――――軽い後悔を胸にしながら
―――――
後日談というか、少し後の話し。
道場での出来事が終わり、自宅に戻るついでにスーパーによったあとおそめの夕食を作り今は彼女と夕食を食べている。
セイバーの行動がエスカレートするのを防ぐためとはいえ、彼女に言った『嘘』
『セイバーの傍にいる』
確かに俺はセイバーの傍にいてもいいと思っている。
でも、あんなことをする彼女の傍に居続けれるのかな――――
そんな悩んでいる俺にセイバーは茶碗を差し出す。
……まぁ、案外傍に居続けれるかもな。
そんなことを思いながら、俺は彼女の茶碗を受け取った。
こんにちはーrikubでーす
今回は珍しくなのは系統外の短編となりした
病みつきティアナの時にも書きましたが、リクエスト募集しております
コメントでも応援メッセージでも何でも構いませんのでリクエストどんどんくださいな
PS連載の投稿はしばらく後になりそうです
連載は病みつき六課から投稿していこうと思っております
それと、病んだセイバーの絵とか書いてくれる方といないかなー(チラッ)
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病みつきシリーズ第11弾!! 祝日だというのに制服姿で彼の家に訪ねるセイバー。 そんな彼女の思惑とは―――― ※オリ主×セイバーです ※時間軸は気にしないでください |
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