IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
[全1ページ]

「戻ったわ」

 

クリスマスの夜。亡国機業のスコールはアメリカのどこかにある高層ビルの一室の扉を開けた。

 

「スコール!」

 

すると、フロアの奥から同じく亡国機業のオータムが駆け寄ってきた。

 

「おかえり!」

 

「あら。オータム。出迎えありがとう」

 

スコールはオータムの抱擁を受け入れる。

 

オータムはあることに気づいた。

 

「・・・・・アイツは? Mはどうしたんだ?」

 

いつも無言で仏頂面のもう一人のメンバーがいない。正直いなくてもいいのだが、戻ってくるときは同じはずだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

すると、スコールの表情に陰りが出た。

 

「スコール?」

 

「オータム・・・・・Mは・・・死んだわ」

 

「!?」

 

その言葉を聞いて、オータムは体を硬直させた。

 

「死んだ・・・・・?」

 

「ええ・・・・・」

 

鎮痛な表情のスコールを見て、オータムは嫉妬にも似た感情を胸にする。

 

そしてハッとする。スコールの金色の髪の毛が不自然に切られているのだ。

 

「スコール・・・・・これは?」

 

「ああ・・・ちょっと、ね」

 

「誰にやられた?」

 

「桐野瑛斗よ。ちょっと不意打ち気味にビーム攻撃を食らっちゃって」

 

「桐野・・・瑛斗・・・・・!」

 

オータムは呻くように瑛斗の名を口にする。

 

そんなオータムの頬に触れ、スコールはささやいた。

 

「いいのよ。あなたが気負いする必要はないわ。Mが死んだって、私は死なないわ」

 

そして、オータムを抱き寄せ、頬にキスをする。

 

「私は、あなたの恋人だもの」

 

「スコール・・・・・」

 

オータムはうっとりしたように笑う。

 

「さ、食事にでも行きましょうか。ずっと一人にして、ごめんなさいね。お詫びと言ったら何だけど、いい店があるの」

 

「ううん。いいんだ。私は、スコールがいてくれれば・・・・・」

 

「ありがとうオータム・・・・・。支度してくるわね」

 

「うん。私もしてくる」

 

スコールはオータムと別れ、自室へ入る。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

その瞬間、優しい笑みは消え、真剣な表情になる。

 

「・・・・・・・どうやら、記憶の隅には、残っているようね。桐野瑛斗・・・・・・」

 

その手には、黒いリングが。

 

「次に会うときは・・・必ず、堕してあげるわ。ふふ・・・・・必ずね」

 

そして、その顔は邪悪に歪むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・それで、どういうつもりなんだ?」

 

時同じくして織斑家。千冬は二階のベランダで電話をしていた。

 

『うふふ・・・・・。良かったでしょ? 迦楼羅の使い心地は』

 

その相手は、千冬の友。束。しかし、今は素直に『友』と呼べるかどうか千冬自身もわからない。

 

「ああ。文句なしの性能だった。だが、私の質問の答えになってないぞ」

 

『んー、迦楼羅を使って何がしたかったのかって聞かれてもなぁ・・・・・。しいて言うなら、暇つぶし?」

 

「それだけか?」

 

『うん。それだけ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

二人の間に、沈黙が訪れる。

 

「・・・・・わかった。お前がそう言うんだ。そうなんだろうな」

 

『うんうん。わかってくれて束さん嬉しい♪』

 

「お姉ちゃーん! ごはんできたよー!」

 

一階から、マドカの声が聞こえる。

 

「ああ。今いく」

 

千冬は返事をした。

 

『ちーちゃん・・・・・』

 

「なんだ?」

 

『なんだか面白いことになってるみたいだね』

 

「お前には関係ない」

 

『大切にしてね。お互い、失うにはあまりにも大きいから』

 

束の声が、いつものうざったい位のテンションとはかけ離れた、細い声になった。

 

「・・・・・お前に言われるまでもないさ。じゃあな」

 

『うん』

 

そして千冬は電話を切った。

 

「・・・・・・・・・・」

 

しかし、千冬は感づいている。

 

「アイツ・・・・・なにか企んでいるな・・・・・・・」

 

何を企んでいるのかは分からない。だけど、嫌な予感だけはする。

 

「あの時のような無茶でなければいいが・・・・・・・・まさかな」

 

呟き、千冬は自分の考えを一蹴した。

 

「もう二度と、あんなことは起きない・・・・・と願いたいな」

 

自嘲気味に呟き、千冬はマドカのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

電話の受話器を耳から離した束は、そばにいた目を閉じた十二歳ほどの少女の頭を撫でた。

 

「束さま?」

 

「くーちゃん」

 

「はい?」

 

「・・・・・・・私は、だぁれ?」

 

「え・・・・・」

 

『くー』と呼ばれた少女は困ったように体を強張らせた。

 

「誰と言われましても・・・・・束さま、としか」

 

その返答を受け、束はクスリと微笑んだ。

 

「ぶっぶー。私は、くーちゃんの『お母さん』だよ?」

 

「いえ、束さまは束さまです」

 

きっぱりと言われ、束は、まいったなぁと笑う。そして、自分の斜め上を見上げた。月明かりが差し込んでいる。

 

「・・・・・今度は、もっと楽しいことが起こるよ。ちーちゃん」

 

呟くように言って、束は足元に広がる光景を見た。

 

容器に入り、月明かりを受け怪しく光を放つ―――――――――――

 

 

 

 

 

 

大量のISのコアを――――――――――。

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クリスマスの闇と、影
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