魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と
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「ん、・・・うぅ。・・・ここは?」

 

 目が覚めると俺はベッドに横たわっていた。

 

「あ!気がついたかい?」

 

 ベッドの側にユーノがいた。

 

「・・・ユーノか。」

 

 よく見るとここはアースラの医務室だった。

 ・・・そうか、あの時俺はフェイトを庇って・・・。

 

「うん、今なのはたちが零冶の様子を見に来ている最中だよ。」

 

 ユーノが言い終わると同時にドアが開き、誰かが入ってきた。 

 

「「零冶(君)!!」」

 

 なのはとフェイトが入ってきてこちらに駆け寄る。

 

「フェイト、なのは・・・・・・ぐぅっ!!」

 

 起き上がろうとすると、突然激痛が走ってベッドに倒れ込む。

 

「だ、ダメだよ零冶君!!まだ寝てなきゃ!!」

 

「そうだよ零冶!無理をしないで!!」

 

 ったく、どの口が言いやがるんだこの金髪娘め。

 ともかく、いつまでも寝ているわけにはいかない。

 

「そうよ、あまり無理しない方がいいわ。重度の火傷を負っていてかなり重傷だったのよ?」

 

「だ、大丈夫だ。・・・くぅぅ!」

 

 痛みを我慢して起き上がり、ベッドに腰掛ける。そして懐から秘薬を取り出す。もしもの時の為に持ってきていて良かった。

 

「はぁ、はぁ・・・・・(ゴクッ)。」

 

 ・・・不味い。良薬口に苦しだが、あまり好きこのんで飲みたくない。だが、傷が見る見るうちに塞がり、火傷も完治していた。

 

「・・・!?」

 

「・・・なっ!?あれだけの重傷を魔法を使わずに完治させただと!?」

 

 クソガキと提督は驚いている。そりゃそうだ、これはこの世界に無いものだからな。

 

「・・・零冶君、でいいかしら?零冶君、今飲んだのは薬か何かかしら?」

 

「ええ、我が家に伝わる秘薬です。あらゆる傷を一瞬で完治させる力があります。」

 

「す、すごいの・・・。」

 

「そんなものがこの世にあるなんて・・・。」

 

 なのはとユーノもビックリ仰天だ。

 

「・・・あの零冶君「言っておくがレシピは絶対に教えないぞ?」・・・まだ何も言ってないのに。」

 

 あ、提督が拗ねた。

 

「そもそも材料が無いんだ。すでに絶滅した生物の材料が必要だからな。」

 

 本当は材料ならまだ家にたくさんある。だが、管理局に教えたら碌な事にならないから、絶対に教えない。

 

「そ、そんなことよりもフェイトさんのことよ!」

 

 お、戻ったな。

 そういえば俺が寝ている間に何を話していたか来いてなかったな。

 

[マスター、私が説明します。]

 

 俺はルナから説明を聞いた。

 

 

 説明中・・・。

 

「やっぱり、フェイトは母親から虐待を受けていたか・・・。」

 

「零冶、知ってたの!?」

 

 フェイトがちょっと驚いていた。

 

「お前が体を庇いながら戦っていたのは知っていたからな。俺と別れた時にはケガなんかしていなかった。そして、朝にちょうど転移魔法の魔力をルナが感知してな。多分その時あたりだろうと思ってな。」

 

「・・・そうなんだ。」

 

 そして俺は提督に向き直り、

 

「・・・それで提督、彼女の処分は?」

 

「一応ロストロギアの不法所持に公務執行妨害などが挙げられるけど、母親であるプレシア・テスタロッサに無理矢理集めさせられていたと言うことで一応罪は軽くなると思うわ。」

 

「・・・そうか。」

 

 やっぱりそれなりに罪はある・・・か。・・・うん、なんとかしてみるかな?

 

「そして今はフェイトの協力でプレシア・テスタロッサの居城である時の庭園に向かっている。間もなく着くから、着き次第プレシアを逮捕する。」

 

 とクソガキが説明してくれた。・・・なら今回は俺も乗り込む必要があるかな?

 

「艦長、目的地に到着しました。」

 

 艦内放送で時の庭園に着いたことが知らされた。

 

「ならすぐに武装局員に出動させなさい。」

 

 ・・・は?いや、何でクソガキを連れて行かないんだ?あれほどの魔法を行使する魔法使いが雑魚十数人を向かわせても蹴散らされるのがオチだろ?

 そう突っ込んでいる内にどうやらプレシア・テスタロッサのいる部屋にたどり着いたようだ。プレシアは玉座に座っている。

 あ〜あ、どうなっても知らねぇぞ。

 

「プレシア・テスタロッサ。貴女を時空管理法違反及び管理局艦船への攻撃で逮捕します。武装を解除してこちらへ。」

 

「・・・。」

 

 そして一部の武装局員は玉座の裏にある扉へ向かった。そしてそこには、

 

「な!?これは!?」

 

 中央に生体ポットのようなものがその中に、

 

「え!?」

 

「フェイト・・・ちゃん?」

 

 フェイトそっくりの女の子がいた。

 

「触るな!!!」

 

「ぐわぁ!!」

 

 プレシアはポットに触ろうとした局員を吹き飛ばした。

 

「っく、撃てぇ!!」

 

 局員がプレシアに杖を向け一斉に攻撃するが障壁に阻まれる。

 

「・・・うるさい。」

 

 プレシアは手をかざし、魔法を放とうとする。

 

「いけない!防いで!!」

 

 提督がそう叫ぶがもう遅い。

 

「「「「「ぐあああああああ!!!!」」」」」

 

 一瞬で局員は全滅した。

 

「エイミィ、局員たちをすぐに還送して!!」

 

「了解!!」

 

 ほら言わんこっちゃ無い。・・・しかし、あの少女は一体?

 

「アリ・・・シア。」

 

 フェイトが呟くが誰もそれに気づかない。

 

「もうダメね、時間が無いわ。たった九個のジュエルシードではアルハザードにたどり着けるか分からないけど・・・でも、もういいわ。もう終わりにする。」

 

 アルハザード?以前ルナと話しをしていたときに聞いたことがある。たしかあらゆる技術が存在し、死者すらも生き返らせる技術があるとか・・・。馬鹿らしい。死んだ人間は蘇らない・・・、それが自然界の法則なのだ。

 だが、プレシアに俺は違和感を感じていた。あの目は見たことがある。・・・かつて俺が組織で働いていたときに一度。あの時はいつも通り、とある富豪の抹殺任務だった。俺はいつも通り、屋敷に潜入しターゲットを探していた。そして俺は一つだけヘマをやらかした。

 一人の少女が俺の入った部屋にいて、俺は見つかってしまった。しかしその子は悲鳴を上げるでも無くただじっと俺を見ていた。

 その子の体には無数の傷跡があった。どうやら父親に虐待されていたらしい。そのとき女の子の目は印象的だった。・・・瞳には何も映していなく、生きることを諦めた目だった。

 そう、プレシアの目もそんな女の子と同じ目をしていた。

 

「あの子を失ってから暗鬱な時間も、この子の身代わりの人形を娘扱いするのも。」

 

「「っ!?」」

 

 なのはとフェイトが絶句する。

 

「聞いていて?あなたのことよ、フェイト。折角アリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない人形。あなたは私が研究していたプロジェクト【F・A・T・E】の産物、人工生命体なのよ。・・・だからあなたはお人形。どこへなりとも消えなさい。」

 

「お願い!もう止めて!!!」

 

 なのはが耐えきれずに叫ぶ。

 ・・・プレシア、お前はただ・・・死にたいんだな。アリシアを失った事に絶望し、フェイトを作り出すも、アリシアと全く同じ存在が出来上がらなかった事に。それだけ娘を愛していたんだな。

 

「知っていた、フェイト?私はね、あなたが大嫌いだったのよ。」

 

「っ!!!」

 

 フェイトの瞳に光が消え、座り込む。自分が愛していた母親に裏切られたのがショックだったのだろう。それを俺は静かに見る。今はまだ動くべきではない。

 

「大変!!見て下さい!!屋敷内に魔力反応が多数!!!」

 

「な、なんだ!?」

 

 突然、甲冑が地面から出てきた。

 

「・・・ゴーレムか。」

 

「庭園敷地内に魔力反応多数!いずれもAクラスです!!その数60・・70・・・まだまだ増えます!!」

 

「プレシア・テスタロッサ!あなた、一体何をするつもりなの!!」

 

 プレシアがアリシアのポットを運んでいく。

 

「私たちの旅に、邪魔されたくないのよ。」

 

 プレシアの前に九個のジュエルシードが現れる。

 

「私たちは旅立つのよ!忘れられた都、アルハザードへ!!全てを取り戻すのよ!!」

 

 そして時の庭園が揺れる。

 

「次元震です!ちゅ、中規模以上!!」

 

「すぐにディストーションシールドを!!」

 

「ジュエルシード九個が発動!次元震、さらに大きくなります!!」

 

 どんどん揺れが大きくなっていく。

 

「っく、馬鹿なことを!!」

 

 そしてクソガキが駆け出す。

 

「クロノ君!!何処に行くの!?」

 

「僕が止めてくる!!」

 

 ・・・馬鹿者が。個人でどうにかできるレベルではなかろうに。とりあえず、なのはたちはフェイトを医務室に連れて行った。

 

「・・・馬鹿者が。」

 

 俺は誰に言うでもなく呟く。そして俺はフェイトに会いに医務室へ向かった。

 

 

 

 

 アースラ 医務室

 

 医務室に行くとフェイトとアルフがいた。・・・いや、しかいなかった。

 ・・・なのはたちも付いて行きやがったな?

 それよりもまずはフェイトだ。俺はフェイトの前に立つ。が、フェイトの目は虚ろだった。

 

「・・・このままでいいのか?」

 

「・・・。」

 

「・・・何時までそうしている?」

 

「・・・・・・私、もう分からない。」

 

 これは少し荒療治が必要だな・・・。

 

「・・・だからお前は人形なんだ。」

 

 俺は無慈悲に告げる。 

 

「っ!!レイジ、フェイトに何を!!?」

 

「黙れ。」

 

 少しドスのきいた声をアルフに放つ。それでアルフは黙る。

 

「フェイト、お前はアリシアの代わりか?それで満足なのか?」

 

「・・・・・・違う。」

 

「お前はプレシアの事が嫌いになったか?娘だと認めて欲しくないのか?」

 

「・・・違う。」

 

「お前はただの人形でいたいのか?生きることを諦めたのか?」

 

「違う!!」

 

 フェイトが大声で言う。俺はそんなフェイトに近づき、

 

「・・・え?」

 

 そっとフェイトを抱きしめる。

 

「お前は生きていていいんだ。例え作られた命でも、お前は立派に生きている。」

 

「・・・ぁ。」

 

「辛いことがあっても、お前は今生きているじゃないか?そんなお前に人形なんかになって欲しくない。こんなにも可愛らしい女の子に辛い思いをして欲しくない。」

 

「・・・うぁ・・・あ。」

 

 フェイトの目から涙がにじみ出る。

 

「だから俺は認める。誰かがお前を否定しても、俺がお前を・・・認めてやる!」

 

 フェイトから涙が溢れる。そしてついに気持ちを吐き出す

 

「・・・うぅ、う・・・あぁ・・・うああああああああああん!!わた・・しは生き・・・たい!!なのはちゃんと・・・友達になりたい!!お母・・・さんに・・認めて貰いたいよぉぉ!!!」

 

 フェイトが大声で泣いた。今まで我慢してきた涙を流してくれた。そんなフェイトを俺は黙って受け止めた。

 

 

 

「ぐすっ、フェイトォォ。」

 

 アルフも号泣していた。

説明
第十七話 残酷な事実、溢れる涙
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