魔導師シャ・ノワール 無印編 第二話 天敵現る!?
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転移した先は高いビルが並び立つ高層マンションの屋上。人の姿は皆無で、ここの下の階にある一室がセーフハウスらしい。

 

 

 

てっきり森の中でキャンプでも張るかと思ったのだが紫の雇用主は太っ腹な人間のようだ。

部屋に入ると幾つかの部屋に。家具が揃っているリビングやキッチン。リフトデッキまである。

団のアジトとは流石に比べようも無いくらい、整った環境だ。

窓から外を見るとまだ日は高く、結界でも張らない限り魔法で飛行でもしていたら目立つな。

 

 

「フェイトさん。俺はこれから周囲の偵察と食料などの買出しに行きたいのだが構わないか?」

 

「はい、構いません。ジュエルシードの捜索は日が落ちてから行います

 それまでには戻ってください。それと現地のお金なんですけど」

 

《ボスッ!》

 

部屋に置かれていた茶色いボストンバックから白い結束紙で。

100枚に纏められたゼロが4つ並んだ紙幣の束を一つ手渡された。

 

「・・・・」

「も、もしかして。た、足りませんでしたか?」

 

「いや、十分すぎる量だ。食糧は豪華な物を用意すると約束しよう」

 

相手はお嬢さんなんだ。きっとこれは2流3流の食事を用意したら許さないという警告に違いない。

札束をジャケットの内ポケットにねじ込み出かける為に玄関に向かう。

 

「それでは行って来る」

 

「あ、えと・・・」

 

なぜか彼女は突然、小さく口ごもった。忘れた事でもあったか?

 

「なにか?」

 

「そ、その・・・いってらっしゃい」

 

 

なぜか彼女は嬉し恥ずかしそうにそう呟き。その瞳に耐え切れず背中を向けて扉に手を掛ける。

そこで、また振り返ると心の底から寂しそうな目をしていたので。

 

 

「・・・いってきます」

思わず返事を返して玄関から足早に外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町並みは俺が昔知っていたものと相違なく、日本そのものだった。

周囲を資質的に苦手ながらサーチャーと呼ばれる探知魔法を放ち。

情報を集めながら町をぶらついて行く。食料品が売っているスーパーマーケットやホームセンターなどの

位置を覚えながら。サーチャーからの情報と事前に受け取っていた情報を照らし合わせていく。

 

 

雇い主の情報は正しいようで、ここから一つ隣の町で同じ海鳴市内から濃い魔力残留が確認された。

 

 

しかし一つ疑問が沸く。ジュエルシードは発動でもしていない限り魔力は殆ど漏れたりしない代物だ。

もし発動しているなら魔導師が止めない限り被害は広がっているいて、探知も容易に行えるはず。

それなのに高密度の魔力痕跡が探知できるということは・・・

 

「居やがるな。他にも魔導師が」

 

元々探知や補助魔法が苦手な自分としては、この相手を無力化もしくは消してしまうのが一番の仕事になりそうだ。

そうと決まればマンション周囲の探索より隣町に乗り込んで情報収集をするしか選択肢はない。

 

 

 

偶然、出会えれば一般人の振りをして仕留めてしまえば後が楽だ。

俺は、昼にも関わらず昼食も取らないまま電車に乗り隣町に向かった。

 

 

 

下りた駅周辺から徐々に探索をはじめ。歩き回っていると鋭い視線を感じて後ろも顧みず走り。

ビルとビルの間の路地に入った。そのまま壁に魔法で足場を作りジャンプして5階立てのビルの屋上に飛び上がる。

 

 

さっそく遭遇するとは運がいいのか悪いのか。ここで仕留めてしまうか。

 

 

「あれ?おかしいな?確か、なのはと年が同じくらいの子が走って入ったんだけど・・・。ま、いいか」

 

 

年齢が特定できない若く見える男性が鋭い目付きと言葉を残したあと、表情をやわらかくして通りに戻って行った。

 

「・・・・・・」

 

何となくで人を狙うなよ!平和な日本でさ!しかも魔法も感知してないから一般人だし!

 

只者ではない視線に焦って逃げた俺がバカ見たいじゃないか、まったく...ん?

 

 

そういえば日本には義務教育があったのを思い出す。今日は平日か?それなら追いかけられるのも理解できないこともないが。

そういうのは青い服の人に任せてもらいたい。次にもし追いかけられたら変装の魔法を掛けておこう。大人に見えるように。

 

 

 

 

 

 

 

それから気を取り直してビルから路地に下りて。再び駅近くの町の散策を始めた。のだが・・・

 

 

 

《バシャシャシャシャシャシャシャ!》

「ご、ごめんなさい大丈夫!?」

「・・・平気です」

 

突然、通りを歩いていると喫茶店に店員らしき女性に水を掛けられた。

 

見ると花の水遣りをしていたらしく。正確にはその散水栓のホース連結部分が外れ。

 

水道栓の蛇口は地面から斜め上に向いていたため。ピンポイントで俺を狙うように水が押し寄せてきた。

 

 

殺気など敵意はすぐに感じ取れるのだが。全くの悪意のない無垢な事故には咄嗟の事で対処ができなかった。

いや・・・いつもならトラップくらい避けれる筈なんだが。不思議と足が動かなかった。

結果から言うと俺は見事に頭から水を被り。店の女性がすぐに元栓を締めてくれたが。全身は余す事無くずぶ濡れ、濡れ鼠である。

 

これはもう今日は呪われているとしか思えないほどの不運だ。

 

 

「すぐに服を貸すからお店に来て!」

「いえ、そんなことしていただかなくても」

 

 

バリアジャケットを常時展開している俺は、路地裏でも人の目に付かないところで。

再展開すれば大体の水気は無くなるのだが。魔法が広まっていないここでそんな事は言えない。

 

 

「ダメよ!こんなにしてしまって風邪でも引かれたら悪いわ!さあこっちに!」

 

自らが濡れるのを気にせずに左腕を取られ。引きずられるように喫茶店に入れられた。

 

 

「母さん?どうしたのその子?」

「ちょっとした事故で水を掛けてしまったの。美由希、この子に合う服はあるかしら?」

「あ、うん。確かロッカーに使ってないのが一着あったよ」

 

 

 

どうやら俺の腕を掴んでいる人は母親らしく。そのウェイトレスのメガネを掛けた女性が娘らしい。

娘は十代後半ほど。腕を掴んでいる女性はどう見ても20代にしか見えない若々しい女性なのだが・・・不思議だ。

 

「ささ、奥で着替えて着替えて」

「あたしはタオル持って来るね!」

 

「はぁ〜。わかりましたよ・・・」

 

そして、喫茶店の従業員エリアに押し込まれ、無理やりに近い形で着替えさせられた。

その時に、なぜか髪なども乾かす以外にクシや手入れの為のオイルなどダメージケアまでされてしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果....

 

 

「うわ〜。見違えたね」

「ホントホント。すごい事になったわ♪」

「・・・・」

 

 

黙ってカウンターの店の席に座って迷惑代代わりのコーヒーを啜り。その声を無視する。

バリアジャケットが乾燥機で乾くまでの辛抱だ。我慢だ我慢。

そいえばバリアジャケットって乾燥機に掛けていいんだろか?などと細かい事はこの際、気にしてはいけない。

 

 

 

「あ、写真撮っときましょう」

「あ!いいね!あたしも携帯で」

 

《パシャ!パシャ!》

 

我慢だ我慢・・・敵じゃないんだ。一般人になにかして騒ぎを起こしたら面倒に・・・。

 

 

《カランカラン♪》

鈴の音と共にお店の扉が開き人が入ってくる。

 

「ん?どうしたんだ二人とも・・・。お?可愛らしい店員さんが増えたなー、父さんにも紹介...お?」

「あ?」

 

我慢の限界が近づいて居た為、入って来た男に向かって醜悪な笑みを浮かべて見て見ると。

そこには先ほど俺を追いかけて来た男の姿があった。

 

 

「まさか・・罠だと・・・」

 

「あれ?君さっきの?あれ?あれれ?でもたしかあの時は・・・女の子だったのかい?」

 

 

《ブチッ!》っと音を立てて俺の中で何かが切れてしまった。

 

「誰が好き好んで女装なんてするかッ!!俺は男だ!ぶち殺されたいのか貴様!さっきも人の事追い掛けやがって!」

「ま、まあまあ落ち着いて。君の事を追いかけたのは単に心配したからであってだな...」

「五月蝿い!黙れ!!そして死ねッ!!!」

 

 

 

「うわー!怒りのあまりあの子、毒舌キャラになってるよ母さん」

「このままお店に居てくれたらその手のお客が増えそうね〜」

 

口調が乱暴になったとしても周りの態度は何一つ変わらなかった。

 

 

「はっはっは!元気がある子だね〜。シュークリームを奢るから勘弁してくれないか?」

「子供扱いするな!この変質者が!!」

 

そういくら俺が罵っても目の前の男は笑うばかりで。お店に居たその他のお客もそれを見て笑っている。

 

説明すると現在の俺の格好は喫茶店という場所と言うこともあり。

察しの良い者なら大体、状況は分かる思うが。フリフリスカートに白と黒のドレス。

通称、ゴスロリメイド服と呼ばれる衣装を着せられていた。

 

黒い生地に白いフリフリが付いたカチューシャまでご丁寧に用意されていたのだ。

真っ赤なリボンで首後ろで髪は一つに止められていて、毛の痛みと寝癖などで跳ねていた髪の毛は

ダメージケアと入念なブラッシングによりストレートなり。灰色の黒髪は綺麗に纏まって腰まで伸びている。

 

そこで例え女顔であっても顔の作りが日本人だったならまだ、なんとかなったかも知れないが。

今の俺の作りは白人のそれでおまけに目は赤い。今のこの格好では目つきが鋭い少女にしか見えないだろう。

 

 

鏡を見せられた時は人形のような自分に思わず鏡を割りかけたくらいだ。

しかしなぜ、ただの喫茶店にこのような服があるかは疑問であるが着せられた俺はそれどころではなく。

 

 

 

結局バリアジャケットが乾くまでその拷問は続いて。服を着替えるまで遊ばれ続けた。

 

こんなにおちょくられてしまったのは傭兵団に入った時以来、初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

それからシュークリームを幾つかを追加のお詫びとしてお見上げにもらい。

喫茶店のマスターでオーナー(俺を追いかけた人物)の人に車で町の駅まで送ってもらった。

 

 

「いや〜悪かったね。いろいろと」

 

「いえ、それでは失礼します」

 

 

早くこの人から離れたく思って口少なく歩き出そうとすると腕を掴まれてしまった。

 

 

「ちょっと待ってくれないか?店の中では聞けなかった事があるんだが」

「なんですか?」

 

「・・・なぜ君はそんな年で。そんなに世界に絶望...いや、違うな・・・。

 世界の悪意のすべてを見てきたような目をしてるんだい?」

 

 

まるでこちらの心を見透かすような真剣な眼差しで見つめてくる。

匂いから同じ闇の人間だと分かるが。これほど臭い台詞を堂々と真顔で言える辺りいい人なのだろう。俺とは違って。

 

「さあ?貴方がそう思うなら、そういった経験があったという事でしょう?

 ただそれだけの事です。こんな光り輝いている世界でその影の部分を知っている貴方なら理解は容易いのでは?

 で、そろそろいいですか?俺も暇じゃないんですよ」

 

「君は・・・。いや、無理に聞いたり引止めはしないよ。そうすると君はもう私の前には姿を見せないだろう?」

 

「さあ?もう姿を見せないかも知れませんよ?ただでさえ、追いかけられ、水を掛けられて

 女装までさせられた挙句、オモチャにされたんですから」

 

普通の神経の持ち主ならもう関わろうとは思わないだろう。俺も例外ではない。

 

 

「まあ、それもそうか。でも、これだけは言わせてくれ。なにか困った事があれば相談に来なさい

 君の力になってあげられると思う。これでもそういうツテは豊富にあるから気にする必要はないよ」

 

「今日会ったばかりの人間に随分と安い言葉ですね。そんな事を信じていたら、俺は既にこの世には居ませんよ?」

 

「はっはっは!それもそうか!だけど私は嘘は付いていないよ?本当に困った時は頼ってきていい

 あ、そういえば名前も教えていなかったね。私の名前は高町 士郎。今は喫茶店 翠店の店長さ」

 

「勝手に抜け抜けと・・・。ノワールだ」

 

「それは通り名かい?」

「それに近いが俺を今この世界に居る原因を作った奴に付けられた名前だ」

 

 

「そうかそうか。じゃあノワール君、またお店においで、いつでも歓迎するよ」

「お前のような奴に君付けされると気味が悪い。呼び捨てでいい。まあ、もう会わないだろうがな」

 

「じゃあノワール。気をつけて帰るんだよ?ああ、道路に急に飛び出したりしたらダメだからね?」

俺の言葉を半分流して聞いているのか。皮肉にも答えずに笑顔で切り替えされてしまう

 

「俺はお前の何だ!舐めてんのかッ!?」

 

 

 

 

掴まれていた手を振りほどいて抗議するが士郎は頭を書きながら笑っている。

 

「いや〜君を見てるとなんだか息子が小さい時を思い出してね」

 

そして徐に伸ばされた手で頭を撫でられる。流石にキレソウダ・・・。

撫でている手を切り落としたくなるが往来の手前それは出来ないし。恐らくだが避けられる。

 

「あんまり殺気立ってるとその手の人にすぐばれてしまうよ?」

「誰のせいだ誰のッ!」

 

切り落としはしないがとりあえず、撫でていた手を跳ね除けた。

 

「俺はもう帰るッ!!」

 

「うん。帰り道はくれぐれも気をつけてね」

 

「五月蝿い!!士郎のバーカバーカ!」

 

自分で言って置いてなんだが年相応の怒り方をしている自分に更に嫌気が指して。

大股に駅のホームに向かって歩いて行き、高町士郎と別れた。

 

 

だが、隣町に辿り着くまで電車の中で、撫でられた頭が妙に温かく。喫茶店で飲んだコーヒーの味が忘れられない。

そんな自分にさらに腹が立ってムシャクシャしたまま、夕食の食料を買う為にスーパーへ向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダンダンダン!》

「いつかあいつをこんな風にしてやりたい・・・」

《ジュウジュウ!》

「あいつを火であぶったらどんな風に泣き叫ぶんだろうなぁ?シロオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

「ね、ねぇフェイト?なんだかあいつ危なくない?」

「う、うん。最初会った時と雰囲気が大分違うね・・・」

 

 

「がー!弱火でじっくり焼き殺してやる!」

「言ってる事は怖いけど・・・。なんだかいい匂いがするね〜」

「うん、お腹が鳴りそう。私達は邪魔しないようにテーブルで大人しく待ってようか」

 

 

「最後は盛り付けだー!覚悟しろッ!」

「「(ホントさっきからなににッ!?)」」

 

 

 

 

 

 

十数分後...

 

 

「すいません。いろいろと見苦しいところを見せた」

「う、ううん気にしないでください。料理とても美味しかったですよ」

「うんうん♪これなら毎日食べても飽きないよ!たしかに・・あれは、あたしも怖かったけど」

「次からはあのような醜態は晒しませんのでご容赦を」

 

 

溜まっていたストレスをぶつけて作った料理は高い素材に物を言わせて美味しく作ったステーキだった。

100g数千円するもする肉を塩コショウなどを塗して叩いて焼いただけで。

他に出来合いのポタージュスープや温野菜や芋を揚げた付け合せにフランスパンを斜めに切った物を並べただけだ。

 

 

次からはもっとヘルシーで手の込んだ物を作らなければダメなんだろうな・・・。

 

 

「それではそろそ行きましょうかノワールさん」

「了解した」

そんな気も知らずに張り切ってフェイトはバリアジャケットを着込み。外に出る準備を終わらせていた。

 

とりあえず地球に来た初日の仕事は、フェイト達に俺が壊れたところを見せてから始まるのだった。

 

 

 

説明
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。
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コメント
最高wwwww(アサシン)
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