魔法幽霊ソウルフル田中 〜魔法少年? 初めから死んでます。〜 魔法少女と箒は果たして今でもマッチするのか?な22話 |
「この世界に、母さんが探してるロストロギアが……」
夜、ここは海鳴の隣にある街。
そびえ立つ摩天楼の上に、黒いバリアジャケットに身を包んだ金髪の少女が海鳴の方角を向いて立っていた。
彼女の名はフェイト・テスタロッサ、田中なら『第2の主人公』とでも言うだろう。
無表情で長いツインテールの髪をなびかせる姿はどこか作られた人形のような印象を持たせる。
と、ここで彼女に呼びかける声が一つ。
「フェイト、無茶はしないでおくれよ。ついさっきもバカでかい魔力反応があったんだからさ」
「アルフ」
傍らにいる自分の家族同然の使い魔、アルフである。
狼形態の彼女は主人を心配そうに見ていた。
フェイトはアルフを心配させまいと顔に笑みを浮かべ「大丈夫だよ」と頭を撫でる。
「確かに、夕方感じた魔力は凄く大きかったし、多分他にも魔導師がいると思う。でも私は誰にも負けないよ」
「フェイト……」
それは、自信。
幼い頃から魔導師としての教育をうけ、その年に不相応すぎるほどの実力を持ったフェイトだからこそ言える言葉だった。
自分より魔力が大きい相手でも、格上の相手でも、誰が相手だろうと勝利を手にする戦術。
フェイトは自分にそれを教えてくれた師のことを思い出す。
(リニス……、私は大丈夫だよ。絶対ロストロギアを集めて、母さんと仲直りするから。リニスが教えてくれたこの力で)
少女は固く誓う、母のためにと何も知らないままに。
それが、自分の存在意義を破滅へと追いやることを知らずに。
「………………」
そして、彼女達の背後に『もう一人』まるで我が子を心配する母のような視線を向けている存在がいることも、『気づけない』。
その存在にとってはいつものことで、そして『正しい』ことだった。
「いらっしゃいませ、恭也様、なのは様」
「ああ、お招きに預かりまして」
「お邪魔しまーす」
6個目のジュエルシードを回収した数日後。
ここは月村邸、今日はなのはちゃんと恭也さんがすずかちゃん家のお茶会に呼ばれたのだ。
俺はいつも通りなのはちゃんの後ろで浮いてる、俺は呼ばれてないけどね!
「いや〜ノエルさん何回か見てるけど本物だよなぁ、正にメイド」
月村邸のメイド、ノエルさんをみてそんなことを呟く。
明るい紫色の髪に紫色のメイド服、メイド喫茶みたいなヒラヒラした奴じゃなくてスカートが長い。
落ち着いた振る舞いもあってまさしくメイドの鏡だな。
え、なんでそんなに見てるのかって?
あえて言わせてもらうなら『現実逃避』かな。
実は今とっても目を向けたくない現実が恭也さんの手の中にあるんだ。
「ところで恭也様、それは一体……?」
ノエルさんは恭也の手にある物を見る。
いやまあ、気にするのはしょうがないと思う、だって恭也さん家からここに来るまでずっと『ソレ』持ってたから。
「『刀』だ」
銃刀法とはなんだったのか。
「ご、ごめんなさい。お兄ちゃん護身用にって言ってどうしても手放せなくて……」
「何をいうんだ。『なのはの』護身用にこれを持って来てるんだぞ」
まあその通り、別に恭也さんは自分を守るために刀を持ってきてるわけじゃない(というか無くても十分)。
それもこれも俺達のせいというか、最近なのはちゃんが幽霊関係で色々被害に遭ってるせいで高町家全体でなのはちゃんを守るみたいな雰囲気が漂ってるのだ。
具体的な例を言うと
「なのは、準備はできたか?」
「うん! すずかちゃん家にいつでも行けるよ、ってお兄ちゃんなんで刀をもってるの!?」
「恭也、なのはの事を頼んだぞ。本当なら俺もついていってやりたいが、仕方ない家は任せろ」
「おっ、お父さんまで!? もう剣術は止めたんじゃ!?」
「大丈夫よ父さん。恭ちゃんも神速が使えるんだから。なのはも安心して遊びにいってね、家はお姉ちゃんも守るから」
「なのは、怖がらなくても大丈夫よ。お母さんも、ううん。家族みんなでなのはを守るって決めたから。もし、なのはに怖いことをする幽霊が現れたら――――
「「「「斬る」」」」
「家族みんなが怖いの」
みたいな感じ。
特に桃子さんだけ包丁を研いでいたから一番怖い。
当分は守護霊活動を自粛しようかなって思った。
「なる程、護身用ですか……。なら大丈夫ですね、お入り下さい」
「「大丈夫なの!?」」
俺となのはちゃん、同時ツッコミである。
いやいくら忍さんの恋人だからって刃物持ち歩いてる人を招き入れて大丈夫なんだろうか。
月村家のセキュリティーに若干の不安を抱きつつ、俺達は中へ入っていった。
ノエルさんに連れられてやって来ましたお茶会。
とりあえず俺はキョロキョロ辺りを見回す。
何故こんなことをしているのかというと、理由は『人探し』だ。
前回の暴走体との戦いで、『みんなで一緒に助ける』という決意をした俺は、勿論今回の暴走体に対しても一人で挑むつもりは無かった。
まあ、今回の暴走体は『巨大な猫ちゃん』だから挑む必要もないと思う、だがイレギュラーという可能性も捨てきれない。
それに今日はフェイトちゃんとなのはちゃんが初邂逅する日なのだ、邪魔は誰にもさせないつもりである。
ということで昨日花子さん達に相談すると――――――
「と言うわけで皆さん、次の暴走体の場所はすずかちゃん家の裏にある森なんですが……」
「田中ぁ、あんたまたわたしに足コレクションを犠牲にしろっていうのかいぃ……!」
「あんな魔法少女がもう一人増える訳!? いやあああああ!」
「すいません田中さん、二人の精神状態があれから不安定なので私が見ておかないと何をするか……」
「まったく……、しょうがない奴らだね。じ、じゃあ田中! 今回はアタイとその、二人っきr「あ! すずかちゃんの家ならテケテケさんに任せてよ!!!」…………」
「…………(ジチョウハスルカラ)」
「まあ、確かにテケテケさん達なら場所に関係なく全力を出せますから適役ですね。お手伝いお願いします」
「あの、田中? やっぱり人数が多い方がアタイは有利だと思うんだけど」
「ああ大丈夫ですよ花子さん。今回の暴走体はいたって無害ですし、イレギュラーがでても手加減はしなくていいからテケテケさん達がいれば十分で……って痛い!? 花子さんなんでスネを蹴り痛ァッ!?」
「うるさい! いっぺん死んできなっ!」
――――――といった感じである。
そして花子さんがその後滅茶苦茶拗ねてしまった、何故……。
テケテケさんが「あちゃー、ごめんね? 今度映画とか連れて行ってあげると花子ちゃん喜ぶよ! 恋愛モノとかオススメ!」って言われたから機嫌直してもらうために行くことにしよう。
それはさておき、俺がキョロキョロしてるのはこの鈴村邸に潜んでいるテケテケさんを見つけるためなのだ。
あれだけ自信満々に任せてと言ってるからどこかの蛇も真っ青な隠れっぷりを見せてくれているのだろう。
「なのはちゃん!」
「やっと来たわね、なのは!」
「すずかちゃん! アリサちゃん!」(あれ? 二人ともなんであんな近くに座ってるんだろう、いつもは向かいあってるのに)
まずは猫、猫、猫。あっちこっちに猫ちゃんがいるこの部屋でアリサちゃんとすずかちゃんは優雅にお茶を飲んでいた。
……何故か肩と肩がピッタリ触れ合う距離で、アニメとなんか違う気がする。
待ち人来たりと仲良し3人組はわいわいお喋りムードになる。
「忍、やあ」
「恭也! いらっしゃい、早速で悪いけどちょっと運んでほしいものがあるの」
「? 別に構わないが……」
次は恭也さんと忍さん、やはり恋人だけあって寄り添う姿が様になっている。
いいなぁ……俺も死ぬ前に彼女とか作りたかったぜ。
「カッカッカッカッ。ニャーニャァ……ニャア」(ようこそ、薄汚いフェレットよ……ようこそ)
「「「「フシャァァァァァァッ!!!」」」
「キューーーッ!!?」
ユーノくんは猫たちの中でも人際目立つ真っ白な猫とその愉快な仲間たちと戯れていた、楽しそうで何よりである。
「うわーい! 猫ちゃん超カワイイー!!!」
「……! ……!(ワタシニスリヨルナ! クスグッタイ!)」
「ニャー!」「ゴロゴロ」「ナーォ」「ニャッ」「フシャーッ!」「ンニャーゴ」
「うわわ! 御手洗さん猫ちゃんに埋もれてます!」
メイドのファリンちゃんと猫の山と…………あれ?
「なにをしてるんですか貴女は!!?」
『あ、太郎ちゃんやっほー』
大人姿のテケテケさん達がメイド服を着て猫ちゃんと戯れていた。
猫の山にテケテケさんが首だけ出しているというシュールすぎる光景にファリンちゃんが慌てふためいてる。
少なくとも隠れてるなんて次元ではない。
俺に気付いたテケテケさんが小さくラップ音で挨拶をしてくれたが、わけがわからないよ!
『あれ、知らなかったっけ? 私達ここに居候してるんだよー。18話辺りから』
『……!(メメタァッ!)』
「18話ってなに!? ってああそう言われればそんな話を聞いたけれども! マジだったんですか!」
説明されてもわけがわからないが確かに聞き覚えのある話だった。
メリーさん事件が終わった辺りに聞いた気がする。
「あ、そうだなのは。 御手洗さんも挨拶しときなさいよ」
「御手洗さん今家でメイドさんのバイトしてるんだよ」
「御手洗さんって、前に家にきてた霊媒師さん?」
そんな会話をしていると、なのはちゃんがこちらへ近づいてきた。
霊媒師を名乗ってる上メイドまで……何やってんですか貴女。
「こんにちは! 御手洗さん!」
元気よくテケテケさんに挨拶するなのはちゃん、教育がしっかりしてる子である。
一方テケテケさんはというと。
「あ、こ、こ、こんにちはでございますなのは『様』ッ!」
「ふぇ!? そ、そんなかしこまらなくともいいですよ!?」
かしこまってるというか、ビビってた。
実を言うと、あの暴走体以降から都市伝説の人達全体になのはちゃんに対する苦手意識が芽生えてしまっているのだ。
恐るべし魔王……。
「い、いえいえ今の私はメイドですから! お客様をしっかりとおもてなししないといけないわけでしてね!?」
「は、はあ……。あれ? あの御手洗さん、最近私と会ったことありますか? なんだかついこないだも会った気がするような……」
流石なのはちゃん鋭い、こないだキミを血まみれにした原因の一人です。
あの時は子供姿だったけど。
「ギクゥ!? あああありませんよー! 決して『魔ほ……ゲフンゲフン。会ってませんからねー!」
「へ?」
危なっ!? 口が軽すぎやしませんかテケテケさん!
これ以上会話を続けるとまずいと思ったらしく、テケテケさんはファリンちゃんの近くへ避難した。
「そ、そうだファリンちゃん確かみんなにクッキーをご馳走するんだよね!? 一緒に取りに行こうか!」
「そうですけどわわっ! 御手洗さん押さないで焦っちゃったら私転んじゃうー!」
そんな感じで、テケテケさんは一時撤退である。
なのはちゃんも呆然のスピードエスケープだった。
「なんだか私、避けられてる気がするの……」
「御手洗さんがあんなに人見知りするなんて初めて見たんだけど……」
「まあ気にすることはないわよ。それよりも! 今日はなのはに『秘密兵器』があるんだから!」
しょんぼりしているなのはちゃんに二人が話しかけてくれたのだが、アリサちゃんの言う『秘密兵器』なるものが気になった。
あれ? やっぱり原作と違う?
なのはちゃんもその言葉が気になったみたいで、不思議そうな顔をしてる。
「最近、なのはちゃんなんだか疲れてるみたいだから……」
「そうよ! あたし達にいつでも相談しなさい、と普段なら言うんだけど。なのはの悩みなんて一つぐらいしか思いつかないから」
そういって、アリサちゃんとすずかちゃんが部屋の入り口の方を向くと、丁度いいタイミングで恭也さん達が帰ってきた。
「なあ忍、これはなんだ? そんなに重くはないが……」
「ふふふ、なのはちゃんの『プレゼント』よ」
なんか恭也さんが白い布にくるまれた『何か』を持ってきてた。
コトン、と恭也さんはなのはちゃん達が座ってるテーブルのそばにそれを置く。
大きさはリュックサックぐらいで、布越しにわかるのはゴツゴツした感じがするのだが……。
「えっ、これは?」
「大変だったのよ材料集めるの、まああたしのおとうさんが集めたんだけど」
「作ってくれたのはお姉ちゃんだけどね。きっとなのはちゃんも喜んでくれると思うよ」
そういって、アリサちゃんとすずかちゃんは仲良く同時に布を取り外して――――
「「はい! 『オ○キューム』!!!」」
「えっ」
「さーて俺はジュエルシードの場所でも見ておくかな!」
そこから先は、俺は知らない。
テケテケさんと同じく、一目散に逃げました。
月村家の科学力は世界一かよおぉぉぉ!!?
「私が作った物の中でも最高の出来よ。吸引力は通常の掃除機の10倍! 幽霊をみつけたらもう逃がさない!」
「忍、作ってもらってアレだが幽霊って普通は見えないものなんじゃ……」
「「「あ」」」
「……スカ○ターも作る必要がありそうね」
「ニャニャニャアアアアッ! ニャーニャフシャーッ!」(さあ始めようか! 皆殺しのバラードを高らかにな!)
「キュ!? キュゥゥーー!」
「お待たせしましたー! クッキーですってわあっ!? ちょ、御手洗さんどこからそんな数の包丁を!?」
「ひぇぇっ!? オオオ、オ○キューム!? は、破壊しなきゃ!?」
「落ち着くんだ御手洗さん! くっ、駄目だパニックになってる。すみません、少しのあいだ気絶してもらう!」
どんがらがっしゃーん、と後ろですごいカオスな音がしてるが気にしない!
俺だけは生き残ってみせるんだぁぁぁ!
説明 | ||
レッツゴーお茶会。 そしてお茶回です、進まない展開。 次回はフェイト出ます。 |
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