いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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第四十一話 それでも僕に力が無いのは事実だ

 

 

 「…ふぅ」

 

 クリスマスイヴの夜。

 僕はアースラに設けられた個室でコーヒーを飲みながら闇の書の騎士達のデータ。

 そして、スフィアユーザーであるクロウ・タカ・アサキムのデータを見比べていた。

 

 「どったのクロノ君?ため息なんかついちゃってケーキでも食べ過ぎた?」

 

 「…違うよ。というか、僕は甘いのが嫌いなんだよ。知っているだろう」

 

 昨日のクリスマスイヴのパーティーを終えてアースラに戻った僕はグレアム提督から渡された新たなデバイス。デュランダルを手にしながらため息をついていた。

 

 「じゃあ、どうしてため息なんかついてんの?」

 

 「それは…。それは僕があまりにもクロウやタカ。なのはにフェイトと比べると力不足だからね」

 

 ちなみにあの模擬選以降、高志にはタカと呼ぶように言われたのでそう呼んでいる。

 高志をタカチと噛んでしまったのを聞かれた時に苦笑されながらもそう言ってきたのでそう呼ばせてもらっている。

 

 「は?」

 

 提督がアサキムに襲われた次の日にアリアからこの事件の解決の力になるだろうと渡されたデュランダル。

 それを先日。

 タカとの模擬戦で使った。

 闇の書対策に作られたそのデバイスを使って高志にギリギリで勝てた。

 

 「それは…。相性の所為じゃないのかな?思いっきりタカシ君のガンレオンは接近戦重視だし、クロノ君みたいにオールレンジかつオールマイティでオールラウンダーだから…」

 

 それはつまり器用貧乏という事だろう。

 苦手なことはない。だけどこれといった得意な点もない。という事になる。

 

 「それでも僕は((執務官|・・・))なんだよ。エイミィ」

 

 執務官という職業柄、様々な犯罪者と渡り合うため、接近戦があまり注視されない魔法戦でも今回の事件のように近接戦闘を主にした闇の書の騎士達。そして、アサキムやタカの戦い方をする者達がいることを僕は再確認していた。

 

 「それに。…今の僕じゃ騎士達は相手に出来てもアサキムと渡り合うことは出来ないよ」

 

 悔しい事だがアサキムのパワーに対抗するにはタカ。

 スピードならフェイト。

 砲撃ならなのは。

 クロウもどちらかといえば僕と同じオールラウンダーだが、スフィアの力を使えば僕以上の戦闘能力を発揮する。

 

 闇の書の騎士達対策は以前より変わっていない。

 だけど、アサキムのことになると勝手が変わる。

 時空管理局の人間が民間協力者に助力を求めなければならないという事も情けない話だが認めなければならない。

 

 「…スフィア。かぁ。僕にもそれがあれば」

 

 「馬鹿なことは言わないでクロノ君。私は嫌だよ」

 

 エイミィが僕の言葉を直接僕の口に手を当てて止める。

 

 「タカシ君が言っていたでしょ。スフィアを持つ人間は何かしらの不自由を強いられる。って」

 

 「それはそうだが…」

 

 「私は嫌。クロノ君がもし『悲しみの乙女』なんかになったら…」

 

 タカが言っていたスフィアの中で一番警戒しないといけないスフィアは彼曰く、『悲しみの乙女』らしい。

 クロウの『揺れる天秤』。これが酷くなると思考の固定化。もしくは情緒が不安定になり敵味方の判別がつかなくなる。

 タカの『傷だらけの獅子』は使用時に全身に激痛が走るというもの。しかも使用後はスタミナをかなり消費するのでこれを使っても敵を倒せなかったとき仕留められる可能性が高い。

 

 「…僕は男だよ。エイミィ」

 

 アサキムの『知りたがりの山羊』のデメリットだが…。タカは知らないそうだ。

 だが、アサキムがミッドに現れ、そこで手にした情報。

 正確には予言。その中にあった『悲しみの乙女』を述べているかもしれない情報に高志はとても焦っていた。

 

 「性別は関係ないよ」

 

 「それでも僕に力が無いのは事実だ」

 

 「それでも…。私はクロノ君が不幸になっているところなんて見たくない」

 

 『悲しみの乙女』はクロウやタカのスフィアのように自発的もしくは意図的に力を使用することでその副作用が生じるのではなく。

 ((デメリットである副作用|・・・・・・・・・・・))が発動してからその力を発揮する。そして、その副作用が所有者の悲しみ。

 その所有者にとってそれが悲しければ悲しい程その力は増す。だが、同時に体への負担も大きく、失明や味覚障害もありうる。

 タカがどうして他のスフィアについて詳しいか聞いてみるとガンレオンの中にそのようなデータがあるからだと言った。が、彼の話からするとまるでその所有者たちを見てきたかのような言いぐさでもあった。

 怪しい点も見られたが、同じスフィアリアクターであるクロウよりは信用できるだろう。

 

 「僕だってさすがに『悲しみの乙女』には手は出さないと思うよ」

 

 そのスフィアは悲しみを力にする。

 それは拒否をしても否応が無しにそのスフィアに巻き込まれる。

 スフィアの所有者の関係者は次々と不幸になる。それを知った『悲しみの乙女』は更に悲しむ。そして、それを引き出させるためにアサキムは率先してその所有者をなぶるだろうとタカは言っている。

 見つけたら最優先で所有者がいれば保護。いなければ誰もいない世界で封印・隔離したほうがいい。

 ある意味、闇の書にも似ている。

 次々と新しい主の元に転生しては不幸の連鎖に巻き込む闇の書。

 そして、『悲しみの乙女』。

 タカ曰く、スフィアはその世界その世界に一つしかない世界の宝。

 ブラスタのエネルギー機関。アリシアの((命の支え|ペースメーカー))そのもの。その姿は様々ある。

 だけど、そのエネルギーは明らかに世界に何らかの影響を齎す。ロストロギア。

 アサキムがこれらを集めて何をしようとしているのか分からない。

 

 と、考えていた時だった。

 

 ヴィーッヴィーッヴィーッ!

 

 「第一種警報!?」

 

 「ちょ、ちょっと何があったっていうの?!」

 

 エイミィが空中にモニターを浮かび上がらせながらそれを操作するとそこにはなのはとフェイトにクロウが闇の書の騎士達と((共闘|・・))しながら黒い鎧を纏ったアサキムと戦っている映像だった。

 そこにタカとアリシアの姿は無かった。

 

 「ちょ、ちょっと?!何で皆ボロボロなの!?それにアサキムが持っているのって『闇の書』?!なんで?!アサキムは闇の書の騎士達の味方のはずじゃ…」

 

 「エイミィ!僕も出撃する!すぐにブリッジに向かってくれ!」

 

 僕は混乱しているエイミィを背にしながらデュランダルを手に転送装置のある所へと向かった。

 

 

 

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第四十一話 それでも僕に力が無いのは事実だ
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