異世界で生きる |
七話
あれから出口に向けて進むこと2日。2、3匹とのちょろい戦闘を何回かと自己紹介も全員と終えて、ようやく出口に着いた。聞くところによるとあそこ付近は結構深部に近いらしく、彼らも気が気でなかったそうだ。というか、俺が向かって歩いていた方向に帰ってるわけだから、俺ってば深部にいたってことか?
「さぁ、ついたぞカイト。これがカロル・トロルだ」
「……デカイな」
暗がりを抜けて出ていくと、まず最初に目につくのが溶岩の滝だ。地球のナイアガラの滝を彷彿させるそれは、そこまで勢いはないにしてもドロドロと下に流れ落ち、底の溶岩の運河に流れ込んでいる。規模も前に地下回廊で見た物よりかなりでかいし中々に幻想的ではあるけども、じっと見ていると目がチカチカしてきて、近くにいたとすれば暑くてたまらないだろう。そしてこの地下回廊からの出入り口は目の前に広がる石造りの住居を見渡せることからカロル・トロルの上部分にあるのだと思う。天井部分は見上げても見えないからかなり高く、それでいてぐるっと側面は削られてけっこう広い。
「なかなかいい所だろ?ちっとばかし暑いが、俺達冒険者にはここほど過ごしやすい所はねえよ」
横に来てにやりと笑うのは人間の青年、ジャック・ファウディヌスだ。空色のツンツン短髪に人懐っこそうな顔をした彼は同い年ということもあってか道中で真っ先に声をかけてきた。底抜けに明るく人を引っ張るのはうまいそうだが、少々ガキっぽい。悪い奴ではないのは確かなんだけども、もう少し成長してほしいというのは後ろのエルフ姉妹の言葉だ。彼の装備は長剣にしては厚みのある剣一本。間接部分を守る程度の防具を付けて、一撃で決めるかヒットアンドアウェイのどちらかが基本戦法になっていた。
「はぁ、確かに冒険者として活動するならもってこいだけど、私達エルフには相変わらずちょっときついわ」
「そうだね、私も同意見だよ。君のその格好で汗一つかかないのが不思議でならない」
その後ろのエルフの一人、ため息をついた方は姉のニーナ・フォーチュン。そして落ち着いた声を出した方が妹のカタリナ・フォーチュンだ。二人は双子で、顔つきがまったくもって一緒だが性格が見事に真逆だそうだ。姉は少々短気で癇癪を起してよくジャックと喧嘩するらしいが、妹は常に冷静で落ち着いており、それを解決できるのに毎回面白がって見ている。しかも姉は火属性と土属性の攻撃型魔術師で、妹は短剣と弓を使った典型的なアーチャーだ。初見で二人の判断をするには装備か、髪型の違いを見るしかないだろう。カタリナは肩までのショートで前髪を右に流している。対して姉のニーナは背中の中ほどまであるロングヘアーだ。
「まったくだにゃ。僕とロードランさんは毛があるせいでムシムシゴワゴワにゃ!羨ましいったらありゃしにゃい!帰ったらブラッシングしにゃきゃにゃよ……」
にゃふぅ、と足元で似たようなため息をついたのはアイr……もとい、アルマーのノワール・キャトシルヴ。毛色は肌色で革製の鎧を着ている。人間の物とはやはり造りが違うようで、尻尾が動きやすくなっていたり革が柔らかく作ってある。そこに背負うようにして剣――俺から見れば短剣だが――をさしていて、腰には空間拡張の魔法がかかったポーチを付けている。このポーチは重量制限のある俺の腕輪のようなもので、彼はここに罠や小道具等を入れているそうだ。このポーチ自体は全員持っているそうだが、ノワールのは特別製で他のものよりも多く入るらしい。索敵と遊撃が仕事だし力もそんなにないから数で攻めているとか。
「そうだな。我ら獣人はこういう時に不便でしょうがない」
そしてノワールの話にも出てきた狼の獣人であるウォルファウンドがヴォルク・ロードラン。毛色は黒く、目は赤い。身長180cmの俺より大きく、少しだけ見上げるので190cmはあるだろうその大きさに加えてがたいもいい。
鎧は兜以外黒いフルプレートで全身を覆ってはいるが、特注品だそうで軽量でいて強くしなやかな金属のため動きを阻害しないそうだ。武器は柄が手に合わせて太くなっているハルバート。前面の刃は前三分の一まで広がって、刃の部分と付け根の境目に赤いラインが入っている。そして柄に何か術式が書かれているけど見ることは出来なかった。
「まぁ種族が違えばそれぞれ思う所はあるじゃろうが、わしらドワーフには大事な故郷じゃ。住めば都とはよく言ったものじゃが、お前さん等も早く慣れることじゃわい」
「はぁ、結局それしか方法がないのよね。仕方がない、か……」
「私達エルフには早々慣れられるものではないがね。さ、いつまでも立ち止まってはいられないよ。早く行こうか。私としてもいつまでもこの状態でいたくない」
「それもそうだな。じゃあギルドに報告して、俺たちは解散ってことか」
「あぁ。わしらはこいつをつれて報告をしないといけんがな」
そう言って歩き出し、少し下り坂の舗装された道を下りていくこと数分。岩の壁に挟まれたそこそこ広い一本道になっていたので何があるというでもなくギルドに到着した。ヴォルク曰く、これはもし魔物が進行してきた時の対策も兼ねているそうだ。下手に道が繋がっていると居住区に進行されかねないし、防衛が困難になるからだとか。それに居住区からならあの壁の上に上がれるからそこから弓なり魔法なりで迎撃もできる。ギルド自体も軽く要塞化しているそうなので本当の意味での最後の砦となる。まぁ、普段使用するときは時折混雑するのが難点だそうだが。
そしてこのギルド。なんとその出入り口が金属製の門になっている。今回の騒動のためか閉まっているが、屋上部分は映画とかで見た城壁のようになっているし、他にも色々と迎撃用装備が施されている。こういうのが好きな自分としてはじっくりと見てみたいが、今は無理なのでまた今度来るとしよう。
「戻ったぞ!開けてくれ!わしだ!ファーガスだ!」
ファーガスがそう大声で言うと、屋上に居た人達が動きだし、ギャリギャリと音を立てながら門が開きだす。そして全部ではなく人が二、三人通れる程度開くと、中から数人出てきた。
「よく戻ったな、ファーガス」
「おぉ!グスタフ!迎えに来てくれたのか!」
ファーガスが嬉しそうに手を振った先に居たのはファーガスと同じくらいだろう歳の人間だ。浅黒い肌にきりっとした顔立ち、顔には皺が目立ち白髪をゆるいオールバックにしている。しかしそれが年齢を感じさせるものではなく、威厳を感じさせるのに一役買っている。ようはダンディーなおじさんだ。鋭い目つきに眉間に寄った皺で小さい子が見たら泣きだしそうではあるけれども。
「で?戻ってきたということはこの2週間の静寂の原因を見つけてきたわけだな?」
「あぁ。だがここでは話せん。とりあえずギルドの者に報酬を渡して、別の場所でになる」
「……そうか。ならばそうしよう」
周りをチラリと見てから言うファーガスにグスタフは頷き、とりあえず中に入るように言ってきた。俺は素直に頷き、兵士に囲まれながら中に入った。
説明 | ||
何かと不幸な人生をイケメンハーレムの友人のせいで送ってきた主人公、漣海人。しかも最後はその友人によって殺され、それを哀れんだ神達は力を与えて異世界へと飛ばしてくれた!!とにかく作者の好きなものを入れて書く小説です。技とか物とかそういう何でも出てくるような物やチートが苦手な方はご注意を。 | ||
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