異世界で生きる |
九話
翌日。俺はファーガスを連れてギルドに向かった。相も変わらず石造りな建物で二階建てでかなり広い。入ってすぐにはテーブルがいくつも並んでいて、武具を付けたまま座っている者や商人風の亜人が護衛らしき人と座っていたりして結構な人で中は賑わっていた。そして俺が驚いた一番の事はこのギルドがかなり綺麗にされていて、元の世界の市役所とかを思わせることだろうか。冒険者と言うことで、酒場みたいなのかと思っていたが、そういうわけでもないようだ。
内装としては、まず入口からまっすぐ向かうことのできる場所に受付カウンターがあり、6つに区切られている。それぞれに人がいて忙しそうに対応に回っているが、テキパキと仕事をこなして待っているため列の動きが長時間止まることは無い。
受付の隣には大きな掲示板がランク毎に分けられて設置されており、依頼が紙で貼り付けてあるのが見えた。そして受付を挟んだ反対側には少し離れて軽食用のレストランがある。これは後々増築されたそうで、外から見るとそこだけ出っ張って見えるらしい。俺も近いうちに利用する機会もあるだろう。
それと両横にある階段を上ると二階はギルド銀行と魔物の部位の買い取り場所、あとは職員用の部屋があるそうだ。全部ファーガスに聞いただけだけどね。
「まぁこんなところかの。お前さんが今後どうするかは知らぬが、お前さんの腕っ節の強さを考えりゃここに登録しておいて悪いことはないはずじゃ。それに儂直々の紹介とあらば最低ランクから始まる事はあるまいて。その分働かされるかもしれぬがの」
「すまない、恩に着るよ。一応ガリアンの首と武器は結構取ってるんだが、これは使えるか?」
「おぉ、そうか。ならば話は早い。それを見せつければ信憑性が増そう。いくつか証明として渡して、残りは上で換金するといい。奴らの鎧は一部くすんではおるが、貴金属を使っておるようでな?金になるのじゃよ」
何故かは知らんがな、と言うファーガス。あいつらそんな良いもの装備してやがったのか……なんかムカつくのは何故だろう?
「はいはーい、次の方〜!」
手元の紙に先程処理した案件の詳細を書き、後ろの同僚に渡す。そしていつも通りの営業スマイルを浮かべ、いつも通りに冒険者、もしくは依頼人を待つ。彼女らにとってそれらは慣れた仕事である。そして他の同僚に比べて特に接客作業が得意な彼女はテキパキと仕事をこなしていった。
今日この日、ギルドはいつも以上の賑わいを見せていた。それというのも、ようやく地下回廊の探索・採集が解禁されたためだ。詳細不明の静寂の理由もわかり、街は再び賑わいを見せると同時に仕事が一気に舞い込んできている。そしてそれに比例して仕事のなかった冒険者も来るという、なんとも忙しい状態になっていた。
「おや、今回の受付はミミナちゃんか。運が良かったのぅカイト」
「ファ、ファーガスお爺ちゃん!?」
驚いて思わず立ち上がってしまい、ばさぁ、と新しく出した紙が落ちてしまう。周囲の目を集めてしまった事で冒険者達がファーガスの存在に気づき、ひそひそと話しているのを見て、ハッと気づく。そしてそれを慌てて拾い集めたミミナは目の前の笑っているファーガスにジト目を向けた。
「知り合いか?」
「ここのギルドの幹部の娘じゃよ。そいつとは儂が冒険者だった頃の馴染みでな。人間とドワーフのハーフで、孫みたいなもんじゃよ」
可愛いじゃろ?と隣にいる男に笑いながら言うファーガス。ファーガスの言うとおりミミナは人間とドワーフのハーフである。ドワーフの手先の器用さと力強さ、そして人間のスマートな体系を受け継ぎ、母に似て綺麗な顔立ちと美しい赤髪でギルドのアイドル的な存在であった。ちなみに成長の見込みのない種族特有の背の低さまで受け継いでしまった事は、彼女の最大のコンプレックスであったりする。
閑話休題。
ミミナはファーガスに向けていた視線を男に向ける。黒いフードを被って顔は口元しか見えないが、見る限りまだ若そうだ。そして軽装備ではあるが様々な武器を持っており、傷跡から見てもかなり使い込んでいるのが伺える。少しばかり派手な気もするが。
「もうっ!いきなり来るからビックリしたでしょ!全く……でも、久しぶり。今日はその人の用事?」
「うむ。こやつの登録をな。儂の推薦付きで」
「推薦?お爺ちゃんが?」
ぺこり、と頭を下げる彼に少しは礼儀作法がわかる人だと思い、カウンターに隠れた手元の紙に記載する。
ギルドにおいて、Bランク以上且つギルドマスターに認められている冒険者には推薦の権利が与えられる。これは出入りの激しい冒険者稼業において有望な新人を確実にギルドの戦力にするために決められたものだ。
推薦にはその冒険者の付き添いの元、厳しい試験を行う。実力もさることながら、その性格や素行も見られる。すでに『推薦』の言葉を聞いた時からミミナはそれを開始しており、他の職員もさり気なく彼を見ていた。正直この試験に通るだけでも難しいとされていたりする。
「うむ、こやつの実力は保証する。それにそこいらのチンピラ共よりは確実に礼儀正しいぞ?」
「チンピラと比較されても……まぁいいか。じゃあこの用紙に記入してくれますか?」
「わかりました」
ファーガスの比較対象に苦笑しながら用紙とペンを渡す。スラスラと書いていっていることから最低限の教養はあると見た。そして書き終えた彼から用紙を受け取ると、彼はフードを取った。これからは自分に話が行くとわかった上での行動だろう。
「カイトさん、ですか。武器は特に固定はしないと……へぇ、魔法も使えるんですね。ちなみにどんな魔法が得意ですか?」
「特に固定はしませんね。大体使えるので。よく使うので言えば回復系ですかね」
「そうですか。なら、今まで倒した魔物とかはどんなのがいます?」
「ガリアンの群れ位ですかね。この後換金に行こうかと思ってますよ」
「あら、部位は持ってらっしゃるんですか。見せてもらっても?」
「あ、はい。これです」
彼がにこやかにその首ごと兜を出した瞬間、ミミナ周辺は固まった。ファーガスが天を仰いでいるのがよく見えた。
説明 | ||
何かと不幸な人生をイケメンハーレムの友人のせいで送ってきた主人公、漣海人。しかも最後はその友人によって殺され、それを哀れんだ神達は力を与えて異世界へと飛ばしてくれた!!とにかく作者の好きなものを入れて書く小説です。技とか物とかそういう何でも出てくるような物やチートが苦手な方はご注意を。 | ||
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