魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが 無印I
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 アースラから帰還して、次の日のこと。

 

「え? 管理局に協力しないの?」

 

 いつもの朝練を終え、一息ついていたなのはとユーノは、今日の予定について話していました。

 今後どうするか、そのことに関して、リンディ達と話しあうことになっていたのですが、開口一番、なのはは首を振ったのでした。

 

「勘違いしてもらっては困るねユーノ君。私は民間協力者として力添えしようと考えているだけであって、何もしないという選択肢は最初からないよ」

「そんな回りくどいことを……というか、向こうに全部任せるとか考えなかったの? いや、僕が言うのもなんだけどさ」

「質問で返すようで悪いが、いきなり横からしゃしゃり出てきた者が『後は任せろ』と言って全て横取りしたら、それは腹立たしいことだと思わないかね?」

 

 鏡見ろよ鏡を、という鋭い突っ込みが来そうな発言でした。

 

「まぁ、私も色々思うところがあるのでね。馬鹿正直に協力しますというわけじゃないので安心したまえ」

「僕は別にいいんだけど……」

 

 一体何を考えているのでしょうか。ユーノにはなのはの考えがまったく分かりませんでした。

 分かったらおしまいな気がしますが。

 

「ともあれ、管理局と暫しの間行動を共にするわけだから、家族にも話をせねばなるまい」

「なのはの御両親、納得してくれるかな……」

「さてね。しかし、話の分かる人たちであることに違いないからね。なんとかなるだろうよ」

 

 どこか他人を評する言い方に違和感を抱きながらも、ユーノは相槌を打つのでした。

 

「兄が暴れそうで面倒だが」

 

 否定できませんでした。

 

 

 

 

 

 

 その日の晩、なのはは桃子と話し合うことにしました。

 

「お母さん、お話があるの……」

 

 誰だこいつ? と思ったそこの貴方。私に聞かないでください。

 

 桃子は真剣な表情のなのはを見て、大事な話だと分かったのでしょう。ちょっと待っててと言い、誰もいない居間で二人で話をすることにしました。

 

「どうしたの?」

 

 笑みを絶やさない母を騙すことに、さすがのなのはも良心が痛みましたが、それはそれこれはこれで片付けました。

 

「実は……かくかくしかじかまるまるうまうまで」

 

 実際こんなんで伝わるわけないと思います。

 

「そうなの……お友達のために、暫く家をあけたいって……なのは、本気なの?」

 

 日本語って、便利ですね……。

 

「なのは」

 

 桃子はしばしの間逡巡していましたが、ややあってから、

 

「行ってらっしゃい。後悔だけは、しないでね」

 

 優しい笑顔で、娘を見送ることにしました。

 

 

 

 余談ですが、これを聞いた恭也はギャリック砲をぶっ放す勢いで怒り狂ったそうですが、界王拳を10倍まで使える美由希の前に呆気なくやられました。

 どうでもいいところで凄まじい戦いが繰り広げられていたそうですが、これを聞いたなのははというと、

 

「あ、そう」

 

 どうでもよさげに言うのでした。そりゃそうでしょうね。

 

 

 

 人気のなくなった夜の街を、なのはとユーノは二人歩いていました。

 この後、海辺までクロノが迎えに来る手筈となっております。とどのつまり使いっぱしりですが執務官的にそれはよいのでしょうか。

 途中、公園に立ち寄ったなのはは、懐かしむような口調で言いました。

 

「そういえば、君と出会ったのは、ここだったね」

 

 今でも鮮明に思い出せる、あの時の出来事を振り返る二人でした。

 

「あの時は私も随分慌てたものだよ(素の自分を知られたと思って)」

「さすがの君も魔法を知って驚いたんだね」

「ああ。しかし不思議と後悔はしておらんのだよ(いつでも始末できるから)」

「君の心境が変わったのかもしれないね」

「そうなのだろうか」

 

 なんか微妙にズレた会話をしつつ、通り抜けました。

 

 間もなく海が見えてくるという位置になると、ユーノが開口しました。

 

「なのは……一応言っておくけれど、向こうの言葉にも耳を傾けてね? 今までみたいに制御ミスって爆破とかしても『若さゆえの過ちだよ』とかじゃ済まされないからね」

「なぁに、私の周囲5メートルは治外法権が通用する。大船に乗ったつもりでいたまえ」

 

 泥船も心配するレベルの発言でした。

 

 

 

「というわけで、今日から世話になる高町なのはだ。ここはひとつよろしく頼むよ?」

 

 リンディ達と再会するなり、上の台詞を放ちました。

 どんだけ偉そうなんでしょうかと常人なら思うでしょうが、どこにも常人などいないので彼女流の挨拶と受け取られました。

 

「ええ。よろしくね、なのはちゃん」

「マジかよ、面倒くせぇ奴が来たもんだな……」

「高町さんには期待してるから(ドS的な意味で)」

 

 以上、歓迎の言葉でした。

 誰がどう言ったのかは言うまでもないでしょう。

 

 一人妙なシンパシーを感じている輩がいますが最早気にしないことこそが美徳とされる領域なのでした。

 

「一応、なのはちゃんには伝えておくけれど、身柄を一時、管理局で預かるという形にしておくわね」

「ふむ。つまり私が全力でぶっ放して器物破損で責任追及されても、管理局が罪を肩代わりしてくれると……」

「やめて下さい。本当に勘弁して下さい。お願いですからお控え下さい」

 

 クロノのマジ発言でした。

 コイツならやりかねないと初対面で既に分かっているからでしょう。

 

「しかし異世界の事情など知らんが、私のような若輩者が勤務するのは些か問題ではないかね? 自分でも言うのもなんだが、やはり労働基準法的なものが適用されるのだろうか」

「多分平気よ。貴女くらいの年頃の子どもが働くのは珍しいケースだけど、例外がないわけじゃないわ。有能であれば管理局は積極的に採用するのよ。恥ずかしい話だけど、慢性的な人手不足に苛まされる管理局の短所ってやつよ」

「まぁ確かに、魔法初心者に近い者が突然管理局に所属します、などと宣言したところでまかり通るとは思えんがね」

「ええ。だから身柄を一時預かる、という最終的な決定になったのよ」

「……その方が切り捨ても楽だろうね」

 

 サラッと毒を吐いたなのはの言葉は、誰にも聞こえませんでした。

 足元にいるユーノ以外には。

 

「了解した。その条件でそちらの傘下に入ることを決定とさせていただく。しばしの間お世話になるが、まぁ安心したまえ。私はこう見えても内気でシャイな9歳児でね。いつも通り、人様の迷惑にならんよう鋭意努力するとしよう」

 

 何言ってんだこいつ、みたいな目で見られましたがなのははちっとも気に留めませんでした。

 

「おい高町。ウチに来るのはいいが、ちゃんとかーちゃんとーちゃんの許しもらったのかよ?」

 

 クロノが若干不機嫌そうに言いました。

 

「うむ。問題ないよ。母から許しは得たし、姉も快く送り出してくれた。父も納得の上だし、兄はウザいから無視して来たから平気だろう」

「最後は何が平気なのかぜんっぜん分からねぇんだけどよ……。大丈夫か? ちょっと家の様子見たらどうよ?」

 

 珍しく気を回したクロノが、モニターに高町家の様子を表示しました。

 

 すると、

 

 

 

『なのははまだ子供だ……友達のためとはいえ、外泊など5年は早い……!』

『恭ちゃんの考えは古すぎるわ! だからあの子はここにいられなくなって……』

『それはよそ様の考えだと言っている!』

『この……分からず屋がぁーッ!』

『お前は誰だ……!?』

『アンタだけは、落とす!』

 

 

 

 何かが覚醒しそうな恭也と、今すぐ破壊形態に移行しそうな美由希の激しい戦いが繰り広げられていました。

 

「普段通りだね?」

 

 こやつだけ平然としていますが他者からすれば色々な意味で別世界の出来事のようでした。

 

 閑話休題。

 

「まぁ今後は仲良くしていこうではないかねクロノ君。初対面の時はさんざん迷惑をかけたがねクロノ君。しかしここは穏便に事を運ぶのが私より多少なりとも長生きした者の答えだと思うのだよクロノ君」

「すいません、チョイチョイ俺の名前呼ぶの止めてくれませんかね」

「分かったよキョン君」

「フロイト先生も大爆笑だっぜ! ってちげぇよバカヤロー!」

 

 ノリの良いクロノでした。

 

「なんだかあんた達、似てるね?」

 

 ふと、今まで二人のやりとりを観察していたエイミィがそう言いました。

 

「「どこが?」」

 

 見事にハモりました。

 

「えっと、そうだね……」

 

 しばし考え込み、ややあってから、言いました。

 

「クロノ君は『死んだ魚みたいな目』してるけど、なのはちゃんは『腐ったドブ川みたいな目』してるかな〜って」

 

「…………」←死んだ魚みたいな目をした男

「…………」←腐ったドブ川みたいな目をした少女

 

 二人のテンションがマッハで撃沈しました。

 

「ね? 似てるでしょ?」

「すいません。僕に話を振らないでください。命が惜しいんです」

 

 人間形態になっていたユーノは汗を流しつつ目を逸らします。

 

「時にユーノ君、先程から思っていたのだが……君の影がどんどん薄くなっている気がしてならないが大丈夫かね?」

 

 そう言うと、ユーノは信仰する神から直接死刑宣告を喰らった敬虔なる信徒みたいな顔でフリーズドライしました。

 

「そ、そんなことないよ! 確かにここにいる汚染度80%増量な外道連中に比べると僕はまだまともだなぁー良かったなんて思ってごめんなさい!」

「ユーノ君。最終的に謝罪すれば許されると言う風潮は私は嫌いだね?」

「つーかよォユーノ君、オメェもうちっと前に出るようなキャラ維持しねーと引退することになっちまうぞ? 具体的には2作目辺りからチョイ役になり下がって3作目には栄転しましたーと言い訳してどっかの裏方として活躍、でもほとんど出ないから準レギュラーだけど中の人は他のキャラで大忙しみたいな」

 

 やけに具体的な指摘でした。

 

「な、何言ってんだよ! 僕はまだまだ現役だよ!」

「いいや、ジャ○プ風に言うとお前はすでに死んでいる」

 

 今にも変形しそうなユーノを完全に無視してなのはは話を進めます。

 

「して、今後の方針は?」

「こちらでジュエルシードを探索するから、なのはちゃんには発見次第出撃してもらうことになるかしらね」

「けどよォ艦……総長。こないだいたガキがまたしゃしゃり出てこないとも限らねぇんだぜ? 手こずるなんざ思わねぇけど、毎回毎回出てこられると面倒くせぇぞ?」

「総長じゃないわ、艦長よ。そっちに関しては考えがあるから問題ないわ。今後はジュエルシードを優先して確保することになるわ。あの子については追って指示を出すから」

「了解だぜパンチョ」

「パンチョでもピリムーチョでもないわ、艦長よ。エイミィちょっとクロノを黙らせなさい」

 

 はい、と頷いたエイミィは瞬時にクロノの背後に回り、縄で縛りあげました。僅か2秒の出来事でした。

 しかも亀甲縛りです。どうやったんでしょうね。

 

「長年の努力の成果、とでも言っておきましょうか」

 

 誇らしげに微笑むその頭が理解できません。

 

 その辺でローリングしているクロノを視界の隅に追いやり、なのははモニターに表示された少女・フェイトのことを思い出しました。

 

「フェイト、と言ったか。母のためにも、などと言っていたが、果たして……」

 

 君の目的は、それだけなのか?

 懐を押さえ、なのはは呟きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃。

 

「アルフ! アルフ! そっち行ったよ! 違うよそっちじゃないこっちだよ! 上! 上! じゃなかった左だよ! 今だ右!」

「何言ってるか全然分かんないよフェイト……!」

 

 苦労が絶えないアルフさんでしたが、なんとかジュエルシードを確保しておりました。

 

 

 

 

 

説明
「世界を救って……」「無理に決まってるではないか」しかし目覚めると見知らぬ世界、見知らぬ身体。異なる世界から意識を飛ばされ、しかも魔法少女の体に乗り移った主人公!失った記憶と肉体と尊厳、所持するものは知識のみ!諦めろ、魔法少女が許されるのは子供のうちだけだ……!「ダメだよなのは!魔法使って暴力沙汰はいけない……!」やかましい。「では行こう。まずは話し合いだ」ただし肉体言語的な意味も含めて。 ※注意:この作品では主人公を筆頭に原作キャラが一人残らず人格或いは外見の改変を受けており変態の巣窟と化しております。あらかじめご了承ください。
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