インフィニット・ストラトス―絶望の海より生まれしモノ―#57.5 |
フランス デュノア社 社長室
「槇篠技研にから連絡が有りました。『蘭は確かに預かった』、です。」
「…そうか。」
秘書の報告を受けてリシャールは内心でホッと安堵のため息をついた。
『イギリスのIS開発工廠が襲撃され試作機が強奪された』という事件があっただけに警戒はしていた。
が、それも無駄になってくれたようである。
「随行員はそのまま技研の担当者を交えて最終調整に入るそうです。」
「うむ。…((現行機|ラファール・リヴァイヴ))の((改修|アップデート))の方はどうなっている?」
「現在は『オキシス』をベースにした再設計を行うチームと、改修点を反映させるチームに別れて並列進行しています。」
「ふむ……どちらの班もそのまま進めさせてくれ。但し両班には『定期的な意見交換会を開く事』、あと『指針が決まったら概要だけでも報告書の体裁でこちらに回す事』だけは順守させてくれ。」
「はい、各班の班長に伝えておきます。」
「頼む。」
「はい、では失礼します。」
一礼の後に秘書が退出するとそれまで張っていた背筋と緊張の糸を解きほぐし背もたれに体を預ける。
「……ふぅ。」
寄りかかりつつ、机の片隅にある写真立てに手を伸ばす。
そこには普通―――とは言い難い物はあるがとある一家の家族写真が入っていた。
快活そうな少女と、勝気そうな女性、それにやや強面な仏頂面の男性。
そして、左の片隅に((白黒|モノトーン))で加えられている優しげな笑顔を浮かべる女性の写真。
リシャールと、妻と娘と、娘の生みの母でありかつて愛した、今は亡き女性。
先日、知人に頼んで作ってもらった『家族写真』であった。
「シャルロットは、そろそろ学園に着いた頃か。」
『一緒に墓参りに行こう』という約束を果たすべく帰郷してきた娘との語らいの時を思い出し、良い意味でも悪い意味でも((母親|コレット))に似てきた事が真っ先に思い立ったシャールは苦笑いしつつ写真立てを机に戻す。
「さて、始めるとしようか。」
そして、リシャールは己が仕事に戻っていくのであった。
―――頭の片隅で、『蘭』を受け取った時の娘の驚く顔を想像しながら。
* * *
「たっだいまー。」
「ああ、シャルロット。久々の故郷は楽しめたか?」
寮の部屋に戻ってきたシャルロットを迎えたのはノースリーブの淡い青のワンピースという涼しげな格好のラウラだった。
月初めの買い物に始まり、簪の部屋で保管されていた『空に着せる用』として用意されていたモノから気に入った物を貰ってきたり、自分で買いに行ったりして、今ではそれなりに衣装持ちだったりする。
…ついでに新しい服が手に入るたびに一夏や空の所に『お披露目』に行くものだから『微笑ましいのぅ』とか『かわええのぅ』という声が多数上がっていたりもする。
ちなみに、影で何と言われているのか知らないのは((本人|ラウラ))だけである。
「うん。お母さんのお墓参りもできたし、お父さんとも話せたし。新しいお母さんも良い人だったし。」
「積もる話も有るだろう。一夏たちにも声を掛けてからにした方がいいのではないか?」
「ああ、そうだね。お土産もあるし。」
長くなる上にエンドレスな気がしたラウラは早めに遮って犠牲者を増やす事にする。
もしくは『生贄に捧げて逃げようとした』とも言う。
「フランス土産?」
「うん。もうすぐ届くと思うんだけど。」
「ほう、どんなものなんだ?」
興味深々なラウラはずいっ、と身を乗り出して尋ねる。
対してシャルロットは朗らかに言い放った。
「フランスパン。」
その瞬間、ラウラの表情が落胆を通り越して一気に消え去った。
まるでお土産を期待していたら思いっきり外された子供のように。
「じょ、((冗句|ジョーク))だよ。ちゃんとした物を選んできてるから。」
「なら、いい。」
途轍もなく怖い無表情に負けて慌てて取り繕うシャルロット。
彼女は冗談を言う相手を間違えたようだ。
程なくして寮内放送が掛って『シャルロット宛の荷物が届いている』という連絡がされるとシャルロットは逃げ出すように受け取りに出かけて行った。
* * *
夕食後、シャルロットは((いつもの仲間|みんな))を副寮監室に集めてお土産配布にいそしんでいた。
ちなみに、お土産は……
「フランスパン、」
ではなく、
「――――の形をしたボールペン?」
『フランスパンの形をしたボールペン』という、何ともネタネタしいシロモノであった。
まあ、下手な壊れ物や日持ちしない食べ物よりもよっぽどいいだろうとの判断の結果ではあったが。
「うん。できれば形に残るモノの方がいいかなって思って。あ、別で一応お菓子も用意してあるよ。」
そちらはシャルロットの母の眠る墓地の近くにある普通の菓子屋が売っているクッキーの詰め合わせであった。
「で、親父さんとは話せたのか?」
ボールペンをひとしきり眺め終わった一夏が切り出した。
「うん!沢山話せたよ。お母さんと暮らしてた時の事とか、みんなの事も!」
「そっか。良かったな。」
自然と、一夏の手はシャルロットの頭に行っていた。
ぽふ、なでなで。
余りに自然な流れだったせいか、数秒間は誰も気付かなかったのだが、
「って!一夏アンタ!何自然にシャルロットの頭撫でてんのよ!」
「ああっ!そうですわ!」
「撫でるなら、私の頭を撫でれば良い。」
結局は、爆発した。
一番最初に気付き、飛びかかった鈴。
追随して迫るセシリア。
むん、と胸を張って頭を突き出すラウラ。
中々にカオスな事になっていた。
程なくして、『うるさい』と空に((雷|げんこつ))を落されて鎮静化したのだが。
「うぅ………」
「理不尽ですわ………」
「母様、痛い………」
正座させられた三人が頭の痛みに涙目になっていると、ガチャリとドアが開く。
「ん?なんだお前ら、まだやっていたのか。」
現れたのは、千冬であった。
「あれ、千ふ――織斑先生?」
『何故?』と首をかしげる一行。
『黒いノースリーブにハーフパンツ。おまけに首からバスタオルを掛けて頭を拭きながら。』という、
どう見ても風呂上がりにしか見えない格好だから余計に『((副寮監室|おとなり))』に来る理由が読めない。
「ん?私がここに来るのがそんなにおかしいか?」
「まあ、なんと言いますか………」
「何故風呂上がりにここへ?」
「決まっている。千凪、開けてくれ。」
「はいはい。」
空が身に着けていたカードケースから一枚のカードを取り出すと何やら『冷蔵庫らしきもの』のカードリーダに通す。
ピー、という認証音の後にガコン、と音を立ててロックの解除される音がする。
「二本だけですからね。」
「判っている。」
千冬は空の小言を受けつつ、冷蔵庫から二本の缶を取り出し、片方を今ロックを外してもらった冷蔵庫の上の段に入れる。
そこは何の変哲もない冷蔵庫になっていた。
プシュッ、という炭酸の抜ける音。
溢れだしてきた泡を口で迎えに行き、そのまま一本を一気に空ける。
そして缶を冷蔵庫横のゴミ箱に投げ入れると先ほど『普通の冷蔵庫』に移した二本目を取り出す。
捨てられた缶は、ビールだった。
もちろん、350ml缶である。
「どういう事ですの?」
「なんで、副寮監室にそんなものが?」
「空って、俺らと同い年だよな?」
混乱する一夏たちは思い思いに尋ねる。
が、
「………織斑先生の酒量管理と部屋の管理も篠ノ之博士に依頼された僕の仕事なんだ。」
俯いた空の静かな呟きに一瞬静寂が訪れた。
「なんというか……」
「ウチのズボラな姉がご迷惑おかけします。」
箒と一夏は申し訳なさそうに謝り、周囲の面々は『ああ、そういえばこういう人だった』と臨海学校の時の姿を思い出す。
「まあ、慣れたよ。」
そう言う空の笑顔は見ている方が辛い類のものだった。
「そういえばデュノア。」
「は、はい。なんですか?織斑先生。お土産にお酒は有りませんよ?」
唐突に声を掛けられてシャルロットは妙な事を口走ってしまう。
「それはいい。お前の実家にアキト兄さんが逗留した事があると言っていたろう。」
「まあ、十年以上前の話ですけど………」
「その時の話、聞かせろ。」
「はぁ………」
突然の事に困惑するシャルロット。
「構わないですけど……今からですか?」
「当然だ。お前らも興味有るだろう。一夏にとって父親のような存在だった人の話は。」
「それは…まあ、そうですけど………」
鈴が呟くように答える。
実際、『織斑一夏』を構成する要素の中でかなりの比重を占めている事は判っていても、その話についていけるのは箒と、限定的ではあるがシャルロットの二人だけというのが現状である。
直接面識は無くとも、人となりを知っておく事は知らない鈴、ラウラ、セシリアにとって重要課題の一つである。
「ほら、みんなが聞きたがってるぞ。」
「…判りました。大分昔の事だからちょっとあやふやになってる部分もありますけど。ええと、アレは――――」
- - -
僕がまだ四つか五つだった頃の話です。
夏を迎えて、もう少しで八月になろうかという頃………
「留守か。――参ったな。」
ちょうど、僕が外に遊びに出ようと家の外に出てみたらお隣さんの家の玄関の前で白いYシャツ姿の若い男の人がいて、何やら困った様子だったんです。
だから……髪は黒いし、肌の色も違うから、言葉が通じるか判らなかったけど試しに声をかけてみたんです。
「お兄さん、どうしたの?」
そうしたら、ちょっと驚いた様子でこっちに向いて、
「ああ、驚かせてしまったかな?」
そうちょっと堅い、片言気味なフランス語で言ってきて、
「君は、ここの家の子?」
そう、尋ねてきたんです。
答えはNo。
僕は、その隣の家だったから。
どうやら僕が隣の家から出てきたのは気付かなかったみたいで。
その事を伝えるとその人は『お隣さんが何処に行っているのか知らないか』と訊ねてきたんです。
当然、僕は知らなかったからお母さんに訊いてみようと僕は『ちょっと待ってて』と言い残して家に戻ったんです。
その時、お母さんはキッチンにいたからすぐにお隣さんが何処に行っているのかを尋ねてみたら、
「なんでそんな事を?」と逆に聞き返されて、隣の家を訪ねて来てるお兄さんの事を伝えたんです。
そしたら、
「あら、それは大変。」
なんでも、お隣さんが二週間ほど語学留学に来る『ニホン』の((高校|リセ))に通う『男の子』を一人引き受けたのにその事を忘れて旅行に行ってしまったから代わりを頼まれたのだとか。
当時の僕からすればほとんどちんぷんかんぷんだったんですけど。
その時、ちょうど料理をしていたからお母さんの代わりに僕が呼びに行く事になったので、
「お兄さん、こっち。来て。」
『どういう事なのか判らない』という様子のまま、言われるがままに付いてきたその人を僕は家に招き入れたんです。
それから、リビング兼ダイニングの部屋に連れて来て、
「本当はお隣さんが引き受けていたそうだけど、急用が有ったみたいで、ウチが引き受ける事になったの。」
お母さんが事情を話すとその人は、聞き慣れない言葉で『ああ、なるほど』って。
今になってみれば納得したんだって判るんですけど、その時は何を言ってるんだろうって、不思議で仕方無くて。
それから、その人はちょっと姿勢を伸ばして、
「藍越学園二年、((槇村|マキムラ))アキトです。二週間の間、お世話になります。」
きっとこれだけはしっかり練習してきたんだろうなって思うくらい手慣れた感じのフランス語でしっかりと自己紹介してくれました。
それをお母さんは笑顔で迎え入れたんです。
「ようこそ。コレット・ハーディーよ。この子は―」
「シャルロット、です。」
僕たちが自己紹介をしたらアキトさんは改めて、
「よろしくお願いします。コレットさん、シャルロットちゃん。」
そう言って、深くお辞儀をしてきました。
それに僕が返礼を返して、危うくお辞儀合戦になりそうになりましたけど。
/ / / / /
それからは毎日のようにいろんな事をお話しして貰ったり、時々『日本の料理』を作ってもらったりしてました。
僕にとって未知の世界がどんどん広がっていくような、そんな新鮮な毎日でした。
…どんな話をしたかって?
たとえば、アキトさんには『手の焼ける、素直な弟』が居るとか、『ちょっとやんちゃな妹がいる』とか。
ああ、織斑先生、それ言ったの僕じゃないですから。ですからアイアンクローは勘弁してください!
……ふう。え、話の続きを早くしろ?
中断させたのは織斑先生じゃ―――あ、はいすぐ始めますから手を開いたり握ったりしないでください。
あとは、アキトさんの夢の話をして貰いました。
いつかは空を飛ぶんだって、僕の家の庭から青い大空を見上げながら。
なんでもアキトさんのお父さんもお爺さんも、飛行機乗りだったそうで。
何度も『無限に広がる大空』の話を聞いていたそうなんです。
『大空を、風を感じながら飛びたい。』
そう、言ってました。
その時の((表情|かお))は今でも覚えてますよ。
―――((未来|さき))を見つめて、物凄く楽しそうに。
そして、その瞳には無限の大空が映っていた。―――そんな気がしました。
それからですかね。
暇な時に空を見上げるのが習慣になっちゃったのは。
お母さんが倒れてからはそんな暇なくなっちゃいましたけど。
そして、その夢の話をしてくれた次の日が、アキトさんが日本に帰る日でした。
妙にお母さんが力入れて夕飯を作ってるなーって思ってたらまさかのお別れ会。
もっといろんな話をして欲しくて、もっと一緒に居たくて、夕飯の後は大泣きしました。
『行っちゃヤダ』って。
そうしたらアキトさんは困った様な顔をした後、優しく微笑んで僕の頭を撫でながらこう言って来たんです。
『お別れは辛いけど、甘えん坊の妹たちが帰りを待っているんだ。だから帰らなきゃ。また、いつか、遊びに来るよ。それまで良い子にしててね。』
『絶対?』
『すぐには無理だけど、絶対。―――そうだ。シャルロットちゃんが僕と同じくらいになったら今度は日本に遊びにおいで。その時は、歓迎するよ。』
また会える。
そんな約束をしたからその時は泣きやんで、でも別れ際は本当に寂しくてやっぱり泣いちゃって。
泣きながら『バイバイ』って、そしたらアキトさんは『またね』って返してくれたんです。
そして、玄関から外へ出る時、お母さんが『いってらっしゃい』と。
そしたらアキトさんは『いってきます』って。
『いってらっしゃい』『いってきます』。
その二言だけでちょっと長いお出かけに行くんだって、いつかはここに帰って来るんだって思えてきて、最後に手を振るアキトさんは笑顔で送り出せました。
* * *
[side: ]
「それから毎年僕の家はその学校…『藍越学園』の語学留学生を引き受けるようになって。で、その条件に『マキムラアキト』という人物が受け入れる子を連れてくるって言うのをつけて。毎年、ほんの少しの時間だけだったけど会って、話して。……でも、僕が((小学校|エコール))の三年生になった年、僕の家から空港に行く途中に事故にあったらしくて、それっきり………。」
シャルロットがそう締めると千冬はちょっと俯き加減で、ちょっとだけ震えていた。
その傍らには空になった缶が所存なく転がっている。―――まるで脱力して取り落としたかのように。
「教官?」
「大丈夫ですか、織斑先生。」
ラウラとセシリアが声をかける。
けど、その返事は無く二人が千冬の様子を窺おうとしたら、それを一夏が制した。
「さて、もう遅い。さあ、部屋に帰った帰った。」
更に空が追い出しにかかる。
部屋から追い出し、施錠し、声を殺して泣いていた千冬の元に戻ってくると、黙って認証カードをリーダーに通す。
「もう一本、置いときますね。」
空からビールを受け取った千冬はそれを一気に煽る。
ビールと一緒に涙を飲みこんだ千冬は黙って部屋へと戻って行った。
/ / /
一方、
「織斑先生、どうしたんだろうね。」
部屋から追い出されたシャルロットたちは千冬の事を歩きながら話していた。
「泣いていた、みたいだったけど………」
鈴がそう言うと一夏と箒以外の面々は不思議そうに首をかしげる。
「たぶん、感情がぶり返しただけだと思う。」
静かな声で、一夏は言った。
「感情がぶり返した、とはどういう事だ?」
そこにラウラが問う。
「千冬姉たちが高校の三年で、俺らが小学校の三年の時にアキ兄が失踪したってのは前に話してるよな。」
「ええ。シャルロットさんの話にも有りましたわね。」
一夏の言葉にセシリアが肯首する。
「その後、捜索が打ち切られたから形だけの葬式をやる事になったんだ。――その時の感情が、ぶり返してるだけだと思う。」
千冬に積もり積もった恋慕の情と、そこから来た喪失感を思い出してるだけだと、一夏は言う。
「僕、悪い事しちゃったかな………」
その原因、昔話をしたシャルロットは申し訳なさそうに呟く。
が、
「いや、シャルは悪くない。」
「へ?」
一夏に言われて、シャルロットは声を漏らした。
「元はと言えば千冬さんが強要したようなモノだ。気にする事は無い。」
「千冬姉の我儘に付き合ってくれて、ありがとな。」
そう言う箒と一夏。
「でも………」
「大丈夫だよ。千冬姉も、俺も。」
『何が大丈夫なのか』シャルロットは尋ねたかったが一夏が『先に部屋に戻る』と行ってしまった為に聞く事は出来なかった。
それに続いて箒も行ってしまう。
「まったく、強がっちゃって。」
溜め息混じりに、鈴が言う。
「どういう事だ?」
そんな鈴の様子にラウラは首をかしげる。
「一夏も箒も、根は千冬さんとおんなじって事よ。」
「それって……」
「あの二人も、表に出さないだけで泣いてたんじゃないのかな。」
それまで黙っていた簪が、ぽつりと呟く。
「まあ、アイツの事だから『((小学生|ガキ))の頃にしっかり泣いてあるから大丈夫だ』とか言いそうだけど。」
「…そうですわね。それに、まだ諦めては居ない様子ですし。」
「ま、なんにせよ明日になったら元通りになってるだろうから…今日の事は忘れておきましょ。それじゃ、お休み。ああ、シャルロット。お土産ありがとね。」
あくびをしながら鈴が離れてゆく。
それに次いで簪とセシリアも『お休み』と言って部屋に戻ってゆく。
鈴も簪もセシリアも、今日の事は心のうちに秘めておくつもりのようだ。
「シャルロット。」
「ッ、何?」
「…戻るぞ。」
「………そうだね。」
ラウラに促され、シャルロットも部屋へと戻る。
ふと、シャルロットは立ち止まって廊下の窓から見える夜空を見上げる。
街明かりに照らされて薄ら白い夜空には、それでも星が瞬いていた。
『ここに居るよ』と、言わんばかりに。
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