リリカルなのは×デビルサバイバー |
「どういうことなの?」
場所は学園。時間は既に午後三時を周り、既に周りの人間は帰り始めている。
当然カイトも鞄に荷物をしまい、帰る支度を始めていたのだが、それを止めるように、アリサが話しかけてきた。
「どう、とは?」
アリサの言葉には主語が無く、そんな状態の言葉で問われても、カイトにはさっぱり分からない。
「あぁー! もう、なのはよ、なのは!」
「……なのは?」
なのはと言われても、やはり主語がなく、アリサの言葉を理解することが出来ずに居た。
じれったそうに唸っているアリサの横で、すずかはアリサを落ち着かせるように言う。
「アリサちゃん。ほら、ちゃんと説明しないと」
それで納得したのか、唸っているのは変わらないが、深呼吸をしたりして、自分を落ち着けている。
「よしっ、落ちつたわよ。えっと、私が聞きたかったのは、貴方何時んあのはと仲良くなったのよ?」
そう言われて漸く納得した。
成る程、アリサはただ単になのはを心配しているだけなのだと。
ちなみに、話の中心であるなのはは修行中である。フェイトを受け止めるために、強くなる! なのははそんな感じのことを言って、人気の少ない神社で修行を始めた。
「それでどうなのよ? いつ仲良くなったの?」
「……町で迷っている時に、道を教えてもらってね、その時にちょっと仲良くなった。それだけだよ」
ちなみにこの話は、カイトとなのはで作り上げた話だ。その日は丁度、アースラの面々と会った日であり、帰りも遅く、言い訳にはちょうどよかったのだから。
「ふ〜ん……そう、ならいいんだけどさ!」
安心したようにアリサは言う。
「それじゃ俺はもう帰るよ」
「さてと。それじゃ、俺は帰るよ」
「そう、それじゃ校門まで一緒に行きましょうか? 私達も帰るし」
「ねぇ?」とすずかに、アリサは話しかける。
「うん。それにそろそろ出ないと、塾が始まっちゃうよ」
「あー、それもそうね」
三人で並んで、校門まで歩いて行く。その中でふと、懐かしい感覚を、カイトは思い出していた。
顔が似ているわけではない。
雰囲気も似てない。
唯、唯。
カイトを含めた、三人で歩く。その行動に対して、懐かしさを感じたのだ。。
「(アツロウとユズ。元気にしてるかな?)」
かつての友人たちと歩いていた、学校の帰り道。その事を思い出しつつ、カイトはアリサ達と帰路につくのだった。
* * *
放課後になると基本、カイト達はアースラへと搭乗する。
有事の際、何かあった時に対して、すぐさま動けるようにするためだ。
とはいえ、そんな出来事は早々起きるわけもなく、何も起きないで一日が過ぎ去る日が多い。
「どもっす」
「あ、こんにちはーカイトくん」
そんな日常が続けば、カイトにも知り合いは増える。その内の一人が、今目の前に居る少女、エイミィ・リミエッタだ。
「何か変わったことありました?」
「ううん。ジュエルシードの反応もないし、フェイトちゃん……だっけ? あの娘に関しても情報は入ってないかな」
「そうですか」
アースラに搭乗して、まずエイミィに聞くことがこれである。
ジュエルシードにしても、封印をする作業までを含めると、なのはが出向くことが最良のため、実質カイトはニート状態である。
「まぁ、何もないって事は、平和の証拠だから、本当はいいことのはずなんですがね」
「その代わり、何も発展してない、先に進んでいないってことだからね、何とも言えないな〜」
「ですね」
二人してため息をつく。先に進まない、停滞するというのは、とても心に負担をかけるのだ。
「にしても、ロストロギアね……」
眼の前に映しだされている、青色の宝石……ジュエルシードを見ながら、カイトはつぶやく。
「ん? どうしたの?」
「いや、人の科学と魔法はここまで出来るようになるんだな。と」
「アハハ! 悪魔召喚なんてしといて、何言ってるのさ〜」
「まぁ、そうですけど」
「ん〜…それじゃ、これを見てみてよ!」
そう言ってエイミィが映しだしたのは、一振りの剣と、腕輪。そして、赤い結晶のようなものが映しだされていた。
「これがミッドで最も有名な、ロストロギアかな?」
「赤い結晶みたいなのは、ジュエルシードみたいな感じだって納得できるけど、後の二つはなに?」
「ふふ〜ん! よくぞ聞いてくれましたっ」
エイミィはコンソールを操作して、新しく違う画面を出した。そこには、古代ベルカについて。と、書かれていた。
「まぁ簡単に言うと、大昔の英雄が使用したロストロギア……ってことよ。そして、そのどれもが強力な力を持ち、今ではもうどこにあるかさっぱりわからないのよ」
「へ〜……」
ようは、英雄たちの遺物ということだろうか? ロストロギアの下の説明文を読んでいく。
剣の銘を、聖王の剣。
赤い宝石には、聖王の鎧。
腕輪には、グラヴィティと書かれている。
「まぁ、なんでこれを選んだかっていうとさ。この内のグラヴィティを、悪魔使いが使ってたって、文献があるんだよ」
「へ〜……」
だからこのロストロギアを、態々画面に選んだのだろう。カイトが悪魔使いだから。
「何を見ているんだい?」
後ろから声をかけてきたのは、クロノだ。
その手には、紙とCDを持っていた。
「クロノくん、なにそれ?」
「あぁ、ちょっとね……。ってなんだ、ロストロギアを見てたのか」
クロノは目の前の画面を見る。
ロストロギアだとすぐさま分かったということは、本当にこのロストロギアは有名なのだろう。
「……まぁいい。ついでだ、なのはが居ない内に、君も見ておいてほしいんだ」
CDを機器に取り入れ、暫くすると新しく画面が開かれる。そこには一人の女性と、一人のどこかでみたことのある少女の姿があった。
「……プレシア・テスタロッサに、アリシア・テスタロッサ?」
「あぁ、そうだ。フェイトと言ったか? 彼女のファミリーネームから洗い出してみたんだが、なんとか絞り込むことができた、というかんじだな。本当に彼女、プレシアが犯人なのかはわからないけどね」
今のところは容疑者候補ということだろう、証拠はないだろうし、何より家族構成にフェイトという少女は存在していない。
「何々? 若くして、研究所の中心人物となるが、事故の責任を取り退職。その事故の影響で、娘もまた死亡……かなり悲惨な経歴だな」
「だね〜……。それにここの所長って、最近業務上横領してなかった? なんか、この事故にも関わってそうなんだけど」
つまりあれだろうか? このプレシアという女性は、この所長が原因で、ここまでの不幸を背負い込むことに……。
「うわ、所長だけじゃなくて、重役たちのほとんどが捕まってる……」
前言撤回。どう動いても、破産レベルの運命だったらしい。
「所で、フェイトちゃんの名前が無いんだけど? どういうことクロノくん」
「さぁね。可能性としては、色々と考えられるが、それは今言っても、しょうがないだろ?」
「かもね〜」と、エイミィは相槌をうっている。
「……でも正直さ、あまり解決へと進んでないよね、これ」
と、カイトが突っ込むと、「うっ…」と、クロノは言葉に詰まっていた。
「まぁでも、仕方ないよ。フェイトちゃんの名前だって、彼女がそう名乗ってるだけで、フェイクかもしれないしね」
「それを言ったら、全ての前提が覆ってしまうぞ……」
フォローのつもりなのだろうが、エイミィのその言葉は言ってはならないものだ。
はぁ、と一回ため息をついてから、カイトは時計を見る。すると、もうそろそろいい時間であり、なのはをアースラへと搭乗させなければならない。
「それじゃ俺、なのはに電話してきますね」
「うん、よろしくね〜」
「よろしく頼む」
カイトは端の方へと移動して、電話を始める。
その事を確認してから、エイミィは自分の仕事に戻り始め…たが。
「……え? 何これ」
エイミィは急いでコンソールを操作し、確認を急ぐ。画面には、フェイトとその使い魔の姿があった。
「エイミィ?」
「これ…っ! まさかっ、艦長! 今データを送りますっ」
エイミィがデータを送った時、カイトもまた電話を終わらせていた。
「どうかしたのか?」
電話を終わらせたカイトは、エイミィの傍に近寄っていた。
「うん、コレを見て」
画面には海の上で空を飛んでいる、フェイトとその使い魔であるアルフの姿があった。今の時刻は昼ごろだというのに、暗く思えるのは、雷雲が頭上にあるからだろうか?
「今日の天気予報は、晴れって聞いたんだが?」
「それは間違ってないよ。私も見たし、だから多分この子があの雷雲を呼んでるんだよ」
「雷雲を人力で呼ぶことが出来るのか?」
それが本当だとしたら…それは、神の所業だ。
この世界に神が居ない……いや、必要ない証拠の一つにかるかもしれない。
「(……甘く見てたかな? この世界を)」
「普通は無理よ」
気持ちを改めた途端、このザマである。少し、拍子抜けした後、無理だと言った理由をエイミィに尋ねた。
「そんな事が簡単にできたら、人間=ロストロギアみたいになっちゃうじゃない」
「……そりゃごもっとも」
「でも」とエイミィは言葉を続ける。
「操ることはできなくても、呼ぶことならできるんだよ」
「どういうこと? それって、操ると違うのか?」
「操るっていうのは、『どこに』『どれぐらい』とか、色々決めることができるでしょ? でも、フェイトちゃんがやってるのは、『自分のところにだけ』『できるだけ多く』の雷雲を呼ぶ。って事なんだよ」
「つまり、自分の所限定で雷雲呼んでるのか」
「そういうことだね」
「でも、なんでそんな事してるんだ?」
雷雲を呼んでるのは分かった。でも、だからといって、雷雲を呼ぶ理由が分かっていない。
「多分海中に、ジュエルシードがあるんだと思う。そして、ジュエルシードは魔力などに反応する。こう言えば分かるんじゃないかな?」
「なるほど…ね」
フェイトがやろうとしてる事をカイトが理解した時、後方で扉が開く音が聞こえる。
恐らくは、転送されアースラへと、戻ってきたなのはとユーノが来たのだろう。
「フェイトちゃん!?」
眼の前の大画面に映されたフェイトをなのはが見る。
「これは……どうしたんですか?」
ユーノは、クロノに問いかける。
「見ての通りさ。海に魔力を放ち、ジュエルシードを覚醒させ、一気に封印するてはずなんだろうな」
「それで、貴方達はどうするんですか?」
「これだけの魔力を放出し、ジュエルシードを封印するために更に魔力を使うことになる。彼女を捕まえるのは、そのあとでいいさ」
その判断はきっと正しいのだろう。
だが人間は、正しさで動くものではない。
それを示した人間はなのはだった。
「っ!!」
なのはは後ろを向くと、自身が来た道を戻ろうとする。だがそれを、クロノがなのはの腕を掴むことで止める。
「このまま彼女が、自滅するのを待ったほうが、賢い選択というものだろう!?」
「賢い選択かもしれない。でも! このままフェイトちゃんを見捨てたら、友だちになんかなれないもん!」
なのはの必死な様子に気圧されたのか、クロノは掴んでいた手の力を緩めてしまう。その隙になのはは走りだした。 その後を追うように、ユーノも走りだす。
「まぁ、なのはならそうするだろうな」
誰に同意を求めるでなく、カイトは言う。その手には、念の為に起動させているCOMPがある。
「『こうするんだ』そう心に決めたことを、止めることが出来る奴は、何処にも居はしないんだよ」
眼の前のモニターには、フェイトと共闘しようとしている、なのはの姿が見える。
「なら君は『どうするんだ』?」
「さて、ね……」
モニターに映るなのはは、カイトにとってとても眩しく見える。
「(東京封鎖の時の俺も、こんな感じだったのだろうか?)」
幾ら考えても、自分のことなんてわかりはしない。だが、それでもだ。決めている事はひとつある。
「仮面の男、奴が出てきた時が…俺が動く時だよ」
動きを見せない、彼の者を思い浮かべながら、カイトは言うのだった。
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6th Day 雷雲 | ||
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