英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 192 |
〜ジェニス王立学園〜
「ほう、ここが王立学園か。ほころぶ直前の蕾たちが青春の汗と涙を流す学び舎……。フフ……実に素晴らしいじゃないか。」
「さぞかし撮りがいのある被写体が揃ってそうですね〜。これを機会に撮りまくらないと〜。」
学園に到着したオリビエとドロシーは観光気分の発言をしていた。
「あのな、俺たちはあくまで幽霊騒ぎを調べに来たんだっての。わかってんのか、そこんとこ?」
それを見たアガットは呆れた表情で注意した。
「でも、何だか懐かしいな……。この学園で過ごしたのはたった一週間くらいだったけど……」
「うん。ミントも毎年ある学園祭にいっつも来てたもの。本当に懐かしいよ………」
学園に思い出のあるエステルとミントは懐かしそうに学園を見まわしていた。
「ま、それだけ濃い時間を過ごしたってことだろ。何でも学園祭の劇に出演したらしいな?」
「あ、ナイアル先輩に聞いたよ〜。エステルちゃん達が騎士で、ヨシュア君がお姫様だったんでしょ?あーあ、写真撮りたかったなぁ。」
アガットの言葉に反応したドロシーが楽しそうな表情で言った。
「うん、そうだよ!ママとクロ―ゼさん、プリネさんの騎士姿、とっても似合っていたし、ヨシュアさんもお姫様がすっごく似合っていたよ!」
「なに……それは本当かい!?」
ドロシーの言葉とミントの感想を聞いたオリビエは血相を変えて尋ねた。
「うん。役割に対する性別を逆転させた劇だからあたしとクロ―ゼ、プリネが騎士役でヨシュアがお姫様役だったわ。」
「おお、なんたることだ!ヨシュア君の艶姿を見逃すとは!何としても彼を見つけてもう一度着てもらわなくてはっ!」
「はあ、感傷に浸ってるのが馬鹿馬鹿しくなってくるわね。そういえば、試験期間だってテレサ先生が言ってたけど……。まだ終わってないのかしら?」
オリビエの様子を見て呆れたエステルが学園を見て呟いたその時
「ピューイ!」
鳥の鳴き声が聞こえて来た。
「あ!この鳴き声って!」
「ジーク!?」
ミントの言葉を続けたエステルに白ハヤブサ――ジークが飛んで来てエステルの肩にとまった。
「ピュイピュイピュイ!」
「ジーク君、こんにちは!久しぶりだね!」
「あはは……。何言ってるのか分からないけど歓迎してくれているみたいね。久しぶり、元気にしてた?」
嬉しそうに鳴いているジークにミントは元気に挨拶をし、エステルは苦笑した後尋ねた。
「ピューイ♪」
エステルの疑問に答えるように、ジークは嬉しそうに鳴いた。
「……エステルさん……ミントちゃん…………」
「あ……」
その時、クロ―ゼがやって来た。またクロ―ゼの横にはハンスやジルもいた。
「クローゼ……。えへへ……生誕祭以来ね。」
「こんにちは、クロ―ゼさん!」
「はい……そうですね。……あの……私……。…………私………………」
クロ―ゼは泣きそうな表情でいきなりエステルに抱きついた。
「わわっ……。どうしたのクローゼ?」
「クロ―ゼさん、どこか痛いの?」
抱きついて来たクロ―ゼにエステルは驚いた後、尋ね、ミントも泣きそうな表情のクロ―ゼを見て尋ねた。
「ごめんなさい…………本当にごめんなさい……。エステルさんたちが大変な時に私……なんにも出来なくって……。自分の力不足がイヤになります……」
「やだな……。そんなこと言わないでよ……。そんな風に思ってくれただけであたしは嬉しいから……。ヨシュアだってきっと同じだと思うから……。とにかく……また会えただけでも嬉しいよ……」
「はい……私も……。こうして再会できただけでも女神達に感謝したい気分です。」
「まったくも〜。2人とも大げさなんだから。久しぶりね、エステル。それにミントちゃんも。生誕祭の時に会って以来かな?」
エステルとクロ―ゼの様子を茶化したジルはエステルとミントを見た。
「こんにちは〜!ジルさん、ハンスさん!」
「うん、そうだね。ハンス君も……お久しぶり。」
「ああ……そうだな。色々と話したいんだが……今は後回しにしておくとするか。遊撃士の仕事で来たんだろう?学園長のところに案内するよ。」
そしてエステル達は学園長室に向かった。
〜学園長室〜
学園長室に入ったエステル達はコリンズに今までの事を説明した。
「なるほど、話はわかった。ルーアン地方の各地に現れる『白い影』がこの学園から来ているのだね?」
「はい、そうみたいなんです。」
「そこで、ギルドとしては学園内の調査をしたいんだが。生徒への聞き込みを含めて許可してもらえんだろうか?」
「お願いします、学園長さん!」
エステル達の話を聞き、頷いているコリンズにエステル達は調査の許可を頼んだ。
「いや、そういう事であればこちらからもお願いしよう。その『白い影』の正体はどういうものかは判らないが……。選挙にも影響を与えていると聞いては放ってもおけんだろう。」
「ホッ……。ありがとうございます。それで、学園で『白い影』みたいな怪しい噂が流れてたりしませんか?」
「いや……。私の所に報告は来てないな。生徒会の方はどうかね?」
エステルの疑問に首を横に振って答えたコリンズはクロ―ゼ達に尋ねた。
「うーん、こちらにもその手の話は来てませんねぇ。ただ、なにぶん、試験期間中でもありましたし。みんな、相談に来るような余裕がなかっただけかもしれません。」
「なるほど……ありえるな。」
「?どういうこと?」
ジルの話を聞き納得しているコリンズを見て、訳がわからなかったエステルは尋ねた。
「王立学園の定期試験は進級のかかる重要なものですから……。たとえ何かを見た生徒がいたとしてもとりあえず考えないようにして勉強に集中してしまうかもしれません。」
「確かに俺でもそうするね。目の錯覚にこだわるよりも一つでも多くの数式を頭に叩き込みたいところだ。」
クロ―ゼの説明に頷いたハンスは溜息を吐いた。
「ひえ〜……。そういうものなんだ。」
「クロ―ゼさん、いつもそんなに頑張っていたんだ………」
「ふえ〜、最近の学生さんはとても頑張り屋さんですねぇ。」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルとミントは驚き、ドロシーは感心した。
「だけど、今日で試験期間も終わってみんな解放感に満ち溢れている……。そういった噂が出るとしたらまさに今日からなんじゃないか?」
「怪談めいた噂が広まったらどれが真実か分からなくなる……。目撃者本人から話を聞くには今がちょうどいいかもしれないね。」
ハンスの話に頷いたオリビエは珍しく真面目なことを言った。
「うむ、さっそく学園内で調査を始めるといいだろう。ジル君、ハンス君、クローゼ君も協力するといい。」
「はい!」
「わかりました。」
「とりあえず、調査をするならどこか拠点があった方がよさそうね。何か情報が入るかもしれないし、生徒会室がいいんじゃないかしら」
「サンキュー、助かるわ。」
そしてエステル達は生徒会室に向かった。
〜生徒会室〜
「さてと……。これで役割分担は決まりね。まず、私とアガットさんは職員室で先生方に聞き込み。続いて、その他職員方への聞き込み調査も行います。」
「おう、よろしく頼むぜ。」
ジルの役割分担にアガットは頷いた。
「ハンスは資料室で過去に似たような事件がなかったかどうかのチェック」
「了解だ。」
「エステルとクローゼとミントちゃんは生徒たちへの聞き込み調査。」
「オッケー」
「わかりました。」
「はーい!」
続くように言うジルの役割分担に呼ばれた人物達はそれぞれ頷いた。
「ドロシーさんとオリビエさんは感性の赴くままに学園内を散策。芸術家ならではの直感で何かを発見してみてください。」
「フッ、任せたまえ。」
「頑張っちゃいますね〜♪」
そして最後に呼ばれたオリビエとドロシーはそれぞれ張り切っていた。
「各自、夕方までには調査を終わらせて戻ってくること。それでは解散!」
そしてエステル達を残して、それぞれの持ち場に向かった。
「はあ……。学園祭の時もそうだったけど相変わらず見事な手並みねぇ。普段はおちゃらけてるけど、さすが生徒会長なだけはあるわ。」
「ふわ〜………ジルさんのあんな凄いところ………ミント、初めて見たよ!」
ジルの手並みにエステルは感心し、ミントは目を輝かせて感想を言った。
「ふふ……。将来はメイベル市長みたいな政治家になりたいそうです。10年早く生まれていたら今度の市長選にも立候補するのにって本気で悔しがっていましたから。」
「そ、それは凄いわね。」
「ミント、ジルさんが市長になるの賛成〜!」
クロ―ゼの話を聞いたエステルは驚き、ミントははしゃいだ。そしてエステルはある事が気になって、尋ねた。
「そういえば……。ジルたちってクローゼのことどこまで知っているの?」
「ふふ……。ほとんど全部知っていますよ。入学してから半年くらいで2人に見抜かれてしまいました。他に、私が王族であることをご存じなのは学園長だけです。」
エステルの疑問――クロ―ゼがクロ―ディア姫である事をジル達が知っているかをクローゼは微笑みながら答えた。
「えええええ〜!?ジルさん達、クロ―ゼさんの事を知っていたんだ!」
「そうなんだ……。それにしちゃ、2人ともクローゼに対して自然に付き合ってるわよね。」
クロ―ゼの話を聞いたミントは声を上げて驚き、エステルは普段のジルとハンスのクロ―ゼに対する接し方を思い出して言った。
「はい……エステルさんみたいに。みんな大切なお友達です。」
「あはは……。ちょっと照れるわね。さてと、学園内を回ってみんなから話を聞いてみよっか。『試験期間中、何か変なことはなかったか?』って聞けばいいよね?」
「はい、そう聞いた方がみんな判りやすいと思います。あと、寮に帰ってしまった生徒からも聞いてみた方がいいかもしれません。」
「ん、オッケー。それじゃあ、聞き込み開始!」
「はーい!」
そしてエステル達は生徒達の聞き込みを開始した……………
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第192話 | ||
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