いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第四十二話 血で濡れた闇の書

 

 

 「「クリスマスプレゼント―♪」」

 

 「わ、わ、わあああ。これを私に…。ほんまありがとう。すずかちゃん。アリサちゃん」

 

 クリスマスイヴの夕暮れ時に私が入院している病室にすずかちゃんとアリサちゃん。なのはチャンにフェイトちゃんクロウ君がプレゼントを持って遊びに来てくれた。

 

 「あ、あの。これは私達から…」

 

 「そうか礼を言う。…まあ、その辺にでも腰かけてくれ」

 

 だけど、シグナムとヴィータ。シャマルの様子がおかしかった。

 それはなのはちゃんやフェイトちゃんの顔を見た瞬間にまるで親の敵を見るかのようになっていた。

 特にヴィータがその表情が強かったので思わず鼻をつまんで注意した。

 

 「ところでこの細長いのは?」

 

 私はアリサちゃん達から渡された細長い包みを見て、場の空気を和ませようと思う。

 

 「それは沢とアリシアからよ」

 

 おおっ。高志君とアリシアちゃんコンビからのプレゼントやったら期待できるな。

 ちなみに高志君はアリシアちゃんを幼稚園から出迎えてからこっちにくるそうなので少し遅れるんやと。

 ささ〜、その中身は…。

 

 「お、メッセージカードまであるんやな。ええと…」

 

 

 『家康ぅうううううううううううう!』

 

 

 「「………だけ?!」」

 

 思わずアリサちゃんも私と一緒につっこんでもうた。

 メッセージカードにはこれだけしか書いてなかった。

 …これは後で高志君とアリシアちゃんとでじっくり話さなあかんな。

 

 「…あいつは何を考えているのかしらね」

 

 「あ、あははは。でも、アリシアちゃんもこれを一緒に書いたんだよね」

 

 ふと、脳裏にアリシアちゃんと高志君が口元を抑えながらぷひーと笑っている顔が思い浮かんだ。

 …ええやろう。今度会ったら決闘や!

 なんてことも考えていたら再び病室にノックする音が響いた。

 

 「…はーい。どなたです、か?」

 

 と、高志君とアリシアちゃんのプレゼントに空気を和まそうにもヴィータ達の表情は硬いままやった。

 その空気に耐えかねたようにシャマルがノックしてきた扉を開けるとそこには…。

 

 「…やあ、はやて。約束通り会いに来たよ」

 

 「アサキム兄ちゃん!」

 

 「「「「「「っ!?」」」」」

 

 私とアリサちゃん、すずかちゃんを除く皆がアサキム兄ちゃんに向かって明らかに警戒した。

 特にヴィータとシグナムの対応は今にでも飛び掛かりそうな対応だった。

 

 「…アサキム。この人が」

 (…どうしよう、クロウ君?)

 

 「なんでここにいる?」

 (…おちつけ、なのは。ここにはすずかやアリサがいる)

 

 「…っ」

 (アースラにも連絡がつかないのになんでアサキムまで…。…あれ?さっきよりも念話がやり易く?)

 

 なのはちゃん達の方も何やらアサキム兄ちゃんに警戒しているようやった。

 

 「な、なんや。どうしたんやみんなして…。アサキム兄ちゃんのこと知っているんか?」

 

 「…そ、そうよ。それに皆どうしたの?」

 

 「そうだよ。皆、知り合いなら仲良くやろうよ」

 

 さすがに険悪過ぎる空気を感じ取ったのか矢継ぎ早に言葉をかけていくがそれに答えたのはアサキム兄ちゃんやった。

 

 「仕方ないよ。はやて。僕は君に『悲しみ』を与えに来たんだからね」

 

 「…は、やてちゃん。みん、な。逃げ、て」

 

 どさっ。

 

 「…え?」

 

 その言葉が理解できなかったけれど、不意にシャマルの気配が一気に弱くなったのを感じた私はシャマルの方を見ると、そこには右肩から左腰の間にかけて、剣で切り裂かれたかのような傷を負ったシャマルの姿。

 

 「シャマル!」

 

 「「ひっ」」

 

 すずかちゃんとアリサちゃんは目の前で起きた惨劇に悲鳴を上げる。

 その様子にアサキムは我関せずといった具合に((血で濡れた闇の書|・・・・・・・・))を手にしながら言葉をつなげる。

 

 「蒐集しろ。闇の書」

 

 [蒐集]

 

 「う、うあああああっ」

 

 カァアアアア。

 と、闇の書から発射された光がシャマルにあたるとシャマルは苦悶の表情を見せながら、闇の書の放つ光と共にその本の中に消えていった。

 

 「てめぇ!アサキム!!」

 

 「貴様ぁあ!!」

 

 ヴィータとシグナムが一般人であるアリサやすずかがいることを無視しながらデバイスを起動。結界を展開することもなくアサキムに突撃していく。

 

 「いけない!バルディッシュ!」

 

 [イエッサー]

 

 その様子にフェイトちゃんがスカートのポケットから金色の三角形の物を取り出すとそれは一振りの機械じみた杖になって、辺りを一瞬に灰色の世界にした。

 これは、シャマルが前に言っていた結界?

 

 「ちっ。ブラスタ!」

 

 [ゲット・レディー]

 

 その結界を知ってか知らずかアサキムとシグナム達が病院の外にはじき出されるのを見てクロウも懐から取り出したデバイスを起動。

 まるで銀色の鎧を身に纏ったクロウもまたシグナム達の後を追って病院の外に飛び出す。

 

 「クロウ君!レイジングハート!」

 

 [スタンバイ・レディー]

 

 「待って!なのは!まだアリサ達がいるよ!それにはやても…」

 

 なのはもまたクロウを追ってレイジングハートを起動させようとしたが、何故か結界の中にいて突然のことに怯えている幼馴染を放っておくわけにはいかなかった。

 

 「っ。…そうだ、ね」

 

 「…ねえ、なのは。フェイト。あんた達は何を知っているの?」

 

 「そうだよ。二人とも…。さっきの黒い人は誰?クロウ君が銀色の鎧になったのは?」

 

 「うちも聞きたい。何がどうなっているんや。どうして、シャマルが…。あの本があの人の手の中にあるんや?」

 

 三人の少女は魔力を持たない人でないと入り込めない結界の中で事情を知っているだろう二人の少女に目を向ける。

 二人の少女はその問いに答えるかどうか悩んでいると、そこに第三者の声が入ってきた。

 

 『…フェイトさんっ!なのはさんっ!聞こえる!突然、あなた達と連絡が取れなくなったと思ったら、フェイトさんの結界が張られたけどどうしたの!?』

 

 「リンディさん!すいません!急いでアリサちゃん達をアースラに転送してください!」

 

 なのはは手に持ったレイジングハートから聞こえた声の主を確認すると今の状況を話すと、リンディはそれを了承してアリサ・すずか・はやてをアースラに転送した。

 

 「や、何?」

 

 「ちょ、なのは!フェイト!」

 

 転送される瞬間。

 突如足元に浮かび上がった転送用の魔方陣にびくついたアリサとすずかに二人は優しく声をかける。

 

 「ごめんね。二人とも。だけど、大丈夫だから…」

 

 「私達が二人を守るから」

 

 「なのはちゃんっ、フェイトちゃん!」

 

 そんな中、二人以上には魔法に詳しいはやても慌てていた。が、

 

 「お願いや!うちの子達を助けてあげて!」

 

 そう言ってはやてもまた他の二人と共に転送されていった。

 それから数瞬の沈黙。

 外ではアサキムとシグナムとヴィータ。そして、クロウが戦っている轟音が鳴り響く。

 

 「…ばれちゃったね。どうしようか、フェイトちゃん」

 

 「うん。でも、今私達がやるべきことは一つだよ」

 

 それはこの世界を守る。

 その為にもアサキムから闇の書を奪い取り、闇の書の騎士達との和解。

 彼女達の動作から見てはやてが闇の書のマスターであることは間違いないだろう。だとすれば、アースラにいるエイミィやリンディではやての言葉のやりとりがあれば和解できなくもないだろう。

 だから…。

 

 「レイジングハート・エクセリオン…」

 

 「バルディッシュ・アサルト…」

 

 二人の魔法少女は杖を取る。

 

 「セェエエット・アップ!」

 

 そして、

 完全に日が落ちた海鳴の街に二つの閃光が光り輝いた。

 

 

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第四十二話 血で濡れた闇の書
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魔法少女リリカルなのは スパロボZ アサキム・ドーウィン 

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