英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 外伝〜小皇女の依頼〜 |
〜工匠都市ユイドラ・ウィルの家〜
「!!お帰り〜、父さん、母さん!それにセラ母さんにメディ母さんも!」
「みなさんも無事でよかったです………!」
「お帰りなさい、父様、母様。セラ母様達も無事で何よりです。」
ウィル達が家に入ると薄い撫子色の長い髪をポニーテールにして纏め、耳がとがっていて、瞳はウィルと同じ茶色の瞳でシャルティとよく似た容姿の少女――ウィルとシャルティの娘、シャマーラと太陽のように輝くような美しい金髪の髪を腰までなびかせるセラウィとよく似た少女――ウィルとセラウィの娘でありシャマーラの腹違いの姉、セルヴァンティティ――セティと一対の白い羽があり、セティと同じように母親譲りの金髪を腰までなびかせ、澄んだ青い瞳を持ち、メロディアーナとよく似た容姿の少女――ウィルとメロディアーナの娘であり、セティの腹違いのもう一人の妹――エリナが嬉しそうにウィル達に駆け寄った。3人は少女という年齢であるが、それぞれの母親とよく似て、女性としての体型も一般の女性よりかなり優れていた。
「たっだいま〜!」
「ただいま、セティ、シャマーラ、エリナ。」
「みな、変わりないようですね。」
「3人とも、いい子で待っててくれたようですね。」
自分に駆け寄って来た愛娘達にシャルティは笑顔で答え、ウィルとメロディアーナ、セラウィは微笑んだ。
「ねえ、ウィル。さっきの戦闘で結構汗をかいたから、お風呂先に入るね〜。」
「………私も借りるぞ、ウィル。」
「ユエラが入るなら、私も………」
「あ!じゃあ、あたしも〜!」
「ああ、わかった。」
「じゃあ、私も一緒に入って背中を流すね、母さん!もちろん、ユエラ姉さんやエミリ姉さん、ラナ姉さんの背中も流すね!」
「別にそんな事しなくても、いいんだけどな〜。ま、いっか♪」
「みんなと一緒に入る………」
「フフ………頼むぞ、シャマーラ。」
「温泉♪温泉♪」
そしてシャルティとユエラ、ラグムエナにエミリッタとシャマーラはウィルの家に備え付けてある温泉に向かった。
「ねえねえ、ウィル。エヴリーヌも借りていい?久しぶりにウィルが作った温泉に入りたいし。」
「ああ、いいよ。」
「ありがと〜。」
ウィルの返事を聞いたエヴリーヌも温泉に向かった。
「フム、それでは余も借りようぞ!」
エヴリーヌに続くようにリフィアも温泉に行こうとしたが
「………お前は後にしろ。依頼があるのを忘れたか?」
「おお!そうだった!早速だが、依頼を頼んでもいいか?ウィル。」
リウイに制されて、リウイの指摘を受けて、ウィルに尋ねた。
「うん。別にいいけど、ここじゃなんだから奥の部屋で話そう。」
「うむ!」
「………失礼する。」
ウィルの提案にリフィアとリウイは頷いた。
「セティ、みなさんにお茶を持って来てもらっていいですか?」
「はい、わかりました。お母さん。」
「エリナ。セティを手伝ってあげて下さい。」
「はい、母様。私も手伝いますね、セティ姉様。」
「ありがとう、エリナ。」
セラウィとメロディアーナに手伝いを言われたセティとエリナはリウイやウィル達にお茶を出すために台所に向かった。
「メロディアーナはどうする?」
「…………もしよければ、私も混ぜてもらってもいいですか?………少し気になっている事があるので。」
ウィルに尋ねられたメロディアーナはリウイとリフィアを見た後尋ねた。
「はは、リフィア達の事はメロディアーナも知っているだろう?そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。」
「………別に警戒している訳ではありません。遥か北方にある魔族大国の者がウィルに何の用か、気になっていますので。」
苦笑しているウィルにメロディアーナは気にせず、答えた。
「そういえば………リフィア達がユイドラに来た詳しい理由、まだ聞いていないね。」
「うむ。それをこれから話そう。」
そしてウィル達とリフィア、リウイは奥の部屋に向かってウィル達の結婚や子供の誕生を軽く祝い、またフィニリィやサエラブの話をウィル達にした後、セティとエリナにお茶を出され、ウィルが2人を店番を頼んでから話を切り出した。そしてユイドラに来た理由、自分達の正体をウィル達に話した。
「リフィアがメンフィルのお、皇女!?それでリウイがメンフィルの王様!?」
リフィア達の正体を知ったウィルは驚いてリフィアとリウイを見た。
「…………俺は既に玉座から退き、今は隠居の身だ。だから、そう驚く事はない。」
「うむ。余はお前達の事を気にいっている!だから以前と同じような接し方で構わんぞ?」
驚いているウィルにリウイとリフィアは気易く接するように言った。
「そっか。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。仲間に敬語とかおかしな話だしね。」
ウィルは苦笑しながら答えた。そしてある事を思い出して、セラウィに尋ねた。
「そういえば………セラウィはリウイの事を知っているようだけど、以前から知っていたのかい?」
「ええ。噂でですが聞いた事があります。光と闇、どちらにも属さず、闇夜の眷属を始めとし、人間とさまざまな種族との共存を謳っている大国――メンフィル帝国を築き、レスぺレント地方を制した”謳われし闇王”リウイ・マーシルン。私の記憶が確かなら随分前に歴史の表舞台からその名と姿を消したはずなのですが………」
ウィルに答えたセラウィは遠慮気味にリウイを見た。
「………いつまでも帝位に着いていたら次の世代が育たないし、俺はそれほど玉座に執着していない。新たなメンフィルを創りだすシルヴァン達のためにシルヴァン達に帝位を譲り、俺自身は隠居の身だからな。基本、今の政治には口を出していない。」
セラウィに見られたリウイは静かに答えた。
「へ〜………さまざまな種族と共存する国か………まるで今のユイドラみたいだな。………メロディアーナは知っていたのかい?」
「………ええ。後でわかった事なのですがメンフィル帝国のその在り方は過去のエリザスレイン様にとって、ウィルとユイドラの時と同じように秩序を乱す存在として危惧していました。ただ、エリザスレイン様が住まわれるミサンシェルからあまりにも遠方すぎる事なので、情報を集めるだけにしていたようですが………」
「過去のって事は今のエリザスレインは違うんだろう?俺や今のユイドラの在り方を認めているんだし。」
メロディアーナの説明を聞いたウィルは尋ねた。
「そこまではわかりません。考えが読めないあの方の事はウィルもよくわかっているでしょう?」
「はは、まあね。………さてと。話は戻るけど、リフィアは今度は俺に何を依頼したいのかな?」
メロディアーナに尋ねられたウィルは苦笑した後、話を戻してリフィアを見た。
「うむ。まずはこれを見てくれ!」
そしてリフィアは異空間に仕舞っていたエステルから預かった折れた剣、プリネから預かった刀を机に置いた。
「これは………」
「折れた剣と刀………ですね。それも聖なる魔力が感じられますね。」
「………どちらからも僅かですが神気が感じられます。元はかなりの力を持つ武器だったのでしょうね………」
目の前に出された剣と刀をウィルは手に持って興味深そうに調べ、セラウィは武器から感じられる魔力に驚き、メロディアーナは補足した。
「これをぜひ、お主に直して欲しいのだ!」
「………………………う〜ん………刀の方はなんとかできると思うけど、剣の方はどうだろう……材質とか軽く調べた感じ、セテトリで手に入る鉱石とかじゃ、元の力を持った剣にはできないと思うんだ。………せめて、とてつもない魔力を秘めた武器とかあったら、それを利用して何とかできるんだけど……」
リフィアの依頼にウィルは難しそうな表情で考え込んだ。
「………とてつもない魔力を秘めた剣………か。……………………………なら、これを使え。」
ウィルの説明を聞いたリフィアは少しの間考えた後、また異空間から武器を出して机に置いた。
「なっ………!?おい、リフィア。お前、この剣が何なのかわかっているのか!?」
机に置かれた大剣を見たリウイは驚いてリフィアに尋ねた。
「……………勿論わかっている。”メンフィルの守護神”と伝えられている余のもう一人の祖母、シルフィア様の愛剣だろう?………父からはいつか余が授けたいと思う者に授けるため、父から授かっていた。」
机に置かれたとてつもない神気が秘められた今は亡きシルフィアの愛剣――神剣マーズテリアをリフィアは見ながら答えた。
「その事はシルヴァンから聞いた。なのになぜ、それを使う?」
「まだわからぬか?エステルは余にとって大事な友!余が認めた友なのだから、友の頼みのためにこの剣を使っても構わぬだろう。」
「…………………本当にそれでいいのか?あの者は決してお前に従属する者ではないのだぞ?」
胸を張っているリフィアにリウイは真剣な表情で問いかけた。
「うむ!それにこの剣を授ける人物はエステルか、エステルを支えるミントにしかしないつもりだ。エステル達のような者達に使われるのなら、この剣も…………この剣を残し、逝ったシルフィア様も本望と余は思うぞ!」
「……………そうだな。お前がそう決めたのなら俺は何も言うまい。」
リフィアの言葉を聞いたリウイはシルフィアの事を思い出し、そして納得した。
「えっと………事情はよくわかんないだけど、この剣を使っていいのかい?この剣を使えばその折れた剣も直せると思うけど………」
「うむ!………その剣は”神剣マーズテリア”。その名の通り、神剣だからとてつもない神気や魔力を秘められているから、きっと役立つだろう!」
「軍神が授けし神剣ですか………!道理でとてつもない神気を秘められている訳です。」
「ええ……………剣でありながらこれほどすさまじい神気が感じられるのは初めてです………」
リフィアの説明を聞いたメロディアーナは驚いた後納得し、セラウィも頷いた。
「後はこの剣を、この形の物に加工してくれるか?」
そしてリフィアは異空間からさらに剣を取り出して机に置いて、懐から剣の形状――武術大会で覚醒したエステルが魔力によって変化させた剣の形状を書いた紙をウィルに渡した。
「この剣は一体………そちらの神剣と負けないぐらいのとてつもない魔力が感じられるよ……?」
ウィルは新たに現れた剣を手にとって、調べて驚いた。
「その剣か?その剣はセリカの屋敷の地下の倉庫で見つけた剣だ!それを余が持ってきたのだ!武術大会の時、エステルが剣を使っていたからな!余が見た所、かなりの業物のようだし、それを改造してエステルに使わせようと思ってな。だから、持って来た!」
「……いつの間にそんな事を……………奴らには持って行く事の許可をちゃんと、とったのだろうな?」
「当り前だ!余が盗賊紛いの真似をする訳がなかろう!」
リフィアの行動に呆れている様子のリウイにリフィアは胸を張って答えた。
「………信じられないほどの神気と魔力が籠った剣ですね……………きっと名高い神剣なんでしょう。名前はなんというのですか?」
メロディアーナは神剣の名前が気になって、尋ねた。
「知らぬ。使った本人であろうセリカに聞いても、その剣の事は覚えていないようだったしな。」
(セリカ…………?何でしょう、どこかで聞いた事がある名前ですね…………)
メロディアーナの疑問にリフィアは以外な答えを出し、リフィアの口から出たある人物の名前を聞き、頭の中にひっかかったセラウィは首を傾げていた。
「まあ、いいや。他ならぬリフィア達の依頼だし、折れた剣の修復や力を失った刀の力を取り戻す件も合わせて引き受けるよ。」
「うむ!」
ウィルの返事を聞いたリフィアは満足そうに頷いた。リフィアが見つけたセリカの屋敷の地下の倉庫に眠っていた剣――『約束の神剣』が後に大昔に失われたある神剣に生まれ変わる事になろうとは、この時、誰も想像できなかった……………
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