乱世を歩む武人〜第二十話〜 |
今から5年前。私が旅を始めてすぐのころだった。
私がまだ世間知らずの未熟者だったあの時代。ある理由で漢中へ向かおうとした際に・・・見事に迷ってしまったのだ。
桂枝
「・・・教訓だな。たとえどんなに強くなっても食べ物の確保は難しい。」
すでに1週間はまとも食べていない状態。空腹を耐え切れずそのあたりに生えている草を食べたのだがどうやらそれが見事に毒草だったようだ。
桂枝
「・・・無理」
そういってパタンと倒れる。吐き気と両手両足に浸透していく麻痺。このままでいればもう助からないだろう。
桂枝
「・・・まぁ俺みたいな奴には無難な死に方なのかな。」
姉貴との約束果たせなかったなぁ・・・と意識を手放そうと思ったその時だった。
風
「おやおや〜?こんなところでお昼寝ですか?」
稟
「そんなわけないでしょう。・・・すごい顔色をしていますね。風、とりあえず街で人を呼んできましょう。」
二人の声が聞こえてきたのは。
桂枝
「・・・その後に街に運んでもらってなんとか命をつなぐことができたんでな。彼女たちに真名をあずけたっていうことなんだよ。」
風
「あの時はおどろきましたねー。なにせ起き抜けにいきなり「私は徐栄。真名は桂枝です。命を助けていただきありがとうございました。」ですからねー。」
稟
「ええ。初対面でいきなり真名を預けてくる人間なんて初めて見ましたよ。」
桂枝
「命の恩人には真名を預けるそう決めてたんでね。さて・・・言うわけなんだよ姉貴。だからさ・・・
ーーーーーーーーいい加減その本を下ろしてくれるとと嬉しいなぁと思うんですよ。」
今は王宮の間、正座私の目の前には無言で巨大な本を振り上げる姉。強制される説明。そしてありありと浮かぶ殺意のこもった瞳。どうしてこうなった?
桂花
「・・・まぁそういう理由なら仕方ないけど」
そういってしぶしぶと本を下ろした。コレで一安心。
一刀
「・・・お前の真名って重いのか軽いのかわからないな」
桂枝
「俺は真名を預ける矜持をお前には言ってあるだろうが・・・まぁそんなこと、今は後にするべきだろう。」
そう、いまは主人の御前だ。説明は主人も求めていたため話はしたがあまり無駄話をしている時でもない。
華琳
「そっちの事情は理解したわ。・・・・さて。それでは、もう一つの疑問を説明してもらおうかしら。どうして程cは増援がいらないと?」
そう言われて風に視線を向けると・・・
風
「・・・ぐー」
・・・たったまま寝ていた。
桂枝
「おい、風。せめて説明してから寝ろ。」
そういって肩をトントンと叩く。あの時からこいつが寝たときはこうやって起こしている。
風
「おおっ!この起こし方・・・本当に久しぶりですねー」
起きた風がこちらをみやってそういった。・・・まぁ稟なんかだったらひっぱたくか大声を出して起こすかだろうしな。
華琳
「おはよう。それで、説明してもらえないかしら?」
風
「はいー。援軍が必要ないといった理由でしたよね。えっとですねー、相手は数万の袁紹軍だったわけですが。前線指揮官の文醜さんは派手好きですから、たった七百の相手なんか、相手にしたくないだろうと思ったのです。」
華琳
「ふむ。」
風
「ですがここで曹操さまが増援を送って下さったら向こうもケンカを売られたと思いますよねー。袁紹さんたちの性格だと、売られたケンカはなんであれ絶対買っちゃいます。・・・・そしたらこちらは全滅してしまいますねー」
桂花
「なるほど・・・。袁紹と文醜の性格は良く分かっていたようね。では、顔良が出て来たら?」
風
「あの三人が出てくれば、顔良さんは必ず補佐に回るはずです。抑えが効きませんから―」
華琳
「だ、そうよ。わかったかしら?春蘭」
夏侯惇
「はぁ・・・だが、お主ら・・・もし袁紹が七百の手勢を与しやすいと見て、総攻撃を掛けてきたらどうしていたのだ?」
風
「損害が砦一つと、兵七百だけで済みますね。相手の情報は既にそちらに送っていましたから、無駄死にというわけではないですし。袁紹さんの風評操作にも使えたと思いますけど」
夏侯惇
「むぅぅ・・・」
腑に落ちない感じの夏侯惇さんだ。私とて一点きになるところがある・・そう、その策だと・・・
華琳
「それで、郭嘉。あなたは程cの作戦、どう見たの?」
っと。主人の御前だったな。改めて稟の方に向き直した。
稟
「・・・・・・」
稟は固まっている。おかしい・・・こんなところで緊張するようなタマじゃないだろうに。
夏候淵
「郭嘉。華琳さまのご質問だ。答えなさい」
夏候淵さんがそう聞いて帰ってきたのは・・・・
稟
「・・・・・・ぶはっ!」
噴き出る鼻血だった。
桂枝
「っと!」
いきなりで驚いたがとりあえず主人とその横にいる姉貴に血が行かないよう間に入りとっさに外套で防ぐ。
・・・うわぁ。洗濯が手間だぞこれ。
夏侯惇
「ちょっ!ど、どうしたんだお主!」
流石の夏侯惇さんもこれには驚いている。そりゃそうだ。私だって驚いている。
桂枝
「・・・なんだ?新手の病気にでもなったのか?」
とりあえず外套は床においておく。次出た時に面倒だから一応足元にだが。
季衣
「ちょっとボク。お医者さん呼んできますっ!」
風
「あー。やっぱり出ちゃいましたかー。ほら、稟ちゃん、とんとんしますよ、とんとーん」
一刀
「・・・なんだか手馴れてるなぁ」
華琳
「・・・桂枝、郭嘉はいつもこうなの?」
桂枝
「・・・いえ、私は初めてみます。」
いつの間にこんな病気に・・・・
風
「病気ではないんですよ?稟ちゃんは曹操さまの所で働くのが夢でしたから、緊張しすぎて鼻血が出ちゃったんでしょうねー」
夏侯惇
「そ・・・そうなのか。」
「曹孟徳大好き病」ってところか。・・・なんとう残念な病気。
稟
「・・・すまん、風。もう大丈夫だ」
風
「いいえー」
さすがに慣れてるのか止めるのが早い。
華琳
「大丈夫かしら?郭嘉とやら」
稟
は、はい。恥ずかしいところをお見せしました」
華琳
「無理なようなら、後ででも構わなくてよ?」
稟
「そ、曹操さまに心配していただいている・・・・!・・・・ぷはっ!」
また鼻血を出す稟。防ぐ私。より大変になる洗濯。・・・コレ大丈夫なのか?
夏候淵
「衛生兵!衛生兵ー!」
桂枝
「・・・風。補足してやってくれるとありがたい。」
風
「はいはい。・・・稟ちゃんは最悪の場合になれば、城に火を放って、みんなで逃げようと考えていたみたいですねー。七百の兵ならそれも十分可能ですし」
桂枝
「・・・なんだ。逃げる算段もあったのか。」
風
「当然ですよー。まぁ三千もいたらそうはいかなかったでしょうけどねー。」
華琳
「どちらにせよ春蘭の援軍入らなかったというわけよ。まぁここまでの迎えと護衛は必要だったからあえて行かせたのだけどね。分かった?」
夏侯惇
「はぁ・・・」
どうやら納得したようだ。
夏候淵
「華琳さま。いま報告が入りまして、袁紹の軍は南皮へ引き上げたようですこちらの損害はありません、周囲の地形を確認されたのが唯一の損害といえるでしょう。」
華琳
「偵察を受けていればソレは当然のこと。被害とはいえないわね。見事な指揮だったわ、程c、郭嘉」
風
「ありがとうございますー」
稟
「・・・・・ふがふが」
鼻血を対処しながら答える稟。・・・なんともしまらない。
華琳
「それから二人は今後は城に戻らず、ここで私の軍師として働きなさい」
桂花
「華琳さま・・・それは!「いい提案ですね。」桂枝!?」
実に良い提案だ。彼女たちなら仕事は十二分にできるだろうから仕事が随分と減ってくれるはず。
反董卓連合がおさまってだいぶ経っている。戦の傷跡も処理が進み袁紹軍が進行を開始したこともあって軍備の方向に目を向けられているのが現状。
当然私達の仕事も増加の一途をたどっており最近姉はほとんど夜中まで起きて仕事をしているというのが現状だ。当然私も手伝って入るがそれでも間に合っていない。
桂枝
「姉貴・・・冷静に考えろって。どーせここで勝って軍が大きくなったらに二人じゃ死にかねん量の仕事になるんだぞ?」
当然コレは本音。コレ以上領地が増え仕事が増えたら姉の睡眠時間が存在しなくなってしまう可能性がある。それは困る、というかイヤダ。
桂花
「何よ!?アンタは私達じゃできないっていうの!?」
桂枝
「そうは言わない。だが・・・時間がかかるのも事実だ。」
桂花
「それは・・・」
桂枝
「それに俺は内勤補佐はできるが軍の指揮に関してはからっきしだ。張遼隊副将だしね。さすがに軍師が足りなくて軍の展開ができませんじゃあ話にならなくなる。そうですよね?主人。」
華琳
「ええ、桂枝の言うとおりよ。桂花の力が必要じゃないわけではないからそこを勘違いしないように」
桂花
「でも・・・私ならいくつでも戦局を支えて見せま「姉ちゃん」・・・!?」
桂枝
「・・・俺がもたないからさ。頼むよ。」
そういって両手を拝むように向ける。そう、あくまでもコレは私のワガママ。自分への負担を減らしたいと思うたんなるお願い。
それでいいと思う。それが結果的に私達の負担を減らすというのならば。
桂花
「・・・フン。桂枝がそこまでいうんじゃ仕方ないわね。」
ようやく納得してくれたようだ。
華琳
「いい娘ね。桂花。フフ・・・心配しなくともアナタは私にとって大切な娘であることは変わらないわ。今宵はそれをその身にしっかりと教えこんであげましょうか・・?」
桂花
「か・・・華琳さま・・・!」
異様に目が潤んでいる姉。姉がそういう趣味だと知ったのはここ最近だ。
流石に初めて知ったときは驚きもしたが・・・今は姉が幸せそうだしいいかなと思っている。
華琳
「なら、今宵の軍議はここまでよ。一刀と桂枝は彼女たちを部屋まで案内してあげて。」
一刀
「ん、了解」
桂枝
「御意に。さて・・・行くか。二人共」
そうして軍議は解散。私たちは風と稟を部屋へと案内することになった・・・
稟
「話には聞いていましたが・・・桂枝さんのお姉さんがまさかあの荀文若だったなんて・・・」
部屋の案内を頼まれ廊下を移動中に稟が話しかけてきた。
桂枝
「説明する機会もなかったからな・・・そういえば劉璋には会えたのか?」
治療を受け旅支度を済ませた後。彼女たちが己の主君を探す旅をするので護衛を頼みたいと申し出てきた。
私は漢中に用事があったので益州でいいのなら。とその話を了承。成都まで送って行きそこで別れたのだ。
風
「会えたんですけどねー。良くも悪くも凡人だったので仕えるのはやめたのですよ。」
稟
「ええ。平時ではそれなりでしょうけど乱世ではきっと飲まれるでしょうね。あの人は」
桂枝
「・・・そうか。その後の護衛はどうしたんだ?」
風
「はいー。成都で星ちゃんに会えましたので三人で旅をつづけたんですよ。」
桂枝
「・・・む?」
稟
「ああ、星というのは同じく劉璋を仕える主人かを見定めに来た武人の女性の方です。あなたと同様、かなりの強者でしたのでそのまま三人旅を続けていたんですよ。」
桂枝
「ああ・・・なるほど。」
まぁ何事も無く旅ができたのならばそれでいいか。
一刀
「ええっと・・・あの時の二人・・・だよね?」
そんなことを思った時、唐突に一刀が風たちに話しかけてきた。
桂枝
「む?知り合いだったのか?」
風・稟
「「??」」
二人共こころあたりのない様子。
桂枝
「知らない感じだが・・・人違いとかじゃないのか?北郷。」
一刀
「いや、間違えてないよ。あの・・・覚えてない?ほら、陳留の町外れで助けられた・・・」
稟
「ええっと・・・」
一刀
「・・・程立さんと、戯志才さんじゃないの?」
ああ・・・そういや名前変えたんだよな。二人共。真名で呼ぶとどうにも忘れやすい。
風
「あー・・・そんなこともあったような・・・」
稟
「思い出したわ。風の真名をいきなり呼んだ、あの無礼な貴族!」
桂枝
「・・・・あぁ?」
思わず漏れる殺気。真名を預けた大切な存在の真名を無断で呼ばれたと聞いては流石に黙ってはいられない。
一刀
「ちょ・・・落ち着いてくれ荀攸!俺もこの世界にきたばかりで真名の存在やら何やら全く知らなかったんだよ!・・・本当にすまない!」
そういって頭をおもいっきり風にさげた。
風
「あーお兄さんが華琳さまの所にいる天からの遣いなんですねー」
一刀
「その呼び名あんまりすきじゃないんだけどね・・・・」
そういって苦笑。・・・そういやこいつ天の御使いだったな。あまりにも普通だったから忘れてたわ。
天の国には真名という風習はないらしい。ならばお互いを呼び合っている名を呼んでしまうなんてことも一度はあってもおかしくはない。
桂枝
「まぁそういうことなら仕方ないか・・・二度目はないが。で、主人探しの旅はここで終わりにするんだろう?」
風
「はいー。ココにきた時にいい夢をみましてね。華琳さまのお人柄も分かりましたし、精一杯お仕えしますよー」
稟
「ええ、私も曹操様の為に一命を賭す所存」
一刀
「・・・そっか。じゃあよろしくな二人共。」
風
「はい。」
稟
「ええ。」
桂枝
「あ。そうだ・・・風、稟」
風・稟
「「はい?」」
これだけはいっておかなくてはいけない。
桂枝
「あ〜・・・なんだ。次から命かける策を仕掛けるときは俺にも言ってくれ・・・絶対に守るからさ。」
正直先の策を聞いていた時も冷や汗が止まらなかった。自分から離れておいてわがままだとはわかっている。しかし気が付かないうちに真名を預けた人が死んでいるなんて絶対に嫌だ。
そう思いつつ3人をみたら・・・笑っていた。
桂枝
「・・・?笑う所あったか?」
一刀
「いや・・・・なぁ?」
稟
「ええ、なんというか・・・あなたらしい」
風
「フフ。じゃあその時には全力で守ってくださいね?桂枝さん。」
桂枝
「よくわからんが・・・当然だ。任せておくといい。」
そうして夜は更けていく。新たに増えた仲間であり守るべき人達。頑張らないとな・・・
説明 | ||
おまたせ?しました。風、稟の参入話です。そろそろ移転も完了しますね。もはや添削しすぎて別作品な気がしますが。 あと前の話で出てきた桂枝の武器ですが形を簡単に言うとガン○ムでゲル○グがもっているようなやつです。もっとわかりやすくいうとメイ○さんと○きな剣の青○偃月刀。 |
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私が旅を初めてすぐのころだった⇒始めて 私は徐栄。、名は桂枝。⇒真名は 流石に始めた知ったときは驚きもしたが⇒初めて知った(黄金拍車) >>shirouさん アルヤさん 自分の中では二次創作内の一刀って空気か最強キャラか女好きの下衆い敵役のイメージなんですけどね。・・・まぁそれで考えても珍しい一刀かもしれませんが。(RIN) ↓ほんとにね。某外史では三倍もの存在感があるというのに。たとえがゲル○グのほうが分かる、というかもう一方を知らないwww(アルヤ) ここまで一刀の存在が薄まるってのも新鮮ですなぁ。(shirou) |
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