魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と A’s編
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「あんなぁ零冶兄ぃ。ウチな、友達できたんよ!」

 

 

 学校の騒動があった日の夜、はやてが唐突に話した。

 ほぉ、それは良かった。はやてにもやっと友達ができたんだな。

 

 

「よかったじゃないか、はやて!少し心配していたんだよなぁ。」

 

 

「せやろ?ウチも嬉しくてたまらんのよ!」

 

 

「して、主はやて。その友人とは一体どのような人物なのですか?」

 

 

 シグナムがはやてに質問する。みんなも気になっているようだ。

 

 

「うんとな、図書館で知り合ったんやけど、大体ウチと同じぐらいの子で髪が長くて綺麗な紫色で、おっとりとした子なんよ。」

 

 

 へぇ、とても良い子そうじゃないか?しかし、どこかで似たような人物が「それと、名前は月村 すずかちゃんって言うんよ。」いたーーーーー!!すずかかよ!!・・・また面倒なことになるかもしれな「それで、機会があれば、すずかちゃんの友達を紹介してくれるらしいんやで。」・・・確定した。orz

 

 

「よかったじゃない、はやてちゃん!」

 

 

「よかったなはやて。零冶もそう思うだろ?」

 

 

 シャマルとヴィータも喜んでいる。

 

 

「あ、ああ・・・。良かったじゃないか、はやて。」

 

 

「・・・零冶?」

 

 

 シグナムは俺の表情に気がついたようだ。

 

 

「え?あ、いや・・・何でも無い。それにしても良かったな。いきなりたくさんの友人が出来るじゃないか。」

 

 

「うん、ウチもビックリしとるんや!あ、零冶兄ぃにも紹介するな!」

 

 

「あ、ああ。ありがとうな。」

 

 

 

 

 そうして夕食を食べた後に風呂にはいり、屋根に上って頭を冷やしていた。

 

 

「管理局と交戦してしまったか・・・。もう・・・、後には引けないな。」

 

 

 この間のヴィータがなのはとフェイトと戦った。そして俺もだ。これで管理局は俺たちを探し出そうとするだろう。AAA魔導師を倒した奴を管理局は野放しにしないだろう。

 

 さらに、一つだけ失敗したことがある。それは封時結界だ。あの時、シャマルに結界を解除してもらって、すぐに俺のルナに結界を張り替えた。これはヴィータたちが使っているのがベルカ式だということを解析されないようにするのが目的だった。中にいる時はどんな結界なのか判別するのは難しい。だから大丈夫だと思った。だが、すでに管理局は来ていた。恐らく結界が替わったのに気付いたろう。

 

 それに、結界を替えたせいでサーチャーに潜り込まれてしまった。一応闇の書シャマルに見えないように持って貰ったが、完璧ではない。俺は冷静なフリをしていて、実際はかなり焦っていた。ヴィータを止めることで頭がいっぱいだった。

 

 もしこの事ではやてが闇の書の主だとバレたら・・・捕まってしまう。そして向こうの身勝手な法律で裁くか、組織に取り込まれるのがオチだ。この件が終わったら・・・いっその事、はやてたちと一緒に旅に出ようか?それに、

 

「・・・組織という枠組みに・・・はやてを入れたくはない。」

 

 

 それともう一つ・・・

 

 

「・・・また・・・・フェイトたちと戦わなければならないのか・・・。」

 

 

 俺は俯き、拳を握りしめる。手から血が滲む。その時、

 

 

「・・・零冶。」

 

 

 後ろを見るとシグナムが悲痛な顔で俺を見ていた。

 

 

 

 

 Side シグナム

 

 

 

 夕食の時、零冶がなにやら暗い表情をしていた。理由は分からない。そして、夕食を食べ終わり、零冶が風呂に入った後、外に出るのを見かけた。気になった私は零冶の後を追って玄関を開けた。しかし、零冶は辺りにいない。

 

 

「・・・?何処に行ったのだ?」

 

 

 すると屋根から人の気配がした。

 ・・・屋根に上ったのか?

 私が飛んで屋根に上ると零冶がいた。私は声を掛けようとしたが、

 

 

「管理局と交戦してしまったか・・・・もう、後には引けないな。」

 

 

 声を掛けるのを止めた。

 零冶はヴィータに優しく言ったが、実際はかなり問題だったのだろう。しかし、零冶の表情から読み取るに、それだけではないような気がする。

 

 

「・・・また・・・・フェイトたちと戦わなければならないのか・・・。」

 

 

 っ!?

 私はその言葉を聞いて驚愕した。

 フェイトというのは確か、零冶が戦った金髪の女の子だったはずだ。・・・・まさか・・・零冶とあの者たちはもしかして・・・・・

 

 

「・・・零冶。」

 

 

 私は思い切って零冶に声を掛けた。

 

 

「シグナム・・・。・・・・聞いていたのか?」

 

 

 零冶は一瞬驚いた顔をするが、すぐに引っ込めて真剣な表情になった。

 

 

「・・・すまない。零冶が先ほどから様子がおかしかったので、気になって後をつけたのだ。そしたら・・・」

 

 

「そうか・・・。別に気に病む事じゃ無い。心配してくれありがとう、シグナム。」

 

 

 零冶は優しい表情で私に礼を言った。

 

 

「い、いや・・・そんなお礼を言われるようなことじゃない。な、仲間として当然だ///」

 

 

 私は少し照れくさくて顔を背けた。零冶はそんな私を微笑んで見つめる。

 

 

「それよりもだ、零冶!・・・さっき、フェイトとか言ったな?零冶は、もしかして彼女たちと・・・・」

 

 

 零冶は私の聞きたいことに気がついたのか、少し悲しい目で遠くを見つめる。

 

 

「・・・ああ。フェイトとヴィータが戦った奴は俺の大切な・・・・・友人だ。」

 

 

「っ!!」

 

 

 やっぱりそうだった!零冶はずっと、ずっと友人と戦うことに苦しんでいたのだ!!それを私は何も知らずに・・・!零冶は今までずっと我慢してきたんだ!

 

 

「零冶・・・・・・ずっと苦しんでたのだな?大切な友人と戦い、傷つけることに・・・。」

 

 

 私は零冶が苦しんでいることに気付いてしまった。なら、その苦しみを少しでも和らげてあげたい。

 

 

「・・・俺は別に苦しんでなんかいない。ケガをしないように・・・手加減もしたし、例え・・・蒐集しても命を奪う訳じゃ・・・ない。はやての命が係ってるだ。それに比べたら・・・・。」

 

 

 まったく、零冶は嘘が下手だな。そんなに血が滲むほど拳を握りしめていたら説得力なんて無いぞ?

 

 

「・・・零冶、もういいんだ。」

 

 

 私はゆっくりと零冶に歩み寄る。そして優しく抱きしめた。

 

 

「・・・え?」

 

 

 零冶は状況を掴めていないのか、キョトンとしている。・・・ちょっと可愛いと思ったのは内緒だ。

 

 

 

「辛いのだろう?痛いのだろう?・・・我慢しなくて良い。お前はもう十分に苦しんでいる。これ以上自分を責めるな。」

 

 

「え?あ、・・・・あぁ・・・。」

 

 

 零冶の肩が震える。

 

 

「いい加減気持ちを吐き出せ。ずっと我慢していたんだろう?ならば私の胸を貸してやる。思いっきり泣くといい。」

 

 

「うあ・・・ぁあ・・・ぁ」

 

 

 零冶の目から雫が伝う。

 

 

「ここには誰も居ないし、零冶が教えてくれた防音の結界も張ってある。誰も聞いてはいない。だから・・・・もう、我慢するな。」

 

 

 最後に少し強く抱きしめた。それが決め手となったのか零冶の感情の堰が決壊した。

 

 

「う・・・あぁ・・ぁ・・・・うああああああああああああ!!!!」

 

 

 こうすることでせめて、零冶の心が軽くなってくれることを願う・・・。

 私は泣き叫ぶ零冶を優しく抱きしめて、頭をそっと撫で続けた。

 

 

 

 Side out

 

 

 

 

 しばらく泣いた後、俺はシグナムから離れる。

 

 

「落ち着いたか?」

 

 

 シグナムが俺を優しく見つめる。

 

 

「あ、ああ。・・・その・・・ありがとう///」

 

 

 俺は顔を赤くして少し上目遣いになって言う。

 

 

「っ!?い、いや、別に気にするな///」

 

 

 シグナムが赤くなった。

 ・・・何故に?

 

 

「・・・・・・・。もう寝ようか?そろそろ戻らないとはやてが心配するから。」

 

 

「ああ、そうだな。おやすみ・・・零冶。」

 

 

「おやすみ・・・シグナム。」

 

 

 俺は家の中に入って今日もはやてと一緒に寝た。・・・・こちらに向いている視線を気にしながら。

 

 

 

 

 

 Side ???

 

 

(今日も異常はありません、お父様。)

 

 

 今し方、私の娘同然の使い魔から連絡が入った。私は闇の書を封印するために、現在製作中のデバイスが完成するまで八神はやての監視をさせている。

 

 

「そうか・・・闇の書の蒐集はどうなっている?」

 

 

(はい、現在490ページまで完成しているようです。最初はペースが速かったのですが、現在は管理局を警戒してペースがかなり落ちています。例のモノが完成するまでに集まることは無いでしょう。)

 

 

「そうか・・・引き続き監視をしていてくれ。」

 

 

(はい、お父様。)

 

 

「・・・ふぅ。」

 

 

 私は念話を切ると深く椅子に座って安堵のため息をつく。

 蒐集が思ったより早くなった時はどうなるかと思ったが、何とかなりそうだ。

 

 

「しかし、零冶という子は一体何者だ?彼の戸籍が全く無い。学校には通っているようだが、何故か黒沢零冶という存在が認められている。黒沢零冶という名前などこの世に存在しないはずなのにだ・・・。まるで、突然そこに現れたかのような・・・。いや、これ以上考えるのはやめよう。計画の邪魔にならない限りは放っておこう。」

 

 

 彼について考えることを止め、私は写真を見た。そこには青年とその家族が写っていた。

 

 

 Side out

 

 

 

 以前からずっと監視されているのは分かっていた。最初は潰そうかと思ったが、向こうが手出しする気配がないので放っておいたが、この頃監視の頻度が上がっている。

 

 

「もしかしたら何か仕掛けて来るかもしれないな・・・。」

 

 

 しかし、一体誰が何の目的で俺たちを・・・・・・まさか、闇の書が目的か?となると・・・管理局か!?だがそうで無いとなると・・・第三者としか考えられない。それでも、闇のを知っているとなると、やはり管理局しか・・・・・まぁ今考えてもしょうがない。今度、こちらから接触するか?

 

 

「あ!零冶ー!」

 

 

 一旦思考を止め、俺はいつも通りに学校に登校するとフェイトがこっちに手を振りながら駆け寄ってくる。

 

 

「ん?ああ、フェイトか。おはよう。」

 

 

「うん!おはよう零冶!」

 

 

 フェイトは元気よく挨拶する。あの時に比べたら随分明るくなった。とても明るくて良い子になっている。成績も優秀だ。こんな良い子はそう見つかりはしないだろう。もちろん、はやても良い子だ。

 しかし、そんなフェイトたちを・・・俺は裏切ろうとしている。俺の胸に罪悪感が沸いてくる。・・・胸が痛い。

 

 

「?どうしたの零冶?」

 

 

 フェイトが黙っている俺の顔を覗き込んで聞いてくる。

 

 

「あ、いや・・・何でもないよ。ちょっと考え事をしてたんだ。」

 

 

「そっか、それじゃ早く行こ?」

 

 

 フェイトはあまり気にしなかったようだ。

 

 

「ああ。」

 

 

 俺とフェイトは学校に入り、一緒に教室まで来る。

 しかし、何故だろう?妙に背中が冷たい。まるで、殺気を浴びているような・・・

 

 

「・・・ん?っっ!?す、すずか・・・?」

 

 

 後ろにすずかが恨めしそうに俺を見ていた。

 

 

「零冶君・・・フェイトちゃんと一緒に登校してたの?」

 

 

 顔は笑っているが・・・目が笑っていない。

 

 

「あ、ああ。ちょうど校門の前で会ったんだ。そこから一緒に・・・。」

 

 

「ふぅん・・・。」

 

 

 すずかがジト目で見てくる。 

 

 

「そ、それよりも早く教室に入ろう!」

 

 

 俺はすずかの視線に耐えきれずに逃げ出した。

 

 

 

 

 Side out リンディ

 

 

 この間のなのはさんたちが戦っていた時の映像をもう一度みていた。あの時、私たちが駆けつけたとき、見たこと無い結界が張ってあった。急いでフェイトさんとユーノ君を送り込んで相手を追いつめた時、その結界は一瞬でミッドチルダ式に替わっていた。そのおかげでサーチャーを潜り込ませることができた。

 

 

「この人たち・・・。」

 

 

 私はこの五人を見てすぐにレティが言っていた第一級捜索指定ロストロギア、闇の書を思い出した。でもまだ確証が無い。だから私は確証を得るために、映像をもう一度見ていた。

 何か・・・何か手懸かりがあれば・・・。

 

 

「・・・っ!?」

 

 

 私は一瞬映っていた映像を巻き戻し、その場面で映像を止める。そしてそこに映っていたのは、

 

 

「闇の・・・書・・・。」

 

 

 私たちハラオウン家と深い因縁がある闇の書が金髪の女性に抱えられているのが映っていた。

 

 

「なら、彼が・・・闇の書の・・・主?」

 

 

 闇の書を守る騎士は四人。だから私はフェイトさんを倒した髑髏の姿をした魔導師を主だと思い、今後の対策を練っていくことにした。

 

 

 Side out 

 

 

 

 

 

 翌日の夜、俺たちははやてに蒐集しに行くと告げてとあるビルの屋上に集合した。

 

 

「全員集まったか?」

 

 

「ああ、全員揃ったぞ。」

 

 

 シグナムが答える。しかし、シャマルたちは何だか浮かない顔をしていた。

 

 

「どうした、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ?」

 

 

「・・・零冶君、その・・・本当にいいの?この間戦った子たちとまた戦ってしまうことになっても。」

 

 

「・・・・友達だったんだろ?」

 

 

 シャマルとヴィータが心配そうに俺に聞く。

 ・・・シグナムか。

 

 

「すまない零冶。やはり、皆に話しておいた方がいいと思ってな・・・。」

 

 

 まったく、シグナムは心配性だな。

 

 

「構わないよ、シグナム。みんなも心配してくれてありがとうな。・・・・・さて、最近の蒐集活動についてだが、ここの所管理局を警戒して蒐集ペースが格段に落ちている。俺の失態でみんなに迷惑を掛けてすまない。」

 

 

 俺は皆に頭を下げる。

 

 

「そ、そんなっ!?あれはあたしが勝手な行動したからであって・・・、零冶の責任じゃねぇよ!」

 

 

 ヴィータが俺の頭を上げさせる。

 

 

「いいや、俺にも責任がある。あの時、俺はお前たちが使っている魔法がベルカ式だとバレない為に結界をシャマルに解除してもらって俺とルナがミッドチルダ式の結界に張り替えたんだ。だけど、そのせいで管理局のサーチャーに潜り込まれてしまって見られてしまった。恐らく、闇の書のこともバレただろう。」

 

 

「けど・・・。」

 

 

 ヴィータはそれでも俺を庇ってくれた。

 

 

「気にしなくていいわ、零冶君。いつかはバレるものよ?」

 

 

「そうだぞ零冶。お前だけの責任じゃない。そんなに気負うな。」

 

 

「皆の言う通りだ、零冶。お前は良くやってくれている。」

 

 

 シャマル、シグナム、ザフィーラが俺を励ましてくれた。俺は嬉しくてたまらなかった。

 

 

「ありがとう、みんな。・・・それじゃあこれからのことを話そう。・・・みんな気付いていると思うが、最近はやての調子が悪い。シャマル・・・はやては後どれくらい持つ?」

 

 

 そう、思ったよりはやてのリンカーコアの浸食が早く、はやてがよく体調を崩すようになった。

 

 

「・・・・持って・・・・・今年いっぱいだわ。」

 

 

「「「・・・・。」」」

 

 

 シグナムたちは悲痛な面持ちでいた。ちなみに、はやてにこのことは伝えていない。計画の成功の為に、不安を煽るような事は出来るだけしたくない。

 

 

「そうか・・・。もう形振り構っていられなくなったな。・・・・・・もし、次に彼女たち・・・・フェイトたちと交戦するようなことがあれば・・・。」

 

 

 俺は拳を握りしめて、苦渋の決断をする。

 

 

「・・・・・フェイトやなのはの魔力を蒐集する。」

 

 

「「「「っ!!?」」」」

 

 

 俺の一言に全員が驚愕する。

 

 

「ま、待て!それでは主はやての罪が重くなると言ったのは零冶だぞ!?」

 

 

「それに、フェイトちゃんたちは零冶君の大事なお友達なのでしょ!?」

 

 

「そ、そうだよ!!零冶はそれでいいのか「いい訳ないだろ!!!」っ!?」

 

 

 俺はヴィータの言葉を遮って言った。

 

 

「俺だってそんな事したくねぇよ!!だけど!!・・・だけど、はやての命が危ないんだ。蒐集しても殺すわけじゃないし、少しの間魔法が使えないだけだ。現在のページ数は490ページ・・・この調子じゃクリスマスまで間に合わないかもしれない。」

 

 

「修羅の道を行くか・・・・。」

 

 

 ザフィーラは俺に言った。

 

 

「ああ。・・・・よって、これからは管理局に構うことは無い。邪魔するモノは・・・全て蹴散らす!」

 

 

「「「「・・・(コクリ)。」」」」

 

 

 全員が力強く頷いた。もうこそこそ隠れるのは止めだ。俺は己を殺して蒐集活動する。

 

 

「シャマル・・・転移を。」

 

 

「分かったわ!」

 

 

 俺たちは決意を新たにして転移していった。しかし、世の中そう上手くはいかなかった。管理局はすでに俺たちの転移魔法を感知して追跡していることを俺たちは知らない。

 

 

 

 地球からかなり離れた無人世界の砂漠のど真ん中に俺たちは転移した。

 

 

「こんなところに魔法生物なんているのかよ?」

 

 

 ヴィータはちょっと不満そうに言う。

 

 

「こんな所だからこそ、強い奴がいるんだ。シャマル、闇の書が無くても一時的に魔力を保管することは可能か?」

 

 

「ええ、少しの間なら大丈夫だわ。」

 

 

 これで作業効率が上がる。

 

 

「わかった。・・・これから二手に別れて捜索する。ここから西にはシャマル、ヴィータ、ザフィーラの三人が行け。俺とシグナムは東だ。」

 

 

「承知した。」

 

 

「おうっ!」

 

 

「わかったわ。」

 

 

「了解だ。」

 

 

 シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラは頷き、俺たちは散った。

 

 

 

「ギィイイイイイイ!!」

 

 

「はあああああ!紫電一閃!!」

 

 

 捜索開始してから10分ほどで魔法生物を見つけた。今度は茶色のカマキリだった。サイズは40mほどだが、こいつはシールドも張ることができる。多少手強いだろうが、まぁ大丈夫だ。

 

 

「零冶、蒐集したぞ。恐らく5ページ位だろう。」

 

 

「そうか・・・思ったより多かったな。」

 

 

「零冶の言ったとおり、この世界の魔法生物は質が高い。」

 

 

「そうみたいだな。よし、なら次の場所へ[マスター!!魔力を感知しました!距離1200m!敵数3!]っな!?早すぎる!?何故だ!?」

 

 

[さらに西に距離12kmにも魔力反応あり!敵数は4!]

 

 

 早すぎる!まだ30分も経っていないぞ!?それに数が多い!?

 

 

「どうする零冶?」

 

 

「戦力が分断している現状で交戦するのは望ましくない。一旦合流を[敵、急速に接近中!残り6000m接敵まで約秒150秒!]っちぃ!このまま合流しても挟まれる可能性があるな。シグナム!ここで叩いて合流するぞ!!」

 

 

 さすがに挟まれるのはマズイ。しかし、シャマルが少し心配だ。あいつは後衛向きだから直接戦闘では多分負ける。それに数も不利だ。

 

 

「承知した!」

 

 

[接敵まで30秒切りました!]

 

 

 俺は眼を竜眼に変化させる。これは仲間たちと契約するうちに身についた魔眼だ。5km離れた場所でも相手を目視できるし、熱感知も付いている。そして敵を見ると・・・・

 

 

「クロノ・・・。それに・・・・・なのは・・・・フェイト・・・。」

 

 

 なのはとフェイトがこちらに向かっていた。

 くっ、初っぱなからなのは達と戦り合うなきゃいけないのか・・・。

 

 

「零冶・・・。」

 

 

 シグナムが俺を心配そうに見つめる。

 

 

「・・・大丈夫だ。覚悟は・・・出来ている。」

 

 

「そうか・・・。」

 

 

 そして三人が俺たちの前に降り立った。

 

 

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ!」

 

 

「民間協力者の高町なのはです。」

 

 

「同じく民間協力者のフェイト・テスタロッサです。」

 

 

「悪いが、お前達を第一級捜索指定ロストロギア、闇の書の所持で拘束させてもらう!!」

 

 

 やはりバレていたか・・・。

 そして、なのはが一歩前に出た。

 

 

「・・・どうして闇の書なんかを?アレはとっても危険なんだよ!なのに・・・どうして!?」

 

 

「・・・・。」

 

 

「答えてよ!」

 

 

 三人がデバイスを構える。

 今、こいつらに何を言っても恐らく無駄だろう。

 

 

「シグナム・・・男の方は任せた。」

 

 

「・・・本当にいいのか?」

 

 

「・・・ああ。」

 

 

 シグナムは俺を気遣ってくれる。

 

 

「そこのお前!貴様は私が相手してやろう!来い!」

 

 

 そう言ってシグナムとクロノは飛び上がった。そして残ったのは俺とフェイトとなのはだ。

 

 

「どうして魔力を蒐集するの?静かに暮らしたいんじゃなかったの!?」

 

 

 フェイトが俺に問う。

 ああ、暮らしたいさ。でもな、それができないんだよ。

 

 

「・・・ライフルモード。」

 

 

[了解マスター!ライフルモード!]

 

 

 俺はルナをライフルモードにして構える。

 

 

「「っ!?レイジングハート!!(バルディッシュ!!)」」

 

 

「「了解!」」

 

 

 互いに距離を取って構える。そして、

 

 

「フォトンランサー!」

 

 

 フェイトが先に仕掛けた。俺は高速で迫る魔力弾を右へステップして回避する。

 

 

「ディバインシューター!」

 

 

 回避した所になのはが3発の誘導弾を撃ち込む。俺はそれを撃ち落とす。

 

 

「カオスショット!」

 

 

 俺は漆黒の魔力弾を5発撃ち出す。しかし二人には回避され、着弾したところから砂煙を上げ二人が見えなくなる。

 しくじったな。ライフルモードは遠距離がメインだから、中距離近、距離戦闘は向いていない。しかも周りは砂漠だから砂煙が上がって邪魔だ。

 

 

「ディバイィィィン・・・」

 

 

 ん?ディバイン?・・・マズい!?

 

 

「バスターー!!」

 

 

 高威力の集束魔法が砂煙の中から現れ、俺に迫る。

 

 

「っな!?」

 

 

 っちょ!?以前より威力が段違いだぞ!?

 俺はギリギリで上空に回避した。

 危なかった・・・。あと少し躊躇していたら当たっていたぞ?それにしてもっ!?

 

 

「はああああああ!!」

 

 

 フェイトが上空からサイスフォームで攻撃を仕掛けていた。俺は不意を突かれて、それをバレットで受け止めた。

 

「っぐ!重い・・・・ぐあっ!?」

 

 

 俺は予想以上の重さに驚き、叩き落とされる。そしてそこには、

 

 

「ディバイィィン・・・」

 

 

 砲撃しようとしていたなのはがいた。

 

 

「バスターーー!!」

 

 

「っく!?」

 

 

 ズドオオオオオン!! 

 

 

 砲撃は俺が地上に叩き落とされた瞬間に着弾、爆発が起きる。

 

 

「やった!?」

 

 

 なのはが喜んでいる。だが、

 

 

「っ!?ううん、まだだよなのは!」

 

 

 そうだ。この程度で終われる訳がない!

 

 

「え?・・・ああ!」

 

 

 土煙が晴れると、そこには

 

 

[パシカムルバス。]

 

 

 崩銃槍パシカムルの盾でガードしていた俺がいた。

 

 

「うぅ・・・やったと思ったのに・・・。」

 

 

「そう簡単にはいかないよ。」

 

 

「・・・その通りだ。今度はこちらの番だ!はあああああ!!」

 

 

「「っく!?」」

 

 

 俺は縮地を使い、一気に距離を詰めてなのはに突きを繰り出し、そのまま横に薙ぎ払う。二人はギリギリで反応して回避した。

 重装備をしているので速度がかなり落ちたみたいだ。

 

 

「は、速い!?」

 

 

「よ、避けるので精一杯だよぉ!」

 

 

 泣き言を言っている場合ではないぞ?

 

 

「せいっ!」

 

 

 俺は再びなのはに突きを繰り出す。今度はなのはは後方に回避した。攻撃は2m程届かなかった。なのははそれに冷や汗をかいて安堵する。普通の槍なら良かったが、

 

 

「・・・愚かな。」

 

 

「え?きゃあ!!」

 

 

 ズドオオン!!

 

 

 パシカムルバスの先端から爆炎が放たれる。これがガンランスの特徴だ。パシカムルの装填数は3発だが威力はかなり高い。そして俺の心がチクリと痛む。

 

 

「なのはー!!」

 

 

 人の心配している場合ではないぞ! 

 

 

「はああああ!!」

 

 

「っく!?」

 

 

 俺は斬り上げた後に突きを繰り出す。最初に一撃は避けられて、突きはバルディッシュでガードされた。だが、コイツはガンランスだ。ガードは、

 

 

「無意味だ!」

 

 

 スドオオン!ズドオオン!ガチャンッ!

 

 

「うっ!?きゃあ!!」

 

 

 二発の砲撃を繰り出した後にクイックリロードをした。フェイトは二発目で吹き飛ばされたようだ。そしてすぐに着地して体勢を立て直した。

 っく!一撃で沈んでくれたら良かったのに!

 

 

「っく、このおおおおお!!」

 

 

[フラッシュムーブ!]

 

 

 フェイトが一瞬で俺の後ろに回り込む。

 

 

 ガキンッ!

 

 

「なっ!堅い!?」

 

 

 俺はそれを左手にある巨大な盾で防ぐ。

 無駄だ。これは砲弾にも耐えられるほどの防御力がある。

 

 

「せあっ!!」

 

 

 そして俺は盾で押し返し、パシカムルバスを叩きつけて、

 

 

「フルバースト!」

 

 

 ドガアアアン!!

 

 

「きゃああああ!?」

 

 

 全ての装弾数を使い、一斉射する。

 呆気ないな。まぁ、ガンランスの特性を知っていないから無理もない。・・・ん?そういえばなのはがいない?何処だ?

 俺は辺りを見回すがなのはは何処にもいなかった。

 

 

[マスター!上空に巨大な魔力反応!!]

 

 

「何!?」

 

 

 上空を見上げると、そこには魔力を集束しているなのはがいた。

 

 

「咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。行くよ!これが私の全力全壊!!」

 

 

 ま、待て!!漢字が違うぞ!?

 

 

「貫け!閃光! スターライトォォォ・・・・ブレイカーーー!!!」

 

 

「ぐああああああ!!?」

 

 

 盾でガードするもあまりの威力に俺は耐えきれずに受けてしまった。

 

 

「はぁはぁはぁ・・・。」

 

 

 なのはも息が上がってる。恐らく殆どの魔力を使ったのだろう。

 

 

「ぐううぅぅ!油断した!」

 

 

 俺はボロボロだった。リミッターを付けた状態であれだけの砲撃をまともに受けて立っている俺を褒めて欲しいくらいだ。

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 そして不意に右側面からフェイトが突っ込んできた。

 

 

「しまっ!?」

 

 

 俺は回避する。が・・・

 

 

 ザンッ!!ビキビキ・・・

 

 

 フードを斬り裂かれ、仮面もヒビが入り・・・

 

 

 パキャァァン!

 

 

 砕け散った。そして俺の顔が晒される。

 

 

「「・・・え?」」

 

 

 フェイトとなのはが驚愕して固まる。

 

 

「れい・・じ・・?」

 

 

「れ・・いじ・・・君?」

 

 

 俺は顔を手で覆うがそれも遅かった。額からは血が流れる。

 

 

「う、嘘・・・・だよね、零冶?何で・・・零冶・・・が?」

 

 

「零冶・・・君?・・・そんな・・・嘘・・・だよ。」

 

 

 フェイトとなのはの手が震えている。

 

 

「・・・。」

 

 

 俺は二人になんと言えばいいか分からなかった。

 

 

「・・・どうして?・・・・どうして零冶君が・・・・闇の書を?どうして!?」

 

 

「そんな・・・。もしかして、ヴォルケンリッターたちに・・・操られているの?・・・そうだよね?ねぇ!何とか言ってよ零冶!!」

 

 

 フェイトとなのはが叫ぶ。その声は俺の胸を抉る。

 

 

「・・・・・俺は自分の意思でやっている。」

 

 

「「そ、そんな・・・。」」

 

 

 二人がペタンッと座り込む。その時、

 

 

「うああああああ!!」

 

 

 ズドオオオン!!

 

 

 クロノが上から叩き落とされた。

 

 

「「クロノ君!(クロノ!)」」

 

 

「う・・・うぅ。」

 

 

 二人はクロノに手を貸して起こす。そしてシグナムが俺の側に降り立った。

 

 

「ん?・・・零冶!?仮面はどうした!?」

 

 

「ああ、少し油断してやられたよ。この通りバレてしまったよ。」

 

 

 俺は少し俯いて言った。

 

 

「・・・そうか。」

 

 

そして俺はフェイトたちに闇の触手で二人を拘束した。

 

 

「「きゃあ!?」」

 

 

「既に男の方の蒐集は済んでいる。・・・・本当にいいのだな、零冶?」

 

 

「や、やめて・・・零冶。」

 

 

「零冶君・・・お願いだから・・・止めて。」

 

 

 俺は歯を食いしばり、拳を握りしめて決別の意思をしめした。

 

 

「・・・やってくれ。」

 

 

「・・・わかった。」

 

 

 そしてシグナムは二人のリンカーコアを摘出し、魔力を蒐集する。それが終わると俺は二人の拘束を解除した。

 

 

「・・・あ・・・ぁあ・・・あ。」

 

 

「う・・ああ・・・・あ。」

 

 

 なのはは気絶し、フェイトも膝を突いて苦しそうにしている。

 

 

「・・・・・いくぞ、シグナム。」

 

 

「・・・ああ。」

 

 

「ま・・・・待って・・・れい・・・じ。」

 

 

 フェイトは必死に俺を呼び止めようとする。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・すまない。」

 

 

 と小さく呟いて俺はその場を後にした。

 

 

「い・・・いやぁ・・・ま・・・って・・・れい・・じ・・・・・・零冶ぃぃぃぃ!!!!」

 

 

説明
第十話 苦しみ、決別 前編
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コメント
そいうことですwただ、それだけでは面白くないのでちょっと弄ってますw(クライシス)
零冶が敵になったことをなのは達に知られたけど、まあ、主人公だし何とかなるんですよね?きっと。そんでもって、ハーレム街道爆進と(act)
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