ソードアート・オンライン―大太刀の十字騎士―
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ソードアート・オンラインにログインすると、アバター作成画面が現れる。

 

 それに、ベータテスト時から使ってるキャラクターネーム、『ヒナ(hINA)』と入れる。

 

 容姿などは、ベータテストの時と同じに作って、性別を男に設定してゲームを開始する。

 

 ゲーム内のキャラクターの性別を異性にすると、体に悪影響を及ぼすらしい。

 

 ゲームを開始して、初期地点《はじまりの街》に着くと、ちょうど茅場さんが全プレイヤーを集めたようで、多くの人で《はじまりの街》が埋め尽くされる。

 

 すると、僕の前に転送されたプレイヤーが自分が知っている人だと気づく。

 

 そのプレイヤーは、僕と同じベータテストプレイヤーで、ダンジョンで何回か会っい、パーティも一回組んだ記憶がある人物だった。

 

「キ、キリト君?」

 

 僕がそのプレイヤーのキャラクターネームを呟くと、プレイヤーは振り向く。

 

「ん?ヒナ?ヒナか!?」

「キリト、知り合いか?」

「ああ、ベータで何度かな」

「そちらは?」

 

 僕が訪ねると、キリト君が紹介してくれる。

 

「ああ、こいつはクライン。さっき知り合った」

「クラインさんですか。僕はヒナです。よろしく」

 

 僕が名前を言って手を出すと、クラインさんは、なぜか顔を少し赤くしながら手を握ってくる。

 

「こ、こちらこそ、よろしく」

 

 握手を交わすと、不意に誰かが叫んだ。

 

「あっ……上を見ろ!!」

 

 僕とキリト君、クラインさんは、反射的に上を向く。

 

 何が起こるかは予想していても、いきなり言われたら、見てしまうのが人間の習性というものだ。

 

 見上げた先には、二層の底を真紅な市松模様が染め上げていた。

 

 よく見れば、それは二つの単語【Warning】と【System Announcement】が交互にパターン表示されたものだった。

 

 その、空を埋め尽くす真紅の表示の中央が、どろりと垂れ下がり、高い粘度を感じさせるような動きでゆっくりしたたり、一つの形を作り出す。

 

 出現したのは、身長二十メートルぐらいの、深紅のフード付きローブをまとった巨人だった。

 

 しかし、そのローブの中には顔がなかった。

 

 顔だけではなく、袖の中もないようだ。

 茅場さんもまた、派手な登場をしたもんだ。

 

 そんなことを思っていると、ローブの何か(茅場さんだろう)が口を開いた。――口がないのに、その表現はおかしいか。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

 その、ローブから出た声は低く、よく通る声だった。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

「な…………」

 

 前にいるキリト君が驚愕の声を上げる。

 茅場晶彦の名前を知っていたのだろう。ゲーマーなら知らない方がおかしいだろうが。

 

 茅場さんはかなり有名らしいから。

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いてると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、《ソードアート・オンライン》

本来の仕様である』

「し……、仕様、だと」

 

 クラインさんが割れた声でささやく。

 

 その語尾に被さるように、茅場さんは言葉を続けた。

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』

 

 ここにいたほとんどが、この城、という言葉の意味を、理解できなかっただろう。

 

『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合――』

 

 わずかな間。

 

 その間が、一万人に重苦しい静寂を与える。

 

 その静寂のなか、その言葉はゆっくり発せられた。

 

『――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

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