無表情と無邪気と無我夢中2-2
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【無表情と無邪気と無我夢中2-2】

 

 

 

 

 

 

おうかです。

 

 

ようやく石段の上の神社に辿り着きました。

 

ただ妹はぜぇぜぇしてます。

 

流石に放っとくわけにはいかないので水飲み場まで肩を貸して水を飲ませ、日陰で休ませてあげることにしました。

 

濡らしたタオルを顔にあて、疲労困憊だというかの如くぐでっとしています。

 

妹とやりたいことがあってここに来たのですが、妹がああでは仕方ありません。

 

回復するまで私はいつもここでやることをしてるとしましょう。

 

 

 

今日イメージするのは誰にしましょうか。

 

さっき思い出したこともありますし、かつての教え子との模擬戦を参考にしましょう。

 

あの二人の無茶な戦法をあえて高度な戦法として己の中で消化し高レベル戦闘をイメージ。

 

私が使える武器は直線軌道のアクセルシューターと木刀だけにして。

 

さて戦闘開始です。

 

 

 

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一時間後。

 

結果、敗北しました。

 

ていうか5歳児が若者二人による滅多打ちに勝てる訳ないじゃないですか。

 

まあ、勝つことを目的としてませんのでいいのです。

 

 

負けないこと。

 

 

限界を超えてでも負けないことを重視した戦いですから勝てたらラッキーなんです。

 

誰に言い訳してるのでしょうね私。

 

それにしてもあの二人の戦法を極めたらこんなにも隙のない戦いになるとは。

 

私は仰向けに倒れたまま青空に浮かぶ雲の流れを眺めながら考えます。

 

 

無茶だけど間違いじゃない。

 

 

あの時そう言ってあげればまた違う未来があったのかなと思ってしまいます。

 

 

「み、みず……」

 

 

いつまでも考えてる訳にはいきません。

 

身体が水分を欲してます。

 

早急に、早急に!

 

 

 

疲れた身体に鞭を打ち水飲み場までダッシュ。

 

バルブをめいいっぱいひねり勢い良く出た水を頭から被ります。

 

ああ、気持ちいいです。

 

そのまま水を思い切りがぶ飲みします。

 

 

「ぷはっ、はああっ!!ふう……」

 

 

顔全体を伝う水滴に風が当たってサッパリいい気持ちです。

 

私は顔と髪の毛を拭こうとしてタオルを探します。

 

が、ありません。

 

 

「そうでした。なのはに貸したのでした」

 

 

そういえば日陰に休ませたままでしたね。

 

貸したタオルを取りになのはの所に歩み寄りました。

 

 

「すみませんなのは、タオルを―――」

 

 

なのはの横に落ちていたタオルを拾おうとしたその時、私が見たものは過去の自分も含めて初めての最大の衝撃的光景でした。

 

 

 

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「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

 

 

 

 

 

 

子狐。

 

 

 

黄色い子狐がなのはの膝で丸まってるではありませんか!!

 

 

つまり今、何時の間にか眠っていたなのはの膝の上でちょこんと子狐が寝ているのです。

 

 

 

 

 

 

可愛い。

 

 

 

 

 

 

可愛い可愛い。

 

 

 

可愛い可愛い可愛いです!

 

 

 

なのはも可愛い!

 

 

子狐も可愛い!

 

 

この光景、この姿、全てが可愛いです!

 

 

さっきまでの疲れが吹き飛びました。

 

 

 

ああ、激写したい。

 

形にして残しておきたい。

 

目に入ったのはなのはのポーチ。

 

デジカメがあるではありませんか!

 

私はコッソリひっそりなのはのポーチからデジカメを取り出しました。

 

もちろんなのはと子狐を起こさぬように、かつこの構図が崩れぬように。

 

 

 

早速起動。

 

チャンスは一度しかないと思え。

 

今この瞬間に全神経を集中させて、狙い撃ちます。

 

不思議と緊張はしませんでした。

 

時が止まったかのように、自分の中で何かが噛み合った時、自然とシャッターを切る私がいました。

 

押した瞬間のことは覚えてません。

 

 

「うにゃ……おうかちゃん?」

 

 

気が付いたら子狐はいなくなっており、なのはが目を覚ましていました。

 

 

「あれ、きつねさん?」

 

 

なんだ、なのはは子狐のこと気付いていたのですね。

 

 

「にゃ、私のデジカメ!」

 

「すみません。少し借りてました」

 

「……もしかして」

 

「激写させてもらいましたよなのは。これがその―――あ、バッテリー切れみたいですね」

 

「うにゃ〜恥ずかしいの〜後で消してなの〜!」

 

「ふふふ、いいですよ。ただしプリントアウトしてからで」

 

「にゃーーー!!」

 

 

 

今日は遊びに誘って大正解でしたね。

 

父が入院してから少しなのはは塞ぎがちでしたが、元に戻ってよかったです。

 

こんな風にずっと笑い合えたらいいですねなのは。

 

 

 

「あ、おうかちゃんもしかして笑ってる?」

 

「いいえ、そんなことありませんよ」

 

「嘘なの!そんなおうかちゃんの楽しそうで嬉しそうな笑顔初めて見たの!」

 

「そうですか?確かに今楽しいですし嬉しいですよ」

 

 

 

ああ幸せです。

 

 

もし神様がいるなら感謝します。

 

 

こんなにも楽しくて幸福感に心が満たされる。

 

 

そんな生活が送れるなんてあの時、命果てる時には思ってもみませんでした。

 

 

望みはしましたけどね。

 

 

ダメです。今が楽しすぎます。

 

 

あっと、本来ここに来た目的を忘れるところでした。

 

 

「なのは、こっちきてください」

 

「にゃ?」

 

 

私はなのはを連れ、お賽銭箱の前にきました。

 

 

「祈りましょうなのは。お父さんの目が早く覚めますようにって」

 

「おうかちゃん……」

 

 

私となのはは一生懸命祈りました。

 

 

お父さんのこと。お母さんのこと。お兄ちゃんのこと、お姉ちゃんのこと。

 

 

そして家族のこと。

 

 

私は一つなのはと約束をしました。

 

 

いつか一緒にお父さんのお見舞いに行きましょう、と。

 

 

この日のこと、色々な意味で私は忘れないでしょう。

 

 

なのはにも忘れてほしくないと思うのは勝手でしょうか。

 

 

ただ、この時私は今日のことで後日苦しむことになるとは思いもしていなかったのです。

 

 

 

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神社を後にして私達は帰宅しました。

 

帰り始めた時は夕焼けが綺麗な空でしたのに家に着いたら既に暗くなってしまってました。

 

子供の歩く速度は普通に考えて遅いということを忘れてました。

 

もちろん母は家にいませんが代わりに兄が玄関先に立っていました。

 

 

「遅いぞ二人とも」

 

「「ごめんなさい」」

 

「風呂が沸いてるから美由希と入ってこい」

 

「「はーい」」

 

 

ちゃんとメモを残しておいたのでそのまま私達はお姉ちゃんと一緒にお風呂へ向かいました。

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

私はお風呂上がりにコッソリとデジカメからメモリーカードに移動させていた画像データをパソコンに移し、今とある作業をしていました。

 

ダメです……声は、声は我慢しなければ。

 

片手で口元を押さえマウスを動かします。

 

そして表れた二枚の画像データによる写真。

 

一枚は自分で持ち、もう一枚はリビングのテーブルの上にメモ用紙を添えて置いておきました。

 

 

「おやすみなさい」

 

 

プリントアウトした写真を枕の下に入れ、私は夢の中へログインしました。

 

 

いい夢が見られそうです。

 

 

 

 

 

 

翌朝、もう一枚の方の写真を見つけたなのはの絶叫で私は目を覚ますことになりましたが。

 

説明
無表情と無邪気と無我夢中2-1の続きです。主人公であるおうかは基本無表情ですが感情は豊かです。
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