英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 202 |
〜遊撃士協会・ツァイス支部〜
「あれ……。どうしたの、2人とも?」
エステル達がギルドに入ると、博士とティータが来ていた。
「あっ……お姉ちゃん、ミントちゃん、アガットさん!」
「おお、ちょうどいい所に戻ってきたな。」
エステル達に気付いたティータ達は明るい表情をした。
「地震の調査を終わらせて戻ってきたところなんだが……。なんだよ、そのガラクタは。」
アガットは受付に置いてある3つの機会をうさんくさそうな目で見て、尋ねた。
「ガラクタとは失礼な。これが約束していた『良い物』じゃよ。」
「まあ、その説明は追々してもらうとして……。セントハイム門の地震も一応調べてくれたみたいね。ヴォルフ砦の調査と合わせて報告してもらいましょうか。」
「うん、それなんだけど……」
そしてエステル達はキリカに地震の規模が大きくなっている事やまた、2ヶ所に不審人物――サングラスの男が見かけられた事を報告した。
「なるほど……。地震の規模が大きくなっとるか。思ったよりも事態は深刻じゃな。」
「う、うん……。今度また、ツァイス市内であれ以上の地震が起こっちゃったら大変なことになっちゃう……」
「そして、両方の場所で目撃されたサングラスの男……。ツァイス市内で目撃されたのと同一人物みたいね。」
エステル達の話を聞いた博士は考え込み、ティータは不安そうな表情をし、キリカは真剣な表情で頷いた。
「そっか……。やっぱり市内にも現れたんだ。」
「ルーアンの時に現れたえ〜と………『執行者』なのかな………?」
キリカの話を聞いたエステルは真剣な表情で頷き、ミントは不安そうな表情になった。
「ええ、マードック工房長が市内の情報を集めてくれたの。確かにその男が『結社』の人間である可能性は高そうね。こうなった以上、博士の実験に全面的に協力した方がいいでしょう。」
「実験……。この装置を使うのか?」
キリカの話を聞いたアガットは受付に置いてある機械を見た。
「うむ、その通り。これはわしが数年前に開発した『七耀脈測定器』でな。地面に設置することで『七耀脈』の流れをリアルタイムに感知・測定することができるのじゃ。」
「えーと……。毎度ながら聞くんだけど……『七耀脈』ってナニ?」
博士の話を聞いたエステルは聞きなれない言葉に首を傾げて質問した。
「『七耀脈』とは地下深くに存在する七耀石が採れる鉱脈のことです。この地脈は莫大なエネルギーを持っていて、大地を少しずつ動かしています。」
「『地脈』、『霊脈』なんて表現されることもあるらしいね。東方では『龍脈』だったかな?」
エステルの疑問にクロ―ゼが答え、またオリビエも続いた後、キリカに確認した。
「あら、よく知っているわね。東方では昔から、龍脈の集う場所に都が造られたという歴史があるわ。大地のエネルギーを国の力に取り込むという発想ね。」
オリビエが意外な事を知っている事に驚いたキリカは頷いた後、話を続けた。
「へ〜、そうなんだ。ちょっと勉強になっちゃった。」
「ミントも!」
「それで、その装置を使えば地震を止めることが出来るんでしょうか?」
クロ―ゼは受付に置かれてある機械を見て博士に尋ねた。
「いや、流れを見るだけですから実際に地震を止めることは無理ですわい。じゃが、ゼムリア大陸の地震は七耀脈の流れが地層を歪めることで起きるものと言われてましてな。ですから、その流れを調べれば何かが解けるかもしれんのですわい。」
「なるほど……。では、次に地震が起きるまでに準備をする必要があるわけですね。」
博士の説明を聞いたクロ―ゼは納得し、頷いた。
「装置が3つあるってことは設置する場所も3箇所か?」
「うむ、地図を見てくれ。」
アガットに尋ねられた博士は地図を広げた。
「設置して欲しい場所はツァイス地方の3箇所になる。まずは、トラット平原のストーンサークルがある場所じゃ。次は、カルデア隧道中間地点。ツァイスから歩いて最初の橋付近。最後に、レイストン要塞前じゃ。」
そして博士は地図に印をつけた。
「―――以上の3箇所に装置を設置してもらいたい。」
「うん……。だいたい手順は判ったわ。ところで、測定器の設置ってただ置くだけでもいいわけ?」
博士の説明に頷いたエステルは質問した。
「いや、そう単純ではない。測定用の検査針を正しい角度で地面に差し込む必要があるし、アンテナの設定も必要じゃ。」
「アンテナというのは導力通信用の装置のことだね。すると、測定した情報をどこかに送るというわけなのかい?」
「ほう、なかなか鋭いのう。外付けのアンテナで、測定数値を演算オーブメントの『カペル』に届けて七耀脈の動きを分析させるのじゃ。3箇所のポイントの情報をリアルタイムに分析できるのでかなり正確なことが判るはずじゃよ。」
オリビエの予想に感心した博士は説明を続けた。
「うーん、なんだか凄そうな実験ね。それじゃあ、ラッセル博士も装置の設置についてくるわけ?」
「いや、わしは『カペル』の調整があるから手が空かなくてな。代わりにティータを連れて行ってくれ。」
「えへへ……。よろしくお願いします。」
博士に促されたティータは恥ずかしそうな表情でエステル達を見た。
「わあ………ティータちゃんと一緒に仕事ができるんだ!」
「そっか。ティータなら百人力よね。……アガット。文句言ったりしないわよね?」
ティータがついて来る事にミントは表情を輝かせ、エステルはアガットに釘を刺した。
「仕方ねぇな……。ただあんまり機械いじりに夢中になりすぎるんじゃねえぞ。ほっといたら、魔獣が現れても気付かずに熱中してそうだからな。」
「ううっ……。アガットさんのいじわる……。でもでも、そうなってもきっと助けてくれますよね?」
「……ったく、甘ったれが。」
ティータの笑顔に負けたアガットは溜息を吐いた。
「あはは。やっぱりアガットの負けね。」
「えへへ………やっぱりアガットさんって優しいね!」
その様子をエステルとミントは微笑ましく見ていた。
「それでは、わしはこれから『カペル』の入力調整を始める。全ての測定器を設置したら中央工房の演算室に来てくれ。」
「うん、わかったわ!」
「おじいちゃんも頑張ってね。」
そして博士は中央工房に向かった。
「次の地震が起きるまでに全部設置しなくちゃね……。さっそく出発しますか!えっと、測定器を設置するのは隧道の途中、平原の北外れ、レイストン要塞前の3箇所よね。うーん、どういう順番で設置していけばいいのかしら?」
エステルは設置する場所を告げた後、どこから廻るかキリカに確認をとった。
「それは貴方たちに任せるわ。レイストン要塞には私の方から連絡しておく。ゲートの門番に事情を話せば設置を許可してくれるでしょう」
「うん、わかった。」
「よし、そろそろ出発するか。ティータ。ちゃんと付いて来いよ。」
「はいっ!」
そしてエステル達はメンバーの数を少し減らすためにオリビエをギルドに待たせて測定器の設置に向かった………
一方その頃、リウイ達は傭兵国家の街――『レンストの街』で角の生えた魔神がレンストの王女を攫い、何故か音楽を要求しているという話を聞き、その話に興味を惹かれたリフィアの提案によって、留守番のイリーナ、レン、ファーミシルス、カーリアン、エヴリーヌを宿屋に待たせて魔神がいると言われる迷宮――『セバスの門』に入り、魔神を見つける為に進んで行った…………
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第202話 | ||
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