魔法幽霊ソウルフル田中 〜魔法少年? 初めから死んでます。〜 ベネット!? 死んだはずじゃ!? な25話
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私があの子達の『先生』になって一年と七ヶ月。

 

使い魔としての任期を終え、消滅する私は『アルトセイムの森』にある小屋を最期の場所として選んだ。

 

このまま、自分が消滅することに対しては最早恐怖は湧かない、あらかじめそうなる事は分かっていたし、私自身がそれを望んでいるからだ。

 

そう、全ては私の教え子と、その母親である私の主人のため。

 

私が存在するだけで、プレシアは使い魔を維持するための魔力を消費して病魔に犯された体に負担をかけてしまう。

 

ならばいっそ私が消えてしまえば、プレシアは長生きできる、もしかすれば、フェイトを自分の娘と認めてくれるかもしれない。

そんなに都合の良い事なんて起きる筈がないのは百も承知だ、しかし私にはもう願う事しかできない。

 

大丈夫、フェイトとアルフには私が教えられる全てを教えた、バルディッシュを遺してあげた、あの子達だって十分強い。

 

例え最後までどうしようもない悲劇のまま終わってしまっても、また立ち上がれる筈だ、進む事が出来る筈だ。

 

だからもう、私が存在する価値も、意味も無い。

後はもう、託すだけ。

 

意識が薄れる、時間がきたのだろう、走馬灯なのか今まであの子達と過ごしてきた日々が浮かんでは消えてゆく。

 

 

 

『リニス、リニスは私が一人前の魔導師になったらどこにいくの?』

 

『そうですね……。 消滅したら、天国でフェイト達を見守ってるかもしれませんよ?』

 

『いやだよ〜! あたしはリニスとずっといたい!』

 

『アルフ、無理をいっちゃダメだよ……』

 

『いいんですよ、ありがとうございます。……分かりました、もし私が消滅して天国に行っても神様にフェイト達と一緒にいられるようにお願いしてみます』

 

『『ホント!? ずっといてくれるの!?』』

 

『はい、フェイト達には見えませんけど、私はいつでもそばにいます。約束ですよ』

 

『『うん!』』

 

 

……ごめんなさい、フェイト、アルフ。

私は、天国にはいけないと思います。

 

あなた達に何もしてやれなかった、残酷な真実も教えてあげられなかった、プレシアも説得できなかった私は、きっと地獄で罰を受けるでしょう。

 

出来ることなら、約束を、見えなくてもいいから、あなた達とずっと一緒に、いたかった…………

 

 

――――それが私の生きていた最後の記憶。

 

 

 

 

 

 

 

森の上空、なのはちゃん達が上を見上げても見えるか分からないほどの高さで、俺とリニスさんはドッグファイトを繰り広げていた。

 

「はああああっ!」

 

「わ、ちょ! 速っ、多っ!」

 

リニスさんが閃光の槍を乱射、直線的な軌道だが速度が異常に速く、そして数も多く俺は反撃に転じる間も与えられず逃げる事しかできない。

 

「ぬぐぐっ……! こいつでどうだっ!」

なんとか隙をついて、苦し紛れに人魂をリニスさんに投げつけた。

少しでも怯んでくれればいいんだけど……。

 

ヒュンッ!

 

「遅いっ!」

見事にかわされてしまった。

お返しとばかりに俺に閃光が殺到する。

 

ガガガガガ!

 

「速いっ! いででででっ!?」

 

うん、リニスさんみたいにカッコ良く言ってもかわせないものはかわせないね。

 

 

さっきからずっとこの調子、俺が逃げ回って、反撃しようとしたらかわされて、直撃の繰り返し。

あちこち痛いし、学生服もボロボロである。

 

ぶっちゃけていうとリニスさんは強い、フェイトちゃんの師匠なだけあって戦闘の経験というか、とにかく戦い方が『巧い』のだ。

飛行スキルも、射撃のスキルも俺のソレを遥かに凌駕している。

 

明らかに俺が圧倒されていた。

 

 

というかである。

 

「なっ、なんで『魔法が使えるんだ』!?」

 

 

そう、さっきから俺はその事に思考を奪われているのだ。

 

原則として、俺達幽霊は魔法の源である『リンカーコア』が消滅してしまっている、肉体が無いからだ。

例え元は魔導師のリニスさんでも例外ではない、現に俺も転生条件に『魔法が使いたい』と願っているからだ。

だというのに、リニスさんがさっきから放っているソレは、『フォトンランサー』そのもの。

もし仮に、彼女が魔法を使えるならば迂闊に手を出さず観察に徹するべきだと判断した。

 

だって俺バリアとか張れないもん、攻撃するために近づいたら即バインドでトドメを刺される、間違いない。

 

 

 

「真っ直ぐでだめならこれでどうです! アークセイバー!」

 

「嘘だろオイ!」

 

 

フォトンランサーでは当たらないと判断したのか、今度は手の平から気○斬の如く黄金の輪っかを出現させ、俺に投げつけてきた。

 

 

まずいぞ……、アレには追尾機能があるから俺の飛行じゃ方向転換で止まったとこを狙われる!

 

 

 

「くっ……うおおお!」

 

咄嗟に人魂を右手に精製、アークセイバーから距離をとるために高速飛行である程度進んでから、投げつける。

 

 

「吹き飛べっ!!!」

ドカンッ! と空中でぶつかり合う人魂とアークセイバー。

確か当たったら爆発する性質だったからこれで防げた筈

 

 

 

「無駄です!」

 

シュガガガガガ!

 

「あだだだだだだっ!!?」

 

 

爆煙を切り裂いてアークセイバーが俺に直撃した。

ま、まるで効果なしていうか、体が削れるわ痺れるわ痛い痛い痛い!!?

 

「あぐあっ!」

 

アークセイバーに弾き飛ばされてしまった俺は、体が真っ二つになってないことを確認して安堵する。

 

ぐ……、まさか雷の魔力変換まで出来るなんて。

殺す気はないらしいから体には多少の火傷しかついてないけど、学生服が斜めに裂けてしまった……。

 

 

「どうやら、炎の……、いや『爆発』の魔力変換資質があるようですね」

 

「へ?」

 

ふと、リニスさんが俺を見てそんなことを呟く。

どういうことか、俺は理解することが出来なかった。

え、だってこれ、『人魂』だぜ……?

 

 

リニスさんはそのまま俺を評価するように続けた。

 

 

「爆発の魔力変換資質は少し珍しいですが、『飛行魔法』も『シュート』の精度もまだまだ。接近戦が本領の魔導師というわけですか」

 

「あの、ちょっと待ってください。なんか勘違いしてません?」

「えっ?」

 

 

思わず、口を挟んで訂正しようと、ついでに自己紹介も兼ねて俺は話しだす。

 

 

「俺、『魔導師』じゃないですよ? (別の世界の)地球出身の田中太郎っていう名前で、下にいるなのはちゃんの守護霊やってる普通の高校生です」

 

「……ま、魔導師じゃない? 守護霊? でもさっき爆発の魔法弾を」

 

「いやアレ人魂ですから。ていうかむしろ、何で貴女も死んでるのに魔法が使えるのかこっちが疑問なんですけど」

 

「えっ……ええっ!? 『普通に使える』のでは!? 私も人魂とか『聞いたことがない』ですよ!?」

 

 

本当に『何も知らない』ようで、リニスさんは幽霊なら当たり前に持っているはずの知識を聞いて驚いていた。

一体どういうことなんだ……?

リニスさんの頭の上には『死んだ人がつけてそうな輪っか』が浮いてるから、幽霊の知識があると思ってたけど、『幽霊のことを知らない』のか?

 

それに、『魔法が普通に使える』って……。

 

 

ん?

まてよ、よく考えろ、今のリニスさんは間違いなく『自分が死んでいる』事を自覚してる訳だからもしかして。

 

 

「はっ!? 分かりましたよ、こうして私を混乱させて隙を突く企みなんでしょう!」

 

「はいっ!? まごうことなき冤罪だーっ!」

 

何か、すんごい理不尽な推理をされた。

「貴方の思い通りにはなりませんよ!」といってリニスさんは黄色い閃光を体の回りに何個も浮かべる。

 

せっかく上手いこと場をおさめれそうだったのに……。

 

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しかし、俺も先程のやり取りで『試したいこと』が出来た。

ちょうどいい機会だ、リニスさんの謎を暴くついでにやってやる!

 

「やああっ!」

 

ドドドドド! と閃光の槍が何本も俺に向かってくる。

 

俺の高速飛行は最高速に至るまで加速のための時間がかかるから、本来ならこの攻撃は爆発飛行じゃないとかわせないのだが……。

 

 

「まずは、試しに……!」

 

迫り来る槍を睨みつけ、俺は意識を集中する。

 

 

 

(考えろ、思い出せ)

 

(さっきのなのはちゃんとフェイトちゃんの戦いを、今のリニスさんの戦い方を)

 

(もっと具体的に、自分とイメージを重ねろ……『大空を舞う彼女達の姿』を!)

 

そして、俺の脳裏に移し出されたのは『なのはちゃんの魔力弾を華麗にかわしたフェイトちゃん』のイメージ!

 

「そりゃああっ!!!」

 

ヒュンッ!

 

「えっ!?」

 

上へ左へ後ろへと瞬時に加速して飛び回り、見事俺は全ての魔法弾をかわすことに成功した。

自分でやっててアレだけど、内心凄い驚いてる。

 

「う……上手くいったか。それにしても『想像通り』めちゃくちゃ速いなフェイトちゃんは……」

 

そう、俺は飛行のイメージをフェイトちゃんの飛行魔法で『上書き』して、彼女のスピードを真似たのだ。

100パーセント完全にとは言えないが何はともあれ、これで半分確信した。

やっぱり、リニスさんは……!

 

 

「くっ……それならっ!」

 

リニスさんは急に飛行速度を上げた俺に驚いているが、その焦りを打ち消すように、手の平に巨大な閃光を作り出した。

あれは多分最後にフェイトちゃんが使ったものだ、今までのやつより威力も速度も上なのだろう、俺がかわしきれないほどには。

 

 

「…………」

 

それに対して、俺は両手を開き、それを合わせてリニスさんに向け突き出す。

形てきには、かめは○波を打ち出すみたいな格好だ。

 

さーて……これでリニスさんの謎が判明するはずだ……!

俺は再び、意識を集中する。

 

 

(思い出せ、確固たるイメージを持つんだ)

 

(フェイトちゃんが使ったあの魔法を、なのはちゃんが得意な砲撃を)

 

(イメージするのは彼女達の戦い! 自分に重ねろ! 違和感は自分に合うようアレンジしてうち消せ! そして思い込むんだ『俺の手にあるのは、撃ち抜く魔法』!!!)

 

そして、俺の両手の平には黄緑色の炎が現れて。

 

 

 

 

「『サンダースマッシャー』!!!」

「『ディバインバスター』!!!」

 

ドン!!! と、黄緑色をした炎の砲撃と、黄金に輝く雷の砲撃が空中でぶつかり合った。

二人の砲撃の威力はほぼ互角、中心で爆発し何事もなかったかのように掻き消えた。

 

後に残ったのは、驚愕に染まった表情のリニスさんと、完全にその謎を確信した俺だけ。

 

「な、何故『砲撃魔法』を……!? 貴方は接近戦が得意なのでは、それに、急に動きも良くなってる……!」

 

 

分かったぞ……リニスさんは本当に幽霊の知識が殆ど無いんだ、だからこそ。

 

彼女は無意識のうちに『普段魔法を使う感覚で人魂を使っていた』のだ!

 

つまり今までフォトンランサーと思っていたのも実は人魂、リニスさん自身は人魂と気付いていないだろうけど。

雷の性質も彼女が人魂を『雷の魔法弾』と思い込んでいたから、変質してしまっていたワケ。

 

俺もなのはちゃんの砲撃を完璧にイメージは出来なかったが、俺自身がやりやすい炎の性質をもつディバインバスターに『酷似した人魂』を撃つことができた。

 

いやー、人生初砲撃は気持ちいいぜ。

転死する前から憧れてたから感動してる、この世界に来て良かった……!

 

 

あと、もう一つ分かった事がある。

 

 

「今まで、手を抜いていた……? いや、さっきの動きはまるで……フェイトの……?」

 

(やっぱりだ)

 

リニスさんが、本当に守護霊の概念すら知らないのなら――――

 

 

 

 

 

(――――彼女は幽霊として『飛行』と『人魂』しか使えない!)

 

「勝てる……勝てるぞこの戦い!」

 

「まだ終わってません! アークセイバー!」

 

今度はアークセイバー、それも連続で3つも発射である。

だが、これも攻略法を思いついたぜ!

 

俺は右手に人魂を作る、今にも暴発しそうなぐらい燃える勢いを強くして、無理矢理押しとどめ、縦に噴出させれば……。

 

バシュウ!

 

「フェイトちゃんのバルディッシュを参考に! 『人魂ソード』だ!」

 

 

俺の右手に黄緑色の炎剣が出来上がる。

別に剣道やってた訳じゃないけど、吹き上げ続ける炎がチェーンソーみたいになってるから『触れれば焼き切れる』。

 

 

「せいっ、オラ!」

 

ガキン! ガキンガキンッ! と、俺は人魂ソードをアークセイバーに当てて、弾き飛ばした。

 

やはり、リニスさんのアークセイバーは爆発するんじゃなくて切ることに特化させてたらしい。

ならこっちも切ることに特化させて、相殺すればいいってこと。

 

「!?」(さっきとはまるで別人……。何者なんですか、彼は!?)

 

「今度はこっちから行くぞっ! 反撃開始だ!」

 

 

リニスさんが幽霊のことを知らないなら、ソコを突けば必ず隙ができるはず!

俺は左手に『爆発飛行用』の人魂を作り出す。

 

ただし、この人魂もただの吹き飛ばし用とは『ちょっと違うタイプ』だ、今からそれをお見せしよう。

 

 

 

「爆発飛行ッ!」

 

ドカン! と人魂は俺の真横で爆発する、俺が右へ吹き飛ぶが、違うのは『その後だ』。

 

 

モクモクモク!

 

「自爆した!? ゲホッゲホッ、くっ、煙が……!」

 

そう、この人魂は爆発した後に大量の『煙幕』を吹き出すように設定してあるのだ!

イメージしたのは刑事物のドラマでよくある催涙グレネード、といっても目眩ましにしか使えないし特に体に害はありません。

 

 

「まだまだぁ!」

 

ドカン! ドカン! ドカン! とかつて暴走体にやったことと同じように、リニスさんの周りを何度も爆発飛行を繰り返す。

 

「な……! 周りが、見えない!」

 

リニスさんが焦りを含んだ声をあげる。

 

煙幕つきですから。

これで俺の姿は見えまい!

 

 

よし、十分リニスさんの視界を覆い尽くしたしそろそろ攻撃に移るか。

 

 

ドカン! とまずはリニスさんの後ろへ回り込み、右手の人魂ソードの切っ先をリニスさんに向ける。

あとは俺の背中で人魂を爆発させる!

 

ドカン!

 

「トドメだああああ!!!」

 

「ッ! しまった

 

今更気づいても遅い!

俺はそのままリニスさんに突っ込んだ。

 

 

 

 

『だが』。

 

「……と、言うと思いましたか?」

 

ガッ! と俺の右手はリニスさんに掴まれてしまった。

もっと前から、俺が後ろにいることを気づいていたかのように。

 

「んなっ!?」

 

「私は元々、猫ですよ? 聴覚は人間の何倍もあります。無論、音だけで貴方がどこにいるのか判別するのも簡単です」

 

リニスさんの空いた右手には、俺と同じような金色に輝く光剣が握られていた、フェイトちゃんの魔力刃そのものだ。

彼女は動揺する俺に向かってそれを振り上げ。

 

「そして私はフェイト達の先生です。射撃も近接格闘も戦法も全て私が教えました。そんな私自身が、『近接格闘が出来ない』と思いますか?」

 

ザンッ! と、俺を袈裟懸けに切り下ろした。

俺は、為す術もないままに切られて――――

 

 

 

 

――――ドパッ、と大量の鮮血を撒き散らした。

 

 

「えっ?」

 

後ろへと倒れていく視界の中で、リニスさんの呆然とした様子が見える。

それはそうだろう、だってリニスさんは『俺を戦闘不能』にするために攻撃した、なのにこの量の『出血』は致死量の筈なんて思っている。

 

え? なんで俺がこんな事を考える余裕があるかって?

 

 

 

 

 

「残念だったなぁ、トリックだよ!」

 

「えええっ!!?」

 

だってこの鮮血、『血文字』だもん。

 

俺がリニスさんの戦闘力を侮ると思ったか!

生憎反撃されることぐらいは予想済みだぜ、リニスさんも血文字だなんて気づけるはずないから確実に騙されてくれると信じていたしね。

 

 

俺は跳ね起きて、今度こそ隙を見せたリニスさんに人魂ソードを突き付けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリン、とリニスさんに触れた瞬間、まるで薄い氷の板が割れたように人魂ソードが『砕け散った』。

 

「「――――え?」」

 

今度は、俺もリニスさんも呆然としていた。

 

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『アイツはね、マトモすぎるんだよ。幽霊どころか人間としても』

 

『絵に書いたような『普通の人間』が他の奴に向かって本当に殺す気で人魂を向けられる訳がない、例えそれが敵だったとしてもね』

 

『だからアイツの人魂には文字通り『攻撃力がない』相手を傷つける意志がない。吹き飛ばすことが出来ても、それだけなんだ』

 

『殺意を向けられるなら、人ひとり燃やすことなんて簡単に出来るくらいには強い筈なんだけどね。アイツは絶対に手加減する、無意識のうちに。何年も師匠やってるアタイが言うから間違いない』

 

「でもそんな優しい所も好きなんやろ?」

 

『そうそう……ってちがーーう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁ……、う……うっ。くそ、なんでだ……?」

 

「…………」

 

数分後、俺とリニスさんの戦いは終わりを迎えていた。

俺の完全敗北という形でだ。

 

あれから、いくら動きが良くなっても、攻撃を当てることができても、『リニスさんに傷ひとつつけられない』。

 

もちろん原因なんて分からない、だが片方がダメージを与えられてもう片方がダメージを与えられない戦いなんて勝敗は見えている。

 

結果、俺はリニスさんの攻撃を受け続けて体も意識もボロボロになり、空中に浮かんでるのがやっとの状態。

 

「……殺す気はありません。教えて下さい、貴方は一体何が目的なのですか?」

 

リニスさんは動けなくなった俺に話しかけてきた。

最早、危険は無いと判断してくれたのだろうか、しかし俺の意識は朦朧としていて何を言えばいいのか……。

 

 

「初めて見た時は、ジュエルシードを狙っている魔導師の一人と思っていました。でも貴方はジュエルシードに見向きもせずに白い女の子に攻撃した私に向かっていった」

 

「でも、白い女の子の仲間だとしたら行動が一致しないんです。なんで貴方はフェイトと戦うあの子に加勢しなかったのですか?」

 

「他にも人魂とか、急に強くなったのはどうしてかとか、聞きたいことは山ほどあります。ですが一番知りたいのは、『貴方の目的はフェイト達の障害になるのか』それだけです」

 

 

俺の……目的……?

そんなこと、決まってる、原作以上のハッピーエンド。

 

しかし、言ってどうする。伝えるのか……? いや、伝わるのか?

これからフェイトちゃんに待ち受ける悲劇を、リニスさんは信じてくれるのか?

 

 

靄がかかった思考回路で必死に考えるが、答えは出ない。

もう、考えることも辛いほど体が痛かった。

 

 

「ダメ……です……。フェイトちゃんに、ジュエルシードを……集めさせちゃ、いけない……。貴方も、分かっている……ハズだ。上手くいかない、ことを」

 

 

「ッ!?」

 

だからもう、何も考えず掠れる声で懇願するしか出来なかった。

 

ボロボロの腕を伸ばして、ただ、悲劇を止めたくて。

 

リニスさんは俺の言葉を聞いて驚いていた、当たり前か……まるで俺がフェイトちゃんの事情を知ってるかのような振る舞いだったから。

 

事実知ってるし、本当は言いたくなかったがもう、こうするしかないだろう。

 

リニスさんなら、恐らく世界で一番フェイトちゃんを愛していた彼女なら、分かってくれる、そう思った。

 

しかし、残念ながらこの世界はそんなに優しくないみたいだ。

 

「……貴方が、何を知っているのかは聞きません。知りたくもありません。ですが、貴方はフェイトにとって障害にはなりえないでしょう。次に会えば容赦はしませんが」

 

リニスさんは俺に背を向けた、フェイトちゃんが飛んでいった方向だ。

 

「それだけ分かれば十分です。……それに、私達には何も出来ませんよ……」

 

 

 

 

 

「上手くいかないことだって分かってるんです、見守るだけじゃなくて、助けてあげたいって数え切れないぐらい思いました。でも、死人は生きている人間に、何もしてあげられないんです。触れることすらできないんですから」

 

彼女のその目はかつての俺と同じで、何もかもを諦めてしまった目だった。

 

 

そう言って、飛んでいくリニスさんに俺は何もできなくて。

 

 

「ちくしょう……。ちくしょおぉぉぉぉっ!!!」

何もかも上手くいかない世界と、自分の力の無さを呪うしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「惜しかったな、後一息で勝てたのに」

 

「あそこで決着をつけられなかったのが痛かったよねえー」

 

「どうしようかねぇ、彼も仲間に入れてあげないこともないんじゃけど」

 

「まあ待てよ、俺は気に入ったぜアイツ。まず俺が力を試してやる」

 

「また始まりましたよ……、私の時もいきなり襲いかかってきましたよね」

 

「力を試すにしても、彼が回復しなければ始まらないデス。今は計画発動の時まで動くのはやめるデス」

 

「今回のジュエル―シードで、計画の成功は目に見えてるしぃ。そろそろ都市伝説が来てもおかしくない時間だしぃ」

 

戦いの一部始終を見終えた闇は、いまだその姿を見せず。

説明
これで、今まで書き上げていた話の全ては投稿し終えました。
更新ペースは今後がくんと落ちると思います、具体的に言うと週1、2ぐらいか。

ライバル対決、田中編第一回決着です。
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魔法少女リリカルなのは ソウルフル田中 幽霊 ギャグ 

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