IS学園にもう一人男を追加した 〜 67話 |
一夏SIDE
一夏
「楯無さんっ!!」
俺は、雪片弐型で氷の柱を斬る。
苦しさから解放された楯無さんは、ズルズルと壁伝いに倒れる。
一夏
「楯無さん、大丈夫ですか!?」
楯無さんは咳き込みながらも、首を縦に振る。
一夏
「獅苑!!」
楯無さんを壁に寝かせ、雪片弐型を握り締めて獅苑に斬りかかり、その背後で鈴もタイミングを合わせて襲い掛かる。
獅苑は動く事無く、左手を地面に添えて・・・
獅苑?
『グランド・スピーク』
一夏・鈴
「っ!?」
地面から何本もの氷の柱が飛び出し、前方と後方いた俺と鈴は氷に捕われる。
一夏
「ぐっ・・・このっ」
鈴
「な、何よ、これ・・・!」
まったくビクともしない。
その間、獅苑は誰かと通信しているようで、口をモゴモゴと動かしている。
すると、獅苑は浮遊して、その場を飛び去ろうとする。
鈴
「ちょっと、待ちなさいよ! アンタ!」
鈴が氷内部で衝撃砲を撃って、自分にもダメージを負いながらも獅苑に突っ込む。
俺は静止させようと叫んだが、鈴の耳に入らず、獅苑の背後から双天牙月を振り上げた。
鈴
(取ったっ!)
一瞬、鈴が口元を緩めたが、現実はそう簡単にいかなかった。
獅苑?
『ブリセット』
鈴
「え?」
獅苑が振り向きざまに振るった"鉄槌拳(てっついけん)"が『甲龍(シェンロン)』を殴り飛ばした。
しかも、降下中にISが消えて、鈴は生身で地面に落ちた。
一夏
「鈴っ! おい、鈴っ!」
鈴
「・・・うっ」
良かった・・・
ホッとすると、アリーナ外にいた箒達がアリーナに駆けつけた。
俺が4人に呼びかけて、鈴と楯無さんを搬送するように叫ぶ。
セシリアとシャルが鈴を介抱して、慎重に運び出す。簪は楯無さんの元へ。箒は俺を拘束している氷を削って解放する。
一夏
「っと・・・獅苑は!?」
空を見渡すが、獅苑の姿はない。ステルスで逃げたか・・・
一夏
「あの野郎・・・!」
簪
「あ、あの・・・」
一夏
「何だよっ!?」
簪
「ひっ!」
箒
「お、おい、一夏」
一夏
「あ、え・・・すまん。どうしたんだ?」
簪
「え、えっと・・・お姉ちゃんの姿が見えないんだけど」
楯無SIDE
虚
「もうすぐ着きますよ、お嬢様」
楯無
「"お嬢様"は・・・ううん、今回はいっかな」
アリーナからコソコソと抜け出して、現在、虚ちゃんと共に"海岸"を目指している。
楯無
「それにしても、虚ちゃんが車の免許を持ってたなんて、知らなかった」
虚
「お父様に無理を言って、お父様の友人に特別に教わったんです。去年から暇を作って、教習場に通ってたんですよ」
楯無
「相変わらず、善吉おじ様は娘に甘いわね・・・」
いや、甘いってレベルじゃない。娘のためなら、非行ギリギリな行為に走りかねない人だからね、善吉おじ様は。
普段は落ち着いていて、ジェントルマンなのに・・・
虚
「そういえば、先ほど校内放送で学園待機の命令が出てましたよ。私達が校外に出たことが知れたら、後が怖いんじゃないんですか?」
楯無
「大丈夫大丈夫。その時は二人で」
虚
「失礼ですが、お嬢様は生徒会長。一番、重い罰が下されると思います」
楯無
「重い罰って?」
重い罰、重い罰・・・出来れば、織斑先生関係の罰は避けたい・・・
虚
「分かりません・・・はい、着きましたよ」
車は岩場近くに止まる。
私は手の平サイズのレーダーを弄んで、海岸に手配したモーターボートに乗る。
エンジンをかけて、海岸にいる虚ちゃんに目を向ける。
虚
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
楯無
「うん、行ってくる。お茶の用意よろしくね」
そう返し、ボートのエンジンをかけた。
向かう先は、レーダーに写っている赤い点。戦闘中に獅苑君のISにつけた発信機の反応。
[ガタッ、ガタッ]
楯無
「ん? 何これ?」
何故、ダンボールがここに・・・
乗った時に死角で見えなかった場所に大きめのダンボール。
運転をオートに設定して、ダンボールの蓋を開くと・・・
本音
「あっ・・・」
楯無
「・・・何してるの?」
膝を抱えて、身を丸くしていた本音ちゃんがいた・・・
千冬SIDE
千冬
「・・・束」
束
『はいはーい! 場所は特定済みだよ!』
場所は、地下特別区画。
モニターにはデカデカと、束が特定した"無人島"が映し出されていた。
束
『いや〜、10年の時を経て、"白騎士"がまた舞い降りるだね〜」
千冬
「・・・束。聞きたい事がある」
束
『なになに?』
千冬
「お前が朝霧を嫌う理由は何だ? 私のクローンだからか?」
束
『別にそれはどうでもいいよ・・・ちーちゃん、あれがどういう生活してたか、知ってる?』
千冬
「プロフィールには、親と祖父母が死去した以外、普通の家庭で育ったみたいだが」
束
『"普通の家庭"・・・ね。ちーちゃん、世の中って酷いよね。ちーちゃんといっくんは苦しい生活してきたのに、あれは普通の生活』
千冬
「お前・・・」
束
『でもまぁ、今更どうでもいいんだけどね♪ ほらほら、ちーちゃん。新白騎士の力、見せ付けてやろうよ!』
千冬
「あ、ああ・・・」
カプセルから出した『暮桜』を装着。第2回モンドグロッソ大会以来、装着していなかったからか、懐かしい感覚が肌に伝わる。
天井の隔壁が開き、学園内の木が生い茂る庭に出て、特定した島へ目指す。
今は校舎の後始末に学園の生徒と教員総動員で動いているため、誰にも見られる事はない。
高度が6000メートルを超えた時、束に通信を入れる。
束
『どうしたの、ちーちゃん?』
千冬
「あ、えー・・・ゴホンッ。お前がそこまで私達の事を思っていてくれていたとはな・・・だから、その」
束
[ワクワク]
千冬
「・・・」
向こう側でニヤけている束の顔が浮かぶ。私は頬を赤らめて通信を切った。
束SIDE
束
「ちぇ〜、恥ずかしがらなくてもいいのに・・・」
でも、くーちゃんにお使いさせた"マイクロチップ"に仕込んでおいたプログラムで、ちーちゃんの顔画像がリアルタイムで取れたから儲けもんだよね
くー
「束さま」
束
「ん〜?」
回転イスで後ろを向くと、トレイを持ったくーちゃんがいた。
そのトレイの上には、少し焦げたクッキーが乗せられている。
くーちゃんが"食べて"と眼差しで見てきたので、ヒョイと一つを摘み上げ、口に放り込む。
束
「っ!」
おいしかった。今までの料理より断然。
愛情が私にとって最大の調味料だが、技術力が上がったのかな?
だから、私は聞いてみた。誰かに習ったの?って。
くーちゃんは一回頷いて、誰に?と聞いたけど・・・
くー
「えーと・・・名前、聞くの忘れました。でも、とても優しい人でした」
束
「そうなんだ・・・じゃあ、今度会えたら、お礼しないとね。あと、もう少し、甘い方がいいかな」
くー
「は、はい!」
私が指摘したら、くーちゃんは厨房へと走り去っていった。
束
(・・・そういえば、くーちゃんの料理で意見をしたの始めてかも)
投稿者SIDE
[格納庫]
R
「うへぇ〜! これ全部、作ったの!?」
薄暗い格納庫に『R』とフランと山田。
『R』は格納庫に置いてあるIS並みの大きさをほこる"何か"を見て、驚きの声を上げる。
その数、2341機。
フラン
「あーたり前じゃな〜いですか!!」
山田
「二日間、寝ないでやりました・・・ふぁああ」
R
「"山田"なのに、意外と腕はあるんだね」
山田
「もう、つっこむ気力もないです・・・」
そう言って、フラフラと壁に寄りかかって、尻餅をつく
R
「山田があんなんなのに、ユウキは相変わらず、ゲームしてたよね? 甘やかしたら、本当に廃人になるんじゃ・・・って、聞いてないし」
フランは自分の"作品"をペタペタと一機一機に触れ、"うんうん"と頷いて回っていた。
その代わりに、『R』の問いに山田が答える。
山田
「ユウキさんは一番大変な"自動自律プログラム"の方を担当してましたよ。仕事量も僕達より倍ぐらいですし」
R
「・・・大丈夫なの、それって?」
真面目に仕事をやらず、日中ゲームにふけるユウキが、徹夜してまで仕事するとは『R』には到底想像が出来なかった。
"徹夜"という部分は、ユウキの得意分野だとは思うが・・・
山田
「ゲーム感覚でやってたみたいですよ。"進路の設定"とか"起爆時間"とか」
R
「進路? 起爆? そういえば、これって何の目的で作られたのよ?」
山田
「IS型自律ミサイル『ドラッツェ』です」
R
「これが・・・ミサイル? そういえば、この機体の形、どこかで・・・」
山田
「どこかのアニメから引っ張り出したらしいです。名前だってそうですから」
"ゲームの事になると、これだ・・・"と、呟く『R』
R
「それで、どういう"ミサイル"なの?」
山田
「ドイツの『AIC』を利用して常時、機体から半径1メートル以内に発動したまま、目標に向けて飛行します」
R
「それだと、迎撃は難しそう」
山田
「限度はありますがね・・・それで、前もって設定したタイマーで、機体の全てのエネルギーを暴発させて」
R
「ボーンッ・・・って訳、か。エグイ事、考えるわね博士は」
山田
「あ、僕の発想なんです。博士は僕の発想と、ユウキさんの意見を組み合わせただけで」
R
「だったら、尚更(なおさら)よ。アンタが"金歯親父"に従って、こんなもん作るなんて、さ」
山田
「僕だって、本当は人の役に立てるものを作りたかった・・・けど、博士の事を思うと」
R
「"人質"・・・まだ諦めきれないんだ、博士は」
山田
「博士は自分が作ったものを"自分の子供"のように思っていますから。皆さんもそうでしょ?」
R
「・・・さぁ?」
マドカ
「・・・おい」
B
「何だ?」
場所は島の砂浜。『砦(フォート)』基地の外という事になる。
『B』とマドカのほかに、『W』が海際で波を眺めている。
マドカ
「次の作戦が成功したら、お前はどうする?」
B
「さぁな。その後も戦うんじゃないか?」
マドカ
「なら、失敗したら?」
B
「それこそ、分からないだろう。まぁ、戦う事しか脳にないからな」
マドカ
「そうか・・・」
B
「・・・」
沈黙・・・
B
「・・・だけど、パンを焼いてみたいな」
マドカ
「・・・は?」
思いがけない言葉に、マドカは目が点になる。
マドカ
「どこから、パンが出た?」
B
「何となくだ・・・それより、お前は"織斑姉弟"を始末したらどうすんだ?」
マドカ
「別に。組織を抜けて、ひっそり暮らすさ」
B
「暮らせんのか? 家庭的能力ゼロのお前が?」
組織から抜け出せる事ではなく、生活の事を心配する『B』
マドカ
「わ、私だって、練習すれば料理くらい・・・」
B
「無理だな。獅苑(アイツ)に手ほどきしてもらっといて、まったく進歩がなかったじゃねぇか」
マドカ
「時間がなかっただけだ! もっと、時間をかければ・・・かければ・・・」
俯くマドカ。そんなマドカを見て、『B』はため息をつく。
B
「・・・あ、そういえば、ジジィが」
マドカ
「?」
B
「獅苑(アイツ)は俺らとは違って"特別"って、言ってたんだけど。何か知ってるか?」
マドカ
「私が知る訳がないだろう」
B
「それもそうか・・・なら、本人に聞いてみよっかな?」
獅苑?SIDE
獅苑?
「・・・あれ?」
気づけば、海の上。『砦(フォート)』に向けて、帰投途中だった。
獅苑?
「??? 何がどうなってんだ?」
ラン・ルン・ロン
[さぁ・・・?]
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ネタを考える毎に、パクリが増えていくわ・・・ すみません |
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