英雄伝説〜光と闇の軌跡〜  外伝〜一角候との邂逅〜
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〜セバスの門・地下10F〜

 

「それにしても『すばらしい音楽を聞かせろ』だなんて、魔神なのに変わった事を言う方なんですね。」

「うむ!どんな魔神なのか、興味がわいて来た!」

迷宮――セバスの門を歩きながらプリネとリフィアは話していた。

「………音楽を愛しているという事は、もしかしたらそれほど凶暴ではないかもしれませんね。」

「ああ。……ただ、誘拐という真似をした時点で凶暴ではないと言い切れんが。」

ペテレーネの言葉にリウイは頷いていた。

「それより………マスター………本当にマスターが音楽を聞かせるのですか?」

そこにツーヤが心配そうな表情でプリネを見た。

「ええ。この中で私が一番楽器をよく触っていましたから………何かあったら、その時は護ってくれるのでしょう?」

「………はい。マスターはあたしが護ります。」

プリネに微笑まれたツーヤは凛とした表情で答えた。

「…………どうやらついたようだぞ。」

歩いていたリウイは奥から漂う気配に気づき、足を止めた。

 

「何者だ!この我の許可なく、ここに入って来る無礼者よ!名乗るがいい!」

そして奥から角の生えた女性が出て来て、リウイ達を睨んで叫んだ。

「………私の名はプリネ。レンストの王女を返してもらうために、参上しました。……貴女の名は?」

そこにプリネが静かに角の生えた女性の前に出て、名乗り出た後女性の正体を尋ねた。

「フム。見た所”闇夜の眷属”か………まあいい。我の名を知り、驚くがいい!我はアムドシアス!ソロモンの一柱の魔神にして、美と芸術を愛する者!」

女性――ソロモン72柱の一柱――魔神アムドシアスは高々と言った。

「ほう。………という事はパイモンと同族の者か。」

「………ソロモンの魔神が何故、こんな真似をした?」

アムドシアスの正体を知ったリフィアは驚き、リウイは目を細めて尋ねた。

「それはここ最近、素晴らしい音楽を聞いていないからだ!人間は儚く、弱いが芸術を作ったのも人間。ならば彼らに頼むというのが道理!」

「あの………だからと言って、誘拐をして頼むというのは少し、間違っている気がするのですが…………」

高々と言うアムドシアスにペテレーネは遠慮気味に話しかけた。

「それは奴らが悪いのだ。この我自らせっかく頼みに来たというのに、奴らは目の色を変えて我を襲って来たからな。王女を攫ったのは奴らを大人しくさせるためだ。」

「…………どちらが悪いのか、イマイチよくわかりませんね………」

アムドシアスの説明を聞いたツーヤは首を傾げていた。

「あ〜!なんで、貴女がそこにいるの!?」

そこにペルルがプリネの身体から出て来て、アムドシアスを見て驚いた。

「ペルル?知っているのですか?」

「う、うん………昔、ボクと一緒にセリカの使い魔をやっていた魔神でセリカを逃がすために『狭間の宮殿』に残って『神の墓場』に飛ばされたはずなんだけど………」

プリネに尋ねられたペルルは信じられない様子でアムドシアスとの関係を説明した。

「む?どこかで見た事のある羽娘だな。」

「ひっど〜い!ボクの事、忘れたの!?」

アムドシアスの言葉を聞いたペルルはアムドシアスを睨んだ。

 

「とりあえず、ペルルの話は後で聞くとして………音楽を聞かせれば、王女は解放してくれるのですね?」

「………この我を感動させられればな。」

静かに問いかけるプリネの問いにアムドシアスは頷いた。

「わかりました。………ツーヤ、例の物を。」

「はい。マスター。」

そしてプリネはツーヤから街で買ったヴァイオリンを受け取った。

「ほう………ヴァイオリンか。フム。”闇夜の眷属”の者が何を弾くかと思ったがよりにもよってそれとはな………生半可な曲を聞かせたら、承知せんぞ。」

「…………始めます。」

そしてプリネはヴァイオリンで演奏を始めた

 

〜〜〜〜〜〜〜〜♪

 

「うむ!さすが余の妹よ!素晴らしい演奏だな!」

「凄い綺麗な旋律です………こんな音、聞いた事ないです…………!」

「フフ………相変わらず、上手いね、プリネ。」

プリネの演奏――『星の在り処』を聞いているリフィアやツーヤ、ペルルは微笑んでいた。

「まさかこんな所で役立つとは思わなかったな………今後産まれて来る我が子孫達の教育はお前に任せた方がいいかもしれんな。」

「そ、そんな………私なんかが恐れ多いです………」

「そうか?プリゾアから学んだお前ならできると思うが。」

リウイはプリネにどんな教育を施すかを考えたペテレーネを褒め、褒められたペテレーネは恥ずかしそうな表情をしていた。

「…………………」

一方アムドシアスは真剣な表情で黙って聞いていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜♪

 

そして演奏は終わった。

「………以上です。いかがでしたでしょうか?」

演奏を終えたプリネはアムドシアスを見た。

「もう一度、今のを頼む!」

「え?は、はあ………」

アムドシアスの頼みにプリネは戸惑いながらまた、『星の在り処』を弾き始めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜♪

〜〜〜〜〜〜〜〜♪

 

プリネが弾き始めるとなんとアムドシアスが突如異空間より小さな竪琴を出して、プリネの曲と同じ曲を弾き始めた!

「おお!よくわからんが、凄い事になってきたな!」

「え〜と……この後、どうすればいいんでしょうか?」

リフィアはアムドシアスとプリネの合奏にはしゃぎ、ツーヤは苦笑していた。

「………………」

一方リウイは嫌な予感がし、頭を抑えていた。

「リウイ様?どうなされたのですか?」

「いや…………少し嫌な予感がしてな。」

ペテレーネに尋ねられたリウイは溜息を吐いて答えた。そして2人の合奏は終わった。

 

「………素晴らしい曲だったぞ!まさかこの我自身が思わず合奏させるほどの腕を持つ者に出会えるとは……!」

「あ、あはは……そこまで言ってもらえるとは思えませんでした。………それで王女は返してもらえるでしょうか?」

アムドシアスの賛辞にプリネは苦笑しながら受け取った後、尋ねた。

「うむ!そんな事より、見た所帯剣はしているようだが、お前は戦うのか?」

「え?は、はあ………一応私は皇女ですし、民や自分の身を守る為に戦う時もあります。」

「なんだと!あれほどの曲を弾けるのに戦いのような野蛮な事をするのか!そんな事をすれば、大事なお前の身体が傷つくだろう!」

「え、え〜と?」

アムドシアスの様子にプリネは首を傾げていた。

「それはいかんな!フム。このような所にずっといるのも飽きていた所だ。美と芸術を愛するこの我がお前を護ってやろう!」

「「え!?」」

「何!?」

「ええええええええ〜!?」

そしてアムドシアスの提案にプリネやペテレーネは驚き、リウイも目を見開いて驚き、ペルルは声を大きく上げて驚いた。

「さあ、早く両手を出すがいい!」

「え?は、はあ………」

そしてアムドシアスに急かされたプリネは両手を前に出した。そしてアムドシアスはプリネの両手を握り、プリネの魔力と同化して、その場から消えた。

「「「「「「…………………………」」」」」」

アムドシアスが消えた後、その場は静寂に包まれた。

 

「え、え〜と………とりあえず、一件落着………なんでしょうか?マスターの使い魔の方も増えましたし………」

そして静寂を破ったツーヤが遠慮気味にプリネに話しかけた。

「そう……でいいと思うわ。………まさか魔神の方が力も示さず、自ら使い魔になるなんて思いもしなかったけど………」

「うむ!まさか余に続いて魔神を使い魔にするとはな!余もお前の姉として、鼻が高いぞ!」

ツーヤに話しかけられたプリネは今の状況に戸惑いながら頷き、リフィアは得意げに胸を張っていた。

「フウ………セオビットやディアーネに続いてまた一癖のある奴が増えたものだ………」

「心強い仲間が増えたと思えばいいじゃないですか。………だから、元気を出して下さい、リウイ様。」

一方リウイは疲労感が漂う様子で溜息を吐き、ペテレーネはリウイを元気づけていた。

「まさか、またアムドシアスと一緒に戦う時が来るなんてね〜。変な気分。………プリネ、早速呼んだら?」

「ええ。…………アムドシアス!!」

ペルルに促されたプリネはアムドシアスを召喚した。

「改めて名乗ろう!我が名はアムドシアス!美を愛する魔神ぞ!この我が力を貸してやるのだ!光栄に思うがいい!」

「え〜と………これからよろしくお願いしますね、アムドシアス。」

 

こうしてプリネは新たな使い魔――魔神アムドシアスを得た。その後リウイ達はレンストの王女を助けた後、カーリアン達と合流し、冥き途へと向かった………

 

 

 

 

 

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