英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 204 |
エルモ村に到着したエステル達は温泉の女将から温泉が煮えたぎっている状況を聞き、原因を調べるため、源泉がある洞窟の先へと進み、奥に到着した。
〜温泉の源流・最奥〜
「な、なにこれ……。地面いっぱいに広がって……」
「エネルギーの脈……。これって、ひょっとして……」
エステルは地面に広がる線を見て驚き、ティータは不安そうな表情になった。
「……クク……。ずいぶん遅かったじゃねえか。」
その時奥から男の声が聞こえて来た。
「あ……!」
エステル達が声がした方向を見ると、そこには黒いスーツを着用し、黒いサングラスをかけた男が地面に刺している”杭”のような物の傍にいた。
「サ、サングラスの男……!」
「あれは……『ゴスペル』付きの杭か……?」
「よう、小娘ども。わざわざご苦労だったな。せいぜい歓迎させてもらうぜ。」
「あんた……。『身喰らう蛇』の人間ね!」
不敵に笑っている男をエステルは睨んで尋ねた。
「クク……。執行者No,[。『痩せ狼』ヴァルター。そんな風に呼ばれているぜ。」
「やはりか……。ツァイスでの一連の地震も全部てめぇの仕業ってわけだな。」
男――ヴァルターが名乗るとアガットはヴァルターを睨んだ。
「クク、あたり前のことをわざわざ確認してんじゃねぇよ。こいつは『結社』で開発された七耀脈に干渉するための『杭』でな。本来、真下にある七耀脈を活性化させるだけの装置なんだが……。《ゴスペル》を付けることで広範囲の七耀脈の流れを歪ませて局地的な地震を起こすことができた。ま、そんな実験をしていたってわけだ。」
「過去形ということはもう実験は終わったんですか?」
ヴァルターの話を聞いたクロ―ゼは不安そうな表情で尋ねた。
「まーな。本当は建物が崩れるくらいド派手なのをぶちかましたかったんだが……。そこまでの力は出せなかったな。」
尋ねられたヴァルターはつまらなさそうな表情で答えた。
「そ、そんな……。建物が崩れちゃったりしたら住んでる人が危ないですっ!」
「クク、だからいいんだよ。瓦礫に手足を潰されてブタのように泣き叫ぶヤツもいるだろうし……。脳味噌とハラワタぶちまけてくたばるヤツもいるだろう。よかったら嬢ちゃんもそんな目に遭ってみるかい?」
ティータの叫びを聞いたヴァルターは凶悪な笑みを浮かべてティータを見た。
「ひっ……」
ヴァルターに見られたティータは脅えた声を出した。
「ティータちゃん!」
そしてミントはティータを庇うかのようにティータの前に出て、ヴァルターの視界からティータを遮った。
「こ、こいつ……」
ヴァルターの性格を軽く知ったエステルはヴァルターを睨んだ。
(………よりにもよって一番厄介な性格をした相手がこんなにも早く出て来るとはな………)
(どうやらニル達が出る必要があるかもしれないわね………)
エステルの身体の中から事の成り行きを見守っていたサエラブとニルはヴァルターを睨んでいた。
「クク、そう恐い顔するなって。俺はな、潤いのある人生には適度な刺激(スパイス)が必要だと思うのさ。いわゆる、手に汗握るスリルとサスペンスってやつだ。いつ自分が死ぬとも分からない……そんなギリギリの所に自分を置く。どうだ……ゾクゾクしてこねぇか。」
「ケッ……マゾ野郎が。だが、これでようやく判ったぜ。てめえ―――俺たちを誘き寄せやがったな?」
ヴァルターの問いに呆れたアガットはヴァルターを睨んで尋ねた。
「え……!?」
「思わせぶりな各地の目撃情報……。要塞で地震があった直後にエルモの源泉が沸騰し始めたこと……。全て露骨な誘導情報だったんですね。」
アガットの問いにエステルは驚き、クロ―ゼは今までの事を思い出して説明した。
「そんな……」
「ミント達を呼ぶためだけにこんな事をするなんて………!」
クロ―ゼの説明を聞いたエステルは信じられない表情をし、ミントはヴァルターを睨んだ。
「ま、半分正解ってとこだな。それじゃあ早速、味見をさせてもらうぜ……。てめぇらという刺激(スパイス)をな♪」
そしてヴァルターは指を鳴らした!すると地面から巨大なミミズが何匹も出て来た!
「やああん!?」
「ふええ!?大きなミミズさん!?」
「な、なにコイツら!?」
巨大なミミズの登場にティータは悲鳴を上げ、ミントとエステルは驚いた。
「このあたりに棲息しているミミズさ。七耀脈が活性化したことでここまで馬鹿でかくなりやがった。ま、せいぜい遊んでやってくれや。」
「ふ、ふざけんじゃないわよ!この卑怯者!正々堂々と勝負しなさいよね!」
「ほっとけ!今はこいつらの相手が先だ!」
「……来ます!」
そしてエステル達は巨大なミミズとの戦闘を開始した!巨大なミミズはダメージを与えると地震を起こして、全員にダメージを与えて来たので手強かったが、エステル達は協力して何とか全て仕留めた。
「何とか追い払った……」
「こ、恐かったぁ〜……」
「それも強かったよ〜………」
「ふう……。手強い相手でしたね。」
巨大なミミズ達を倒し終えたエステル達は安堵の溜息を吐いた。
「んー、こいつはちょいと見込み違いだったか……?もうちょいマシかと思ったが。」
「ケッ、見くびるんじゃねえぜ。あの程度の魔獣なら今まで何度も倒してるっての。」
ヴァルターの呟きを聞いたアガットは鼻を鳴らして答えた。
「………………………………。……ダメだ、萎(な)えたわ。まさかここまで甘ちゃんだったとはな」
「なに……!?」
「ボケが……見込み違いはてめぇらだ!」
「えっ……!?」
そしてヴァルターは一瞬でエステル達の前に移動して強烈な一撃を放った!
「くうっ!」
「きゃあっ!」
「「あうっ!」」
「くっ!」
ヴァルターの強力な一撃にエステル達は蹲った!
「……クソが。ったく、レーヴェのやつ適当なことを抜かしやがって……。な〜にが『剣聖』以外にも手応えのありそうな獲物がいるだ。ただの青臭ぇガキどもじゃねえか。」
エステル達に強力な一撃を放ったヴァルタ―は舌打ちをした後、エステル達に背を向けて呟いていた。
「クソ……馬鹿な……」
ヴァルターの強さにアガットは信じられない思いでいた。
「フン、こうなったら仕方ねぇ。教授と直談判して漆黒のコゾーを狩るとするか。そうすりゃ、少しはゾクゾクさせてくれるだろ。」
「!!!ま……待ちなさいよっ!」
ヴァルターの独り言を聞いたエステルは痛む身体を無視して立ち上がって、棒をヴァルターに向けて睨んだ!
「あん?」
「このグラサン男……いい加減にしなさいよ……。漆黒のコゾーっていうのがもしヨシュアのことだったら……。狩らせるなんて……絶対にさせないんだから……」
「エステルお姉ちゃん……」
「ママ…………」
「俺の一撃を食らって立てたのは誉めてもいいが……。やめとけや。完全にヒザが震えてるぞ。」
ヴァルターは弱冠感心した様子でエステルを見た後忠告した。
「だからどうしたってのよ……。あたしは絶対に……ヨシュアを見つけるんだから……。あんたたちなんかに邪魔なんてさせないんだからっ!」
「エステルさん……」
「……言っておくが、俺は女子供の区別はしねぇ。武術家なら、敵に得物を向ける時の覚悟はできてるな?」
そしてヴァルターはエステルに近付いて拳を構えた。
「当然……!やれるもんならやってみなさいよ!」
「クク、上等だ……。その度胸に免じて一撃で終わらせてやるよ。」
「………………………………」
不敵に笑うヴァルターを見てもエステルは怯まず、ヴァルターを睨んでいた。
「やだやだ!エステルお姉ちゃん!」
「エステル、逃げろッ!!」
「ママ、逃げてっ!」
「―――死ね。」
ヴァルターがエステルに攻撃しようとしたその時、エステルの身体の中から4つの光の玉が出て、それぞれから攻撃が来た!
(光よ、集え!光霞!!)
(燃えよっ!)
「ヤアッ!」
「ハッ!」
光の爆発や炎の玉、矢や連接剣の刃がヴァルターを襲った!
「!!」
攻撃に気付いたヴァルターは4種類の攻撃を回避して、一端後退した!
「み、みんな………」
エステルは自分を守るように立ちはだかっているパズモ達を驚いた表情で見ていた。
(………ここからは我等の戦いだ。お前達は少し休んでいろ。)
(絶対にあなた達は私達が守るわ!)
「怖いけど………みなさんを守るために我が弓と魔術を持って、貴方を退けます!」
「これ以上貴方の好きにはさせませんわよ!」
サエラブ達はヴァルターを睨んで、戦いの構えをした!
「クッ、ククク………ハ―ハッハッハ!!」
一方ヴァルターは大声で笑い出した。
「な、何がおかしいのですか!」
テトリは唐突に笑いだしたヴァルターを見ておどおどとした様子で質問した。
「ククク………テメエらとも殺りあいたかったんだ。いつ出て来るか待ってたんだぜ!」
テトリの質問にヴァルターは楽しそうな表情で答えた。
「わ、私達も狙いだったんですか!?」
「………典型的な戦いの狂気に呑みこまれた愚かな人間ね……」
ヴァルターの答えを聞いたテトリは驚き、ニルは蔑むような目でヴァルターを見ていた。
(フン。強烈な負を抱えた人間のようだが………その程度、”悪”をも喰らった我の敵ではないわ!)
(エステルを…………私の大好きな人を………サティアのようにはさせない!)
「クク………行くぜ!」
そしてパズモ達はヴァルターと戦い始めた………!
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第204話 | ||
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