英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 205 |
パズモ達とヴァルターの戦い。『執行者』であるヴァルターに苦戦すると思われたパズモ達だったが、対するパズモ達は一人一人過去の仲間達と共に激しい戦いを生き抜いた歴戦の戦士達。実力もあるパズモ達は連携をして逆にヴァルターを苦しめた。
〜温泉の源流・最奥〜
(光よ、集え!光霞!!)
「甘いんだよっ!」
パズモの放った魔術をヴァルターは回避し、そしてパズモに狙いをつけたが
「行きます!二連射撃!!」
「チッ!鬱陶しい!」
テトリの攻撃に気付いて、テトリが放つ矢を”気”の弾を放って撃ち落とし、そしてテトリにも”気”の弾を放った!
「わわっ………!」
攻撃に気付いたテトリは慌てて回避した。
「雑魚は消えな!」
(!!)
そしてヴァルターがパズモに攻撃しようとしたその時
「させませんわ!」
ニルがパズモの目の前に立ちはだかって、結界を貼って防御した!
「何!?」
攻撃を防御されたヴァルターは驚いた。
(燃えよっ!)
そこにサエラブが炎の玉をヴァルターに向かって連続で吐いた!
「チッ!」
サエラブの攻撃に気付いたヴァルターは舌打ちをして回避した。
(戦意よ、失え!消沈!!)
そしてパズモは魔術を放ってヴァルターの身体能力を下げた。
「!?身体が………!何をしやがった………!」
パズモの魔術にかかったヴァルターは身体に違和感を感じた後パズモを睨んだ。
「ヤアッ!!」
そこにテトリが矢をヴァルターに放った!
「ハッ!そんな矢に当たるとでも……」
テトリの攻撃に鼻をならしたヴァルターは回避しようとしたが
「!?グアッ!?」
いつもの動きができず、回避ができず肩に矢が刺さり、呻いた。
「……のヤロウ!俺の動きをトロくしやがったな!舐めた真似を!」
いつもの動きができない原因を作ったのがパズモの魔術と気付いたヴァルターは肩に刺さった矢を抜いて、握りつぶしてパズモを睨んだ。そしてそこにサエラブがヴァルターに向かって突進して来た!
「ハッ!身体の動きが遅くなったからって、獣風情が正面で俺に勝てると思っているのか!」
サエラブの行動に不敵に笑ったヴァルターは拳を構えて迎撃の構えをしたが
「フフ………前ばかりに気を取られていていいのかしら?」
なんといつの間にか不敵な笑みを浮かべたニルがヴァルターの背後で雷を籠らせた連接剣を構えていた!
「なっ……!?」
ニルの存在に気付いたヴァルターは驚いた!
(フン!)
「電撃剣!!」
そしてサエラブは爪で斬り上げ、ニルは電撃が籠った連接剣で斬り下してヴァルターを同時に攻撃した!
「グアアアアアアッ!?」
サエラブには腹の一部を斬り裂かれ、ニルの攻撃で背中を斬られたヴァルターは斬られた部分から大量の血を出して、身体に伝わる痛みと電撃を直に喰らった痛みの悲鳴を上げた!そして2人は一端ヴァルターから離れ、2人がヴァルターから離れるとパズモとテトリの魔術が発動した!
(光よ、我が仇名す者達に裁きを!槌の光霞!!)
「大地の怒りを!地響き!!」
「ガアッ!?」
パズモとテトリの魔術攻撃をまともに喰らったヴァルターはさらに呻いた。
「わあ………凄い!ニルさん達、『執行者』を追い詰めているよ!」
「パズモ達ってあんなに強かったんだ………」
一方戦いの様子を見ていたミントははしゃぎ、エステルはパズモ達の強さに驚いていた。
「す、凄いです………!」
「フフ………味方でいたら、本当に心強いですね。」
「………実力もそうだが、連携や動きがハンパねえ………悔しいが下手に手を貸すより、奴らに任せた方がいいかもしれねえな………」
パズモ達の活躍をティータやクロ―ゼは明るい表情で見て、アガットは苦い表情をしてパズモ達の戦いを見ていた。
(戦意の祝福!!)
(フン!)
「ゴフッ!?」
パズモの援護魔術を受けたサエラブは普段よりさらに速い動きになった事で威力も倍増した炎を纏って突進するサエラブの技――炎狐強襲を回避できず、腹に受けたヴァルターは吹っ飛んだ!吹っ飛ばされたヴァルターは空中で受け身をとって、拳を構えた。
「光よ、降り注げ!爆裂光弾!!」
「行きます!制圧射撃!!」
「グアアアアッ!?」
しかしそこに、さらにたたみかけるように放ったニルの放った魔術とテトリの弓技が雨のように降り注ぎ、命中したヴァルターはさらに呻いた!
「ククククク……………これだよ!このいつ死ぬかわからないゾクゾクした感じを感じたかったんだ!」
追い詰められているかと思われるヴァルターだったが、逆に凶悪な笑みを浮かべていた。
「ぴ、ぴえええええ〜……!な、何なんですか、あの人!傷を負っているのに喜んでいるとか、信じられません!」
テトリはヴァルターの様子を見て怖がった。
(命を天秤にかけて、戦う事だけを楽しみに生きている狂戦士………一番、厄介な相手ね………)
パズモは厳しい表情でヴァルターを見ていた。
(…………ニル。気は進まないが………最悪、殺す事も考えておくぞ。この手の輩は退き際を考えない上、止めを刺すまで油断できん。)
(………エステルが見ている目の前で殺しはしたくなかったけど………そうも言ってられないわね…………)
サエラブの念話にニルは気が進まない様子で頷いた。
「やれやれ………もう少し早く来るべきだったかな?」
その時エステル達の方から男性の声が聞こえて来た。
「え………」
聞き覚えのある声を聞いたエステルは驚いた。
「雷神掌!!」
そして大きな気の弾がヴァルターに襲いかかった!
「ぬッ!?」
気の弾に気付いたヴァルターは回避した。
「はああああっ!」
そしてそこに大柄な東方風の男性――ジンがヴァルターに向かって連続で蹴りを放った!ジンの攻撃をヴァルターは驚きながらも防御した。
「………………………………」
攻撃を終えたジンは構えを解かず、ヴァルターを睨んでいた。
「フッ……。さすがはエステル君のナイト達だね♪」
さらにオリビエも現れた。
「オリビエ!それに……ジンさん!?」
「よう、エステル。ずいぶん久しぶりだな。もっと早く来るつもりだったが向こうの仕事が長引いてな……。少し遅かったみたいだが、間に合ったようだな。」
「ったく……少し、遅いんだよ。」
アガットは心強い援軍を見て苦笑していた。
「ククク……。レーヴェの報告にあったカルバードのA級遊撃士……。ジン、てめぇのことだったか。」
一方ジンの登場に驚いたヴァルターだったが、不敵に笑ってジンを見た。
「まあ、そういうことだ。まさか、こんな場所であんたと再会するとはな……。いつから『結社』なんぞに足を突っ込んでいやがるんだ?」
「クク、あの後すぐにスカウトされちまってな。なかなか刺激的な毎日を送らせてもらってるぜ」
「馬鹿なことを……。あんた、自分がいったい何をしているのか判っているのか!?そんなんじゃ師父(せんせい)はいつまで経っても浮かばれ……」
ヴァルターの答えを聞いたジンが何かを言いかけようとしたその時、ヴァルターは一瞬で移動してジンに攻撃した!ヴァルターの攻撃に気付いたジンはガードして致命傷を避けた。
(なっ…………魔術で身体能力を下げたのにまだあんな動きができたの!?)
パズモはその様子を見て驚いていた。
「おいおい、綺麗事を抜かすなよ。てめぇは知ってるはずだ。俺がどんな道を選んだのかをな。ふざけた事を抜かすと……殺すぞ?」
「………………………………。だったら……あんたは知っているのか?ツァイスの街にキリカがいるのを」
「なに……?」
ジンの話を聞いたヴァルターは驚いた後、目つきを変えた。
「2年くらい前からギルドの受付をしているそうだ。どうやらそれまでは大陸各地をまわっていたらしいな」
「……チッ………。まさかリベールくんだりに流れていたとはな……。あの馬鹿、何を考えてやがる」
「さあな、俺にも分からんよ。だが、あいつは間違いなくあんたと会いたがっているはずだ。『結社』のことはともかく一度くらい顔を見せてやったら……」
ジンが言いかけたその時、ヴァルターはジンに蹴りを入れた!
「グッ……」
「ふざけた事を抜かすと殺すと言っただろうが……。まあいい……。キリカのことはともかくてめぇと会えた事やテメエらと殺りあえたのは幸運だった。今回の計画……とことん楽しめそうだぜ。」
そしてヴァルターは杭から『ゴスペル』を抜き取った。
「おい、ヴァルター!」
「クク、次会う時までせいぜい功夫(クンフー)を練っておけ。じゃあな。」
「ヴァルター!!」
ヴァルターを追いかけようとしたジンだったが足を止めた。そして敵が去った事を確認したパズモ達はエステルの身体の中に戻った。
「………………………………」
「えっと……。助けてくれてありがと。でも、どうしてジンさんたちがここに?」
黙ってヴァルターが去った方向を見続けているジンにエステルは遠慮気味に尋ねた。
「ツァイス支部に顔を出したらいきなりキリカに急かされたんだ。お前さんたちを助太刀しにエルモに向かえってな。」
「フッ、それでボクも付き合うことにしたのだよ。」
「そうだったんだ……。ありがと。パズモ達が善戦してたから必要なかったかもしれないけど、本当に助かったわ。」
事情をジンとオリビエから聞いたエステルは苦笑しながらお礼を言った。
「本当にあの時は私も焦りましたよ。」
「そうだよ〜!ミント、とっても心配したんだからね!」
クロ―ゼの言葉にミントは頷いた。
「それはともかく……。あんた、あの野郎とどういう知り合いなんだ?」
「……ま、昔馴染みさ。詳しい話はここを出て宿の風呂に入ってからにしよう。龍脈の乱れは収まったからじきに温泉も元に戻るだろうぜ。」
そしてエステル達はエルモ温泉で身体を温めてからツァイス支部に戻って行った…………
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第205話 | ||
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