夜天の主とともに  12.料理対決
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夜天の主とともに  12.料理対決

 

 

 

健一side

 

シグナムさんたちが八神家に来てからだいぶ経ち、夏休みに入った。夏休みになってからというもの俺はほとんどはやての家に来ている。それまでは学校もあったからあまり行けなかったし。

 

この戦いのない穏やかな生活にもだいぶ馴染んできたのか最初のころに比べてみんな優しい表情をするようになった。

無口だったザフィーラさんも今ではよく俺としゃべってくれる。時折見えるやわらかい笑顔も新鮮だ。

 

そんな生活に一番幸せな気持ちを抱いていたのは言うまでもなくはやてだった。今までは家に帰っても誰もいない、そんなさびしい空間だった。それだけに今の暖かな生活が心地いいんだろう。

俺もこの生活には楽しいと感じていた。

 

そんな楽しいと感じている生活で今俺は、

 

 

「このわからずや――――!!」

 

「どっちがわからずやだ――――!!」

 

「ふ、二人とも落ち着いてください!?」

 

 

目下はやてと口論中だった。

なぜこうなってしまったか。それは数刻前に話は戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように起床して朝ごはん食べて、洗濯物をして、のほほんと過ごしていた。

そして時間はお昼頃。

 

「はやて〜、お腹すいた〜」

 

「おい、ヴィータ意地汚いぞ」

 

「そうよ、ヴィータちゃん」

 

「うるせぇ、すいたもんは仕方ねぇだろ!」

 

「ええんよシグナム、シャマル。今から作るから待っててな」

 

「うん!」

 

嬉しそうにウサギのぬいぐるみを抱えてままテレビの前に戻っていった。それを見ていて一番変わったのはヴィータだと思った。最初は借りてきた猫のように無愛想だったが……。

 

「ヴィータ、だいぶ雰囲気変わったな」

 

「けん君。そやね、ほんま変わったよ」

 

後ろに立った俺を振り返りながらはやても頷いた。

 

「みんな最初の頃に比べたら柔らかい感じになったけどヴィータはそれが一番強いかもしれへんな」

 

「容姿相応って感じだよな。まぁはやてだけにだけどな。俺なんかはけっこう怒鳴ってくるし」

 

「それでもだいぶ変わったやん。それにあれは照れ隠しやと思うよ。そう思ったら可愛いやん」

 

確かに言葉は荒くともそうなんじゃないかと思ってた。それ言うと反発がすごいから一度も言ってないけど。

 

「まぁね。それで今からお昼作るんだろ?俺も手伝うよ」

 

「ありがとぉ。一緒に作るんわ久しぶりやな」

 

そう言われて、言われてみればと最近を思い返してみる。俺もはやてもお互いに料理が得意だから台所に一緒に立つことがなかったからそれも当然かと思った。

 

「最近は役割分担でやってたからな。で、何作るの?」

 

「ん〜、そやな。今日はお好み焼き作ろう思っとるんよ」

 

「お好み焼きって何だ?」

 

聞きなれない食べ物の名前が出たからかヴィータがテレビから視線を外して聞いてきた。

 

「お好み焼きって言うのはな、……まぁとにかくおいしい食べ物だよ」

 

「おいしいのか!じゃあそれ食べたい!!」

 

口で言うのが面倒臭くなって適当になったけどそれで十分だったのか眼をキラキラと輝かせている。ほんと子供だな、見てるこっちがにやけてしまうぐらいに。

ほら、はやても思わずって感じでにやてるし。

 

「まぁとにかく、それいいね。だったらやっぱお好み焼きと言ったら‥‥」

 

この後に俺が放った言葉でひと騒動起きるなどとは俺はその時気づかなかった。

 

「広島風だよな」

 

 

 

ピシっ!!

 

 

 

その瞬間はやてが固まってしまったような気がした。そしてギギギと効果音がつくような感じでゆっくり俺の方を向く。

 

「………ははは、けん君冗談が過ぎるで。お好み焼き言うたら関西風やろ?」

 

 

 

ピシッ!

 

 

 

今度は俺が固まる番だった。

 

「いやいや、なんで関西風?お好み焼きは広島風しかないでしょ」

 

「いやいやお好み焼きは関西風やん」

 

「はやては冗談がほんとうまいな〜」

 

「けん君こそ〜」

 

「「はははははっ…………」」

 

その時俺とはやては気づかなかったが台所以外が静まり返りみんながその様子を見ていた。そして、

 

「「ふざけるな――!!」」

 

爆発した。

 

健一sideend

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る

 

「なんで関西風なんだよ!あんなの材料混ぜまくって焼いてるだけじゃん。お好み焼きって言うのは丁寧に生地を薄くパリッと焼いてその上に具材をきれいに乗せていくもんなんだよ!!」

 

「何を言うとるん!あんな薄っぺらい生地を焼いてから具材を乗せる?アカン、それはアカンでけん君。具材と一緒に山芋を混ぜてふんわり焼き上げる。これが一番やないか!!」

 

何度広島風が一番と言ってもはやては引こうとしない。その逆も同じであった。すでにお互いの意地だけで張り合っていた。

 

そして事態はさらにヒートアップしていく。

 

「広島風は素焼きいうのがあるみたやけど麺も一緒に焼くんやつもあるんやろ?そっちのが主体やて聞くし。はっ。麺を入れる?邪道やな邪道」

 

「なっ!?邪道だと!!そっちもモダン焼きって言うのがあるみたいだけど麺なしが主体だろ?麺がないお好み焼き‥‥‥‥ふっ、それこそ邪道だね」

 

「なんやと!!」

 

「なんだよ!!」

 

その様子を見ていたシグナムたちはおろおろしていたがはやてと健一は今はそんなの関係ないとばかり気にせず論争を続けていく。

 

「シグナム、どうしましょう?」

 

「と、止めるしかないだろう」

 

基本的にこの二人はいつも仲がいいのが見て取れるほどで短い間とは言えどそれは騎士たちもわかっていた。しかし、これほどに激しく言い争うことはまたとなかったため騎士たちもどうすればいいのかわからなかった。

 

だからこそ、とりあえず止めるという判断したのだが、

 

「……あまりあの空間に入りたくないのだが。入ったら間違いなくとばっちりを食う」

 

「だな。ってことで言い出しっぺのシグナムとシャマルに決定だな。というかあたしは早くそのお好み焼きを食べたい」

 

そこまで動揺していなかったザフィーラとさりげなく催促をして食い意地を出しているヴィータは冷静にそして残酷に言った。

 

「なっ!?‥‥‥仕方あるまい、シャマル行くぞ」

 

「は、は〜い」

 

はっきし言って自分たちも行きたくはなかったがこのまま放置しておくこともできない。シグナムとシャマルは恐る恐る台所に来て二人を止めようとした。

 

「はやてちゃん、そろそろやめたら‥‥」

 

「健一もまずは落ち着いて‥‥」

 

「「二人は黙ってて!!」」

 

「「は、はいぃ!!」」

 

健一とはやてのあまりの鬼迫にいかな歴戦の守護騎士といえども、ただただそれに従うしかなく慌てて元の場所に戻った。

 

そして健一とはやてはそのまま数分間激しい口論を繰り広げたが一向に終わる様子が見られなかった。

 

「はぁはぁ‥‥。このままじゃ埒があかんな」

 

「はぁはぁ、そうだな。こうなったら『アレ』するしかないな」

 

「『アレ』か。確かにそやな、決着つけるならこれしかないな」

 

二人の『アレ』という言葉に守護騎士たちはゴクリと息をのんだ。(主にシャマルとシグナムだったが)

 

二人の眼は真剣そのものでそれだけに今から行われるであろう『アレ』と呼ばれるものでの決着のつけ方が危険なものではないかと感じた。

そして守護騎士たちは思った。ならば何としても我らで止めねばと。

 

「主はやて、健一!決闘などおやめください!!危険すぎます!!」

 

そこでやっとシグナムの言った言葉に気づいた健一とはやては今までの激しさが嘘のように収まり首を傾げた。

 

「『アレ』って危険じゃないよな、はやて」

 

「そやな。というか私とけん君いつもやっとることでの決着やしな?」

 

そこで騎士たちの頭の中は困惑を極めていた。騎士たち(特にシグナム)は殴り合いによる決闘だとでも思っていたのだ。

 

「もしかしてシグナムさん殴り合いだとか思ってないですよね?」

 

「いくら戦うの大好きなシグナムいうてもそれはないやろ」

 

「も、もちろんです。私はそんなこと微塵も思っていませんとも(言えん。本当はそう思ってたとは口が裂けても言えん)」

 

しかし、そうなると守護騎士たちには皆目見当がつかなかった。そもそも二人がけんかをするところを見るのも今日が初めてなのだ。そしてシャマルが堪えきれずに手を挙げた。

 

「あの〜『アレ』ってなんですか?」

 

「そりゃあ…」

 

「もちろん…」

 

顔を見合わせて声をそろえて言い放った。

 

「「料理対決!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

台所にエプロンを装備し、材料を用意して健一とはやてはそこにいた。

 

「ルールは簡単。俺とはやてがそれぞれ広島風と関西風を作る。それをみんなに食べてもらう。それでどっちがおいしいか答えてもらって票が多い方が勝ち。それでいいな?」

 

「引き分けの時はどうするんや?いや引き分けの時なんか考えてもしゃぁないな。どうせ私が勝つんやし」

 

「ほぉ言うじゃんはやて。負けても吠え面かくなよ」

 

「そっちこそな」

 

バチバチと火花を飛ばしあう。その様子を残った四人は先ほどまでの緊迫した空気はどこへやら、すでにリッラクスしていた。

 

「料理対決だったとは、少し考えてみればわかるものだったな。」

 

「お好み焼きって食べ物の話だったものね。」

 

「なぁザフィーラ、お前ならお好み焼きってわかるか?」

 

「私が知るわけないだろう。直にできるのだからおとなしく待っておけ」

 

ギャラリーのほうは準備万端のようだ。

 

「待たせるのも悪いし同時に作り始めることにする?」

 

「私はそれでもええよ。ほな、はじめよか」

 

健一とはやては開始と同時にさっそく作り始めた。

 

はやては生地に天かすキャベツ卵などを混ぜ焼きその上に肉を乗せひっくり返しいい焼き色を付けていく。

 

健一も生地を薄く焼きその上にカツオブシ、麺、野菜を乗せていき、肉などを乗せ焼いていく。こちらもいい感じだ。

 

最後に健一とはやては同じように卵の上に被せて形が崩れないようにしひっくり返してソースを塗り仕上げに青のりとカツオブシを軽くかける。

 

「完成しましたー」

 

「完成やでー」

 

それおぞれ4人分に切り分けられたお好み焼きを審査員のシグナムさん、シャマルさん、ヴィータ、ザフィーラさんの前に置いていく。

 

「「召し上がれ!」」

 

「「「「いただきます。」」」」

 

まず最初に手を付けたのははやての関西風お好み焼きからだった。

 

「ふんわりとしていてかつ香ばしくておいしいです」

 

「おいしいです」

 

「ギガうまだ!」

 

「ほんと、はやてちゃんすごくおいしいです」

 

「そやろ〜広島風とは格が違うねん」

 

シグナムさん、ザフィーラさん、ヴィータ、シャマルさんの順においしそうに感想を述べる。横目でちらっと勝ち誇ったような顔を向けてくる。だが、そんな考えは甘いと言わんばかりにフッと笑った。

 

次に健一の作った広島風お好み焼きを食べた。

 

「これは先ほどの柔らかな感じと違ってパリッとしていて、しかも麺の食べごたえがいいな」

 

「見た目は同じだが主のとはまた違ってうまい」

 

「ギガうまだぜ!」

 

「健一君のもほんとおいしいわ」

 

「そうなんですよ、関西風のとは比べ物にならないでしょう」

 

「なんや!」

 

「なんだよ!」

 

再び火花を飛ばしあう二人。そして同時に結果をみんなに聞いた。

 

「「で、どっちがおいしい?」」

 

「それはですね‥‥‥」

 

「うむぅ‥‥‥」

 

「そのぉ、私たちにはどっちも同じくらいおいしくて」

 

「どっちも同じくらいおいしかったじゃだめなのか?」

 

騎士たちの答えはどちらもおいしい、つまるところ引き分けでいいのではということだった。だが、それではこの対決をした意味がなくなってしまう二人にとってそれではだめなのだ。

 

「それじゃダメや!!」

 

「そうです!!どっちがおいしいかはっきりさせないと!」

 

「と言われしても‥‥‥」

 

みんな本当に同じくらいおいしいと感じているのか困った顔をしている。そこで改めて健一ははやてと相談することにした。

 

「どうするはやて?これじゃ埒が明かないぞ。俺らがお互いの食っても意味ないし」

 

「そやな。かといって私は引くつもりないしけん君かてそやろ?」

 

「無論だ。どうしようか?」

 

そこでまた二人して考え込み始めた。騎士たちに至っては触れない方がいいと思ったのかじっとしている。

そして五分ほどたった時だった。突然はやてが何か閃いたかのように顔を上げた。

 

「そや!お好み焼きで決着つかないんやったら味覚勝負や」

 

「それはどうするんだ?」

 

「私ら以外の人に何か作ってもらってその料理を見極めるバトルや。作ってもらう人はそやな〜シャマル」

 

「わ、私ですか?」

 

名指しされた当の本人は自分を指さながら驚いている。

 

「で、でも私料理とかってしたことないですよ?」

 

「大丈夫や。作ってもらうのは簡単な卵焼きよ」

 

「そ、それなら前にはやてちゃんが作ってところ見たので大丈夫です!」

 

「うん。ほんでシャマルの卵焼きを食べて正確に的確に評価した方の勝ちや」

 

「なるほど、確かにそれはいいかもな。どっちが料理をよく理解してるかがはっきりする」

 

「決まりやな。シャマルこっち来て作ってくれる?私らあっちで待っとるから。」

 

「は〜い!」

 

意外にノリノリでシャマルは台所へと向かった。その姿をジーッとヴィータが何か気になるのかシャマルをじーっと見ていたためシグナムが問うた。

 

「ヴィータどうしたの?」

 

「………なぁこれってどっちのお好み焼きがおいしいかって話だっtムグッ!?」

 

『黙っておけヴィータ!今ここでそれを言ったらたぶんだめだ!』

 

『私もそう思うぞヴィータ。言ったら間違いなく火の粉が降りかかる。』

 

そんな会話が念話で行われるとは露知らず健一とはやては最後の決戦を待った。

 

 

 

――――10分後

 

 

 

「はやてちゃん健一君、できたわよ〜」

 

ついに健一とはやての決着をつける卵焼きができたようだ。まだ卵焼きは運ばれていなかったが、シャマルの声を聞く限り出来はいいようだった。

 

「これで俺が正しいことが証明されるな」

 

「寝言は寝て言いや、けん君」

 

「どっちが寝言言ってるかはっきりさせてあげるよ」

 

互いに牽制をしながらテーブルに向かった。そして席についてその卵焼きに目線をやるとそこには信じられないものがあった。

 

それは‥‥‥‥何色かが混ざってできたような色をした卵焼きだった。

 

「「……………」」

 

一体何を入れたらこんな色になるのだろう。適当に入れたにしてもまずこうはならないだろう。

形はそれらしいのだけど、赤っぽいかと思えば青いところもあり、緑色のところもある。無数の色が入りまじってできたそれはもはや卵焼きと言っていいのかさえ怪しい。

 

健一がはやてを横目でちらっと見てみれば同じように目を見開いて固まっている。

 

「ヴィータちゃんたちのもあるから遠慮なく食べてね」

 

出されたものを前にしてした反応はそれぞれ。ザフィーラは鼻でにおいをかいで確かめる。明らかにおかしい色をした『それ』に対して警戒しているんだろう。多分食べないから大丈夫だ。

 

あとの二人もいくら何でも食べないだろうと視線をやるとさらに驚くことになんと食べようとしているのだ。

それは無知から来るものかシグナムさんは箸で『それ』を掴んで見ている。ヴィータに至っては食べるのが好きだからか特に警戒している様子はない。

 

それにはやても気づき慌てて二人で止めようとしたが時すでに遅し、『それ』はシグナムとヴィータの口へ運ばれていった。

 

「いっただきまーす」

 

「いただきます」

 

健一、はやて、ザフィーラさんはジーッと『それ』が口に運ばれていくのを見守った。そして口の中へ完全に入り喉を通るか通らないかというところで異変が起きた。

 

まず二人の動きが完全に止まった。

次に顔がさぁっと青くなり冷や汗のようなものが一気に流れ出る。

そして最後には非常にゆっくりとした動きでテーブルに突っ伏した。

 

『『『シグナムとヴィータがやられたー!?』』』

 

簡潔に今の二人の状態を言うと完全に気絶しているうえに痙攣までしてる。やばい、あの物体を食べたら‥‥やられる!!そんな危機感を残った者たちは感じた。

 

『は、はやて。この勝負は引き分けでどっちの料理もうまかった、そういうことにしないか?』

 

『そ、そやな。うまいのは確かやしこれ以上意地張ったらシグナムとヴィータの二の舞や』

 

『『ということで食べたらだめです(あかん)よ、ザフィーラ』』

 

『い、言われなくても心得た』

 

「あら、食べてないじゃないザフィーラ」

 

「!?」

 

その声に意識を浮上させ声のした方を見るといつの間にかザフィーラの前にシャマルが移動していた。いつもは優しい笑顔であるはずのその表情はすでに健一たちにしてみると悪魔のようなものにしか見えなかった。

 

「い、いやそのだ」

 

「あぁそうよね。狼のままだと食べにくいものね」

 

見事なシャマルさんの勘違いに無言で、しかし全力で首を横に振った。だがそれにシャマルさんは気づかずそのまま話し続ける。

 

「シグナムもヴィータちゃんもおいしいからって寝なくてもいいのにね」

 

シャマルの勘違いは天井知らずのようだった。このままでは食う羽目になるといわんばかりにザフィーラが最後の頼みの綱とばかりに健一とはやてを見る。

 

『『ごめん、それ無理』』

 

でもその視線に健一とはやては答えることはできなかった。絶対にとばっちりを食うから。

 

そして非情にも『それ』はザフィーラへの口へと向かった。

 

「私が食べさせてあげるわ。」

 

「シャ、シャマル待て!!とりあえずその手wぐぼぉ!?」

 

無理やり押し込むようにして入れられ反射的にそれを飲み込んだ。するとただでさえ蒼いはずの毛色がさらに濃くなったかのように真っ青になり、ザフィーラは直後シグナムさんとヴィータと同じように地に伏した。

 

『『南無‥‥‥』』

 

「ザフィーラまで嬉しそうな顔をして、私って才能があるのかしら」

 

はいありますとも一口で相手を気絶させる料理を作る才能が。二人の脳内で同じセリフが響いた。

 

「さてと、お待たせしました。はやてちゃん、健一君どうぞ」

 

改めてズイッと出された『それ』を見ると心なしかさっき見た『それ』よりも流れ出る危険さオーラが大きくなっているような気がする。これが感じ取れたのはひとえに料理が好きだからか。

はやてもそれに気づいたようで食べる前からすでに冷や汗が流れてる。

 

目の前の『それ』を見ながらどうするべきか健一は考え始めた。

このまま食べれば健一もはやても同じようになってしまうのは必至。かといって食わずしてこのイベント回避はできない。そもそもやろうと言ったのは健一とはやてだから。

ならばどうするか、せめて被害を最小限に抑えることができればと考えたところで健一は一つだけ思いついた。

 

確認するようにはやてを見ると手を震えさせながらも『それ』を口へ運ぼうとしていた。それを見た瞬間健一ははやての手を止めた。そして念話ではやてに直接話す。

 

「えっ?」

 

『はやて。俺はさ、騎士なったわけじゃなけど、まだ見習いだけど、それでも俺はどんなことがあってもはやてを絶対に守ってやれるそんな守護騎士になりたい。だから『それ』は‥‥‥‥』

 

はやての前にあった皿を引き寄せそして、

 

『俺が食う!!!』

 

味わうなどということはせず一気に自分のとはやてのを噛み、飲み込んだ。一瞬の事ではやても唖然とした表情で健一を見ていた。

 

「健一君ったらはやてちゃんのまで食べちゃうなんて食いしん坊さんなんだから」

 

「け、けん君。だ、大丈夫か?」

 

事態を全く理解していないシャマルと『それ』を自分の分まで食べた健一を心配するはやて。

そんな二人に俯かせていた顔をゆっくりと上げた健一はにっこり笑って言った。

 

「‥‥‥骨は‥‥拾ってね‥ガフッ!!」

 

「けん君―――――――――!?」

 

 

その後、健一と一人を除くヴォルケンリッターたちはシャマルの治癒魔法によってなんとか回復させられたが精神的ショックが回復するにはなかなかの時間を要したという。

 

『ポイズンクッキング』と呼ばれる物体が誕生した日となった。

 

 

 

 

 

 

 

「私が悪いの!?」

 

「「「「「当たり前だ!!!」」」」」

 

説明
日常編はもう少し続くっす
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