Fate/The black truth 第7話 「誓い」
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アーチャーと正体が掴めない男の戦いを見ている英雄達は、この2人は自分たちと違い常識を逸していると感じた。

本来騎士の戦いは互いに剣を交えて正々堂々戦うのが役割だ。現にセイバーとランサーは正にその戦いの見本であった。

魔術師の戦いは籠城を行い、自分の領域(テリトリー)に侵入したものを倒すのが魔術師のやり方だと英雄達は理解しているが、この戦いはその領分を超えていた。

弓兵(アーチャー)の戦いは弓で矢を放つのが普通だが、あのアーチャーは弓で矢を放つという生易しい攻撃ではない。矢ではなく大量の武器を空間から放ち、あの男は魔術で対抗している。

手を翳し魔法陣が出現したら射出武器が逸れているため何かを行っているのだが英霊達は魔術に詳しくない為魔術の正体が掴めない。

マスターであるアイリスフィールとウェイバーは魔術師ではあるが英霊達と同じく男が使っている魔術は見たことがない。

アイリスフィールはこのまま役に立てずに終わるのが嫌であり何とかセイバーの力になりたいと考えながらあの男の正体に繋がる魔法陣を頭の中に記録する。

恐怖に震えながらも戦場を見て相手の正体を掴もうと頑張っているウェイバーをみてライダーは笑みを浮かべる。やはり己がマスタ−はランサーのマスターではなく坊主の方が相応しいと。

 

現状この場で特に異質なのがアーチャーではなくあの男だ。クラスも分からないアイツは何者なんだと考える。

 

「ランサー。あの男をみてキャスターだと思うか。」

 

戦闘を一挙一同観察していたセイバーは困惑しながらランサーに問う。

 

「俺も最初あいつはバーサーカーだと感じた。だが、今までの攻防をみると、魔術師(キャスター)にしか見えないから分からないんだ。」

 

ランサーも困惑した表情で戦闘を観察しながらセイバーに答える。ライダーもセイバーとランサーの疑問を感じながら戦闘を眺めている。すると長く膠着していた戦闘だったがあの男が動き出した。体の前に魔法陣を8つ展開してアーチャーに向き

 

「鮮やかに散れ。」

 

相手の心を砕くような冷たい言葉で相手に攻撃を放つ。あの男の魔術は気が付いたら当たっているという読みづらい攻撃であり歴代の英雄でも躱しづらい。アーチャーの射出攻撃を防ぎ、攻撃が当たろうとした瞬間、自分に当たると分かったのかアーチャーの顔が憤怒の表情にさらに歪み

 

「調子に乗るなよ。狗ーーーーー!!」

 

あの男に放った武器を破壊した。セイバーは宝具の爆発からアイリスフィールを庇い、ランサーは防御を行い周囲を警戒し、ライダーはウェイバーを庇う。戦闘をみる限りバーサーカーは宝具の爆発を躱すことが出来ていなかった。

 

「大丈夫ですかアイリスフィール。怪我はありませんか。」

 

「私は大丈夫よ。それより戦いはどうなったの。」

 

「分かりません。煙で見えませんがアーチャーの攻撃を躱しきれていませんでしたので、ダメージは深刻な状態でしょう。」

 

セイバーはアイリスフィールに怪我がないか確認を行い、見た限り怪我がない様子でほっとした。ライダーも自分のマスターが無事なのか確認すると地べたに這いつくばった格好をしており、さすがのライダーもあきれ果てた声で己のマスターに問いかける。

 

「・・・何をしている坊主。そんな所で寝ると風邪を引くぞ。」

 

「誰が寝るか。お前の力が強すぎて叩きつけられたんだ!」

 

ウェイバーはライダーの見当違いのボケに突っ込んだ。ライダーはウェイバーを宝具の爆発から庇ったが、下に力をいれてしまいそのまま叩きつけられた状態になった。ウェイバーからすると溜まったものではなかった。煙で周りが見えなかったがやがて見えるようになるとバーサーカーの姿が見え戦いを見ていた者たちは愕然とした。見た目はダメージを喰らっているにも関わらず平気そうな顔をしているからだ。

 

「ライダー。あいつあの爆発に巻き込まれたんじゃないのか?」

 

ウェイバーは爆発を躱しきれなかった男を見た光景に己がサーヴァントに問いかける。

 

「彼奴のマスターが令呪を使ったかあるいは宝具を使ったのかは詳細が掴めなかったわ」

 

ライダーの答えにウェイバーは成る程と考え男を見る。今は離れているから若干体が落ち着いているがあの男と対峙するとき自分は正気を保っていられるかどうか。正直に言えばアイツの目を見たとき心臓を鷲掴みにされたと錯覚した。両足が震え自分の体にも関わらず震えが止まらず自分が自分でなくなりそうだった。

そんなウェイバーをライダーは額にデコピンを炸裂させる。

 

「ぎゃあ〜〜〜〜〜」

 

痛みに苦しみながら何をすると目で文句を訴えかけるがライダーは呆れた目でウェイバーを見る。

 

「辛気臭い顔をするな坊主。体の震えが止まらぬなら気合をいれてやるぞ」

 

「何が気合だ。僕の体はお前と違ってデリケートなんだよ」

 

ウェイバーはこんな時に何をするんだとライダーに文句を言う。本人は額の痛みに耐えながらもライダーに文句を言うが本人は気が付いていない。既に体の震えが止まっており先程までの辛気臭くなっていた顔も明るくなったことも。ライダーに助けて貰ったことに気が付いたのはこの戦いのしばらく後になる。

 

煙が晴れ戦場が動きライダー達は戦場に目を向ける。

 

「さっきは危なかったぜ。宝具を破壊するとは勿体ないことをするもんだ。」

 

男が皮肉を込めてアーチャーに言うのを見て

 

「うぬ。あれは確かに勿体ないのう。」

 

ライダーもうんうんと同調する。周りからはあきれ果てた空気が流れ

 

「お・・お前という奴は。」

 

ウェイバーはプルプルと怒りながら我慢する。戦闘中だからさっきのも加え後で説教しようと誓う。

 

「ふん!地を這う姿がお似合いだな狗が!これ以上薄汚い姿を我に見せるでない!」

 

アーチャーは狂犬が生きていることに対して更なる攻撃を開始する。男も迎撃を行おうとするが表情を変えた。表情を歪めて舌打ちをした。

 

「ふん、そんな所にいないで落ちな!」

 

男がさっきの攻撃をアーチャー目掛けてあちこちに放つ。アーチャーも自身の射出攻撃が間に合わないと感じたのか街灯の上から回避した。辺り一面は煙で戦場が見えなくなった。煙が晴れるころには戦いは終わっていた。

 

「狗め。何処に行きよったーーー!」

 

男が離脱していることに気づきアーチャーは紅蓮に燃えるかの双眸で周りを見渡す。やがてこちらの方に殺意が向くと、セイバー達はアーチャーを警戒するがアーチャーは狂犬がこの場からいなくなったのを確認すると中途半端に終わったことに興味を失ったのか宝具の展開を消した。

 

「雑種ども。次までに有象無象を間引いておけ。我と見えるのは真の英雄のみで良い」

 

最後にそう放言してから、アーチャーは実体化を解いた。こうして誰も予想しなかった形で黄金と闇の戦いは終結した。

 

 

 

 

第7話 「誓い」

 

 

 

side セイバー

 

ランサーとの戦いから随分と時間が経ったように感じる。アーチャーと“バーサーカー?”が居なくなり、今この場にいるのはランサーとライダーの3人だけだ。どうすべきか考えていたところ

 

「―――撤退しろランサー。今宵はここまでだ」

 

ランサーのマスターがランサーに撤退行動を命令する。私達に向けていた槍の切っ先を下げる。ランサーは私に頭を下げる。言葉などは必要ない。交わすべき誓いは明確なのだ。私もまた首肯を反す。

 

“決着は、いずれまた―――”

 

それだけを確認し、ランサーは姿を消した。最後に残ったライダーに向けて複雑の入り交った視線を向ける。

 

「・・・結局、お前は何をしに出てきたのだ?征服王」

 

「さてな。そういうことはあまり深く考えんのだ。理由だの目論見だの、そういう面倒くさい諸々は、まぁ後の世の歴史家が適当に理屈をつけてくれようさ。我ら英雄は、ただ気の向くまま、血の滾るまま、存分に駆け抜ければ良かろうて」

 

「・・・それは王たる者の言葉とは思えない」

 

騎士道を奉じる私の信念はライダーの野放図な行動原理とは程遠いところにいる。

 

「ほう?我が王道に異を唱えるか。フン、まぁそれも必定よな」

 

ライダーは鼻で嗤う。

 

「すべて王道は唯一無二。王たる余と王たる貴様では、相容れぬのも無理はない。・・・・いずれ貴様とは、とことんまで白黒つけねばならんだろうな」

 

「望むところだ。何となれば今この場でも―――」

 

「よせよせ。そう気張るでない」

 

ライダーは軽く笑って、顎を私の左手を指す。

 

「イスカンダルたる余は、けっして勝利を盗み取るような真似はせぬ。セイバーよ、まずはランサーめとの因縁を清算しておけ。その上で貴様かランサーか、勝ち昇ってきた方と相手をしてやる。」

 

言い返したいところではあったが、ランサーの宝具“必滅の黄薔薇”により癒えぬ傷をつけられたせいで動かせない左手親指のハンディキャップはライダーを前にしては大きすぎる。

 

「では騎士王。しばしの別れだ。次に会うときはまた存分に余の血を熱くしてもらおうか。・・・・おい坊主、貴様は何か気の利いた台詞はないのか」

 

ライダーの足元で御者台にへたりこんでいるライダーのマスターは返事を返さない。ライダーが襟首を持ち上げてみると、ライダーのマスターは気絶をしていた。どうやら緊張感が切れて気絶したらしい。

 

「・・・・もうちょっとシャッキリせんかなぁ、こいつは」

 

ライダーは嘆息して自らのマスターを小脇に抱えると、二頭の神牛に手綱を入れた。蹄から稲妻を散らし虚空へと駆け上がる。

 

「さらば!」

 

轟雷の響きとともに、ライダーの戦車は南の彼方へと駆け去って行った。アイリスフィールを見ると、張りつめていた緊張から解放されていた。

 

「序盤からここまで派手なことになった聖杯戦争なんて、過去にあったのかしらね・・・・」

 

アイリスフィールの言葉も当然といえば当然だ。5人のサーヴァントが一堂に会し、うち何人かは惜しげもなく宝具も炸裂させたのだ。

 

「セイバー、左腕は―――」

 

「はい。手痛い失態でした。ライダーの言うとおり、まずはランサーと決着をつけて傷の呪いを解かないことには、他のサーヴァントとの戦いにも差し障ります」

 

「・・・セイバーありがとう。あなたのお陰で、生き残れた」

 

目を伏せていうアイリスフィールに微笑みを向ける。

 

「私が前を向いて戦えたのは、背中を貴女に預けていたからです。」

 

「勝負はこれからですアイリスフィール。今夜の局面は、これから始まる戦いの最初の一夜でしかありません」

 

「・・・・そうね」

 

「これが・・・・聖杯戦争」

 

アイリスフィールが夜空に向けて呟いた。私は誰が相手でも絶対に負けるつもりはない。

 

 

 

 

side 戦人

 

俺は戦闘を中断して撤退した後雁夜が居るであろう下水道に移動する。レイラインを通して苦しんでいる雁夜を探す。レイラインを辿りながら進むと、前方に倒れている人型の姿を見つけた。恐らくあれが雁夜だな。

 

「・・・生きているか雁夜。」

 

「・・・・ぜっ・・はぁ・・あぁ・・生きている」

 

どうやらまだ息をしているな。雁夜を肩に担いで移動する。いつまでもこんな臭い所に居られないからな。

 

「雁夜。アーチャーを撃退する力を一部だが約束通り見せてやったぞ。後はお前次第だ。」

 

そう。雁夜が耐えられなければ勝てる勝利も敗北に変わる。

 

「・・わ・・・わかって・・いる。・・今は・・とり・あえず・休まなければ」

 

喋るのも絶え絶えだけど、しっかりと意思がある。このまま出ても他のサーヴァントに見つかる可能性があるため倉庫街から3ブロック離れたところで外に出る。雁夜を連れて戦うのは愚の骨頂だ。敵サーヴァントに見つからないよう急いで間桐邸に行き、休ませなければいけない。

 

「今は眠れ雁夜。眠っている間には間桐邸に着いているだろう」

 

俺が優しく問いかけると、体の限界が来ているせいか俺の言うとおり死んだように眠った。さて、このまま連れていくと他の奴らに怪しまれるから車を盗んで移動するかと考えながら、夜の中に姿を消していった。

 

 

説明
倉庫街の戦いも終焉。他のマスター達の心情はどう感じているのか。
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コメント
気長に次の更新をお待ちしています。これからも応援していますので、無理をしない程度にがんばって下さい。(ルアベ)
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