英雄伝説〜光と闇の軌跡〜  209
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その後迷子の捜索を再開したエステル達だったが、一向に見つからず執事がいる談話室に一端戻った。

 

〜エルベ離宮・談話室〜

 

「どうだい、見つかったかい?」

部屋に入って来たエステル達に気付いた執事は尋ねた。

「ううん、残念ながら。怪しそうな場所は一通り調べてみたんだけど。」

「も、もしかして……エルベ離宮の外に出ちゃった可能性は……」

エステルの答えを聞いた執事は身を震わせた。

「チッ……。そりゃあ、やっかいだな。」

「うーん、かくれんぼだし、それはないと思うけどな……。普通に行ける範囲内に隠れるのがルールだもん。多分、思いもよらない場所に隠れている可能性が高いわね」

「なるほど、たまには鋭いことを言うじゃねえか。もう少し探してみるかよ?」

エステルの提案に頷いたアガットは尋ねた。

「うん、少し発想を変えて捜してみることにしましょ。さて、早速念のためにこの部屋の怪しい所を調べて………っと。」

アガットの言葉に頷いたエステルはカウンターの下を覗き込んだ。

「えっ………」

「???どうしたんだい?」

カウンターを覗き込み何かを見つけたエステルの呟きが聞こえた執事は首を傾げてエステルに尋ねた。

「あはは………どうしたもこうしたも………」

執事に尋ねられたエステルが苦笑したその時

「ふみゃ〜ん……。あーあ、レンの負けね。」

白いフリフリのドレスを着て、黒いリボンを付けた迷子の少女――レンがカウンターから出て来た。

「ええっ!?」

「こんな所に隠れていたのかよ………」

レンを見た執事は驚き、アガットは呆れた。

「うふふ………レンを見つけるなんて、お姉さん、なかなかやるわね♪」

「ふふ〜んだ。これでもかくれんぼは得意だったからね!」

レンの称賛にエステルは自慢げに胸をはって答えた。

 

「いや〜、見つかってよかった。えっと君……名前はレンちゃんでいいのかな?」

「ええ、そうよ。レンはレンっていうの。ごめんなさい、秘密にしてて。」

執事の質問にレンは素直に謝って答えた。

「はは、気にしていないよ。でもどうして突然、かくれんぼなんか始めたんだい?」

「だって、遊撃士さんが来てくれるって聞いたから……。一緒に遊ぼうと思ってがんばって隠れていたのよ。」

「あはは、そうなんだ。でも、悪戯はほどほどにしなさいね?でないとお姉さんも怒っちゃうからね?」

レンの話を聞いたエステルは苦笑した後、軽く注意をした。

「はーい。ごめんなさい、お姉さん達。」

エステルの注意に返事をしたレンはエステル達に謝った。

「ま、そいつはともかく……。父ちゃんと母ちゃんはいったいどこに行ったんだ?どうしてこんな場所で1人で遊んでやがる?」

「ジー……」

アガットの質問を聞いたレンは何故か鋭い目つきでアガットを見ていた。

「な、なんだよ?」

レンに見られたアガットは戸惑いながら尋ねた。

「お兄さん、ダメダメねぇ。レディに対する口のきき方がぜんぜんわかってないみたい。」

「ムカッ……」

そして呆れて溜息を吐いているレンを見て、アガットは青筋を立ててレンを睨んだ。

「まあ、レンはレディだしカンダイな心で許してあげるわ。それで、パパとママがどこに行ったかなんだけど……。レンにもよくわからないの。」

「わからない?」

レンの話を聞いたエステルは首を傾げた。

 

「レン、パパとママといっしょにここに遊びに来てたんだけど。お昼を食べたあと、パパたちがまじめな顔でレンにこう言ったの。『パパたちは大事な用があってレンとお別れしなくちゃならない。でも大丈夫、用が済んだら必ずレンのことを迎えに行くからね。パパたちが帰ってくるまで良い子にして待っていられるかい?』」

「そ、それって……」

レンの話を聞いたエステルは嫌な予感がした。

「ふふっ、レンはもう11歳だから『もちろんできるわ』って答えたわ。そうしたら、パパとママはそのままどこかに行っちゃったの。」

「おいおい、冗談だろ……」

レンが話し終えるとアガットは疲労感漂う様子で溜息を吐いた。

「えーと……。そんな事情とは思わなかった。どうしよう?保護者を捜すっていう話じゃなくなってきた気がするんだが。」

「うーん……。アガット、いいかな?」

執事の質問にエステルは唸った後、アガットに目配せをした。

「仕方ねえ……。これもギルドの仕事だ。」

「執事さん、心配しないで。この子はあたしたちが責任をもって預かるから。」

「えっ……?」

エステルの説明を聞いた執事は目を丸くした。そしてエステルはレンの方に向いた。

「ね、レンちゃん。お姉さんたちと一緒に王都のギルドに行かない?すぐに、パパとママを見つけてあげられると思うわ。」

「そうなの?でもパパたち、大事な用があるって言ってたのよ?」

エステルの提案を聞いたレンは可愛らしそうに首を傾げて尋ねた。

「大丈夫、大丈夫。絶対に見つけてあげるから。お姉さんを信じなさいって!」

「うーん……。それじゃあレン、お姉さんといっしょに行くわ。よろしくお願いするわね。」

「うん!こちらこそよろしくね。」

「ふう……本当にすまない。その子のこと、よろしく頼んだよ。」

「ああ、任せておきな。よし……とっととギルドに戻るぞ。」

そしてエステル達はレンを連れて離宮を出た。

 

〜キルシェ通り〜

 

レンを連れて周遊道を抜けたエステル達は街道で意外な人物と出会った。

「おや、貴方がたは……」

「あれ……?」

「まあ……。フィリップさん。お久しぶりですね。」

エステル達が出会った人物はデュナンの執事のフィリップだった。

「お久しぶりです。クローディア殿下、エステル様。エルベ離宮に行ってらしたのですか?」

「うん、そうだけど……」

「フィリップさんは王都に御用があったのですか?」

「ええ、公爵閣下のお申し付けで買い物などをしておりました。……ひょっとして離宮で閣下とお会いになられましたか?」

クロ―ゼの疑問に答えたフィリップはエステル達に尋ねた。

「う、うーん、まあね。」

「久しぶりに挨拶をさせて頂きました。」

「……その様子では、やはり心ないことを言われたようですな。誠に申しわけありません。臣下としてお詫び申し上げます。」

苦笑しているエステルとクロ―ゼを見て、フィリップは頭を下げて謝罪した。

 

「ふふ、とんでもないです。謹慎されていると聞いたので少し心配だったのですが……お元気そうで安心しました。」

「そう言って頂けると助かります。それでは私はこれで……。皆様、失礼いたします。」

そしてフィリップはエステル達に頭を下げた後、エルベ離宮に向かった。

「は〜、相変わらず苦労をしょい込んでるわね。あの公爵が小さい時から世話をしているらしいけど……」

「世話役としての経歴は20年以上だそうです。何でも、その前には親衛隊に勤めていたとか。」

「え、そうなの!?うーん、まさに人は見かけによらないわね。」

「………………………………。今のオジサン……タダ者じゃないと見たわ。」

クロ―ゼの説明を聞いたエステルは驚き、レンは唐突に口を開いた。

「へっ……。どうしたのよ、いきなり?」

レンの言葉を聞いたエステルは驚いて尋ねた。

「だって、あんな風に目をつぶって歩けるんですもの。レンにはゼッタイにできないわ。」

「うーん、あれは目をつぶっているんじゃなくて細目なだけだと思うけど……。ちなみに驚いていた時はちゃんと目を見開いてたわよ?」

「あら、そうなの?うふふ、驚いたお顔も見てみたくなっちゃったわ。」

エステルの答えを聞いたレンは無邪気に笑って答えた。

 

そしてエステル達はレンを連れて、王都のギルドに向かった……………

 

 

 

 

説明
第209話
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タグ
イリーナ復活 エウシュリー無双 エステル最強キャラ化 カリンも復活 メンフィル無双 他エウシュリーキャラも登場 幻燐の姫将軍 碧の軌跡 空の軌跡 零の軌跡 

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