英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 214 |
〜グランセル城・離宮前〜
「ここは…………」
ヒルダの案内によって桟橋から見える離宮を見たクロ―ゼは驚いた表情をした。
「……殿下にとっては懐かしい場所でしょうね。」
「ふむ。女王宮とは別の王宮である所を見ると、もしかして亡くなられた王太子夫婦が住まわれていた王宮かな?」
「はい。…………シルヴァン陛下達は兵士や親衛隊員の方達も含め、かなりの数で来られましたから、殿下には申し訳ないのですが、女王陛下の許可の元、こちらを使わせて頂きました。」
オリビエの疑問に答えたヒルダはクロ―ゼに頭を下げて謝罪した。
「いえ………私より辛い思いをされたお祖母様が決心なされたのなら、私からは言う事はありません。だから、気にしないで下さい。」
謝罪するヒルダにクロ―ゼは微笑んで答えた。
「………もったいなきお言葉です。………申し訳ないのですがまたパーティーの準備が残っているので私が御一緒できるのはここまでです。」
「あ、大丈夫です。ここからはあたし達で行けますから。」
「………わかりました。それでは失礼します。」
エステルの言葉に頷いたヒルダはエステル達に一礼をした後、城に戻った。
「さて………ついにメンフィルの王様達とご対面ね!まさか、こんな日が来るとは思わなかったわ〜。」
「ハハ………ここにいるみんな、お前さんと同じ感想を持っているよ。」
「はい。………私なんか、ドレスで来るべきだったと後悔しています。」
「フッ………いざ行かん、”覇王”の血を引きし者達の元へ!」
エステルの言葉にジンは頷き、クロ―ゼは苦笑しながら答え、オリビエはいつもの調子で仕切った。そしてエステル達は桟橋を渡り、離宮の前を守っているメンフィル兵達に自分達の名前を告げ、離宮へと入って行った。
〜離宮内〜
「………さすがは”大陸最強”の兵士達と言った所か。一人一人、只者じゃないな。恐らくだが、正遊撃士或いは王室親衛隊員並の実力はあると感じるぜ。」
離宮内を歩いていたジンは周囲のメンフィル兵達を見て、真剣な表情で呟いた。
「メンフィルの兵士さん達はあたしにとっては馴染み深い存在だけど………改めて見ると、みんな凄い気配を感じるわね。」
「メンフィルの真の強さは白兵戦と聞きます。一般兵がそれだけ強いとなると、『空の王者』と畏怖を持たれている竜騎士(ドラゴンナイト)や親衛隊の方達はどれほどの強さなんでしょうか?」
エステルの呟きにクロ―ゼは答え、未だ見ない竜騎士や親衛隊員の強さが気になった。
「フッ………しかし、みな物々しい雰囲気ばかりだね。よし、こういう時こそボクのリュートで張り詰めた空気を和ませて………」
「やめなさいっての。下手したらそれこそ外交問題になるでしょーが。ミュラーさんに知らされたいの?」
リュートを取り出したオリビエをエステルはジト目で睨んで注意した。
「それだけは勘弁して下さい………」
エステルの注意を受けたオリビエは肩を落として答えた。そしてエステル達は離宮を登り、2階の空中庭園に出た。
〜離宮・空中庭園〜
エステル達が空中庭園に出るとそこには十数匹の”飛竜”が手すり等に繋がれていた。
「へっ!?り、竜!?」
「もしかしてこいつらが噂の”竜騎士”が乗る”飛竜”っていうやつか………」
「話には聞いていましたけど、こうして見ると、本当に驚きますね………”竜”が大人しく従っているのですし。」
飛竜を見たエステルは驚き、ジンは真剣な表情で飛竜を見て、クロ―ゼは驚きの表情で飛竜を見ていた。
「ふむ………どれどれ……」
そしてオリビエは飛竜に近付いたが
「グオッ!」
なんと飛竜はオリビエに向かって口から火の玉を吐いた!
「おおっと!?」
火の玉に気付いたオリビエは慌てて回避し、飛竜から離れた。
「何やっているのよ、このスチャラカ演奏家は〜!」
それを見たエステルが怒ったその時
「……その子達は乗り手以外の者が近付くと容赦なく攻撃します。なので決して不用意に近付かないで下さい。」
太陽に輝くような黄金の髪を腰までなびかせ、紅い瞳を持ち、耳は尖り、白銀と漆黒の大鎌を対に背負い甲冑を装備した一人の女性がエステル達に近付いて来た。
「す、すみません!以後、こんな事がないように気をつけます!ほら!アンタも謝りなさい!」
「スミマセンでした………」
女性に気付いたエステルは無理やりオリビエの頭を下げさせ、オリビエと共に謝罪した。
「フフ………こちらの世界では飛竜は珍しいですからね。近付いてみたくなるのも無理はありません。」
女性は口元に笑みを浮かべて答えた。
「飛竜が懐いているという事はもしかしてお前さん………”竜騎士”かい?」
ジンは飛竜のの中でも一際大きい飛竜に近付いて撫でている女性を見て尋ねた。ジンに言われた女性は姿勢を正して自己紹介をした。
「……紹介が遅れ、申し訳ありません。メンフィル帝国軍、竜騎士団の長を務めるサフィナ・L・マーシルンと申します。以後、お見知り置きを。」
「あ、遊撃士協会のエステル・ブライトって言います。」
「同じく遊撃士協会のジン・ヴァセックだ。」
「リベール王女、クロ―ディア・フォン・アウスレーゼです。………名高き”竜騎士”殿に出会えて、光栄です。」
「そしてボクは漂泊の吟遊詩人にして、愛と平和の使者、オリビエ・レンハイムさ!ぜひ、ボクの曲を一曲聞いて頂けますか?レディ?」
エステル達も女性――サフィナに続くように自己紹介をしたがオリビエはいつもの調子でナンパをし始めた。
「こ〜の〜スチャラカ演奏家は〜!!あれほど、やめろってさっき言ったでしょ!?」
「エレボニアが誤解されても知らねえぞ………」
その様子を見たエステルはオリビエを怒鳴り、ジンは呆れて溜息を吐いた。
「フフ………」
その様子を見ていたサフィナは口元に笑みを浮かべていた。
「あ!す、すみません!お見苦しい所を見せてしまって…………」
「別に構いませんよ。慣れていますから。」
「あはは………あれ?そう言えば、さっき名乗った時”マーシルン”って名乗っていましたけど……」
サフィナの言葉に苦笑したエステルはある事が気になり、呟いた。
「もしかして、シルヴァン皇帝陛下達と縁のある方ですか?」
そしてクロ―ゼは驚いてサフィナに正体を尋ねた。
「はい。陛下達と私は異母兄妹になります。我が父は”謳われし闇王”リウイ・マーシルン、母は”空の守護者”ティファーナ・ルクセンベール。………プリネ達のお世話をして頂きありがとうございました、エステル殿。」
「あはは………お世話になったのはどっちかと言うとあたし達の方なんだけどな……」
サフィナにお礼を言われたエステルは苦笑した。
「………何やら騒がしいな。」
「どうかしたのかしら、サフィナ。」
「あら。知らされていたとはいえ、懐かしい顔ぶれね。」
そこに黒を基調としたどことなく高級感のある服に白銀の肩当てを両肩に身に付け、腰まで届くほどの白銀のマントを羽織り、薄い緑の髪とサフィナと同じ紅い瞳を持った精悍な顔つきをした青年と、胸元を開いた漆黒のドレスに首元に真紅の宝石を身に付け、髪型、体つき、顔つきの全てがカーリアンとどことなく似ていて唯一違うのは紅い瞳である女性がファーミシルスと共にエステル達に近付いて来た。また、2人の耳は尖っており、青年は聖剣(セレンティア)、女性は長剣(リジェラ)をそれぞれ帯剣していた。
「………陛下。それにカミ―リ様も。………お疲れ様です、大将軍。」
3人が近付いて来るとサフィナは敬礼をした。
「フウ…………公式の場でない限りは家族としての呼び方でいいと、いつも言っているだろう?」
「そうよ〜。血が半分しか繋がっていないとはいえ、私達は家族なんだから、そんな堅苦しい呼び方をされるとお姉さん、悲しんじゃうわよ〜?」
青年は溜息を吐いた後、口元に笑みを浮かべて指摘し、女性は笑顔をサフィナに向け、からかうような口調で言った。
「フフ………そうでしたね。シルヴァン兄上、カミ―リ姉上。」
2人の指摘を受けたサフィナは青年――リウイとシルフィアの息子にして現メンフィル皇帝――シルヴァンと、リウイとカーリアンの娘にしてシルヴァンの妻――カミ―リに苦笑しながら答えた。
「えっ!?じゃ、じゃあ………もしかして2人が………!」
「現メンフィル皇帝夫妻の、シルヴァン皇帝陛下とカミ―リ皇妃ですか!?」
一方サフィナ達の会話を聞いていたエステルとクロ―ゼは驚いた。
「メンフィル皇妃、カミ―リ・マーシルンよ。よろしくね♪」
「………メンフィル皇帝、シルヴァン・マーシルン。詳しい話は中で聞こう。」
カミ―リは片目をウインクして自己紹介をし、シルヴァンは静かな声で自己紹介をした。
そしてエステル達はシルヴァン達と共にシルヴァンとカミ―リが泊まっている客室に向かった………
説明 | ||
第214話 | ||
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