IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第三十七話 〜休日の一風景〜
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〜IS学園・校門前〜

週末、日曜日の良く晴れた休日。こんな日は、家族であれば団欒のひとときを過ごし、友人がいれば、遊びに繰り出すだろう。しかし今現在、校門の前にいる少年はそのどちらにも当てはまらない。

 

「千冬の奴、遅いな・・・」

 

そう呟くのはクロウ・ブルースト。見た目は少年、それ以外は大人というこの人間は、人を待っている所だった。ちなみに、クロウの服装はいつもの通り、IS学園の制服である。そろそろ私服が欲しい、と思っていたクロウは、今回の買い物で買おうと考えていた。しばらくすると、校門の方に歩いてくる人影が見える。

 

「す、すまないクロウ。待ったか?」

 

クロウの前には私服に身を包んだ織斑 千冬がいた。下は黒いジーンズと上は黒いタンクトップに白い半袖のジャケットを重ね着している。

 

「いや、そんなには待ってないぞ。じゃあ行くか」

 

「え?あ、ああ!それでは行くぞ!!」

 

クロウが歩こうとすると、千冬がその隣に並ぶ。ゆっくりと駅の方に歩いていった。目的地は先に決めてあるので問題はない。しかし、クロウ達は気付かなかった。クロウと千冬が談笑しつつ、歩いているその後ろに、なにやら怪しい二つの影が二人の後をつけている事に・・・。

 

 

〜ショッピングモール・レゾナンス〜

 

クロウと千冬は無事目的地に着いた。ここは“レゾナンス”。食べ物は和・洋・中が揃っていて、衣服も全てのジャンルが勢ぞろい。地元では『ここで無ければ市内のどこにも無い』とまで言われている巨大な複合施設である。その入口にクロウと千冬は立っていた。

 

「さて、まずどうする?」

 

「まず、俺の服を買っていいか?さすがに制服のままじゃマズイだろう」

 

そう、周りを歩いている人間に制服など一人もいない。その中でクロウが一人だけ制服、というのははっきり言ってとても浮いているのだった。

 

「そうだな、私の買い物はそれからでも構わないぞ」

 

「すまんな千冬。付き合わせて」

 

「い、いや!そもそも今回は私が言い出したのだ!迷惑なんて事は全然ないぞ!!」

 

言いつつ、レゾナンスに入っていく二人。その二人の背中を見つめる二つの影がいた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

二人は上手く人ごみにまぎれつつ、二人を尾行し続けていた。そしてクロウ達がレゾナンスに入ると同時に物陰から姿を表し、尾行を再開する。片方は優雅なブロンドヘアー。もう片方は金髪を後ろで束ねている、つまりセシリアとシャルロットであった。

 

「・・・ねえセシリア」

 

「・・・何ですの、シャルロットさん?」

 

「・・・何でクロウは休日に織斑先生と一緒に出かけているのかなあ?」

 

「・・・なぜでしょう?後でクロウさんにお聞きになるのが一番かと」

 

「・・・やっぱりそうだよね。後で僕のクロウに聞くのが一番だよね」

 

「・・・そうですわ。後でじっくりたっぷりと聞くのがよろしいでしょう」

 

と話しながら、クロウたちが進んで行くのを見逃さず、尾行し続ける二人であった。

 

 

さて、読者諸君は思っていることだろう。“何故二人にクロウが千冬と出かけることがバレているのだろう?”と。諸君の疑問を解決するため、今日の朝に時間を戻してみるとしよう。

 

 

〜朝・寮〜

 

朝から寮の廊下を歩いているのはセシリア・オルコット。彼女はいつも休日には、BT兵器を使いこなすべく、一人で早朝特訓をしていた。向かうのはクロウ・ブルーストの部屋。朝の特訓で疑問だった部分を聞きに行くべく、クロウの部屋へと足を進めている最中であった。まあ、その理由の半分はクロウに会いに行くための口実だったのだが。

 

「(ふふ、今日は朝からクロウさんの顔が見れますわ!!)」

 

上機嫌で廊下を歩くセシリア。しかし廊下で一人の女性とばったりと会ってしまう。

 

「あ、おはよう。セシリア」

 

「おはようございますわ。シャルロットさん」

 

その女性はシャルロット・デュノア。先月クロウとの混浴騒動の原因であり、クロウをめぐるライバルの一人でもあった。しかし、その前に一人の友人であるため、好意的な態度で接する。

 

「セシリアも朝からどうしたの?」

 

「ええ、特訓の最中にわからない所があったので、クロウさんにお聞きしようかと」

 

その言葉を言った瞬間、シャルロットの笑顔が固まる。セシリアとしては、いくらか挑発の意味も込めて言ったのだが、見事に効いた様だ。

 

「へ、へえ。じゃあ僕も一緒に行こうかな。ちょうど聞きたい事もあったしね」

 

と言いつつ、セシリアの隣に並びつつ歩き出すシャルロット。最初はゆっくりとだったが、次第に先を争う様にスピードを上げる。最終的には、もはや走っていると言っていいほどのスピードになっていた

 

「ちょ、ちょっとセシリア!淑女が廊下をそんなスピードで走っていいの!?」

 

「シャルロットさんこそ!廊下は走ってはいけませんわ!!」

 

「その言葉そっくりそのままセシリアに返すよ!!」

 

言い争いながらもクロウの部屋を一直線に目指す二人。走っていたのですぐにクロウに部屋の前にたどり着いた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、や、やっとつきましたわ」

 

「セ、セシリアが走るから・・・」

 

息を整え、クロウの部屋のドアをノックする二人。

 

「ク、クロウ。いる?」

 

「クロウさん、いますの?」

 

しかし、返事はない。シャルロットが試しに取っ手に手を掛け回してみると、鍵がかかっていた。

 

「おかしいなあ、クロウどこ行っちゃったんだろう?」

 

「こんな朝から外出・・・何かおかしいですわね」

 

「探してみようか?」

 

「ええ、そうしましょう」

 

二人は学園の中を探し始める。朝の教室、アリーナ、浴場にもクロウはいなかった。セシリア達が寮の外を探し始めると、その人物はいた。

 

「あっ、セシリア、いたよ!!」

 

「クロウさん!」

 

二人の顔は探していた人を見つけて笑顔になる。しかしクロウに歩み寄る人物を見て、表情が一変した。織斑 千冬がクロウの横に立ち、談笑しながら歩き出す。二人は顔を見合わせ、頷いたかと思うと、どちらから言い出したわけでも無く、尾行を開始した。二人はクロウと千冬を尾行し続け、レゾナンスまで来てしまったのだ。

 

〜レゾナンス〜

 

さて、セシリアとシャルロットが尾行しているなんて露にも思わず、クロウと千冬はゆっくりと楽しみながら買い物をしていく。

 

「まあ、こんなものか」

 

そういうクロウの格好は制服から変わっていた。靴は学園指定のものから、ブーツに変え、下は大きめのスラックスを着用している。白のシャツに重ね着をして、一番上には深い緑色のコートを羽織っている。服屋、靴屋をはしごした結果である。

 

「・・・・・・」

 

そんなクロウを見て、黙っている千冬。何も喋らない千冬を心配して声を駆けるクロウ。

 

「おい、どうかしたか千冬?」

 

「い、いや!何でもないぞ!!」

 

「そうか、じゃあ次の店に行こうぜ」

 

「ああ、行くぞ(い、言える訳ないだろう。見とれていたとなどと・・・)」

 

そしてクロウと千冬は再び歩き出す。次に二人が向かったのは水着売り場だった。

 

「じゃあ一旦別れて水着が決まったら合流でいいか?」

 

「ん?それでいいのか?」

 

「ゆっくり選びたいからな、じゃあ後でな」

 

そこでクロウと千冬は別れる。去り際に、千冬が何か言いたそうにしていたが、クロウは気づかずに男性用の水着売り場へと向かう。

 

「ほお、ずいぶん種類があるんだな」

 

数分選んだ結果、クロウはトランクスタイプの黒色の水着と、水辺で着るためのパーカーを買った。早すぎたのもあり、クロウは時間を持て余していたので、千冬の様子を見に行ってみた。

 

「おう千冬、決まったか?」

 

「ああ、クロウか。少し聞きたい事があるのだがいいか?」

 

「何だ?」

 

「ど、どちらが私に似合うと思う?」

 

千冬が現在手に持っているのは、白と黒、対極の色のビキニであった。クロウはストレートに思ったことを言う。

 

「こっちの黒の方がいいと思うぞ。千冬に良く似合うと思うからな」

 

「!!・・・そ、そうかそうか。似合うか」

 

珍しく千冬が笑顔を見せる。その笑顔は学園内では見られないものだった。

 

「会計に行ってくる。少し待っていてくれ」

 

そう言うと、白の水着を棚に戻し、黒の水着片手にレジに向かう千冬。一人残されたクロウだが、すぐに落ち着かなくなる。

 

「・・・店の入口に戻るか」

 

「ねえ、そこのあなた」

 

「ん?」

 

クロウが声に反応して振り向くと、見知らぬ女性がクロウの方をむいて、話しかけてくる。

 

「あなたに言っているのよ。そこの水着、片付けておいて」

 

「何で俺がそんな事するんだ?」

 

当たり前の様にクロウは拒否の意を示す。すると女性は露骨に嫌悪の表情をする。

 

「ふうん。そういうこと言うの。あなた、自分の立場が分かっていないようね」

 

そう言うと、いきなり店に常駐している警備員を呼び出した女。警備員は女性客に呼ばれて、駆け足で近づいてくる。

 

「お客様、どうかしましたか?」

 

「こいつ、私に暴力を振るったの、ちょっとなんとかしてくれない?」

 

「・・・はあ?(こいつ何言ってんだ?)」

 

その言葉を聞いた瞬間、クロウは呆れた。目の前の女はクロウに濡れ衣を着せようとしている。しかしそんな事で警備員が動くハズがないと高を括っていた。

 

「(そんな幼稚な事で、警備員が動くわけないだろ?こいつアホか?)」

 

「そうですか、それでは貴方、少しお話を伺いたいので、一緒に来てもらってもいいですか?」

 

「・・・え?」

 

クロウは失念していた。この世界が女尊男卑の世界であることを。女性が発言権を持ち、男が理不尽な思いをする世界だということを。

 

「とにかく一緒に来て欲しいのですが」

 

「・・・どうしてだ?」

 

この間にも、クロウは“どうやってこの場を抜け出すか”という命題に対して、全力で考えている最中であった。クロウが考えている間にも、警備員は詰問してくる。

 

「この女性の証言が本当ならば、警察に届ける必要がありますから。身分を証明出来る物を持っていますか?」

 

その時、二つの影がクロウと警備員の間に割って入った。

 

「その女性の言っている事はデタラメですわ!!」

 

「そうだよ!僕たちは見ていたんだから!!」

 

警備員に噛み付く二人はセシリア・オルコットとシャルロット・デュノア。この二人は先程まで物陰に隠れクロウの様子を見ていたのだが、クロウが言いがかりを付けられている事に我慢できず、飛び出してきたのであった。

 

「ふん、あなたたち、一体誰よ!!」

 

女性が乱入者に暴言を浴びせる。それが自分の首を締める行為だとも知らずに。

 

「私はセシリア・オルコット、イギリスの国家代表候補生ですわ!!」

 

「僕はシャルロット・デュノア。同じくフランスの国家代表候補生です」

 

「お前ら・・・」

 

その言葉を聞いた瞬間、女性と警備員、二人の顔が青ざめる。二人の立場は国家代表候補生。その言動は一国家の発言のようなものだ。そんな人間が二人も異を唱えるのだ、警備員も慎重になり女性に確認を取る。

 

「本当に暴力を振るわれたのですか?」

 

ここで大人しく引き下がっておけばいいものを、何を血迷ったのか意見を変えない女性。

 

「え、ええ!私は暴力を振るわれたわ!!」

 

あくまで意見を変えない女性に対し、警備員もどうすればいいか困っている様だった。そこにとどめが放たれる。

 

「どうしたんだ、クロウ?」

 

「・・・ブ、ブリュンヒルデ??」

 

片手に紙袋を持った千冬が登場。女性は千冬を見て顔が白くなっていく。何しろ目の前には女性なら知らない人間はいない程の有名人。セシリアとシャルロットは千冬を見て苦笑いをしている。

 

「ああ、ちょっとな。この女が俺に暴力を振るわれたって言うんだよ」

 

「何だと・・・。貴様、もう一度言ってみろ、クロウに何をされたのだ?」

 

「ひっ」

 

千冬は女性をにらみつつ、にじり寄る。もう女性の顔は青を通り越して、完全に白くなっていた。そこでクロウが仲裁の言葉を放つ。

 

「千冬、もういい。警備員さん、悪かったな。手間を取らせちまって」

 

「い、いいえ!」

 

そう言うと、クロウは店の外に歩き出す。その後に続いて千冬、セシリア、シャルロットの順について行った。

 

 

 

店の外に出た一行は、手近なオープンカフェを見つけて休憩に入る。まずクロウがセシリアとシャルロットに礼を言った。

 

「さっきは助かったぜ。セシリア、シャルロット」

 

「おかしいのはあの女性の方ですわ!クロウさんが暴行なんてするはずがありませんもの!!」

 

「うん、クロウが女の人に暴力なんて振るうはずないよ」

 

「それについては私も全面的に同意する。だがしかし、一つ聞きたい」

 

今まで黙っていた千冬が唐突に口を開き、セシリアとシャルロットを睨む。セシリアとシャルロットはゆっくりと逃げる態勢に入っていた。

 

「・・・何故貴様らがここにいるぅぅぅ!!!」

 

「「ごめんなさいぃぃぃぃ!!!!」」

 

一瞬で席を立ち、脱兎のごときスピードで逃げ出す二人。その二人を背後から般若を出しつつ追いかける千冬。傍目から見ると、中々にシュールな光景であった。

 

〜三分後〜

 

クロウがアイスコーヒーを飲んでいると、息を切らせた千冬が返ってきた。どうやらセシリアとシャルロットは取り逃がしたらしい。

 

「おう、二人には逃げられたのか?」

 

「ああ。しかし油断も隙も無いな、いつの間についてきていたのか」

 

「まあ、あの年頃は行動力が凄いしな。ほら」

 

言いつつ、クロウは自分が飲んでいたコーヒーを千冬に手渡す。よっぽど喉が乾いていたのか、一気に飲み干す千冬。どっかりと椅子に座って息を落ち着かせる。

 

「しっかし何であいつら俺たちの後を追ってきたんだ?」

 

「は?お前、わからんのか?」

 

「ああ、全くわからん。俺たちと一緒に買い物に行きたかったのなら、そう言えばいいのにな」

 

「はぁ・・・」

 

至極真面目に話しているクロウだったが、何故か千冬はため息をつく。

 

「おい千冬、どうかしたのか?」

 

「これも女嫌いの影響なのか?・・・もういい、次の店に行くぞ」

 

席を立ち、歩き出す千冬。クロウは訳が分からず、ただついていくだけだった。

 

説明
第三十七話です。
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コメント
これ、女嫌いじゃなくて、女誑しの間違いじゃないの?(獅子神様)
タグ
IS インフィニット・ストラトス SF 恋愛 クロウ・ブルースト スーパーロボット大戦 ちょっと原作ブレイク 主人公が若干チート ハーレム だけどヒロインは千冬 

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