ISとエンジェロイド
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 第二話 クラスメイトはほぼ女!?2

 

 

 

 

 

 一時間目のIS基礎理論授業が終わっての休み時間。なんともいえない雰囲気に戸惑いを隠せない。ここは俺と同じ男の織斑に挨拶をしに行く。

 

 

 「織斑、でよかったよな?」

 

 「ああ、山下か。同じ境遇同士俺のことは一夏でいいぜ」

 

 「そう。俺のことは航で呼んでくれ」

 

 「分かった。それは兎も角助かった。男がもう一人居てくれて」

 

 「俺も同じ気持ちだ」

 

 

 一夏と話していると、一人の女子が近づいてきた。

 

 

 「……ちょっといいか?」

 

 「え?」

 

 「ん?」

 

 

 突然、話しかけられた。俺にはこの世界で同年代の知り合いはいないので、一夏の関係者なのだろう。

 

 

 「……箒?」

 

 「……………」

 

 

 一夏も篠ノ之のことを知ってるのでおそらく、腐れ縁みたいな関係そうだ。

 

 

 「廊下でいいか?」

 

 「俺のことは気にしなくていいから、行ってこい」

 

 「悪いな」

 

 

 一夏と篠ノ之は廊下に出て行った。

 

 俺は特にすることがないので、次の授業で使う教科書に目を通す。

 

 

 

 

 

 二時間目の授業で一夏の全部解らない発言は面白く、笑いを堪えるのに必死だった。

 

 今は二時間目の休み時間で一夏と雑談していると、またしても一人の女子が近づいてきた。

 

 

 「ちょっと、宜しくて?」

 

 「へ?」

 

 「ん?」

 

 

 話しかけてきた相手は、地毛の金髪が鮮やかな女子だった。白人特有の透き通った青い瞳が、ややつり上がった状態で俺達を見ている。

 

 自分は偉いと思っている人間は苦手だ。

 

 

 「訊いてます? お返事は?」

 

 「あ、ああ。訊いてるけど……どういう用件だ?」

 

 

 一夏が鬱陶しそうに答えると、オルコットはかなりわざとらしく声をあげた。

 

 

 「まあ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 「……………」

 

 

 見た目は兎も角、性格は最悪だな。

 

 

 「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 

 「一夏。この人は、セシリア・オルコットで、イギリスの代表候補生だ」

 

 「ふーん。あ、質問いいか?」

 

 「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。宜しくてよ」

 

 「代表候補生って、何?」

 

 

 がたたっ。クラスの女子数名がずっこけた。案外ノリがいいな、このクラス。

 

 

 「あ、あ、あ……」

 

 「『あ』?」

 

 「貴方、本気で仰ってますの?」

 

 「おう。知らん」

 

 「一夏、簡単に言ってしまえば、国家代表の候補生だ。要はその国のエリートというわけ」

 

 「へぇー、そうなんだ」

 

 「そう! エリートなのですわ!」

 

 

 びしっと一夏に人差し指を向ける。

 

 

 「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

 「そうか。それはラッキーだ」

 

 「それはそれは幸運だ」

 

 「……馬鹿にしていますの?」

 

 

 俺は思いっきり、馬鹿にしているけど。

 

 

 「大体、貴方達ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦出来ると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待外れですわね」

 

 「俺に何かを期待されても困るんだが」

 

 「勝手に期待されても迷惑だ」

 

 「ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、貴方達のような人間にも優しくしてあげますわよ」

 

 

 ありがた迷惑だな。

 

 

 「ISのことで分からないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 

 唯一、を強調されたが、俺は気にしない。

 

 

 「入試って、あれか? ISを動かして戦うってやつ?」

 

 「それ以外に入試などありませんわ」

 

 「あれ? 俺も倒したぞ、教官?」

 

 「は……?」

 

 「へぇー。俺は昨日、織斑先生に見られたから有無を言わさずに連れてこられたけど」

 

 

 一夏が言ったことがショックなのか、オルコットは目を見開いている。

 

 

 「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

 「女子ではってオチじゃないのか?」

 

 

 ピシッ。何かに罅が入ったかのような音が聞こえた気がした。

 

 

 「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

 

 「いや、知らないけど」

 

 「貴方! 貴方も教官を倒したって言うの!?」

 

 「うん、まあ。多分」

 

 「多分!? 多分ってどういう意味かしら!?」

 

 「えーと、落ち着けよ。な?」

 

 「こ、これが落ち着いていられ――」

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 

 「残念だったな、オルコット」

 

 「っ……! またあとで来ますわ! 逃げないことね! よくって!?」

 

 

 負け犬みたいに無駄に吠えてるような感じだ。

 

 

 「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 

 一、二時間目とは違い、山田先生ではなく織斑先生が教壇に立ち、よほど大事なことなのか山田先生までノートを持っている。

 

 

 「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 

 面倒くさいイベントだな。できれば選ばれたくないな。

 

 

 「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。因みにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」

 

 

 ざわざわと周りが色めき立つ。

 

 

 「はいっ。織斑君を推薦します!」

 

 「私もそれが良いと思いますー」

 

 

 早速一夏が選ばれている。

 

 

 「では候補者は織斑一夏……他にいないか? 自薦他薦は問わないぞ」

 

 「はい。私は山下君を推薦します!」

 

 「私もそれが良いです」

 

 

 「お、俺!?」

 

 

 一夏が遅れて反応して立ち上がった。俺は自分の名前が出た時点で諦めている。

 

 

 「一夏、何事も諦めが肝心だ」

 

 「なんでお前は落ち着いてるんだよ。ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな――」

 

 「自薦他薦は問わないと言った。他薦された者に拒否権等ない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

 「い、いやでも――」

 

 

 まだ反論を続けようとする一夏を、甲高い声が遮った。

 

 

 「待って下さい! 納得がいきませんわ!」

 

 

 バンッと机を叩いてオルコットが立ち上がった。

 

 

 「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥曝しですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」

 

 

 そう思ってるのはこのクラスで、恐らく貴女だけです。

 

 

 「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭御座いませんわ!」

 

 

 何だか非常にイライラしている俺がいる。

 

 

 「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

 

 オルコットは更にヒートアップしている。

 

 

 「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」

 

 「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

 「産業革命以降大して開発技術が発展してないくせに偉そうに言うなよ貴様」

 

 「なっ……!?」

 

 

 あまりにも侮辱するからキレてしまった。

 

 

 「あっ、あっ、貴方達ねえ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

 「貴様が先に侮辱したんだろうが」

 

 「決闘ですわ!」

 

 「おう。いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」

 

 「それで白黒はっきりつけてやる」

 

 「言っておきますけど、態と負けたりしたらわたくしの小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」

 

 「侮るなよ。真剣勝負で手を抜く程腐っちゃいない」

 

 「そう? 何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコ

ットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

 「ハンデはどのくらいつける?」

 

 「あら、早速お願いかしら?」

 

 「いや、俺達がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

 

 と、一夏がそこまで言うとクラスから笑いが起きた。

 

 

 「お、織斑君、それ本気で言ってるの?」

 

 「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

 

 「織斑君達は、それは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」

 

 

 俺は兎も角、一夏の専用機がどんなのか分からないから心配だ。

 

 

 「……じゃあ、ハンデはいい」

 

 「ええ、そうでしょうそうでしょう。寧ろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのね」

 

 

 先程の激昂は消え、オルコットは嘲笑を浮かべている。

 

 

 「ねー、織斑君に山下君。今からでも遅くないよ? セシリアに言って、ハンデ付けてもらったら?」

 

 「男が一度言い出したことを覆せるか。ハンデはなくていい」

 

 「えー? それは代表候補生を舐めすぎだよ。それとも、知らないの?」

 

 「……………」

 

 「さて、話は纏まったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコット、山下はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

 

 パンッと手を打って織斑先生が話を締めて授業を開始した。

 

 

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