外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第34話
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第34話  20年来の再会

 

 

 

 

 

「あの、秋山さん」

「うん?」

 

ローエンが秋山に声をかける。

 

「ファイザバード沼野に向かってもらって構いませんか?」

「ファイザバードにか? 俺は別にいいけど、他は?」

「僕はいいよ」

「私もだ」

 

皆がOKする。

 

「それじゃ、ファイザバード沼野に行きますか」

 

秋山の力でファイザバード沼野へと向かい、着いた。

一同は荒れた沼の戦地を見る。

 

「……信じられますか? かつてここは一面の荒野だったのですよ」

「学校で習ったよ。二十年前、巨大津波に襲われてこうなったって。

その時、先代ア・ジュール王率いる大軍とラ・シュガル軍の決戦が行われたはず……。

ローエンも、軍師として参加してたんだよね?」

「ええ……もう二十年になるのですね。キャリー様が亡くなられたのも、この場所でした」

「キャリー……前に言ってた、ナハティガルの妹さんだね」

「彼女にはナハティガルも頭が上がらなかった。

あの方が生きておられたら、ラ・シュガルの歴史は、ずいぶん違っていたでしょう」

「ナハティガルを抑え込むとは、恐ろしい女だな」

 

ミラが恐ろしく思う。

 

「いえいえ、天然でマイペースなのですよ。ナハティガルも毒気を抜かれてしまってね。

……でも、芯はとても強く、常に弱い者の味方だった」

「……なんだか、ドロッセルみたいです」

「もう、エリーってば……」

「一人でも多くの命を救いたいと、看護兵として軍に同行されるほどに」

「王女様が看護兵に!? すごい女性(ひと)だね」

「ですが、結末は悲惨でした」

 

ローエンは静かに首を横に振る。

 

「ナハティガルが手柄を立てることを恐れた兄たちは開戦直前にナハティガルから指揮権を取り上げたのです。

代わりに送り込まれたのは無能な将軍。ラ・シュガル軍は大苦戦に陥りました」

「どうしてそんなことを!?」

「敵よりも身内が憎かったのでしょう」

「権力の亡者らしいな。俺が滅茶苦茶嫌いなタイプだな。その考え……。これだから、軍とかの上層部ってのは……」

「なんでそんなに嫌いなんだ? 軍の上層部とかさ」

 

アルヴィンが秋山に尋ねた。

 

「色んな世界を見てきたけど、どこの上層部も腐ってる連中が多かった。

自分の保身ばかり考えてるのが大半だ。中には世界のためと言いながら非人道的なこともしてたやつもいたな。

まあ全部が腐ってわけじゃなかったのが、まだ救いだったか」

 

秋山が強く拳を握りしめる。

その間にローエンが戦地を少し歩く。

 

「敗北寸前に巨大津波が戦場を襲い、両軍撤退という形になりましたがキャリー様のいた部隊は、津波に呑まれてしまったのです……。

私のミスです。混乱のあまり、あの方の部隊が突出したことに気づけなかった。私がもっと的確な指示を出していれば、キャリーは……!」

「悪いのはお前じゃないさ。確かに自然の状態を見るのも軍師の仕事らしいが、その二十年前って……」

 

秋山がアルヴィンを見る。

 

「なんだよ?」

「その津波の原因は断界殻(シェル)に穴が開いたのが原因じゃないのか?

そんで旅客船のジルニトラが入ってこれたのは、エレンピオスの海水も一緒に入ったからじゃないのか?」

「…………確かにあの時海水も一緒に入ったけどさ」

「だったらそれはある意味天災というより人災だな。

ローエン、あまり気にするな。

二十年前のその時はラ・シュガルやア・ジュールとは関係ない第三勢力が関わって来たんだ。

誰も予想はできないさ」

「……すみません、秋山さん」

「ねえローエン。もしかしてローエンはキャリーさんを……」

「身分も年も不相応な恋でしたが、将来を誓いあっていました。

祝福してくれたのはナハティガルだけだった。

昔の話ですよ。もう取り返すことのできない昔の……」

 

ローエンは頭をうつむかせる。

 

「…………ローエン」

「なんでしょうか?」

「一度エレンピオスに戻るか」

「…………? はい」

 

秋山の力で再びエレンピオスのトリグラフに戻った。

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トリグラフの街を歩いていると……。

 

「あの、この辺りで初老の女性を見かけませんでしたか?」

 

金髪の女性が声をかけてきた。

 

「母と買い物に来たんですが、はぐれちゃって。髪と目の色は私と同じなんですけど……」

「あいにくこの街には詳しくなくてな」

「あらあら、レムったらこんなところにいたの?」

 

そこにレムの捜していた女性がやって来る。

 

「十八になって迷子になるなんて困った子ねぇ」

「もー、待ち合わせ場所を間違えて迷子になったのはママの方でしょ!?」

「そうだったかしら?」

「まったく、マイペースなんだから。よくそれで看護師が勤まるよねー」

「ふふ、エレンピオスの人も、わたしたちと変わらないねぇ」

「だね」

 

ジュードとレイアが笑いながら会話していると……。

 

「キャリー……」

「へ?」

「キャリーじゃないですか! ああ、生きていたんですね!」

 

ローエンがレムの母親のところに近づく。

 

「キャリーさんって……ナハティガルの妹!?」

「え、ええ。確かに私はキャリーですがあなたは、どなた?」

 

キャリーはローエンを知らなかった。

 

「あ、あなたは……」

 

ローエンは戸惑う。

 

「ごめんなさい。私、若い頃の記憶がないんです。

二十年前に海岸に打ち上げられていたこと以外に覚えてるのは、名前だけで……」

「あの、もしかして昔のママを知ってるんですか?」

 

ローエンはこう答えた。

 

「い、いえ。……以前、ご主人の仕事の関係でお会いした者です」

「じゃあ、あなたも軍人さんなんですね?」

「これは失礼しました。主人がお世話になっております」

「い、いえ、久しく会っていませんが。ご主人は……?」

「遠征軍に参加しているはずですが、しばらく便りもなくて……。

でも、心配はしていませんわ。二十年前、倒れていた私を助けてくれて以来。

あの人……ジュライは、一度も約束を破ったことないんですもの」

「ママったら、よその人にのろけないのー」

「あら、恥ずかしい。でも、全部ホントなんですよ」

 

レムは時間を見る。

 

「あ、もう行かなくちゃ。じゃあ、さようなら!」

 

キャリー母娘は去っていった。

 

「ローエン……」

「そうか……二十年前、断界殻(シェル)が破られた時。

津波にのまれたキャリーは、エレンピオスに流されていたのですね……」

「追わなくていいの?」

「ですが……なんと声をかければいいのかわからないのです。

自分が喜んでいるのか、悲しんでいるのか、それさえも……」

「ローエン……」

「無理もないさ。しかしこっちに流れてるってのは考えもつかなかったな」

「ああ」

 

皆がただローエンの姿を見ていた。

そんな時であった。

 

「お兄様、今どうなさってるのかしら?」

 

ドロッセルが急にクレインのことを言いだした。

 

「そうですね、私もいなくなってから、旦那様もお忙しいはず……」

「お屋敷に行ってみませんか?」

 

ドロッセルとローエンがそんなことを言ったのか、エリーゼが戻ろうと言い出す。

 

「きっとクレイン君も、ローエンとドロッセルのこと心配してるよー」

「おやおや、いつの間にかジジイは心配される側ですか?」

「ありがとう、エリー、ティポ。秋山さん、お願いできる?」

「OK!」

 

秋山が瞬間移動でカラハ・シャールへ行く。

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カラハ・シャールのシャール家前に行くと、なにやら街の人達がクレインと話していたようだった。

 

「なにかあったのかな?」

「行ってみましょう」

 

ドロッセルは気になって、先頭を走る。

すると声が聞こえてくる。

 

「クレイン様! いつになったら街道の通行が再開されるんですか?」

「このままじゃ商売あがったりだ!」

「落ち着いてください。現在の混乱に動揺した守備兵たちがガンダラ要塞に立てこもってしまったのです。

軍本部に連絡はしているのですが……」

「そんなのんきな! すでにひどい損害がでているんですよ」

「この状態が続いたらカラハ・シャールはおしまいです!」

「私がなんとかします……」

「お兄様!」

 

そこにドロッセルが声をかけてくる。

 

「ドロッセル! ローエンたちも……」

「話はうかがいました。私たちに相談してくだされば……」

「いや、これは僕が解決すべき問題」

「何か勘違いをしてないか?」

「クレイン様が努力されているのはわかっています。ですが……」

「もう、商売だけの問題じゃないんです。

流通が滞っているせいで、生活がなりたたくなっている地区も出ていて……」

「原因は主にゴーレムか?」

「そうです」

「……これは、ガンダラ要塞を攻略するしかなさそうですね」

「でも、要塞を守るゴーレムはとても倒せないでしょ?」

「ジュード、忘れてない? ガンダラ要塞でゴーレム四体中三体破壊したのが俺だって……」

「そう言えばそうだったね」

「でも、ジランドがゴーレムはそのうちの二体は直したって……」

「強化もされているだろうな」

「なに、またかめはめ波で消滅させればいいし、あいつらに見せてない技なんていくらでもある。

それを使えば俺一人でも十分。本当は全部壊そうと思ったけど、最後の一体の時にお前たちがくるのを感じたから、わざとやめたくらいなんだし……」

 

秋山が一人でガンダラ要塞に行こうとする。

 

「お待ちください。私たちも行きますよ」

「いいよ、別に……」

「俺たちが足手まといだっていいたいのか?」

「いや、俺の責任だから俺が責任を持ってゴーレムを排除しようと思ってるだけだ」

「それだったら、わたしたちも頼ってよ! これでも強くなったんだから……」

「そうそう! お兄様は知らないけど、私も結構鍛えて強くなったの!」

 

レイアとドロッセルが胸を張って言う。

 

「じゃあ、一緒に行くとするか」

「お待ちください。

ゴーレムは特別な霊勢の中では、完璧な防御力を発揮します。

秋山さん以外では勝つのはまず無理でしょう。ですが……」

 

ローエンの言葉にミラは考えを口にする。

 

「逆に言えば、違う霊勢の下では力が低下する?」

「そう。そして、今の私たちは霊勢を変える方法を知っている」

「そうか! ファイザバード沼野の時みたいに増霊極(ブースター)で霊勢を変化させれば」

「私たちにも勝算はあります」

 

ローエンは笑顔を見せる。

 

「必要なのは増霊極(ブースター)だな。ファイザバード沼野で使ったものは?」

「流沼に流された時に失くしてしまいました」

「ティポじゃダメなんでしょうか?」

「ティポさんは特殊ですから、今回の作戦には使えないでしょう」

「別の増霊極(ブースター)を探さないと……」

「仕方ない、俺がつくる」

「どうやってつくるんだ? 増霊極(ブースター)がそんなホイホイつくれるもんじゃないだろ」

「俺の闇、舐めんなよ」

 

アルヴィンに言われて少しイラっとした秋山が両手を叩く。

そして両手を地面につけると、目の前に増霊極(ブースター)が現れる。

 

「ウソ!?」

「どうやったんだ? それ……」

「セルシウスとヴォルトの時と基本は変わらんさ」

「秋山さんの闇の力は色んなことが出来るんですね」

「他の世界だったらこんなことできんさ。やったらやったで大問題が起こるだけだ」

 

秋山は増霊極(ブースター)を取り、ローエンに渡す。

 

「これでいいだろ?」

「確かに……では行きましょう」

「ドロッセル! ローエン! みなさん!」

 

クレインが行こうとする皆を呼び止める。

 

「気を付けて……」

「わかってるわ、お兄様!」

「では行ってきます、旦那様」

「大丈夫。あんたの妹さんたちは俺が責任を持って無事に帰してやるから」

 

そして一同はカラハ・シャールのためにガンダラ要塞に行った。

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一同はガンダラ要塞前へとたどり着く。

そこにはナハティガルやガイアスの命を無視した兵たちがガンダラ要塞の巡回をしていた。

 

「ゴーレムが起動してるのになぜ巡回を?」

 

ジュード達は一時隠れる。

 

「恐怖にとらわれると、人間はどんな状態でも安心できないものです」

「はぁ……」

 

秋山が高速移動で兵士達の秘孔を突いた。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

一同はガンダラ要塞に入った。

 

「いた! 前方にゴーレム二体!」

「後ろにも一体います!」

「まあかめはめ波で一体は完全消滅させたからな。

新しくつくるのは時間がかかったんだろう」

「前後に三体か……。『前門の虎、後門の狼』ですね」

「いいや、『一石三鳥』だよ。手間がかからなくて好都合だ」

「はは、ミラと一緒だと心強いな」

「同感です」

「俺と一緒ってところがないのは、まあいいだろ。俺、本当はこの世界の人間じゃないし……」

 

秋山はいじけようとしたが、やめた。

 

「やりましょう! 前のわたしたちとは違います」

「そのとおりだ! ローエン!」

「承知! ゴーレム攪乱器起動!」

 

ローエンが増霊極(ブースター)を使い、霊勢変化をする。

 

「おっ、ぐっと力が下がってるな。

俺もかなり力を入れなくてもいいようだな。

だが油断は出来んな。いくぜ!」

 

ゴーレムとの戦闘が始まる。

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ゴーレムはその力技と固さで一同を苦戦させる。

 

「なんて力だよ!」

「これで弱くなってるなんて……」

「秋山さん、いったいどのくらい強いんですか?」

「仕方ない、一体は俺がつぶす!」

 

秋山はゴーレムの一体の懐に入り、パンチを入れる。

 

「釘パンチ!」

 

そのパンチは釘パンチであり、釘パンチを入れられたゴーレムは後方に吹き飛びながら、釘パンチのダメージを受け続け、釘パンチの攻撃が終えると同時にゴーレムは爆散した。

 

「ふん」

「秋山さん……私も負けてられない!」

 

ドロッセルに気合が入る。

 

「ローエン、お願い!」

「かしこまりました!」

 

ドロッセルとローエンは共鳴(リンク)する。

 

「「氷滑閃(ひょうこっせん)!!」」

 

ドロッセルの滑奪とローエンのフリーズランサーが合わさり、ドロッセルの前に氷の道が出来、ドロッセルは氷の道をヘッドスライディングし、氷の道の上にいるゴーレムの一体の足に向かって剣のついたトンファーで斬る。

ゴーレムの足は斬れなかったが、その氷の道の影響で足を滑らせ、ゴーレムは倒れる。

しかしまたゴーレムは起き上がろうとする。

 

「エリーゼ!」

「はい!」

「「ティポローラー!!」」

 

ドロッセルの地烈拳とエリーゼのティポプレッシャーが合わさり、ティポは巨大化し、倒れているゴーレムの上で転がる。

ゴーレムはそのまま機能停止した。

 

「次行くよ! ミラ!」

「いいだろう!」

「「パンチゲート!!」」

 

ドロッセルの突剣撃とミラのネガティブホルダーが合わさり、ネガティブホルダーに吸い寄せられたゴーレムの目の前にネガティブホルダーから現れた黒いパンチが現れ、ゴーレムの顔面に直撃。

ゴーレムはわずかにだがよろける。

 

「今ね!」

 

ドロッセルはそのままゴーレムに突撃していき、右手のトンファーについている剣部分でゴーレムを右から横一文字に斬る。

 

「はあっ!」

 

右のトンファーを剣モードにして、逆Vの字に斬る。

 

「えいっ!」

 

左手のトンファーで、横一文字と逆Vの字で斬った間を打ち込む。

真ん中を狙われたせいかゴーレムはよろける。

 

「てえええい!」

 

右の剣モードのトンファーを再びトンファーに戻して、下から縦一文字にゴーレムを斬り上げ、自分はそのままジャンプする。

ジャンプした後は、ゴーレムの後ろに着地し、=の字を刻むように内側からゴーレムの背中を斬る。

 

「これでトドメ!」

 

ドロッセルは精霊術の力で溜められた氣を掌に凝縮する。

それをゴーレムの背中に当てる。

 

「斬劇闘魂拳(ざんげきとうこんけん)!!!」

 

背中に当てられた氣が爆発し、ゴーレムは吹き飛んだ。

吹き飛ばされたゴーレムは壁に叩きつけられ、そのまま機能停止した。

 

「私たちの勝ちね」

「ドロッセル、本当にすごいです!」

「えへへ」

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一同はゴーレムを見事に倒した。

 

「そんな! ゴーレムが倒されるなんて!?」

 

そこに立てこもっていたラ・シュガル兵の一部がやって来る。

 

「もうラ・シュガルは終わりだ……」

「勝手に要塞にこもったあげく、なんという様です! 恥を知りなさい!」

 

ローエンが兵達を叱る。

 

「我らとて国を思っての行動だ。貴重な戦力を温存すべく……」

「民を見捨てて国があるとでも?」

「そ、それは……」

「あなたは……もしやイルベルト参謀総長!?」

 

兵の一人がローエンに気づく。

 

「元、ですがね。あなた方は現役の軍人でしょう?

ならば己のなすべき道を見極めてください」

「わかりました。これよりガンダラ要塞守備部隊は要塞を開放。

周辺街道および、民間人の警護活動を開始します」

 

兵士達は急いでそのことを他の兵士達に伝えに行った。

 

「一件落着だな」

「これでクレインさんも安心できるね」

「さっそくお兄様に報告しましょう♪」

 

一同はシャール家の屋敷に戻り、報告した。

 

「みなさん、無事ですか? ケガはありませんか!?」

「大丈夫よ、お兄様」

「見てのとおりピンピンしているよ」

「ケガしても、俺がちょちょいのチョイで治せるしな」

「ゴーレム、ボコボコにしてやったー」

 

ティポが調子のいいことを言う。

 

「よかった……」

 

クレインがほっと一息つく。

 

「……実は少し話があるんだ」

 

クレインが突然、別の話をしだす。

 

「話って?」

「空中戦艦に乗っていた兵士の一人を保護したんだけど……」

「すごい! どうやって捕まえたの?」

「それが、少し変わった人でね、自分から投降してきたんだ。

ローエンに会わせて欲しいって言ってね……。

その人はジュライと名乗ったんだけど、心当たりは?」

「ローエン、その人って……」

 

ドロッセルがローエンの顔を見る。

 

「……旦那様、その方に会わせていただけませんか?」

「わかった」

 

クレインはすぐにそのジュライという人を連れてきた。

 

「あなたが……」

「はい。ローエン・J・イルベルトです」

 

ローエンが名乗る。

 

「あなたは、キャリーのご主人……ジュライさんですね?」

 

ジュライはキャリーの名が出て、大いに驚いた。

 

「さすがは『指揮者(コンダクター)』と呼ばれる軍師。すべてご存じなのですね」

「買いかぶりですよ。偶然エレンピオスで出会ったのです。

あなたこそ、なぜ私のことを?」

「……キャリーがしていた指輪にあなたの名前が刻まれていたからです。

黒匣(ジン)なしで算譜法(ジンテクス)を使う彼女が、異世界の人間だとわかっていました。

私は彼女の過去を知るために、異界炉計画の遠征軍に志願したのです」

「なぜそんな危険を冒すのです? 今のキャリーは、あなたを……」

「それは私が、あなたの名前入りの指輪を隠したからです!

彼女が過去を思い出すきっかけにならないように!

……私はキャリーが記憶を失ったことにつけこんだ卑劣な男なのです」

 

ジュライはやましいこととわかっていて、顔をうつむかせる。

 

「……私は見ました。心からあなたを信頼しているキャリーの笑顔を」

 

そのことを言われて、ジュライは顔を上げる。

 

「二十年前の私は、彼女にあんな笑顔を向けてもらえていただろうか……」

 

今度はローエンが頭をうつむかせてしまう。

 

「ジュライさん、生きてエレンピオスに戻ってください!」

 

ローエンは顔を向けて行った。

 

「あなたの奥様とお嬢様が帰りを待ちわびています。

あなたに罪があるとしたら、あの家族の願いを裏切ることです」

「ですが、エレンピオスに帰る方法はもう……」

「安心してください。私たちがお連れします」

「しかし、ローエン。どうやってそのエレンピオスに連れて帰るんだ?」

 

クレインが尋ねる。

 

「それは問題ありません」

 

ローエンが皆と一緒にテーブルで待っている秋山の方を見る。

 

「これは私のわがまま。ですが……」

「ふ、困ってる人はそう簡単に見過ごせんさ」

 

それは秋山のOKの意志であった。

 

「ありがとうございます」

「ローエンさん……あなたにお会いできてよかった」

「こちらこそ」

「そんじゃ早速行くか」

 

秋山達は立ち上がる。

そして秋山がジュライの肩を触り、瞬間移動でエレンピオスに向かった。

そしてエレンピオスのトリグラフで、ジュライはキャリー母娘と再会できた。

ローエンは色々あってその場には立ち会わなかった。

 

「……それで、ジュライさんは無事にキャリーと会えたのですね?」

「うん。キャリーさんすごく喜んでたよ」

「ローエンも一緒に行けばよかったのに」

「い、いや。持病のシャクがでてしまいまして……」

「それはいけませんね。お大事になさってください」

 

するとどこからか声が聞こえてくる。

 

「この声は……」

 

ローエンがその声のした方を見る。そこにはキャリーが立っていた。

 

「キャリー……」

「どうしても直接お礼を言いたくて来てしまいました。

ありがとうございます。みなさんのおかげで主人が無事に戻ってきました。

……あなたも、お変わりありませんか?」

「少々ヒゲが伸びた以外はおかげさまで。あなたは?」

「私も小ジワが増えた以外は」

「ほっほっほ、それは笑いジワでしょう。……お幸せそうでよかった」

「はい。あなたも」

 

ローエンがジュード達を見る。

 

「ええ、若者たちと青春しています。なすべきことが山ほどあるのです」

「それは素敵。でも、お体にはお気をつけて」

「……はい。ありがとうございます」

 

キャリーは言いたいことを言い終え、帰っていった。

 

「ローエン……」

「いいのか?」

「元気……出してください」

「元気がないのはローエンらしくないわ」

 

ミラ達女性陣がローエンに声をかける。

 

「ほっほっほ、美女四人に心配されるとは、私も、まだまだ捨てたものじゃありませんね」

 

ローエンは元気を出す。

 

「さぁ、参りましょう! レッツ、青春です!」

「ローエン。僕も、ローエンみたいな大人になりたい」

「ならば、五十年は修業が必要。道は険しいですよ」

「そいつは厳しいこと」

「あの秋山さん、次はイル・ファンに向かってはくれませんか?」

「イル・ファンに? ナハティガルに妹が生きてることの報告でもするのか?」

「けど、あの王様、無理にでも妹を連れ戻すって言い出さないか?」

「今のナハティガルなら問題ないでしょう。

秋山さん……」

「いいぜ。レイア、アグリアもイル・ファンの病院にいるから見舞いに行ってやりな」

「うん」

 

秋山の瞬間移動で次はイル・ファンに行くのだった。

説明
この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword=%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

秋山総司郎の時系列

この世界を訪れる前の話

「そらのおとしものf 番外編 『カオスのとある日常(いちにち)  里帰り編』」


http://www.tinami.com/view/225368


この世界を訪れた後の話


「そらのおとしもの  外伝  もしもイカロスの次に地上に来たのがカオスでその次に来たのがニンフだったら…。(アニメ仕様)」


http://www.tinami.com/view/257088


となっております。
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