リリカルなのは×デビルサバイバー |
モニターには、共闘しているなのはとフェイトの姿がある。クロノは、状況が動き次第行動を開始するらしく、転送機の前で待機している。
「そういえば、カイトくんは行かないの?」
「ん……?」
エイミィが指さしているのは、なのは達を映しているモニターだ。
「俺は空をとぶことができない。そんな奴が、行ったとしても、足手まといになる可能性がある」
「え? 空飛べないの?」
「そうだけど……悪いか?」
飛べない事が、そんなに意外なのか、エイミィは眼を丸くしている。
「いやー、私っていうか、私たちの知る悪魔使いは、空を飛んでた、って話だからねー。それでかな?」
「ふーん(やはり、悪魔使いでも空を飛べるのか。ナオヤも空飛んでたし……いや、あれは浮いてたのか?)」
修行すれば、飛べるようになるだろうか?
そんな事を考えながら、目の前のモニターを見る。見るが、特に興味を惹かれるものはない。
ジュエルシードも、フェイトという少女のことも、カイトには興味を引かれるものではないし、なのはに任せておけば、問題は無いといえる。
「エイミィさん。あの仮面の男の反応…ありますか?」
「えーっとちょっとまってね」
手元のコンソールを数秒操作した後、画面に現れた結果はエラーだった。
「ごめん。ジュエルシードの魔力と、さっきフェイトちゃんが放った雷撃で、ちゃんとした計測結果がでないみたい」
「そうですか。となれば、何時でも動けるようにしておくべきか」
カイトは転送機へ向かうために歩き出す。空は飛べずとも、その背に乗る事が可能な悪魔を召喚すれば、戦に参加することも可能なはずだから。
* * *
「……ん? カイトか」
転送機の前にはクロノが居た。
戦場を前にして、落ち着いているのは、さすがは執政官。というべきだろうか?
「君も行くのか?」
「あの男が出現した。って聞いたら動くつもりだ」
「そうか……」
沈黙。
エイミィと比べ、カイトとクロノはそう仲は良くない。話すネタが無いのもそうだが、クロノ自体がカイトに対して一線を引いているのも原因の一つだ。
「……悪魔使いは」
「ん?」
ポツリ。とクロノは言った。
「悪魔使いは、僕達の世界にとって、特別な意味を持ってるんだ」
クロノが何を言いたいのか、カイトにはよく分からなかった。その為少し考えこんでから、思い当たる事があるのを思い出した。それはあのロストロギアの説明を受けた時の事だ。歴史に記されし、悪魔使い。当然カイトではないが、その悪魔使いとは恐らく"ベルの力"を除いた力はカイトと同一のはずだ。
「古代ベルカにおいて、覇王と聖王の友だったと言われる悪魔使い。決して主役にはならなかったけど、彼らの背を押し、共に戦ったと言われるその存在は、僕にとって……いや、僕達にとって『ヒーロー』のようなものだった」
「でも俺はその悪魔使いじゃない」
カイトが首を振って否定すると、クロノもまた苦笑い気味ではあるが「わかってる」と返した。
しかし数秒後、顎に手を当てて何かを考える仕草をしてから、ふと逆のことを言った。
「いや、違うな。わかってないから、君と伝説上の悪魔使いを同一視してしまう……すまなかった」
クロノは頭を下げて、謝罪した。
まさか、頭を下げられるとは思っておらず、カイトは少々慌てたように。
「別に気にしなくてもいい。正直、どうでもいいし」
特に気にした素振りを見せず、カイトはCOMPを操作している。
これからの戦いに必要な悪魔を、悪魔合体で呼ぶためだ。
「なんというか……気にしていたのは僕だけか?」
「そういう事さ。俺達の関係はギブアンドテイク……お互い損にならなければそれでいいだろう?」
何が面白いのかわからないが、クロノは笑い始めた。その様子にカイトは戸惑いつつ、クロノを様子を見ている。
それから数秒後だった。クロノに対して通信が入ったのは、恐らくはなのはとフェイトの共闘が完了した。もしくは、完了寸前までいっているのだろう。
「それじゃ、行ってくるよ」
「……行ってらっしゃい」
それは一つの和解だったのだろう。少なくとも、前まであったカイトとクロノの壁は小さくなっていた。
クロノを見送った後、カイトもまた転送機へと乗る。
『カイトくん? 仮面の男はまだ出てないよ?』
スピーカーからエイミィの声が聞こえる。
「良いんです。あいつが出てきてからじゃ、遅いから」
『分かったよ。それじゃ、現場から百メートルぐらい離れた場所に転送するよ? 海の上だから気をつけてね』
「はい」と返事をし、その手にあるCOMPを握り締め、テレポーターの光に包まれながら、その姿を消していった。
* * *
雷雲が轟、海が荒れ狂っている。百メートル先の海上では、竜巻が発生しジュエルシードからだと思われるが、雷が発生している。
そこまでの状況を把握した時、ピンクと金色の光が、視界を遮る。なのはとフェイトが協力して、ジュエルシードを封印した。ということだろう。
「まぁ、考えている場合じゃないか」
かなり高い位置に転送されたのか、紐なしバンジー状態で現在真っ逆さまにカイトは落ちている。このまま水面に叩きつけられると、死んでしまう。
「召喚――セイリュウ」
四聖獣の一体であり、青い鱗を持つ龍が現世に顕現した。
「グオオオオォォォォォッッッッ!!!」
その雄叫びはまさに、龍の名にふさわしく、空間を震わすほどだ。
カイトはセイリュウの背に、乗る事に成功する。
「……ヌゥ。ベルの王か、久しいな」
その出立ち通りの、風格を持ち合わせた低く重い声だ。
「この世界で、俺のフルパワー状態で戦うと、いらん混乱を招く恐れがある。だとさ」
「道理だな。未覚醒状態……だが、『試し』とはいえ、かの明けの明星を撃破しておるのだ。四文字の神が危惧するのも分かる」
「……どうなんかね?」
明けの明星――いや、ルシファーと名前を出したほうが、わかりやすいだろうか? 神話において、神に喧嘩を売った、唯一の堕天使。それが、ルシファー。
東京封鎖において、永田町に降臨したところを、カイトたちが遭遇…撃破するまで頑張った。というわけだ。
「しかし、この世界の人間は面白い」
セイリュウの視線の先には、なのは達がいる。確かに、カイトが居た世界には、リンカーコアという物を持った人間は居なかった。そういう意味では、面白いのかもしれない。
「して、汝は手を貸さなくても良いのか?」
「これは俺の問題じゃないし、なのは……白い子の邪魔をしても、悪いだろ?」
フェイトとの初遭遇時、カイトは殺すかもな、と宣言している。そんな奴が近くに入れば、なのはのじゃまになるおそれがある。
「まぁ、汝がそれでいいなら、我も構わぬがな」
「……?」
セイリュウの、言わんとしている事が分からず、カイトは首を傾げる。だが、セイリュウに問うた所で、答えてくれそうな雰囲気ではない事がわかり、カイトは視線をなのは達の方へと向ける。
「ヌ…? 召喚者よ、頭上を見よ」
「なに?」
セイリュウに言われ、カイトは頭上を見る。
「空が…割れてる?」
割れている。という表現をしたが、厳密に言えば違う。正しく言えば、"空を割ったように、この世界に現れようとしている"という表現が正しい。
その表現を正しいと裏付けるように、割れた空間の先には、城のような建物が見える。
「…なんだ?」
その城の下方に、何らかのエネルギーが貯まるのを視認できる。
そして数秒後……それが落ちた。
その落ちた時の軌道から、雷のようなもの。であることは分かる。そして雷は途中で2つに分かれ、それぞれに落ちていく。
その内の一つが、どこに落ちたのか、カイトにはさっぱり分からなかったが、もう一つが落ちた先は分かった。なぜなら、一人の少女…フェイトと呼ばれた者に直撃したからだ。
* * *
少女の悲鳴が上がり、その使い魔が彼女を助けるために移動――クロノがそれを追おうとするが、どこかで見たことのある物体が、それを阻む。
「クッ、ゴーレムか!!」
クロノはデバイスを構え、ゴーレムを睨みつける。その視界には、フェイトを捉えて離さないが、目の前の物を倒すと、優先順位を決めたようだ。
最も、あの城を追跡しろとエイミィにすぐさま指示を出したのは、さすがと言えるだろう。
「クロノくん! フェイトちゃんっ!」
なのはは最初、クロノとフェイト。どちらへ行くか迷ったが、フェイトのところに使い魔が行ったのを見て、クロノのところへ行くことを決める。
なのはがデバイス、レイジングハートを構えながら、クロノの傍へと移動しようとする。だがそれさえもゴーレムが防ぐ形で現れる。
「邪魔をしないで!」
レインジングハートから、桃色の砲撃が放たれる。だが結果は以前と同じ――ゴーレムには傷一つつけることはできない。
「なんで――っ!」
なのはの泣きそうな声を出す。
前と同じ結果にならないよう、修行してきたというのに、同じ結果に終わってしまった。努力の否定――それを表すような結果が、なのはには悲しかった。
「なのは危ない!」
ユーノの声が辺りに響き、なのははその声に反応して、ゴーレムの拳をプロテクションで防ぐ。
「うぅぅっ……」
プロテクションは確かに破られなかった。だがゴーレムはなのはの身体をその拳で吹き飛ばしたのだ。
「大丈夫か!」
吹き飛ばされたなのはを、クロノが受け止めていた。なのはは、先ほどまでクロノが居た場所を見ると、ゴーレムの身体が崩れ去っていく光景を見た。
「なんでクロノくんは、ゴーレムを倒せるの?」
「君にだって出来るさ。良いかい?」
クロノはS2Uを振るい、マジックシューターを出した。
「ゴーレムの弱点は頭部。そして、あのゴーレムには砲撃が効かない。なら、こうすればいいんだ」
クロノはシューターをさらに包み、コーティングしていく。ある程度包んだ時、クロノは勢い良くシューターをゴーレムの頭部へと命中させた。
鈍く響き渡る爆音――それは、ゴーレムの頭部を破壊したという証明にもなるものだった。
「砲撃が無効化される。でも、弱点がわかってるんだったら、物理特化させて破壊すればいい」
楽々こなしているように見えるが、肩で息をしているクロノを見れば分かるが、シューターのコーティングとは、簡単にできることではない。
「すごい……」
「まぁ、練習すれば君だって出来る。と、そろそろ大丈夫かい?」
「あ、うん。ありがとうクロノくん」
なのははクロノから離れ、宙へと浮かぶ。それから周りを見渡すが、フェイトと使い魔の姿は、もうない。
「フェイトちゃん、アルフさん……」
「考えるのは後だ。今はあれについて調べないと……」
クロノは未だ姿を見せている城を見る。恐らくはあそこに今回の事件の黒幕がいるからだ。
「とにかく、カイトとユーノと合流してから、アースラへと一旦帰還しよう。それから作戦を立てる」
「うん」
クロノとなのはが、ゴーレム達と戦っているカイトとユーノの居る方へと行こうとした時、辺りに眩い光が放たれた。
* * *
「メギド!」
魔力の塊がゴーレム『達』を蹂躙していく。クロノ達のところにも、ゴーレムが現れた事がカイトにも分かったが、無数のゴーレムに囲まれている、カイトにはクロノ達を助ける事は少々困難だった。
とはいえ、少々でありちょっとした努力で助けることも可能だったが、それを不可能とさせているのは、カイトが既にユーノを救出していたからだ。
「ユーノ! あまり無茶はするなっ」
「わかってる! というか、僕が攻撃に回るなんて無理だ…よっ」
攻撃が得意ではない、ユーノが居ることは、カイトにとって助けとなっていた。
ゴーレムを一箇所へと集めバインド。そこをカイトが攻撃し撃沈させる。
それはひとつのコンビネーションとなっていた。
「って言っても、かなりきついね……これ」
無尽蔵に現れるゴーレム。
ゴーレムの力自体は、カイトにとって赤子の手を捻るぐらい簡単なことだ。
だが赤子の数が一人ではなく二人なら? 二人でも大丈夫なら三人ならどうだろうか?
確かにメギドでならゴーレム達を、簡単に倒すことは可能だ。だが、無限に現れるゴーレム達と相対していると、体力と共に、気が滅入ってくるのも必然だった。
「ふははは……苦戦してるみたいだねぇ」
どこかで聞いたことのある声が聞こえる。
それと同時に、辺りが光りに包まれ一人の男が現れる。
仮面をつけた男。
ゴーレムを操り、フェイトの母親とも通じている男。
もしかしたら、天使の情報を持っているかもしれない男。
「くっ、お前!」
「駄目だカイト! 気を抜いちゃ…!」
男の方に気がそれたせいで、ゴーレムの接近にカイトは気づかなかった。
そう、カイトは。
「ブフダインっ!」
蒼い龍の声があたりに響く。
カイトに近寄っていたそのゴーレムは、巨大な氷の柱に貫かれ、海中へと落ちていった。
「……へぇ、魔力の核がやられたか、あれでは浮くことができないねぇ」
「魔力の核…?」
「そうそう、このゴーレムには動力源とは別に、砲撃などの無効化および、重力制御……はてはゴーレムの腕力にも関係があるからねぇ……」
「お前……それ、言っていいのか?」
男が言ったのは、ゴーレムの秘密だ。だというのに、躊躇なく男はその秘密を言い放った。
「いつかは分かること。この程度の秘密を知った所で、どうすることも出来んさ」
その言葉の根拠は、自信だ。
たとえ秘密がバレたとしても問題はない。そう言える程の自信。
「ちなみにだが、私と話してていいのかな? あの少年、かなり危険そうだが?」
「……ちっ」
男に背を向け、カイトは未だ存在するゴーレム達に向け、メギドを放つ。
「ん……?」
今までは耐えること無く消滅していたゴーレムが、一体だけではあるが、耐え、残っていた。
そのゴーレムはボロボロになりながらも、カイトの方へと迫ってくる。
だが、カイトもゴーレムを近づけるほど馬鹿ではない。ゴーレムを迎撃するために、続けてメギドを放とうとした時…。
「だからといって、私に背を向けるのもどうかとおもうけどね」
パチンッと、男は指を鳴らした。
その瞬間、カイトの真横に今までとは異なるゴーレムが現れる。
異なる部分、それは今までのゴーレムとの造形もそうだが、最も違うのは、成人男性ぐらいの大きさしか持たない事だろう。
だが、カイトは決して一人ではない。
新たに現れたゴーレムを、セイリュウが文字通り「なぎ払う」。
セイリュウがなぎ払うために、激しくその巨体をうごかしたことで 、カイトはバランスを崩しかけたが、目の前の大破寸前のゴーレムをメギドで破壊する。
「なるほどなるほど。仲魔を使い、周りの敵を撃破し、仲魔の攻撃が届かない敵を自身が撃破する。正しい行動だ、だが……今回に言えば、間違いだ」
セイリュウが破壊したゴーレムの欠片が、カイトとその周囲を囲むように浮かび上がる。
そしてその欠片のひとつひとつが、小さな光を放っていく。
「この光…っ! セイリュウっ、今すぐこの場から退避しろっ!」
「承知!」
カイトの指示を受け、セイリュウはその場から退避しようとする。
「……おしいな。後数秒、気づくのが早ければ、脱出できたのにね」
小さな光が、強く眩いものになっていく。そして、その光は、転送時に起きる光によく似ていた。
そして辺りを包むほど大きな光へと変わり……気づいた時にはカイト、男、ゴーレムの姿は消えていた。
後書き書くにはどうすればいいんだろう? とか思っていたけど、そうかこうやって改ページすればいいのね。中々に便利な機能。
後三話投下すれば無印編は終了です。
その後ちょっとしたキャラクター説明みたいなのを挟んだ後に、As編を投下していこうと思ってます。
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