英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 226 |
〜遊撃士協会・グランセル支部〜
「なっ!?」
「「レ、レンちゃん!?」」
レンの登場にエステルやティータ、ミントは驚き
「このガキ……!あれだけの事をして、よく俺達の目の前にのうのうと顔を出せたな……!」
アガットは今にも掴みかかりそうな表情でレンを睨み
「とんでもない度胸を持つお嬢ちゃんだな………」
「いやはや……もはや感心の域に値するねぇ……」
「……さすがは”覇王”の娘といった所ね……」
「…………………………」
ジンは呆れた表情をし、オリビエは感心し、シェラザードはレンの度胸の凄さに納得し、クロ―ゼは何も語らず黙ってレンを見ていた。
「うふふ………皆様、ご機嫌よう♪先日はレンが開いたお茶会に出席して頂き、まことにありがとうございました♪」
エステル達に注目されたレンは気にせず、上品な仕草でエステル達に挨拶をした。
「あ、あんたね〜!?あたし達にあれだけ迷惑をかけて、何とも思っていないの!?」
いつもの様子のレンを見たエステルは身体を震わせてレンを睨んで尋ねた。
「ごめんなさい………レン、メンフィルと仲良しさんのリベールの為を思って今回の事を考えたの。だから、許して?」
エステルに睨まれたレンは空港で見せた時のようにエステルの顔色を伺うような表情でエステルを見た。
「もう、あんたのその顔には騙されないわよ!だから、そんな顔をしても無駄なんだからね!」
「あら。さすがに2回目は通じないわね。」
(こ、この娘は〜!)
あっさり態度を変えたレンを見て、エステルは心の中でさらに怒った。
「………それで、何の用でギルドに来たのでしょう、レン姫。」
そしてエルナンは警戒するような表情でレンを見て尋ねた。
「………さすがに今回はやりすぎだって、サフィナお姉様やシルヴァンお兄様に説教されて、迷惑をかけたお詫びをして来なさいって言われたから、仕方なく来たのよ。」
「お詫び?……一体それは何かしら?」
レンの話を聞いたシェラザードは首を傾げて尋ねた。
「うふふ……とりあえず遊撃士協会にはお詫びと今回の件に対する”協力”のお礼の品として、これをあげるわね。」
尋ねられたレンは小悪魔な笑みを浮かべてエルナンに豪華な装飾がされた一通の手紙を渡した。
「……………これは?」
「それはレンが書いたシルヴァンお兄様とパパ――メンフィル大使への紹介状よ。………さすがに直系の娘であり、次期皇帝のリフィアお姉様が書いた紹介状ほどの効果はないけど、少なくてもロレントにある大使館の門番に見せれば、パパに取り次いでもらえるわ。メンフィルの本国に支部を作りたい遊撃士協会にとってはそれはとっても役に立つ手紙でしょう?」
「(………なぜ、上層部が考えている事をこの娘が……)…………ええ。それより、”協力”とは一体何の事ですか?」
レンに尋ねられたエルナンは心の中で驚きながら頷いた後、レンが言った言葉が気になり、尋ねた。
「うふふ、そんなのもちろん、レン達メンフィルが作った魔導、導力を合わせて作った人形兵器の性能のテストに”協力”してくれたお礼に決まっているじゃない♪リベールでも選りすぐりの正遊撃にして『闇の聖女』の唯一の弟子にして、『風の銀閃』。『剣聖』の娘にしてさまざまな種族と契約しているエステル。そして新米ながら活躍が目覚ましい正遊撃士、アネラス・エルフィードを用意をしてくれるとは思わなかったわ♪後で銀髪のお姉さん、エステル、アネラス・エルフィードには報酬としてレンの名義で払っておくわ♪もちろん、結構な額を払うつもりだから期待していいわよ♪」
「なっ……!あの廃坑にあたし達を来させる為にわざと特務兵達の人形をボース付近に現させたの!?」
レンの説明を聞いたシェラザードは驚いて尋ねた。
「クスクス。レンもさすがにお姉さん達が現れるとは思わなかったわよ?今、リベールの有力な正遊撃士達は王都に固まっているか、強化訓練を行っていて、ボースには有力な遊撃士がいないって知っていたから、レンは準遊撃士がチームを組んで挑んでくると思ったわよ?………まあ、レンも知らないお客様がいたのにはちょっと驚いたけど。」
「テメエ………まさか、『結社』と繋がっているのか!?」
レンの話を聞いていたアガットは背負っている武器に手をかけ、レンを睨みながら尋ねた。
「レンの話はちゃんと聞いた?『結社』って何?昨日の話を聞いていた感じ、クーデター事件の黒幕みたいだけど。」
アガットに睨まれたレンは呆れた後、首を傾げて尋ねた。
「そ、それは………」
レンの疑問にエステルは何も答えず、どうするべきか迷った。
「レ、レンちゃん……それより昨日レンちゃんがその……壊した人形や『ゴスペル』によく似た装置ってどうやって作ったの?」
そこにティータが遠慮気味に尋ねて来た。
「うふふ、ティータはやっぱりそこが気になるのね。……他ならぬティータの頼みだし、話してあげるわ。……メンフィルは”百日戦役”後、オーブメント技術やゼムリア大陸の生活を知ってある事に気付いたのよ。」
「ある事??それって何なの?」
ミントは首を傾げて尋ねた。
「ゼムリア大陸は”導力”によって、軍事、生活等に全て頼っているのだから………もし、”導力”が使えなくなったらどうなるか……わかるでしょう?」
ミントの疑問にレンは凶悪な笑みを浮かべて答えた。
「………もし、その装置を兵器として、戦争をしている国で発動させればその国は混乱し、あげく戦う事もできなくなり、その国は逆らう事もできず、無条件降伏するしかない……という訳ですね。」
「うふふ、さすがお姫様ね。そういった事はわかっているじゃない♪レンは興味なかったからあんまり詳しい事は知らないから装置の説明とかできないけど、それがあれば、戦わずに敵国を支配できるでしょう?人形兵器はそのついでで創られた物よ。動力源は”魔焔”なんだから”導力”が止まっても動けるしね♪」
静かに答えたクロ―ゼの言葉を聞いたレンは小悪魔な笑みを浮かべて答えた。
「”魔焔”………それってもしかして、おじいちゃんがあの商人さんから買った武器を解体した時、出て来た石……?おじいちゃん、その石が動力源の可能性が非常に高いって言っていたし……」
「さすがはラッセル博士といった所ね。ティータの言う通り、あの石にはとてつもない魔力が含まれているのよ。………最もそれを扱うなんて、並大抵の人ではできないけど。」
「それをメンフィルは扱う事ができるという事か………つくづくとんでもない存在だな、メンフィルは。」
レンの話を聞いていたジンはメンフィルのすざましさに畏怖を抱いた。
「レンちゃん………さっきレンちゃんは言っていましたよね……『リベールの為に今回の事を考えた』って。あれは本当なのですか?」
「うふふ、そうよ。クーデター事件後の特務兵達の残党を全員、逮捕できたんだからこれで国内の反乱分子は一掃された事になっているじゃない♪それに今回の件をリベールから責められようが感謝されようが、レン達にとっては得しかないしね♪」
「………どういう事ですか?」
小悪魔な笑みを浮かべて語るレンをクローゼは不安そうな表情で見て尋ねた。
「感謝された時はメンフィルがリベールに”借り”を作れるし、例え責められた時も、クーデター事件時、レンやリフィアお姉様達――他国の皇女が特務兵に襲われたのだから、それを指摘して、逆にこちらが責める事もできるしね♪」
「っつ!!」
「そこまで考えるとは……とんでもない仔猫ちゃんだねぇ……」
「へっ!?リフィア達はクロ―ゼを助ける為に特務兵達と戦ったからまだわかるけど、レンが襲われたって……どういう事!?」
レンの答えを聞いたクロ―ゼは驚いた後表情を青褪めさせ、オリビエも驚き、同じように驚いたエステルはレンに尋ねた。
「うふふ………どこで知ったか知らないけど、大使館にいるある重要人物の事を情報部は手に入れたみたいでね。項を焦ったのかメンフィルに剣を向ければどうなるか気にしないで、数名の特務兵達がその重要人物を拘束しようとして、その時レンが傍にいたから”殲滅”したのよ。」
「ある重要人物………それって誰の事かしら?メンフィル大使やプリネさん達以外にいるとは思えないんだけど……」
「それは秘密よ♪」
シェラザードに尋ねられたレンだったが、誤魔化した。
「レ、レンちゃん……”殲滅”したってまさか………」
一方ティータは信じられない表情でレンを見て尋ねた。
「うふふ、ティータは中々鋭いわね♪ティータの考えている通りレンは特務兵達を殺したのよ♪」
「ひっ………!」
「テメエ………自分が何をしたのかわかっているのか!」
「レ、レンちゃん………!」
レンは凶悪な笑みを浮かべてティータを見て、見られたティータは悲鳴を上げ、アガットはティータを庇うかのようにティータの前に出てレンを睨んで怒鳴り、ミントは信じられない表情でレンを見ていた。
「レン!あんた、人を殺すのがどれだけの事かわかってて殺したの!?」
「クスクスクス。リフィアお姉様達とお友達になったエステルがおかしな事を言うわね?新聞記者の一人と親しいエステルなら、リフィアお姉様やエヴリーヌお姉様が”百日戦役”でエレボニアと戦ってエレボニア兵をたくさん殺した事ぐらい聞いていないのかしら?」
「そ、それは………」
レンを怒鳴ったエステルだったが、レンに指摘され、ナイアルの話を思い出して押し黙った。
「第一、プリネお姉様だって、レンみたいに盗賊や山賊とかの討伐にも参加した事があるのだから、プリネお姉様も賊――人を殺した事があるわよ?」
「プ、プリネが………」
争うのがあまり好きそうでないプリネも人を殺した事がある事を知ったエステルは驚いて、放心していた。
「うふふ、そんなに心配しなくてもリフィアお姉様やプリネお姉様は人を殺すのが好きじゃないのは事実よ?………まあ、その話は置いておいて、とりあえず今回の件に対してシルヴァンお兄様――メンフィルはリベールにある事を提案する事によって今回の件に対するリベール側の反論を封じる事にしたわ。」
「………一体それは何なのでしょうか………?」
レンの話を聞いたクロ―ゼは不安そうな表情で尋ねた。
「………もし、リベールがどこかから攻められるような事があれば、リベールがメンフィルに助けを求めた時メンフィルは二度、無条件で兵を出して、リベールを助けるわ。それとアリシア女王が存命中の間は例えどんな事があろうと、同盟の破棄は行わないわ。どう?いい提案でしょう?」
「…………それは……………」
メンフィル側の提案を知ったクロ―ゼは提案の破格さを考え、リベールの為にも女王も受けるしかないであろう提案である事に気付き、暗い表情をし、俯いて何も言えなくなった。
「レン………あんた、まさかそうなる事も予想していて、こんな事をしたの?」
話を聞いていたエステルは真剣な表情でレンを見て尋ねた。
「うふふ、さすがのレンもシルヴァンお兄様の考えまでは読めないわよ。むしろ、よくそこまで”譲歩”しているなって、感心しているぐらいよ?それにしてもよかったわね♪リベールは他国に対し、2枚の”切り札”を手に入れたんだから♪」
「………このガキ!さっきから黙って聞いていれば、国が大きいのをいい事にふざけた事ばかりぬかしやがって……!」
余裕の笑みを浮かべているレンをアガットは睨んだ。
「うふふ、”この件”は政治のお話。遊撃士協会が口を出せる事ではないわよ♪」
「………確かに。今回の件はもはや政治の話ですから、貴女の言う通り、我々遊撃士協会は口を出したり、手を出したりする事はできません。………申し訳ありませんが、みなさん。こらえて下さい。」
「チッ!」
「「………………」」
「仕方ない……か。」
「それがあるからギルドはどの国での活動も認められているんだものね……」
エルナンに言われたアガットは悔しそうな表情で舌打ちをし、エステルやシェラザードは複雑そうな表情をし、ジンは重々しく頷き、ミントは暗い表情をして答えた。
「…………レン、一つだけ答えて。エルベ離宮で初めてあたし達と会った時、両親の事を尋ねた時、言ったあの事………あれも嘘なの?あんた……リウイと聖女様の実の娘じゃないんでしょう?」
そしてエステルはレンに両親の事を尋ねた。その質問がレンの壮絶な過去を聞く事になるとは知らずに………
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第226話 | ||
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