IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「はーあ。何で俺が・・・・・」

 

俺、五反田弾は家族に頼まれて近所の神社の篠ノ之神社に向かっている。理由は可愛い妹の蘭に合格祈願のお守りを買っ

てやるため。それはいい。それはいいんだけど・・・・・・

 

「なんでこんな責め苦を・・・・・」

 

そう。道の至る所でカップルどもがいちゃついてやがる。桃色な感じがスゲー神経を逆撫でする。

 

はっきり言って羨ましい。そんでもって妬ましい。

 

「俺以外の男、爆発しねーかな・・・・・」

 

正月早々そんな暗いことを考えてしまう。

 

「い、いやいやいや! 俺にだって虚さんがいる!」

 

首をブンブンと振って邪念を取っ払う。

 

彼女いない歴一五年の俺にもついに、ついに彼女ができた!

 

相手は一夏と同じIS学園の生徒で、なんと二つ年上、高校三年生の布仏虚さん。

 

一目惚れでした・・・・・・ええ。そりゃもう、ビビビーッって来ました。って誰に言ってんだ俺。

 

相手が相手なだけあって、会える機会も少ない。初めての恋愛は遠距離恋愛・・・・・いいじゃねえか! 素敵だと思う

 

それに、虚さんは『卒業したら、今より少しは会える時間が増える』って言ってたし!

 

ギターがあれば即興で歌が歌えそうなほどテンションがあがる。

 

新年を祝うメールだって、他の誰よりも真っ先に送った。返事がまた可愛いんだこれが!

 

携帯を取り出して、虚さんからのメールを見る。家を出る前から、何度も読み返している。

 

『新年あけましておめでとうございます。まだ年が明けて何分も経ってないのにこんなに早く送ってくれて嬉しいです。

お互いに今年もいい年であるといいですね。

 

P.S. お正月は会えなくてごめんなさい。でも今度の休日にまたデートしましょうね♪』

 

くぅぅぅっ!

 

絵文字もなんもないけど、最後の『♪』が虚さんらしいぃぃぃぃ!!

 

・・・・・っとといけね。近くを歩いてた人に変な目で見られた。

 

俺は咳払い一つして本来の目的を思い出す。

 

(そうだった、蘭にお守り買ってやるんだった)

 

蘭はもともと有名な私立学校の『聖マリアンヌ女学院』の中等部に通っていて、アイツの成績ならそのまま高等部に上が

れるんだが、IS学園の試験を受けるために猛勉強中。『一夏に追いつきたい』という本人の強い希望を受け、俺も含め

て家族は了承。

 

じいちゃんも『蘭のあんなにまっすぐな目は見たことがねぇ』って一言も文句を言わずに頷いてた。

 

兄としては少々複雑だが、蘭自身のことは蘭に決めさせてやりたい。

 

だからこうしてカップルがいちゃついてるのを見せられているのを耐えて歩いているのだ。

 

「・・・・・やっぱ、こいつら爆発しねーかな」

 

だから少しばかりの負の感情は許してもらいたい。

 

「おい、おいったら!」

 

グイッ

 

「ぐえっ」

 

いきなり後ろからコートの襟を引っ張られて驚く。

 

「ったく、何度も話しかけてんのにことごとく無視しやがって」

 

振り返ったところにいたのは友達の御手洗数馬だった。

 

「おう、数馬か。いつのまに?」

 

「お前が『俺以外の男、爆発しねーかな・・・・・』とか陰鬱なこと言ってる間だよ。携帯見ながらニヤニヤしやがって

キモいぞ」

 

「んだよ、うっせーな。俺は蘭に合格祈願のお守り買いにいってんだよ。キモくねえ。妹思いの兄ちゃんだ」

 

俺が口を尖らせながら言うと、数馬のやつは驚いたように目を丸くした。

 

「えっ? そうなの? てっきりあの掲示板見て来たのかと思った」

 

「掲示板?」

 

俺が首を捻ると、数馬はこれだよ、と携帯の画面を見せてきた。

 

「えーっと? 『篠ノ之神社にすっげー可愛い巫女がめちゃくちゃいる。正月からいいもん見れた』・・・・・?」

 

なんだこれ?

 

聞くと数馬はかぶりを振った。

 

「なんだよ知らねーのかよ。この言葉の通り、篠ノ之神社に美少女巫女ちゃんがいるんだよ。なんでも金髪美少女もいる

らしいぜ」

 

「き、金髪美少女・・・・・!?」

 

ゴクリと喉を鳴らす。

 

「で、俺はどうせ何もしないよりかはマシかと思ってこうやって歩いてるわけよって、おい弾?」

 

俺は歩調を速めて歩き出した。

 

「ど、どうしたんだよ急に」

 

「こうしちゃいらんねえ! 早く拝みに行くぞ!」

 

「ええっ!? お前、彼女できたくせにそんなのに惹かれちゃうの!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

ぴた、と足を止める。

 

だがすぐに歩き出す。いや、もはやダッシュと言っていいだろう。

 

「遠くの彼女より、身近な一時の誘惑だ!」

 

虚さんごめんなさい! 決して、決して! 浮気なんかじゃありません!

 

「その心意気は認めるけど、お前男としてちょっぴり最低だ!」

 

そんな失礼なことを言う数馬を置いていく勢いで俺は風になった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁっ・・・はあっ・・・・・ど、どこだ・・・金髪美少女!」

 

肩で息をしながらも、無事篠ノ之神社に到着する。

 

「ぜぇっ・・・・・はあっ・・・なんで、正月から走んなきゃいけねんだよ・・・!」

 

おなじく荒い息で数馬も追いついてきた。

 

「それで数馬! どこにいるんだよ!」

 

「え、えっとぉ・・・たしかお守り売り場に――――――」

 

「はいはい、通るよ通るよー」

 

「え?」

 

ドゴッ!

 

「ごはあっ!?」

 

俺の背中に何かが激突。おかげで一メートルほど吹っ飛ぶ。

 

「お、おい弾!?」

 

「ありゃりゃ。だから言ったじゃん。通るよーって」

 

緩い感じの声が聞こえて、文句の一つも言ってやろうと思ってがばっと起き上がる。

 

「おい! 危ねーだろー・・・・・が?」

 

俺にぶつかってきたのは、見覚えのある顔だった。

 

「お前・・・桐野瑛斗か?」

 

ISを動かせるもう一人の男、桐野瑛斗が長着をひもで縛って、たすき掛けをした状態でバカみたいに大きな段ボールを

運んでいた。

 

「ん? そういうお前は・・・・・」

 

俺を見た状態で止まる桐野。多分名前を思い出そうとしてるんだろう。

 

「・・・・・・・・ああ! 二子玉川弾!」

 

「ちがう」

 

俺が言うと桐野は少し眉をひそめた。

 

「え〜? あ、三軒茶屋弾、だっけ?」

 

「もっと違う! なんなんだよお前! 前よりボケがエスカレートしてるぞ! 五反田だよ! 五反田弾!」

 

「ああ、そうだったな。で、どうした? なんでそんなところで寝てるんだ?」

 

お前に突き飛ばされたんだよ! って言うより早く数馬が話しかけた。

 

「いやいや。それより君の恰好の方が気になるよ」

 

数馬が桐野の恰好を指摘した。

 

「おお。お前は確か、御手洗数馬!」

 

「なんでだよ! なんで数馬の方は覚えられてんだよ!」

 

立って、俺が新年早々ツッコミを迸らせていると、神社の奥から一夏が来た。恰好が桐野と同じだ。

 

「瑛斗ー。なにしてんだよ。早く残りのお守りの在庫も運んできてくれって、雪子さんが」

 

「ん? よう一夏じゃないか」

 

「あれ数馬? それに弾も」

 

一夏がきょとんとした表情で俺と数馬を見る。

 

「ああ、悪いな。ちょっと話してた」

 

「急げよ。すごい人で、もうすぐ売り切れそうなんだ」

 

「あいよ。行ってくる」

 

桐野はタッタッタッと段ボールを人だかりができてるお守り売場に運びに行った。

 

「「・・・・・で、なにしてんの? お前ら」」

 

数馬と一緒に一夏に顔を向ける。

 

「あー・・・、話すとちょっと長くなる」

 

「「いい。話せ」」

 

「実は・・・・・・・」

 

 

 

 

 

                     〜一時間前〜    

 

  

「「「「「「「「巫女になって欲しい?」」」」」」」」

 

千冬姉を除く女子一同が声を揃えて言う。場所は箒の実家。の居間だ。

 

「そうなのよ。今日アルバイトの予定だった人たちがいきなり八人もドタキャンになっちゃってね。お願い。今日だけ。

ね?」

 

「そう言われても・・・・・・」

 

「巫女、と言いますと・・・・・?」

 

「ほら、アレよ。神社にいる女の人よ」

 

「シスターさんみたいなものかな」

 

「突然断るとは、情けない連中だ」

 

「わ・・・私・・・・・も?」

 

「あらら、今日はおねーさんが振り回されるのね」

 

「巫女さんになるの? 私たちが?」

 

箒たちもきょとんとしている。

 

「なあ、一夏。こういう場合って俺らどうしたらいいの?」

 

横にいる瑛斗が耳打ちしてくる。

 

「さ、さあ? 俺もわかんね」

 

俺たちが話している間にも雪子さんの話は進んでいく。

 

「お願い。今はまだピークの時間じゃないから今の人数でなんとかなってるけどこれからどんどん参拝客が来るの。回ら

なくなったらそれこそ一大事なのよ」

 

うーん、と唸る女子一同。

 

「もちろんお礼はするわ。おせちご馳走してあげる。って、食べ物に釣られるほど、みんな子どもじゃないわよね・・・

 

はあ・・・、と重たいため息をする雪子さん。

 

「千冬姉、なんとかなんないかな?」

 

隣で正座してる千冬姉に顔を向ける。

 

「ふむ・・・・・」

 

千冬姉は携帯を取り出すとカチカチとボタンを操作して俺に画面を見せてきた。

 

「一夏、桐野、順番に読め。何も考えずにな」

 

「「?」」

 

瑛斗と一緒に画面を見る。

 

「えーっと? おれはみたいなー。みんなのみこのすがた?」

 

なんだ? 全部ローマ字表記で読みづらいな・・・・・。

 

「「「「「「「「!」」」」」」」」

 

「おれもみたいなー。きっとにあうぞー」

 

「「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

「よし。いいぞ」

 

千冬姉が携帯を上着のポケットにしまった。

 

「千冬姉、いったい何――――――――――」

 

「「「「「「「「やりましょう!」」」」」」」」

 

「「え?」」

 

女子たちが同時に立ち上がった。

 

「え? いいの? 本当に? 箒ちゃん?」

 

雪子さんも驚いたように確認をとる。

 

「もちろんです! 雪子叔母さんの頼みですから!」

 

ぐっと拳を握り、高らかに言う箒。

 

「そ、そう! ありがとうみんな! 助かるわぁ! じゃあ、さっそく着替えて着替えて!」

 

そして雪子さんに連れられ、女子たちは居間から出て行った。

 

残されたのは、ぽかーんとしてる俺と瑛斗。そして含み笑いをする千冬姉だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ってなわけ」

 

一夏の説明を聞いた。

 

「へぇ。要するに頼まれたわけだ」

 

「・・・・・・・・」

 

「おい? 数馬?」

 

「こ・・・」

 

「え?」

 

「この幸せ者おぉぉぉぉっ!」

 

「おわっ!?」

 

数馬の右ストレートを軽くかわした一夏。 さすがはIS操縦者だ。

 

「な、なんだよいきなり!」

 

「だまれ幸せ者! 羨ましいぞコンチクショー!」

 

「な、なに? なにがだよ?」

 

「それじゃあ巫女のアルバイトしてる子たちって全員お前の知り合いってことだろ! ずりぃよ! お前ばっかり!」

 

「お、おお・・・ごめん」

 

一夏が数馬に謝っている。けど多分怒られてる理由は分かってないだろう。

 

「あ、そ、そう言えば弾」

 

「なんだよ?」

 

「この前聞いたんだけど、虚さんと仲良くしてるんだってな」

 

「お? 聞いちゃう? その話題聞いちゃう?」

 

「ず、ずいぶん嬉しそうだな・・・・・」

 

一夏が引き気味に俺を見てくる。

 

「まあなまあな! 俺にも春が来たんだよ。もう新年を祝うメールももらったしよ!」

 

一夏に携帯の虚さんからのメールを見せつける。

 

「今度もデートする約束したんだぜ!」

 

「そ、そっか。よかったな」

 

やや引き攣った感じの笑みを浮かべる一夏。

 

「う・・・・・・・」

 

「「?」」

 

数馬がぷるぷると震えはじめた。

 

「うあああああっ! みんな嫌いだあぁぁぁぁっ!」

 

「あっ! おい!」

 

「数馬!?」

 

俺たちの制止も振り切って数馬は猛スピードで走り去っていった。ちらっと見えたけど、目からは光るものが。

 

「ど、どうしたんだ? アイツ・・・・・」

 

「さ、さあな・・・・・」

 

「で、弾は何しに来たんだ? 一人で初詣か?」

 

「んなわけねえだろ。お守り買いに来たんだよ。蘭に」

 

「蘭に? ああ、そう言えばアイツIS学園に受験するんだっけ?」

 

「ああ、じゃねえよ。アイツ頑張ってんだぞ。いっつも夜遅くまで勉強して」

 

「そうなんだ。それじゃあ合格祈願だよな。あっちの売り場だぞ」

 

一夏が指差す方向には、俺と同じなのだろうか、俺たちくらいの男が結構並んでいた。

 

「おう。サンキュ。じゃあな」

 

「あ、そうだ。弾、蘭に『受験頑張れよ』って言っておいてくれ」

 

ニカッと笑う一夏に、俺も笑った。

 

「おうよ!」

 

俺は一夏と別れてお守り売場に向かった。

 

それから数分並んで、俺の番。

 

「新年、明けましておめでとうございますわ」

 

「ど、どうも・・・」

 

俺に挨拶したのは、数馬の言っていた通り金髪の女の子だった。

 

しかも・・・結構・・・・・いや、すっげー可愛い。

 

「それで、どのお守りをお探しでしょうか?」

 

「あ、ご、合格祈願でお願いします・・・・・」

 

代金を渡し、お守りの種類を言う。

 

「わかりましたわ」

 

その子はニコリと笑って、お守りを渡してくれた。

 

「ど、どうも・・・・・」

 

ろくに話もできず、俺はそのままその売り場から離れた。

 

(すごく可愛かった・・・・・。ほ、ほかにはどんな子がいるんだろ!)

 

俺はワクワクを抑えきれず少し駆け足でおみくじを引きに行った。

 

「ここに代金を入れてそこの箱から一枚紙を取れ」

 

「え・・・・・・・」

 

銀髪眼帯の背の低い子が尊大な態度で命令してきた。

 

「どうした? 後ろが閊えているからさっさと引け。もしくは去れ」

 

突き放すような物言い。

 

・・・・・・・だけど、嫌いじゃなかった。

 

「は、はい!」

 

言われた通りおみくじを引く。

 

「そら、引いたならとっとと行け」

 

すぐ開こうとしたらギロ、と睨まれたのでそして少し離れた場所で開く。

 

「・・・・・・・末吉・・・」

 

び、びみょ〜・・・・・。よくもなく悪くもないってか。

 

「えーっと恋愛運は・・・『相手を待つだけではなく、自分から接していくと良いでしょう』か」

 

なるほど。参考になる。

 

「ん? まだある。『浮気をすれば、必ず天罰が下るでしょう』?」

 

なんだこれ? 浮気って・・・・・するわけないだろ。

 

・・・・・待てよ? もしかして今の俺って、浮気してるのか・・・・・? 

 

結構うつつを抜かしてる気がするけど・・・・・・・。

 

「い、いやいやいやいや! ないない! そんなわけな―――――――――」

 

「はいはい。通るよ通るよー」

 

ドガッ!

 

「ぐはあっ!?」

 

再びデカい段ボールを抱えた桐野に激突され、俺は数メートル吹っ飛ぶのだった。

 

おみくじって、結構当たるんだな・・・・・。

説明
正月編その3! 

今回はアイツ目線
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