「ライク・コープス・イン・オオカミ・フォレスト」プレビュー版 |
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第φ部「フォールス妄想大国」より「ライク・コープス・イン・オオカミ・フォレスト」
ゴウン、ゴウン、ゴウン、ギュグン!
重苦しい金属音の無機的斉唱が終わりを告げ、開かれたハッチの向こう側に美観を最重視した駅舎が姿を露わにした。
アンダーガイオンからのリフトに満載された、労働者やカチグミを目指す学生達が次々と吐き出されてくる。彼ら彼女らは、キョート駅前に乗りつけた送迎リキシャーに乗り込んで各々の目的地へと向かっていった。
その人の群れから遅れPVCレインコートを目深に被った学生が一人、駅の入り口に現れる。
コートは薄汚れていたが、左胸の校章からはガイオン有数の進学校たるアケボノ・ジュニアハイスクールの学生と分かる。中高一貫教育で、未来の逸材を促成栽培する私立校だ。
だが、どうしたことか。学生が姿を現わすと同時に、乗客を待ち構えているリキシャー達がクモノコ・スプレッドで走り出すではないか。別の場所へ客を探しに? いや、朝のラッシュアワー時にそれはあまりにも不自然。
学生は走り去るリキシャーを無視するように、徒歩で学校へと向かう。
歩みはリキシャーと比べて、あまりに遅い。授業開始寸前に、ようやく学校へとたどり着く。
校門を潜り校舎に足を踏み入れる。フードを取ると、手入れがされていないタテガミめいた長髪が零れ落ちた……女学生だ。少女らしさの残る大きな両目は、光の加減によって時折深い青空のような輝きを放っている。
彼女は整然とした所作でレインコートを畳み、粛々とロッカーの前へと立つ。
……彼女のロッカーだけが、異世界へと放り込まれたかのような惨状を呈していた。
扉に油性ペンで「消えろ」「アケボノの恥」といったラクガキに加え「退学重点」「闇医者の娘」と書かれた付箋が重なる。接着剤で貼り付けられ、剥がすことすらままならぬのだ。
だが……それら無慈悲な罵詈雑言に対して、少女は全くの無反応。ラクガキも付箋も無視し粛々とロッカーの鍵を外し、上履きを引き出す。
「君ィ、毎度毎度困るんだよ。学校の備品をそんなに汚く使われちゃ」
その横合いから声。大柄な生活指導教師が、廊下に向かう入り口に立ち塞がっている。
なんと、この教師はどこを見ていたのか? たった今登校したばかりの少女を、ロッカーを汚した犯人と決めつけている!
「責任持って清掃したまえ! 放置していては、他の生徒達にも示しがつかんだろうが!」
理不尽! しかし対する少女は怒らないし、反論もしない! 教師が空気めいて上履きへと履き替えると、彼の眼前に歩み寄る!
「な、なんだねその態度は! 君は全く反省というものを知らんのか」
「雑巾」
呆気にとられた教師に、少女は感情の一切が抜け落ちたかのような声を上げた。
「雑巾を取りに行きたいのですが」
「よ、よかろう。さっさとしたまえ」
開いた隙間を、ドロイドめいてすり抜ける。
「さっさとしろと言っている。カケアシだ!」
同時に、廊下を走り出す。その様子もやはり。
否。少女の動作を見るにつれ、機械とて少し可愛げのある動きをするとも思える。理不尽を意に介さず、命令を淡々とこなすその様子は。
まるで、ズンビーのようではないか。
説明 | ||
ドーモ。こちらは忍殺アンソロージー http://njslyr.karmadept.com/ に投稿した作品のサンプールとなる。/夏コミ1日目東4ユ-28b「明日も働かない」で頒布予定だそうだから金曜日にビグサイートォーに行ける人は買いに行くべきであると思うよ | ||
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