英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 235 |
〜ミルヒ街道〜
「あ……!」
エステル達が農園に向かっていると、エステル達の前方から王国軍の部隊がやって来た。
「おや……。……みんな、止まれ。」
部隊を率いていた隊長はエステル達に気付き、兵士達を一端停止させた。
「アストンさん、お久しぶり!」
昔馴染みである関所を守っている兵士達の隊長――アストンにエステルは挨拶をした。
「久しぶりだね、エステル君。それにシェラザード君だったか。ギルドの仕事の途中かな?」
「うん、そうだけど……。もしかしてロレントを警備してくれる部隊って……」
「ああ、私たちだ。ハーケン門からの増援と共にロレント市を守らせてもらうよ。」
エステルの疑問にアストンは頷いて答えた。
「そっか……」
「本当に助かります。」
「とんでもない。市民を守るのは王国軍の義務でもあるからね。ロレントの状況はどうかな?」
エステルとシェラザードのお礼に謙遜したアストンは状況を尋ねた。
「うん、霧は深くなったけど昨日みたいに昏睡事件は……。あ、あの、アストンさん!」
アストンの状況を話したエステルはアストンの息子も昏睡事件の被害者の1人である事を思い出し、血相を変えて話そうとしたが
「……ああ、ルックのことだね。眠りから覚めないだけで命に別状はないと聞いている。そんなに気を使わないでくれ。」
アストンは冷静な様子でエステルを制した。
「で、でも……」
「今はお互い、自分の責務を果たすことだけを考えよう。それが恐らく、ルックたちを助けることにも繋がるはずだ。」
「アストンさん……」
「ええ、その通りだわ。アストン隊長。街はよろしくお願いします。」
「ああ、任せたまえ。そろそろロレントだ!到着次第、すぐに警備体制に入る!」
「イエス・サー!」
そしてアストンは兵士達を率いてロレントに向かった。
「今の隊長さんって眠っちゃった男の子の……?」
「うん……ルックのお父さん。本当は心配でたまらないはずなのに……」
「強い人……ですね。」
ティータの疑問に答えたエステルの話を聞いたクロ―ゼは心配そうな表情でアストンを感心した。
「そうね……あたしたちも頑張らないと。パーゼル農園に急ぎましょう。」
そしてエステル達はパーゼル農園に向かった。
〜パーゼル農園〜
「ティオの家……なんだかちょっと懐かしいな。それにしても……ここもかなりの霧だわ。」
「とりあえずご主人に事情を説明するわよ。まさかこの霧の中、配達には行ってないわよね?」
「う、うーん……それはないと思うけど。」
シェラザードの疑問にエステルが悩みながら答えたその時
チリーン…………
「い、今のって……」
「……まさか……!」
農園に鈴の音が響き渡り、鈴の音を聞いたティータは不安そうな表情をし、クロ―ゼは真剣な表情になった。
「シェラ姉っ!」
「急ぐわよ!」
そしてエステル達が家に急いだその時
「「「「「……………………」」」」」
なんと霧型の魔獣が5体現れた!
「えっ……!?こ、こいつら!?」
「霧の魔物……!?」
「ふええっ!?」
「迷ってるヒマはない!撃破するわよ!」
そしてエステル達は戦闘を開始した!
「ちょっと、多いわね…………パズモ、ニル!」
敵の数を見て、エステルはパズモとニルを召喚した!
(私達の出番ね!)
「フフ、光を使うニル達にとっては楽勝な相手よ。……爆裂光弾!!」
(槌の光霞!!)
召喚されたニルは不敵な笑みを浮かべた後、魔術を放ち、ニルに続くようにパズモも魔術を放って、霧の魔獣達に大ダメージを与え、のけ反らせた!
「光よ、槍と化して、敵を貫け!……光槍!!」
さらにエステルが魔術を放って、一匹の魔獣に止めを刺した!
(行けっ!連続光弾!!)
「い、行きます!ダークマタ―!」
そしてパズモは魔術を放って、弱っている一匹にさらにダメージを与え、ティータがアーツで止めを刺し
「光よ、集え!光霞!!」
ニルは魔術で敵の一匹を消滅させた!
「風よ、切り裂け!旋刃!!」
シェラザードは魔術を放ったが、敵は消えず、シェラザードに攻撃して来た!
「チッ!風属性はあまり効かないようね………なら!」
自分の魔術が通じなかった事に舌打ちをしたシェラザードは敵の攻撃を回避した後オーブメントを駆動させ、そしてアーツを放った!
「ハアッ!アースランス!!」
シェラザードのアーツによって弱点属性をつかれた敵は消滅した!
「…………………」
一方クロ―ゼは目を閉じて、精神を集中していた。残った敵達はそんなクロ―ゼを襲った!
「クロ―ゼ、危ない!」
そしてエステルは動かないクロ―ゼに警告をしたその時、クロ―ゼは目を見開き、そして!
「……凍てつけ!凍結!!」
なんとクロ―ゼは魔術を放った!クロ―ゼの魔術により、クロ―ゼを襲おうとした敵達は突如自分達の周りに発生した吹雪によって、氷漬けになった!
「止めです!氷剣!!」
さらにクロ―ゼは魔術を放ち、クロ―ゼの魔術によって敵達は足元から発生した氷の刃によって貫かれ、消滅した!
「ふう………」
戦闘が終了し、パズモ達はエステルの身体の中に戻り、クロ―ゼは安堵の溜息を吐いた。
「す、凄いじゃない、クロ―ゼ!魔術、ついに使えたじゃない!それもあたしが使えない冷却系の魔術を!」
「す、凄いです〜。」
「適正属性が冷却属性とわかっていたとはいえ、こんな短期間で使えるようになるなんて、ひょっとしたらあたしやエステルより才能があるんじゃないかしら?」
クロ―ゼが魔術を使った事にエステルは興奮し、ティータは驚き、シェラザードは驚きの表情でクロ―ゼを見ていた。
「そんな………お2人が魔術の使い方を教えてくれたお陰ですよ。それより、家の中にいる方々の無事を確認しないと………!」
「あ!うん!」
「急いで探すわよ!」
そしてエステル達は家の中に入った。
「あ……。フランツおじさん!?チェル、ウィル!?ティオ!ハンナおばさん!」
家の中に入り、リビングに行くとエステルの友人――ティオを含めた家族達が意識を失った状態で倒れていた。
「……うそ……」
倒れているティオの状態を調べた後、エステルは膝をついた。
「ダメ……眠らされてしまっています。」
「うん……この子たちも……」
クロ―ゼやティータはティオの家族達の状態を見て、無念そうな表情をした。
「……っ…………。また……間に合わなかった……」
「エステルさん……」
「お、お姉ちゃん……」
悔しそうな表情で涙を流しているエステルをクロ―ゼとティータは心配そうな表情で見つめていた。
「ダメね……まんまと逃げられたわ。あたしたちの動きを完全に読んでいたみたい。」
そこに1人、外に出て調べていたシェラザードが溜息を吐いて、リビングに入って来た。
「『黒衣の女性』ですね。」
「……ええ、間違いないわ。エステル……とりあえずベッドに運ぶわよ。部屋に案内して。」
「あ……うん……」
そしてエステル達は協力して、ティオ達をベッドに運んだ…………
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第235話 | ||
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