リリカルなのは×デビルサバイバー |
クロノ達がフェイトを連れ、元の世界であるミッドチルダに帰るのを遠くから見届け、カイトは家路についていた。
『フン、母親が死んだ割には、中々に元気そうだったじゃないか』
「まぁね。なのはっていう、友達ができたのが大きいんじゃないのか? でもこれで、プレシアの最後の願いは叶ったと思う。なのはが隣に居れば、あの子はどこまでも笑うことが出来るだろ」
フェイトの様子を見て、カイトはそう結論づける。策とも言えない…一人の女性の願いを叶え、もう生きてはいない彼女のために出来る最後のこと、それがフェイトの様子を見ることだった。
暫くの間黙ったまま、カイトは歩き続ける。その中でポツリと、独り言のようにカイトは言葉をもらした。
「死にたく、ないな」
『何言ってんだ? 当たり前だろ』
「そんな事はわかってる。それでも、だ。それでも、そう思うんだ」
カイトはポケットから、USBメモリを取り出す。目が覚めた時、ポケットに入っていた――恐らくは、プレシアが入れたのだろうそれは、未だ中身を確認をしていないが、プレシアからの報酬である、情報が入っているとおもわれる。
「死にかけた人や、死んだ人……それは、あの東京封鎖で何人も見たよ。でも、初めてだったんだ。少しの間だったけど、話して、その心中を少しだけだったけど、理解して……そんな人が死んだのはさ」
カイトは手に持ったそれを、強く握り締める。
「だからかな? 今まで以上に、強くそう思った。絶対に俺は死なない。死にたくないって」
『なら、生きてみせろ。全てに足掻き抜いてな』
「言われるまでもない。俺にも願いがあるんだ、絶対に生き続けてやる……!」
カイトの脳裏に浮かぶのは、一人の同級生である女の子。それから、アツロウ、仲間だった者達の顔だ。
「何を思われたっていい。そうさ、それが俺の願いなんだから」
* * *
家へと帰ると、早速パソコンを立ち上げ、USBメモリをパソコンにつけ、それと並行してCOMPを起動させる。
「えっと? コレでいいんだよな?」
暫く、COMPの反応を待っている間に、一人USBメモリの中のデータを確認する。様々なデータが入っているが、その情報のひとつひとつをレポートとしてまとめているらしい。
数分、待っただろうか? 最初はノイズが篭ったような声だったのが、次第に綺麗な音声に変わっていく。
『あ、あーあー。カイト、聞こえるかー?』
「あぁ、聞こえるよ。アツロウ」
COMPから聞こえてくるのは木原篤郎こと、アツロウだ。
『よっし! 今まで連絡なかったから、心配したぜ〜?』
「悪い悪い、今まであまりにも進展なくてさ」
『ならいいんだけどさ、何もなくても連絡ぐらいしてくれよ』
謝罪しつつ、今まで起こったことを報告する。
この世界の次元世界について、魔法について、それらの力を手に入れた一人の少女と、その少女が救おうとした女の子について、世界を管理するもの、今回の事件の黒幕、真相について、全てだ。
『……なんつーか、大変だったな』
「ははっ、まぁね」
少しの静寂。色々とありすぎて、アツロウから気軽に声をかける事が出来なかったこともあるが、カイトが黙ったのも静寂の理由の一つだ。
『あー、それでだな?それはそれとして、USBメモリには何の情報があったんだ?』
意を決した様に、アツロウから話しかけ、カイトもまた少し戸惑いつつも、返事をする。
「ちょっと待ってくれ。何々? プロジェクトF.A.T.E? FATE…フェイト。あぁ、フェイトの名前はここから取ったのか。『基礎を作ったのは、ジェイル・スカリエッティ。その後プレシア・テスタロッサが完成させた』か」
『ストップ! 一人で納得してないで、説明してくれよっ!』
「いや、ちょっと待ってて。データを全部そっちへ送るよ」
USBメモリに入ったデータを、COMPへ移し、メールに添付し送信する。そも、通信が出来ているのだから、メールを送る事が出来ないわけがない。
『おっ、来たな……』
暫くデータを読む時間が必要のはずだ。そう思い、カイトは今のうちに飲み物を冷蔵庫から取ってきて飲んだところで。
『って、なんだよこれっ! そっちの世界じゃこんなのが、普通なのかよ!』
と、アツロウが大声を出したため、カイトは飲み物が気管に入り、咳き込んでしまう。
「ケホケホっ……いや、普通じゃないと思うよ? 違法って書いてあるっぽいしさ」
『あ、本当だ。でも、こっちの世界と比べると、そっちの世界は色々と複雑そうだよなぁ?』
世界は一つだけでも、様々な混乱を呼び起こす。だというのに、次元世界という形であっても、これだけの世界が存在するのだから、アツロウの言うとおり、複雑さで言えば確かにカイトの居る世界のほうが上かもしれない。
『え〜っと。おっ、あったあった! 天使の羽根、仮面の男の情報もあったぞ!』
「ちょっと待ってくれ……っと、あったあった。たしかにコレだな」
その文面には、天使の羽根を使い悪魔使いをおびき出す事と、その羽根の有能性について書かれていた。
有能性については、天使の羽根に宿る無尽蔵とも言える、魔力についてプレシアは着眼点をおいたようだ。
『……天使の力を兵器に転用か。恐ろしいな』
「過ぎた科学は魔法とも言える。その科学に、天使や悪魔の力が合わされば、それこそ世界を支配する何かが出来るかもな」
恐ろしいねぇ……と、データを見ながら、カイトは言う。
「……でも、これだけか。大した情報はないな」
『いや、そうでもないな』
「ん?」
『天使……要は悪魔の力と同じだろ? それを兵器に転用出来るほどの、研究をどうやってしたんだよ? このレポートによると、仮面の男と初めて会ったのは、だいぶ昔だけど受け入れたのは、つい最近だろ? ってことはだ。プレシアが研究したんじゃなくて仮面の男が研究、兵器・ゴーレムに転用したんだ。それでその研究内容をプレシアさんに渡した』
「なるほど、言われてみれば……ということは」
「『すべての鍵は、仮面の男が握っている』」
二人同時にそう結論づけ、カイトは仮面の男について、調べることを心に誓うのだった。
* * *
「ラッパが……鳴り響いたか」
天使の羽根を右手に持ち、眺めながら仮面の男は呟く。
「まだ一回……一回だ。あと、六回響かせなきゃいけない」
そして、天使の羽根を握り締める……いや、握り潰すように、力を入れる。
「私の……本懐を遂げるために」
その声は強く……だけど、どこか悲しみを帯びたような、そんな声だった。
前回の後書き通り、キャラ説明というかそんなん投稿してからAs編を週一ぐらいのペース(書けたらもっと早く投稿)でやっていく予定です。
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Last Day それぞれの決意 Last Dayとか言ってますけど、無印編最終話って意味です。 |
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