恋姫的外史 第9話 |
持たざる者
第9話
暗く狭い部屋の中心に人影があった
机に上にはソフトボール程の大きさの水晶だけが置いてあり、その中を眺める人影がいた
フード付きマントを頭から深くかぶり、性別まではわからなかった
「…ホムンクルスの転送、及び恋姫世界での再構築は成功。これより恋姫第3計画【刃】をフェーズ2へと移行する」
声から察するに女性のようである
その影がボソリと呟いた瞬間
「女?…そいつはもぅ用済みだってことなのか?」
「いちいち回収する我々の立場にもなって頂きたいものですね…」
若い男が二人、女性の背後から現れた
「本当に、老人達の暇つぶしにも本当に困ったものです…」
「作られた俺達が言うのも変な話なんだがな…」
溜息交じりに愚痴り合う男二人はさもつまらなそうに女性が眺めている水晶を覗き込んだ
「今回は初めて五体満足で、恋姫世界への再構築が成功しました…」
声には一切の感情が感じられなかった
…が、男の一人は小さな変化を察したようだった
「ほほぅ?それは興味深いですね、それにとても嬉しそうじゃないですか」
「いい加減結果を出さないと、私は棄てられてしまうから…」
先程見せた、ほんのわずかな喜びの表情がまた能面のような生気を感じられない表情に戻ってしまった
「なら今回は歪な人形を破壊しに行かなくていいんだな?」
「今回は精神も安定しているから…大丈夫。破壊は…必要になった時に要請します」
「それでは…どうするのですか?」
「…状態は安定していても、あの子には【知識】【力】【記憶】その一切を何も持たせてません」
「放っておいても、その内にのたれ死ぬのを待つってことか?」
「ですが…」
「あん?なんだよ?」
「ただ一つ…【望】という種だけは植え付けてみました」
「希望…欲望…羨望…絶望…果たして彼は何を望み、何を成すのか…」
「彼が望めば知力、武力を学び、それを自分の糧にすることができます」
「なるほど…何も持ってはいないが、これから持たせることは可能ということですか…」
「それにしても…計画も遂に第3段階か…」
「呉の孫堅、蜀の劉備、そして…魏には新たな可能性…と、正史の修正力」
「ここまで来ると、正史の本来あるべき姿なんて、もはや影も形も残らないな…」
「私達は所詮彼らの暇つぶしの道具…すべてが余興であり、戯事…本当に滑稽…」
「ですが、それに歯向かう力を制御される枷が付けられているのも事実…」
「そういや伏儀や太公望達はどうしてるんだ?」
「彼等なら…別の並行世界の恋姫で、華僑に入っている外史の管理をしているわ」
「どんなに築き上げても、最後は圧倒的な力により捩じ伏せる…か」
「夢や希望が最高潮に高まった時点からの急降下…」
「そして、また最初からやり直し」
「この世界に救いがあるのなら…」
「老人達がこの世界に飽きて、別の何かに興味を示すのをただ待つだけ…」
「本当に…私達は何のために…」
「あいつらを苦しめ、完膚なきまでに叩き潰しても、また繰り返すのか…」
「でも、それだけが…」
「そうですね…それだけが、作られた私達に課せられた唯一無二の存在意義…」
「余計なコトを考えず、ただ目的を実行するのみ…か、また用があれば呼んでくれ」
二人はそういうと、暗闇に溶けるように姿を消していった
「籠の鳥が願うのは…あの子には少しでも幸せな時を…」
頬を伝う一つの雫は、果たして彼のためなのか…自身のためなのか…
説明 | ||
三国知識も武力もない… いわゆる普通の一般人である主人公が恋姫世界で生きていく物語です ちなみに一刀くんは魏ルートです | ||
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伏線って大事ですよね?今回は、設定というか…ちょっとした主人公がこの世界にやってきた経緯を載せてみました(らぱん) | ||
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物語 外史 恋姫†無双 | ||
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