IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第11話 |
その夜、ルナマリアは寮の見回りをしていた。
すると一夏の部屋から何か言い争っている声が聞こえてきたのでルナマリアは一夏の部屋に近づいた。
「一夏、入るわよ」
ルナマリアはドアを開けるとそこには浴衣姿の箒と鈴が言い争って部屋の奥には戸惑っている一夏の姿があった。
「あんた達、一体何やってんの?」
言い争っている箒と鈴止める為、割って入った。
「ルナマリア先生!」
「ホーク先生」
「名前ではいいわよ、それで一体何があったの?」
箒と鈴の代わりに一夏が説明した。
鈴がいきなりボストンバッグ一つで部屋に乗り込んできて、部屋を箒と変えてと欲しいと言ったら箒はそれを拒否、それが原因で口喧嘩に発展してしまった。
「なるほどね、だけどね、鈴音……」
「鈴でいいわよ」
「それじゃ、鈴、部屋を変わる為には寮長の許可が必要よ」
「なら許可を取れば良いのね!」
「だけどね、寮長は織斑先生よ」
それを聞いた瞬間、鈴は固まった。
いくら鈴でも千冬が相手ではどう頑張っても許可は下りないであろう。
「分かった? 部屋を変わって欲しかったら、織斑先生を説得しなさい」
ついに鈴が折れた。
「分かったわよ、部屋を変わるのは諦めるわよ」
「分かればよろしい!」
だが、鈴は一夏に向いた。
「ねえ、一夏、約束覚えているよね?」
「約束?」
「ほら、小学校の時の覚えていない?」
鈴に言われ必至に思い出す一夏。
「えっと、確か、鈴の料理の腕が上がったら酢豚を……」
「そう、それ!」
鈴は嬉しそうにする、だが
「ごめん、その後が忘れてしまった!」
一夏は両手を合わせて鈴に謝った。
「わ、忘れたって……!」
まさか忘れたとは思っていなかった鈴は体が震えていた。
「最ッ低! 女の子との約束を忘れるなんて男の風上にも置けない奴! 犬に噛まれて死ね!」
鈴の怒りが爆発して、一夏に詰め寄る。
「本当にごめん!」
「謝ってすまなわよ!!」
一夏は必至に謝るが鈴の怒りは収まるどころかさらに酷くなる一方であった。
だが、ルナマリアが仲裁にはいる。
「鈴、怒るのは分かるけどその辺にしておきなさい」
「でも!!」
「確かに一夏も約束を忘れてしまったのも悪いわ、だけど、一夏も反省しているようだし、許してあげたら?」
「………」
鈴はそれでも納得できないのか無言であった。
「それだったら、今度のクラス対抗戦で決着つけたらどう?」
ルナマリアの提案に驚く鈴と一夏。
そして鈴はその提案に乗った。
「いいわ、一夏、今度のクラス対抗戦、私に勝ったら許してあげる!」
「本当か!」
「但し、一夏が負けたら、私の言う事を何でも聞いてもらうわよ!」
「分かった、その勝負受けて立つ!」
「約束したわね、私が勝つから、覚悟しておきなさいよ!」
鈴は置いていたボストンバッグを拾い部屋を後にするのであった。
「助かったよ、ルナマリア」
「一夏、いくら小学校の時の約束だからって忘れるのは酷いわよ!」
「うぅ、本当にごめん」
「それは鈴に言いなさい、それっとクラス対抗戦、頑張りなさいよ」
「ああ、色々とありがとうな」
「別にお礼なんていいわよ、それじゃあ、私は見回りの続きに行って来るわ」
ルナマリアは部屋から出て行った。
「ふぅ……」
ルナマリアは寮の見回りをしながら鈴の事を考えていた。
「あれって間違いなく、プロポーズよね……」
鈴が一夏に約束したのはプロポーズだと気付いた。
ルナマリアがプロポーズだと気付いたのか、それは一夏が口にした「毎日酢豚を」の言葉と鈴の態度で気付いたのである。
「でも……一夏も気付きなさいよ、"毎日酢豚を"って言ったら"毎日味噌汁を"の意味じゃない」
鈴も恥かしくて酢豚に変えたのかもしれないが、それに気付かない一夏の鈍感に呆れてしまうルナマリアであった。
それから時が経ち、五月になった。
一夏は鈴と仲直りするため、キラから出される過酷な特訓にも耐えてきた。
そして、クラス対抗戦のトーナメント表が発表された。
一夏の一回戦の相手は鈴であった。
キラ達はクラス対抗戦が始まるまで、対近接戦を想定した訓練をメインに一夏を鍛えてきた。
そして遂にクラス対抗戦が始まった。
会場である第一アリーナの席は既に満員で、一回戦第一試合の一夏VS鈴の戦いを今か今かと皆、待ちわびていた。
ピットでは試合に出る一夏がISスーツを着て、画面に映る観客席の様子に圧倒されているが、傍に控えていた箒、セシリアのお蔭なのか、比較的落ち着いていた。
「一夏さん、鳳さんのIS"甲龍"は燃費が非常に宜しい機体ですから、試合時間が長引けば白式が不利になりますわ」
「ヤマト先生達が教えてくれた加速を使いながら、短期決戦で挑むのだ」
セシリアは甲龍のスペックデータを展開して一夏に相手の詳細と戦法の確認を行っていた。
一夏も勝つために一切を聞き逃すまいと必死に聞かされた事を頭に叩き込んで行く。
そして、遂に試合時間が間近に迫ってきた。
一夏はカタパルトに足を固定させ、準備を進めた。
「さあ一夏、時間だ」
「ああ! じゃあ……勝ってくる!」
『カタパルトオンライン、進路クリアー、白式……発進どうぞ!』
管制をしている真耶の声がピットに響いた、一夏は下半身に力を入れる。
「織斑一夏、白式! 行くぜ!!」
気合と共に発進した一夏を見送り、ピットにいる箒とセシリアはアリーナの映像に視線を移した。
その映像には、既にアリーナでスタンバイしていた甲龍を纏う鈴と、丁度ピットから飛び出した白式を纏う一夏が映し出されている。
「一夏……」
心配そうな箒の声だけが響くのであった。
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第11話です。 プロローグ http://www.tinami.com/view/463196 設定集(ネタバレあり) http://www.tinami.com/view/502954 |
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