IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
帰省していた生徒たちも無事帰省先から戻ってきて、冬休み明け最初の授業の日。
我ら一年一組の教室でもクラスメイト達がホームルーム前の談笑を楽しんでいる。
「はっはっは。久しぶりだな我が机!」
「久しぶりって・・・二週間くらい使っていないだけでしょ?」
隣の座席の宮岸あずささんが苦笑する。
「っていうか桐野くん、キャラ変わった?」
「いんや。ただなんとなくやってみただけだよ」
「ふーん。まあそれはそれとして、アレどうしたの?」
「アレ?」
宮岸さんが指差した方向を見ると・・・・・
「・・・・・・・・・」(ソワソワ)
なんか、ソワソワしてる一夏の姿があった。
「織斑くんがあからさまにソワソワしてるんだけど・・・・・」
「ああ、アレか」
少なくともこのクラスにいる専用機持ちたちは事情を知っている。
何を隠そう今日はマドカが初登校してくる日なのだ。兄ちゃんのソワソワが止まらないのも無理はない。
織斑先生もソワソワしてた。朝飯食う時に見かけたら、ソワソワしすぎて味噌汁にゴマ塩振ってて声かけたらお前にやる
って押し付けられたけど。
「まあ今日はちょっと特別な日でな」
「特別な日?」
「ああ。なんと―――――――――」
ガラッ
「みなさん、おはようございます」
このクラスの副担任の山田先生が入ってきた。
「あ、山田先生おはよー! あけおめー!」
「ことよろでーす!」
「お、おはようございます。今年もよろしくお願いしますね?」
さっそく軽い感じのあいさつが山田先生に向けられる。
「諸君。おはよう」
「おはようございます。織斑先生」
そして担任の織斑先生の登場。生徒全員の背筋がピーンってなる。
「・・・・・さて、新年のあいさつはほどほどにして、ホームルームを始める」
いつものように出席をとってからホームルームに入る。
「今日は休み明け最初の授業ということもある。実戦練習は明日からだ。だがアリーナの開放は定刻通りだ。鍛練を怠る
なよ」
パタン。
先生は持っていた出席簿を閉じた。
「次だ。全員よく聞け。今日このクラスに転入生がくる」
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・え?」」」」」」」」」」
クラスのほぼ全員が驚く。
「イェーイ! 待ってました!」
俺はパチパチと手を叩く。
「え、桐野くん知ってたの?」
宮岸さんがこっちを見る。
「まあな」
「もうそこに来ている。入ってこい」
「し、失礼します・・・・・」
控えめな声と共に転入生が入ってくる。
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
クラスのほぼ全員が凍りついた。
「お、織斑マドカです。よろしくお願いします」
ペコ、と頭を下げたのは、IS学園の制服に身を包んだマドカだ。
「名前の通りコイツは私とそこの織斑の妹だ。まあ、だからと言って贔屓などはせんから―――――――――」
「き・・・・・・・」
「?」
俺は次の展開を予想できた。
「耳栓用意!」
俺が大きめの声で言うと、このクラスの専用機持ちたちが持っていた耳栓をはめた。
「「「「「「「「「キャアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」」」」」」」」
耳栓をしていても聞こえてくるほどの女子の声。
その声が止んだところで俺は耳栓を外した。
「千冬様! 小っちゃくなった千冬様よぉぉ!」
「かわいいいっ!」
「撫でたいっ! 頬ずりしたいっ! 舐めまわしたいぃっ!」
「反則・・・! あれは反則よぉっ!」
「あ・・・あぅぅ」
女子たちの若干の欲望が混じった視線を受けてマドカは一歩退がる。
「いいかお前ら。コイツに妙なことをしたら出席簿どころじゃすまないぞ」
お、おお・・・。織斑先生の後ろに風神と雷神が・・・・・。おっかない。
「「「「「「「「「「は、はいぃ・・・・・」」」」」」」」」」
女子たちがしおらしくなったところでホームルームの終了を告げるチャイムが。
「ほら、チャイムが鳴ったぞ。全員授業の準備をしておくように」
そう言って教室を出ようとする織斑先生。
「え、ええっと、みなさん私は教材を取ってきますからちゃんと準備しておいてくださいね〜?」
山田先生もその後ろについて教室を出て行った。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・。
・・・。
と、いうわけで質問責めスタート! 実況は私、桐野瑛斗でお送りします!
『マドカちゃんっ!』
「ひゃ、ひゃいっ!?」
一斉に向けられる視線に若干涙目のマドカ。さあ、どうやってこの大人数を切り抜ける!
「どう!? やっぱり千冬様って妹にしか見せないところとかあったりする!?」
「ホントに見れば見るほど織斑先生そっくり!」
「お兄ちゃんは織斑君でお姉ちゃんは織斑先生って、もう、もう羨ましすぎ!」
「うぅ・・・」
あーっと、ぱたぱたと小走りで一夏の背中に隠れてしまったー。これはお兄ちゃんガードかー。(棒読み)
「瑛斗、やり始めて数秒で飽きないでよ・・・・・」
いつの間にか近くにいたシャルが苦笑いを浮かべている。
「え? 聞こえてた?」
「うん。声に出してたから聞こえた。にしても凄い殺到っぷりだね」
「ああ。お前とラウラが転校してきたときに匹敵するな。いや、あの食いつきはそれ以上かもしれん」
「は、傍目から見るとあんな感じなんだね・・・・・」
「さて、お兄ちゃん一夏。どう妹をフォローするのかー」(棒読み)
「あ、まだ続いてたんだ」
シャルとともに向こうの質問責めを見やる。
「お、おいおいみんな。あんまりマドカを困らせないでくれよ」
一夏が迫りくる女子たちをまあまあと手を動かして止める。
「いろいろ質問されると面倒だから一気に言うぞ。マドカは俺と同じ年に生まれたんだけど、二歳のころに父さんと母さ
んとどこかへ行ってたんだ。それで冬休みに入ってすぐくらいに日本に帰ってきたはいいけど事故に遭って頭を怪我して
記憶喪失。だからあんまり深く詮索しないでほしいんだ」
ほお・・・、お兄ちゃん一夏の見事なまでの全面カバー。質問しようとしてた女子たちは言葉を詰まらせる。
「え? じゃあなんで専用IS持ってるの?」
女子の一人がマドカの耳のイヤリングを指差した。
「え・・・えっとぉ・・・・・」
今度は一夏が言葉を詰まらせた。ちらっと俺を見てくる。やれやれ・・・・・。
「それは俺がお答えしよう!」
女子たちが俺の方向を向いた。
「マドカはその複雑な家庭の事情上、政府やら何やらからの目もつきやすい。そこでIS学園はマドカのIS適正の高さ
に目をつけ、専用機持ちとして学園に転入させることになった。こうすればマドカの身の保証も完璧だ」
歩きながら話、マドカと一夏の横に立つ。
「そして! このマドカの専用機を造ったのは!」
「瑛斗なんです」
ズコー!
「ま、マドカ! それ俺が一番言いたかったところ!」
まさかマドカに美味しいところ掻っ攫れるとは・・・・・・!
思わず昭和なズッコケをしてしまった。
「みなさんに追いつくためにも、一生懸命頑張ります! よろしくおねがいします!」
ニコッと笑顔もセットで言ったマドカ。
「は・・・」
女子の一人が震える声で呟いた。
「『は』?」
「反則・・・・・よ・・・!」(ゴフッ)
あ、血ぃ吐いて倒れた。
「きゃあ!? ど、どうしたんですか!?」
倒れてぴくぴくと痙攣している女子にマドカが近づく。
「そ・・・そんな・・・・・エンジェルなスマイルされたら・・・かくっ」
どうやらマドカの笑顔を見て気絶してしまったらしい。
そしてそれを皮切りにほかの女子たちがマドカを取り囲んだ。
「え・・・えぇ?」
状況が把握できていないマドカ。安心しろ。俺も把握できてない。
「大丈夫!」
「あなたの家の事情なんて関係ないわ!」
「一組はマドカちゃんを歓迎するわよ!」
「総員、かかれぇ〜!」
「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」
「え? えぇ〜?!」
そのままマドカは持ち上げられて胴上げされることになった。
「な、なんかよく分からないけど、一応、丸く収まったん・・・・・だよな?」
わーっしょい、わーっしょい! と胴上げされるマドカをやや困惑気味に見ながら一夏が俺に聞いてきた。
「ああ。これ以上ないくらい丸く収まってる」
横に立っているシャルもうんうんと頷いた。
「マドカちゃん良かったね。二人もそう思うでしょ? 箒、セシリア」
「なっ!?」
「なぜ急にわたくしたちに!?」
急に話を振られてたじろぐ二人。それにシャルはクスクスと笑いながら話す。
「え〜? だってさっきから羨ましそうに一夏のせな―――――――――」
「シャルロットぉぉぉぉぉっ!?」
「なんのことでしょおおお!?」
シャルが何かを言おうとして、箒とセシリアに口と体を押さえられてる。
なんかこんな光景を何度も見た気がする。
「はははっ。なんかよく分からないけど、シャルも懲りねえな」
「そうだな。あはははっ」
「もっ、もがっ、ふ、ふふぁりふぉも、ぷはっ、笑ってないで助けてよぉ〜!」
「はいはい。いまたす――――――――」
「あの〜? みなさん」
『?』
声が聞こえて振り返る。
「授業・・・始めたいんですけどぉ・・・・・?」
『え?』
時計を見れば、あら不思議。とっくに授業時間過ぎてるよ。
「お前たちは・・・・・」
おまけに山田先生の隣には織斑先生が。
「何をやっているこの馬鹿者どもが!!!」
そんなわけで、休み明け最初の授業はラウラとマドカ以外廊下に立たされちゃったよ。あははは。
・・・・・・・・はーあ。
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