ある外史のメイジ6 ― 晴耕雨読 ―
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「美羽、七乃。少し聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」

「何じゃ陳簡、言うてみい」

ある夜、食事を終えて寛いでいる時に切り出した。

「今更ですが、汝南で伯符(孫策)を配下にしていた時の事を思い出して欲しいのですが」

「確かに今更じゃな。まあ、続けよ」

「当時は伯符が自立しないように、孫家の部将たちを分散していたそうですね。

 そのような状況下で伯符が部将と兵士を一所に集め始めたら、貴女達はどのように判断します?」

「謀反として軍を差し向ける。当時なら紀霊あたりかの」

即答する美羽。俺の意図がわからず不審気な顔をしている。

「伯符に監視役がいて、その者が充分役目を果たさず、集結をむざむざ許したとしたら?」

「厳罰を与える。生きておればじゃが。その任務に当たっておった韓胤は結局罰を受ける事はなかったの」

「監視役が積極的に集結を後押しして、離脱を許したとしたら?」

「論外じゃ。陳簡そなたさっきから妙な質問をしおって、何が言いたいのじゃ?」

「これが最後です。孫策とその部将と兵士を馬孟起と馬岱・?族の兵士に置き換えて、監視役が私だった場合はどうでしょう」

「……楊柏に任される筈の監視役を横から買って出た時は、趣味と怠ける事を考えている奴が何を血迷ったかと思うたが、

 そなた今度は一体何をしでかしたのじゃ」

「あの馬孟起が一小国に収まるとは考えられませんから。実際、劉玄徳の誘いを受けましたしね。

 融通の利かない楊柏殿に任せたら、韓胤殿の二の舞です。むしろ孟起殿に恩を売っておいた方が得です」

実際は正史と演義の知識で馬超の離脱と楊柏が危うい事を『知って』いたからだが。

「いいんですか? 張師君は兎も角、楊柏さんはこの事で命を救われたとは思いませんし、

 公則さん(張衛、張魯の妹)あたりは過失として責めてきますよ」

七乃が疑問を差し挟んでくる。

「責めは甘んじて受けますよ。これで今後は仕事を任されることもないでしょうから、寧ろしめたものです」

「お主な……」呆れる美羽。怠けるためなら努力を惜しみませんが何か?

「そして、それ以上の事をしてくるのなら私も蜀に逃れます。

 孔明殿や今回恩を売った孟起殿、それに玄徳殿に保護されている本初殿(袁紹)を頼ります」

「麗羽姉さまじゃと?どうしておられるのじゃ」

「蜀の田舎に商人が寄り付くようになったのは本初殿の尽力のお陰とか」

黄金律Aでも持ってるのかね。

「よく知っておるの」

「ここ漢中も長安と成都の中継点として賑やかになってます。どこかの誰かが色々やってたみたいですよー」

民が儲ければ、税をとる支配層が反乱の心配なく贅沢できるからな。これで左団扇だ。

配下武将も頑張って助けるぜ。俺の代わりに働いてもらう為にな。

 

そして後日、俺は陽平関に出撃する事となった。夏侯惇率いる曹操軍を迎え撃てとのこと。

「張師君は全く度量の大きな方です。『一度の過失は一度の成功で償えば宜しい』ですか。有難くて、涙が出ますよ」

「さあ、出立しますぞ陳簡殿。急がれよ」

目論見が外れ、ぼやく俺を急かす楊任の声が背中に圧し掛かってきた。

「ああ、もう。曹操にせよ、荊州で争う劉備と孫権にせよ皆さん勤勉なことです」

俺は溜息をつくと、重い足を引きずってしぶしぶ馬の方へ向かっていった。

ああ、楽隠居してぇ……

 

君主、武将達は陳簡と違い働き者のようだった。

 

 

 

 

 

    ┗(゚ペリ乙┓ =3=3=3   (゚д゚ )ノシ  

 

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俺は中原で一番サボリといわれた男。
ガキの頃から調子よく怠けて稼ぐスタイル。
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