DAシリーズ二次創作者さんにお題より「11:始まり」 |
すべて夢だと思っていたし、だから随分とまた悪趣味な夢を見たものだとも嘆息して、誰がそこにいるわけでもないのに冗談めかして肩をすくめてしまえばそれでおしまいだったはず、なのだが。
未だにずきずきとするこめかみの辺りを指先でくいと抑えながら、周囲に誰もいないことを確認してフリニアはもう一度嘆息した。まったく最悪。こうなるってわかってたなら変に苦手意識なんか持たないで、癒し手にでもなってりゃよかったか。いや待て、けど考えてもみろ、それで誰を癒すって?あの、なんだか妙に頼りなさげの先輩ウォーデンとか?ああ、まったく、私はどうかしている。これが絶世の美女だとか、いたいけな少女だとか、或いはミステリアスで挑戦的な荒野の魔女だとか――それならば、覚えたばかりの癒し術だってせいぜいはったりをかまして見事に成功だってさせがいもあるけれど。
「あら、気がついたみたいね」
ゆらゆらとした曖昧な思索を断ち切るような、ハスキーでどこかからかうような調子の、聞き覚えのある声。慌てて声の主を振り仰げば、まさにそのミステリアスで挑戦的な金色の瞳がキラリと光っている。荒野の魔女、フレメスの…
「その様子だと大丈夫みたいね。それなら、あなたのお友達にさっさと無事を伝えて頂戴。うるさくてかなわないわ」
彼女にとっては確かに重大事件なのだろう、というくらいの重い溜息と共に唇から漏れる言葉の辛辣さがなんだかおかしくて、フリニアは小さく笑ってしまう。と、彼女の眦がきっとあがりいかにも不快だといわんばかりの棘がフリニアに向けられた。「あ、ああ、すまない、…アリスターが早速迷惑をかけたようで、申し訳なかった」
「ええ、本当に迷惑だわ。理解してるようならどうにかすべきね。そうでしょう?」
料理を仕込んでいる最中散々悩まされた小蝿を追い払うような不機嫌極まりないというふうにしかめられた細い眉毛や尖った口調は、彼女の言うとおりにフリニアが行動しなければ今度は彼女の怒りの矛先が確実にこちらに向くことを示している。動かすと少し身体は痛むものの、歩行や魔法の使役には影響はなさそうだ、そうでなくとも何時までも暢気にベッドに横になっているわけにもいかない。
振り上げられた丸太を凌駕するほどの太さの腕と拳、腹を内側から破られるかと思うほどの咆哮。必死に魔力を集めなんとか放って、アリスターが何かを叫んで突撃していて、あとは轟音と崩壊の記憶しかない。その前、その後のことなどはまるで記憶から丸々抜けている。ケイラン王の軍勢は、そういえば。ウォーデンは。ダークスポーン、それから、「ダンカン…」
「さ、私は料理の続きをやらなきゃならない、あまりほうっておくとシチューが焦げちゃうわ」
フリニアの内心など知ったことかと言わんばかりの声は、逆に有難くも感じた。そうだ、兎も角事実を確認しなければ。それがどれほどに自分にとって嬉しくないものだとしても、だ。なんとなくではあるが、フリニアは今自分が置かれている状況は決して幸福な結末の末のものではないと思えてならなかった。少なくともあの戦いの結末は喜ばしいものではないだろう――でなければ、自分が荒野の魔女の娘の元に、いるわけがない。
フリニアは背を伸ばし、深呼吸をした。荒野の沼地にありあわせで立てられた小屋の中、辛うじてひとが生活しているにおいが鼻腔から入り込んで肺を満たす。サークル・タワーにいた頃のものと妙に似た、どこか懐かしい匂いだ。懐かしさを締め出すように息を吐き出して、フリニアは足裏を床につけ、ボロボロになった見習い時代のブーツを履く。
それが、グレイ・ウォーデンとしての自分の始まりの一歩であったなどと、苦悩と絶望と、それから少しの希望への一歩だったのだということは、フリニアにも、そして荒野の魔女の娘モリガンにも、誰にもわからない。誰にもわからぬ一歩を、今、フリニアは踏み出した。最初の悲しみと絶望に打ちのめされるために。
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洋RPG「DragonAge:Origins][DragonAge2]シリーズの二次創作者さん対象のお題です。 主人公はDragonAge:Originsのメジャイ主♀フリニア・アメル お題ページはこちら wp.me/p2f5OB-3O |
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