仮面ライダーエンズ 番外編 AtoZの舞台裏 |
皇魔とレスティーは、海馬に呼び出されていた。
「今度は何だ?」
「今回は貴様の力を借りたい。正確にはレスティーの力だが」
「何?」
「こっちだ。」
海馬は二人を、ある部屋に案内する。
「何これ?」
と首を傾げるレスティー。たどり着いた部屋には、何だかよくわからないとても大きな機械が置いてあった。皇魔は経験から、これが何であるかを見抜く。
「転移装置か。」
「さすがだな。これは次元転移装置だ」
海馬曰く、これは近距離から遠距離、別世界から平行世界まで様々な世界に行くことができる、パーフェクトディメンジョンという次元転移装置らしい。
「だがまだ未完成でな…これを完成させるために、レスティーの力が必要だ。レスティーの、強力な超能力がな。」
転移自体は完璧なのだが、まだ座標の固定が不十分だった。
元々転移という行為をするには、転移先の空間を詳しく把握しておく必要がある。考えてもみて欲しい。もしむやみやたらと転移を行って、転移先が壁の中や地面の中だったりしたらどうなるだろうか?ましてや別世界への転移である。危険度がはね上がることは間違いない。
しかし、テレポートという転移能力を持つレスティーならば、転移はほぼ日常的なもの。そして、彼女の力を解析すれば、別世界への完璧な転移も夢ではない。
「一応私には、他のデザイアを別の世界に転送する役目もあったし、そんなに難しいことじゃないわ。」
これは朗報である。これなら、思ったより早く完成できそうだ。そう思った海馬は、
「では早速頼む。」
レスティーに依頼した。
数分後、レスティーはスタッフ達から指示を受け、実験を始めた。
「ここに立てばいいの?」
「はい。まずは…」
少しずつこなしていくレスティー。皇魔は海馬に訊く。
「それで、余が呼ばれた理由は何だ?」
「お前には、パーフェクトディメンジョンによる転移実験。その第一号になってもらいたい」
「…」
「そう嫌そうな顔をするな。」
「貴様…余に死ねと言っておるのか?」
もし帰って来れなかったら。皇魔はそのことを考えていた。当然である。今の彼は力の回復も十分ではなく、あまり大きな行動は避けたい。
「装置が完成すれば、帰還も完璧なものとなる。それに、俺はお前なら確実に帰って来れると信じているからな。」
「…何なのだその根拠は…」
海馬の言葉にぼやく皇魔。
一通り実験が終わり、とうとう最後の実験、皇魔を使ったパーフェクトディメンジョンのテストを行うことになった。
「何かあった時のために、ベルトとメダルを何枚か渡しておくわ。帰る時は心で私に呼び掛けて」
今回はレスティーによる座標特定のデータを取得するため、レスティーは一緒に行けない(データを取得して装置が完成すれば、レスティーの力を借りずとも起動できる)。だから、ベルトとメダルだけを渡しておく。
「よし。では始めろ」
皇魔は命じた。
装置の電源を入れ、まずレスティーが転移する世界を認識し、座標を特定。
「座標特定完了!」
「出力安定!いけます!」
スタッフ達が装置のメーターを見ながら、それぞれ装置の状態を告げる。
「パーフェクトディメンジョン、起動!」
最後に海馬が言い放つと同時に、スタッフの一人が装置を起動。すると、装置からレーザーが照射され、照射された地点に光の渦ができた。これが、別世界へのゲートである。海馬は皇魔に言った。
「今回はテストのために、行き先をランダムで決めた。どんな世界でも驚くな」
「…ふん。」
皇魔は鼻を鳴らしてゲートに飛び込み、同時にゲートは消える。
皇魔がたどり着いたのは、どこかの街の真ん中。
(ここはどのような世界なのだ?)
辺りを見回して探りを入れる皇魔。
と、
「!!」
皇魔は察知した。
「感じる…感じるぞ!これはクロスの気配だ!!」
同時に理解する。ここはクロスの世界なのだと。
「あそこか…!!」
皇魔はクロスの気配を頼りに、決戦の地、風都タワーへ向かう。
クロスに加勢し、エターナル打倒のきっかけを作ってから風都タワーをあとにした皇魔は、心でレスティーに呼び掛ける。
(レスティー。終わったぞ)
(オッケー)
レスティーから返答が返ってきてまもなく、再びゲートが出現。皇魔はゲートをくぐって、エンズの世界へ帰還した。
「二人とも、よくやってくれた。このデータを元にして、必ずパーフェクトディメンジョンを完成させる。」
海馬は礼を言って、二人を帰す。
帰り道。レスティーは皇魔に尋ねた。
「皇魔、何かあったの?」
レスティーはすぐ帰還の呼び掛けを受けると思っていたので、その呼び掛けを受けるまでかなり時間がかかったことを疑問に思っていたのだ。
「…何でもない。」
皇魔は、自分がクロスを助けるために戦っていたことを教えない。彼としては、自分を倒して転生までさせたクロスが他の相手に倒されるのを許せなかっただけなのだが、レスティーにそれを言うと、何か茶々を入れられるかもしれないと思ったのだ。
「…ふーん…」
レスティーも、超能力で皇魔の心を読むことができたのだが、なぜかやってはいけないと思い、やらなかった。
パーフェクトディメンジョンが完成するのはもうしばらく先の話だが、完成を待たずして再び使うことになるのを、彼らはまだ知らない。
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こうやって、皇魔はクロスの世界へ行ったのです。次回は本編ですので、もうしばらくお待ちください。
説明 | ||
今回は、皇魔がどうやってクロスの世界へ行ったのかを語ります。ベリアル編への伏線の意味も込めた番外編ですので、ぜひ読んでください。 時期的には、修学旅行編終了後です。 |
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