仮面ライダーエンズ 第二十話 そんな装備と桜吹雪と銃火器コンボ
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ロストグラウンド学園に転入することになった克己。今彼は教室の前で、セフィロスからの呼び出しを待っている。

(学校生活か…久し振りだな…)

克己は思った。よく考えたら、クロスの世界では幼くして死亡し、それから死者蘇生戦士NEVERとして戦い、そんなこんなで学校生活は小学時代しか送ったことがなかった。一応ポーカーの世界では、それなりに学校生活を謳歌していたが、やはりポーカーとして戦う毎日。あまり楽しめていない。恐らくこの世界でも、それは変わらないだろう。

(まぁ、好きにやるさ)

だが克己は、気楽に考えることにした。どうせポーカーの世界はもうないし、このエンズの世界で第二の人生ならぬ、第三の人生を楽しもうと思ったのだ。

 

と、克己の脳裏をある考えがよぎる。

(エンズ?どこかで聞いた覚えがあるような…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3年A組教室。

4月になり、三年生となった2年A組のメンバーは、今日来るという転入生を待っていた。

「では、転入生を紹介する。入れ」

セフィロスが呼ぶ。

(一体どのような転入生が来るのか…)

以前は見向きもしなかったような出来事にも興味を持ち始めていた皇魔。創世の使徒との戦いは、様々な意味で彼を変えたと言えるだろう。

 

 

 

 

そしてその転入生、克己は教室に入った。

 

 

 

 

 

「今日からこの学園に転入する、大道克己だ。」

セフィロスは克己を紹介する。

 

 

だがそれだけだ。普通転入生というものは教師から紹介された後、自己紹介を行う。しかし、克己はそれをせず、ただ黙っていた。

 

 

「どうした大道?お前の番だ。」

自己紹介するよう促すセフィロスだが、克己は無視している。無視してある人物を見ている。

 

 

克己が見ていたのは、皇魔。

 

 

(あいつ…どこかで見た覚えが…)

克己は、皇魔を見た覚えがあった。一体どこで見たのか、彼は今、それを思い出そうとしている。皇魔を一目見た時から感じていた、言い知れぬ腹立たしさ。これはどういうことなのかと考えていた時、

 

 

 

 

 

 

思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

かつてクロスの世界で、クロスやWと同じく自分の計画を邪魔したライダー、エンズ。

 

 

 

その変身者が、今自分が見ている男。

 

 

 

 

 

転生した後も、ずっと殴りたいと思っていた男。

 

 

 

 

 

その名は、

 

 

 

 

 

「天砕皇魔…!!」

「?」

突然名前を呼ばれた皇魔。レスティーはテレパシーで尋ねる。

(知り合い?)

(いや、知らん)

(訊いてみたら?何で皇魔のことを知ってるのか)

(そうしよう)

テレパシー会議で答えを出した皇魔は、克己に訊いた。

「なぜ余を知っている?余は貴様とは初対面のはずだが…」

「知らないだろうなぁ。俺はあの時、お前に素顔を見せてはいなかった。」

「?」

ますますわけがわからない皇魔。というわけで、克己は怒りを抑えつつ名乗る。

 

「俺はお前にやられた、仮面ライダーエターナルだ!!」

 

「…っ!!」

皇魔は思い出した。再び、今度はテレパシーではなく口で尋ねるレスティー。

「知ってるの?」

「前に一度次元転移をしたことがあるだろう?その時飛んだ世界がクロスの世界で、余はエターナルというライダーと戦ったのだ。」

「…クロスの世界だったんだ…」

レスティーは真相を明かされ、あの時皇魔がランダムで跳躍した世界がクロスの世界であることを知る。

「そうか、貴様がエターナルの変身者か…」

「あの戦いが原因でクロスとWに負けた俺は、別の世界に転生させられた。転生した後も、お前を忘れたことはなかったぞ!!」

「!!」

克己の発言を聞いて、皇魔は思った。今の自分と克己の関係は、かつての自分と光輝と同じだと。

 

光輝は皇魔を転生させ、皇魔はそのことで光輝を恨んでいた。同じように、克己は皇魔のせいで負け、負けた要因である皇魔を恨んでいる。

「お前だけは…一度ぶん殴ってやりたいと思っていたんだ!!」

克己はポーカーバックルを装着し、邪神フォーティーンを封印したカード。チェンジフォーティーンのカードを装填し、

「変身!」

 

〈OPEN UP〉

 

仮面ライダーポーカーに変身。皇魔に言い放つ。

「エンズに変身しろ!俺が転生先で得た、この仮面ライダーポーカーの力で、お前に勝つ!!」

「…その怒りは甘んじて受けよう。」

「何!?」

驚くポーカー。皇魔は光輝がそうしたように、ポーカーの怒りを受け止めようと思ったのだ。

しかし、

「だが、余もまだ負けるわけにはいかんのでな…レスティー!」

彼のプライドが、このまま負けることをよしとしていなかった。

「はいはい。」

皇魔はレスティーからメダルとベルトを受け取り、

「変身!」

 

〈クレアボヤンス!ヤリ!ホノオ!ク・ヤ・ホ♪クヤホク・ヤ・ホ♪〉

 

エンズに変身する。

「来い!!」

エンズは窓を開けて校庭に飛び出し、ポーカーはそれを追う。

 

 

「行っちまったよ…」

「何なんだあいつら?」

「知り合いだったのねぇ。」

日向、音無、ゆりは、メダジャベリンとポーカーラウザー ソードモードをぶつけ合う二人のライダーを見る。

 

と、

「…?」

日向は寒気を感じ、反射的に見た。

 

 

 

 

 

セフィロスが憤怒のオーラを纏っているのを。

 

 

 

 

 

「せ、セフィロス先生!?」

震えあがり、思わずのけぞる日向。音無、ゆりの二人もそれに気付き、息を飲む。

「…」

セフィロスは何も言わずに窓から飛び出すと、空中に手をかざす。すると正宗が出現し、セフィロスは落下しつつ正宗を振り下ろした。

「「!!」」

つばぜり合いを繰り広げていたエンズとポーカーは、その溢れんばかりの殺気を察知して、セフィロスの一撃を回避する。

「貴様ら…俺を無視して勝手に話を進めるとは…いい度胸だな…!!」

「セフィロスか…貴様もいずれ越えるべき相手。ここでそれを成し遂げるのも良かろう」

「邪魔をするな!!」

こうしてエンズvsポーカーの対決は、セフィロスを交えた三つ巴の戦いに発展。それだけならまだよか…いや、よくはないのだが、まぁよしとしよう。この激戦を見て、あの男が黙っているわけがなかった。

「劉鳳!」

「うわっ!」

カズマだ。カズマは劉鳳の手を引いて窓から飛び降り、降りる途中でシェルブリット第二形態を発現。右腕で落下の速度を軽減しながら、着地した。劉鳳も絶影第二形態を発現させ、その上に乗ってから地に立つ。

「どういうつもりだ!?」

「決まってんだろ?ケンカだよケンカ!」

エンズ達の戦いを見て、カズマの闘志に火が着いたのだ。

「先生もやってんだし、別にいいだろ?」

「そんなわけがないだろう。と言いたいところだが、お前がやめろと言われてやめる男ではないことは、俺が一番よく知っている。気が済むまでやってやろう!」

半ば諦める気持ちで、絶影最終形態を発現させる劉鳳。

「そうこなくちゃな!!」

一方カズマは、ノリノリでシェルブリット最終形態を発現する。

 

 

たちまち始まる乱闘。

 

 

「正気かよあいつら…」再び頭を悩ませる日向。と、かなでが立ち上がり、窓の方へと歩いていく。

「かなで?」

「かなでちゃん?」

音無とゆりは、何をするつもりかとかなでに尋ねる。

「お父さんを止めなくちゃ。」

かなでの目的は、怒りで我を忘れている父を止めること。

「私も行く。知らなかったとはいえ、こうなったのは私の責任だ。」

そんなかなでの姿を見て、しおんも立ち上がった。

「何でしおんさんのせいなの?」

ゆりが尋ねるが、

「話せば長くなる。だからあいつらを止めてからでもいいだろう?」

しおんは時間がないので話せない。このまま放っておいたら、間違いなく学園が壊滅する。一応あの五人に並ぶ実力者達はまだいるが、このままではその実力者達も巻き込んで、騒動が雪だるま式に大きくなりかねない。その前に止める必要がある。

「そうは言っても、話し合いが通じる状態じゃないだろう。」

「ちょっとっていうかかなり面倒だけど、ぶっ叩いてクールダウンさせるしかないな。」

そこへ、クラウドとザックスも参加する。

「お前達だけでは心配だ。俺も行く」

なんと、ブラックまでが協力を申し出てきた。このクラスでも間違いなくトップに入るブラックが手を貸してくれるなら、心強い。

「俺も行くよ。」

今度は音無が言った。

「今の俺の力がどこまで皇魔に通用するか、試してみたいんだ。」

「なら、あたしも行くわ。」

ゆりも言う。

「あたしのサイレントアサシンも、そろそろ強化が必要かなって思うの。」

以前にも説明したように、アルター能力は進化する。その要因が何なのかは人によって違うが、どうもアルター能力者同士が戦うと、進化しやすいらしい。ゆりとしても、自分の能力で出せるのがコンバットナイフだけというのは、あまりに心細い。

「わかったわ。じゃあ、行きましょう」

一同はこの乱闘を止めるべく、戦いの真っ只中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

「…」

状況を見守るルルーシュ。

「行くぞ皇魔!」

「来い音無!」

メダジャベリンとビーツソードで斬り合うエンズとビーツ。

「邪魔をするなと言っている!!」

「やめろ克己!!」

ポーカーの攻撃をいなすダークプリキュア。

「貴様ら…」

「お父さん…」

「いい加減止まれ。」

「落ち着けよ!!」

三人がかりでセフィロスの相手をするかなで、クラウド、ザックス。

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

「でやあああああああああああ!!!」

「おおおおおおおおおおおおおお!!!」

「はあああああああああああああ!!!」

カズマ、劉鳳の戦いに割り込むブラックとゆり。

 

 

 

それはもう、すごい眺めだった。

「よくやるよ。全く」

呟く日向。スザクは訊く。

「君は行かないの?」

「冗談言うなよ!俺は何の力もない一般人だぜ!?」

「あ、そうか。」

今さら納得するスザク。

「俺のギアスも、こういう戦いには向かない。というより、もっと重要な局面で使いたい。ここはあいつらに任せるべきだろう」

ルルーシュはかなで達に丸投げだ。と、スザクは思い付いたように、アーカードに訊いた。

「アーカード。君は行かないの?」

「興味がない。」

「そ、そう…」

一言で切り捨てられた。

「…さて、そろそろ止めるか。頼むぞスザク」

「わかった。」

おもむろにどこかへ行くスザク。

 

 

 

 

数分後、スザクはボルガを連れて戻ってきた。そのままボルガを持ち上げるスザク。

「は、離せ!何をする!?」

抵抗するボルガだったが、スザクとルルーシュ二人で、お決まりの台詞を言う。

「「ボルガ先生!お許しください!」」

「ウォ〜!!」

そしてそのまま投擲。ボルガは大爆発を起こし、戦いを鎮圧した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、克己は皇魔に一泡吹かせるというのが目的だったため、この戦いを経て満足、和解し、騒動にはこれでケリを着けることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒動終了後、しおんとともに帰宅しようとする克己。しかし、克己はなぜか海馬に呼び出され、海馬コーポレーションに来ていた。しおんも付き添いで来ている。

「お前、海馬とか言ったな?俺に何の用だ?」

「単刀直入に訊く。お前がライダーに変身した時、左腕に付けていた籠手。壊れているな?」

「!」

海馬は克己がポーカーに変身した時、ポーカーの左腕に装備されていたラウズアブゾーバーが故障していたのを見ていたのだ。

「そういえば…」

しおんも思い出す。

「あれは、お前の戦闘にとって非常に大切なもの。違うか?」

「…」

克己は海馬の観察眼に驚き、黙る。

 

すると、海馬から思わぬ言葉がかかった。

 

「修理してやろう。」

 

海馬は、ラウズアブゾーバーを修理してくれるというのだ。

「!直せるのか!?」

「俺が見た限りでは、そう難しくなさそうだ。」

「よし、じゃあ頼む。」

克己は喜んでラウズアブゾーバーを差し出した。

この世界の怪人、グリードやヤミー。デザイアやシードについては、既にしおんから聞いている。克己自身、戦ってみてかなり強力な相手であるということもわかった。ならば、彼を強化するアイテム。ラウズアブゾーバーの早急な修理は、絶対に必要である。

「安心しろ。クラスのよしみで、無償にしてやる。」

海馬はラウズアブゾーバーを受け取ると、二人を帰した。

 

海馬が無償で引き受けたのには、わけがある。ポーカーが使う未知のシステムを解析することで、デザイアとの戦いを有利にできるかと思ったからだ。十分すぎる利益である。また、現在開発中の新装備完成への糸口になるかとも考えている。

(メダルベットシステム…必ず完成させてみせる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ…」

常に黒い甲冑を身に付けている大男。ゴルベーザは資料を片手に考えていた。そこへ、

「兄さん。どうしたの?」

ゴルベーザの弟、セシルがやってくる。

「セシルか。これを見てくれ」

ゴルベーザはセシルに資料を見せた。セシルは読む。

「『春の行楽計画』?これは一体?」

春の行楽計画とは、ロストグラウンド学園の教師達の、宴会のようなものである。まぁ、要約すれば花見なのだが。

「理事長から花見の場所取りを頼まれてな…」

「…大変だね兄さん。」

ちなみにゴルベーザは天文学の担当教師で、セシルは生徒だ。

「…この街で一番桜が綺麗な場所って、やっぱり花山峠だよね。」

花山峠とは、この街で最も見事な桜が咲く有名な観光地だ。全ての桜が満開になった時、峠はまさしく花の山のようになる。そのため、この名がつけられた。

 

 

だがこの場所。花見として使うには少し、いやかなり問題がある。

 

 

「一応教頭とイーノック先生も協力してくれることになっているが……正直かなり心配だ。」

「そうだろうね。何せあの場所は…」

と、言いかけてセシルは思い付く。

「そうだ!皇魔達にも話して、手伝ってもらおうよ!」

「何?」

セシルが思い付いたのは、花見の場所取りを皇魔達にも協力してもらうこと。

「皇魔達なら、きっと力になってくれる!」

面識はあるし、精神的に変わり始めた今の皇魔なら協力してくれるだろう。

「私もそれは名案だと思うが…しかし危険だぞ?あの峠は…」

「大丈夫!皇魔達は強いし、僕だっている。絶対うまくいくよ!」

言うが早いか、ゴルベーザが止める間もなく駆け出すセシル。

「ふむ…」

ゴルベーザは考える。

「…どうにかなるかもしれんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会当日。

皇魔、レスティー、音無、ゆり、かなで、日向、直井、克己、しおんの九人は、場所取りをするべく、セシルとゴルベーザと一緒に朝早くから、花山峠に来ていた。

「わぁー!綺麗!」

美しく咲き誇る桜を見て感激するレスティー。かなではレスティーに尋ねた。

「レスティーさんって、桜を見るのは初めて?」

「桜は何回も見てるけど、こんなにたくさん、しかもこんなに綺麗に咲いてる桜を見るのは初めてなの。」

「じゃあよかったわね。」

「ええ!」

無邪気な会話。美しい桜を見た者なら、誰でもするようなおしゃべり。

「皇魔もそう思わない?」

その話題を皇魔にも振るレスティー。

 

だが、皇魔は別のものに目が行っていた。

 

「あれでどうやって楽しめというのだ?」

 

皇魔は、全く桜を楽しんでいない。というより、憂鬱な気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、

 

 

 

 

桜の周りで争いを続けている者達を見れば、皇魔でなくともそんな気分にはなるだろうが。

 

 

 

 

 

この花山峠は、街で一番美しい桜が見られる場所。それゆえ、多くの者がここで花見をしようとする。だが当然のことながら、花見ができる場所は限られている。よって、場所取りのために争いが起こるのだ。ある者は武器を取り、ある者は技を使い、またある者はアルター能力を使う。もはやただのいざこざではなく、本格的な殺し合いだった。このことから、花山峠は別名『修羅峠』と呼ばれている。ゴルベーザが不安がっていた理由が、まさにこれなのだ。

「なんというか…」

「どんだけ花見したいんだよって感じだよな。」

音無と日向は、鬼気迫る形相でバトルを繰り広げる花見客を、遠い目で見ていた。ゆりはかなでに、ある質問をする。

「かなでちゃん。何で桜が綺麗に咲くか知ってる?」

「えっ?」

かなでは少し驚く。桜が鮮やかに咲くのに理由があるなど、初耳だったからだ。なので、

「理由があるの?知らなかったわ。何で?」

と聞き返す。答えは、

「桜の根元に死体が埋まってるからよ。栄養たっぷりの人間の死体から養分を吸って、そのおかげであれだけ綺麗に…」

よく聞く都市伝説のような内容だった。

「そんな根も葉もない噂を吹き込むな!それから生徒会長!ウソですから!」

「チッ!バレたか」

「あら?ウソなの?」

直井からウソを見抜かれ、舌打ちするゆり。顔を青くして震えていたかなでは、元に戻った。

「まぁ死体とはいかなくても、返り血は吸ってそうだけどな。」

「笑えないぞ。」

最もらしい冗談を言いながら、されどツッコミを入れるしおん。セシルはゴルベーザに訊いた。

「そういえば、イーノック先生とルシフェル先生は?」

「二人なら、天界から直接来ると言っていた。」

ルシフェルは大天使の一人で、イーノックは人間でありながらも天界の書記官として選ばれた男。実際、イーノックはロストグラウンド学園の図書室の室長もやっている。二人はその境遇から、地上界の真上に存在する神聖な世界、天界に住んでいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、天界ではイーノックが支度を整えていた。

 

今回は間違いなく戦闘になるため、激しい戦いを想定して戦闘用の装備を用意している。今のイーノックはギリシャ神話に登場するような、古風な西洋式の鎧を身に付けていた。

 

と、

 

「そんな装備で大丈夫か?」

 

既に準備を整え終えていたルシフェルが、イーノックに尋ねる。

「大丈夫だ。問題ない」

自信満々にそう答えたイーノックは、目を閉じて気合いを入れつつ、鎧の対となる西洋式の兜をかぶった。

 

覚悟を決めて目を開けるイーノック。彼は助走をつけて、天界から飛び降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても遅いよなー」

いつまで経っても二人が現れないので、ぼやく日向。

 

 

その時、空からイーノックが降ってきて、勢いよく着地。素早く顔をあげる。

 

 

まるで待っていたかのようにイーノックを迎え打つ花見客達。イーノックは手にしていた剣と盾を使って応戦するが、花見客達の予想以上の戦闘力に追い詰められていく。

 

そして、剣が折られた時、

 

 

 

「神は言っている。ここで死ぬ運命(さだめ)ではないと…」

 

 

一瞬時間が止まって声が響き、時間が巻き戻りだした。

 

 

 

巻き戻して、イーノックが天界から出撃するところまで戻る。

 

「イーノック。そんな装備で大丈夫か?」

 

ルシフェルは再び問いかけた。

 

「一番いいのを頼む。」

 

今度はそう答えるイーノック。すると、先ほどの鎧とは打って変わって、白を基調とした動きやすそうな軽装の鎧がイーノックに装備される。

 

また出撃するイーノック。着地した彼は再び出迎えてきた花見客達を相手に、さっきの苦戦が嘘のような立ち回りを繰り広げる。挑発できる余裕まであるほどだ。

 

 

「…今の…」

「何か意味あんのか?」

疑問を浮かべたのはゆりと日向。

「いやぁすまない。相手を侮らず、最初から一番いい装備で行くよう言っておいたんだが、あいつは話を聞かないからなぁ。」

そこへ、ルシフェルが謝罪の言葉を述べながら現れた。今時間を巻き戻したのは、彼だ。彼には時間を操る力があり、時間を巻き戻すことも、進めることも、止めることも、様々な時代に行くことまでが自由自在なのである。

「貴様ほどの力の持ち主なら、この世界を支配することも容易いだろうに。」

「ああ、私は支配とかそういうものには興味がないんだ。」

皇魔に返すルシフェル。と、彼は本題に入る。

「さて、いくらイーノックでも一人ではまずい。そろそろ始めようか」

今日ここへ来たのは、花見の特等席を獲得するため。いろいろありすぎて本来の目的を忘れていた一同は、ルシフェルの言葉によって思い出す。

「うむ。理事長達が来るまでに確保しておかなければ」

「頑張ろう兄さん!」

戦闘態勢に入るゴルベーザとセシル。

「ゆり。アルターはまだ進化してないみたいだけど大丈夫?」

「これだけの面子がいるし、なんとかなるでしょ。いざとなったら音無くんが守ってくれるし」

「えっ!?」

「音無は俺が守る!」

「いや!音無さんを守るのは僕だ!」

漫才のようなやり取りをするかなで、ゆり、音無、日向、直井。

「プリキュアの力…見せてもらうぞ。」

「ポーカーの力…試させてもらう。」

まるで探りを入れるかのように目配せする克己としおん。

「結局こうなるのか…」

「いいじゃない。あんまり普通なのも、かえって不気味でしょ?」

最後に苦悩する皇魔をレスティーがたしなめ、そして、花見の場所取りが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な能力者や格闘家が、花見の特等席を巡ってぶつかり合い、春は常に死闘が絶えない花山峠。ついには修羅峠とまで呼ばれるようになったこの峠の激闘を、遠くから見つめる老人がいた。

 

彼の名は霧島雄三。外見はどこにでもいそうな普通の老人だが、内面がいかんせん普通ではなかった。

 

この老人、珍しいことに美しいものが大嫌いなのだ。美しいものを見ると破壊衝動に駆られ、壊したくなってしまうという困った性癖の持ち主で、本当ならこの花山峠の桜も、一本残らず切り倒してしまいたいと思っている。だが霧島の力は常人程度しかないため、周囲の異能者達が邪魔で桜に近付けない。ならば桜の咲いていない別の季節に切り倒せばいいのだが、さらに困ったことに、美しいものを見ない限りは一切の破壊衝動が生まれないのだ。

「わしにもう少し力があれば、あんな桜はすぐにでも切り倒してやるのに…」

自分の性癖と目の前の桜。そしてこの花山峠の存在自体を忌々しく思う霧島は、出血するほど強く拳を握りしめた。

 

 

「力が欲しいのですか?」

 

 

霧島に声がかかったのは、その直後だった。驚いて見てみると、そこには殺し屋の風貌をした男性が。

「誰だあんたは?」

霧島は尋ねるが、男はそれに答えない。そして、男はすぐにメイカー怪人体へと姿を変える。

「うわっ!ば、化け物!!」

「そう怯えないでください。」

「は!?」

直後、霧島の額にメダル投入口が出現。

「その欲望。私が叶えましょう」

メイカーはそこへセルメダルを投入し、シードを誕生させる。

「う…うわ…」

さらに怯える霧島。シードは間髪入れずに、霧島を取り込む。

「確か、あの桜を全て壊したいんでしたよね?なら、あなた自身の手でやった方が気も晴れるでしょう。」

言う間に、シードは全身にパラボラのようなものを装備した怪人、オンパシードへと成長した。

「これはサービスです。」

続いて屑シードを二十体生み出すメイカー。

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

オンパシードは即席の軍団を率いて進撃していく。

「コアメダルの奪還もエンズの打倒も大切ですが、そろそろ私もデザイアとして本来の活動をする必要があります。」

それは、世界の破滅。

「始めましょうか。」

メイカーは両腕に小型のガトリングを装着し、乱射しながら軍団を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンズ達は花見客達を次々と気絶させていく。だが、この峠で花見をしたいという者はいくらでもいるため、倒しても倒しても、後から後から次々やってくる。

「キリがねぇ!」

「だからどんだけ花見したいんだよ!」

ぼやくビーツと日向。

 

その時、花見客の一部が、一斉に逃げ始めた。

「何だ!?」

ダークプリキュアが状況を確認する。

「あれは…シード!?」

「シードだと!?」

ポーカーが振り向いてみると、花見客達を蹴散らしながら桜へ向かうシードの軍団が、はっきりと見えた。ただ、そのシードの軍団相手にも立ち向かう花見客の姿には、脱帽するしかない。

「マジでどんだけ花見したいんだよ…」

やっぱりぼやく日向。

「シードは余が倒す!」

臆することなくシードに挑んでいくエンズ。容赦のない攻撃で、一体、また一体と屑シードを倒す。セシルはシードを見たことがないので、直井に訊いた。

「何だかよくわからないけど、あのシードっていう連中は倒してもよさそうだね?」

「倒すべき相手だ。容赦をするな!」

「よし!」

許可を得たセシルは、シード軍団に向かっていく。

 

セシルはその身に光と闇、本来交わることのない二つの力を宿している。この力を使い分けて戦うのだ。また、光の力を使う時は白い鎧にマントを羽織った戦士、パラディンに。闇の力を使う時は黒い鎧と兜を着こんだ戦士、暗黒騎士に姿を変える。今のセシルの姿は、パラディン。パラディンは素早い動きができ、飛行能力があるため空中戦が得意だ。パラディンのスピードを生かして素早く敵陣に飛び込んだセシルは、しかしパラディンの姿を暗黒騎士に変えてしまう。暗黒騎士はパワーに優れ、地上戦を得意としている。セシルは暗黒騎士のパワーを利用し、手にした槍屑シードを薙ぎ倒していく。途中で襲いかかってくる花見客も倒すが、そちらはちゃんと加減してあるので問題ない。

 

 

「ふむ…屑シードは量産が容易ですが、いかんせん弱くていけませんねぇ…」

ため息を吐くメイカー。それでもグリードやヤミーと比べれば、かなり強さが違うのだが。

「…少し足しましょうか。」

メイカーは自分の片手にセルメダルの山を出現させると、それを空中に放り投げ、ガトリングで粉々に砕いた。しかし、セルメダルの細かい破片は全て屑シードになり、数十体近い軍団が出来上がる。

「さ、行きなさい。」

メイカーの命を受けた屑シード達は、軍団に加勢した。

 

「…」

それを見逃さなかったルシフェル。

「イーノック!」

彼は自分の手に歪曲した剣、アーチを出現させると、それをイーノックに投げ渡した。

「あいつを倒せ!奴を倒さない限りシードは増え続ける!」

「ああ!」

イーノックはルシフェルに言われた通り、メイカーを倒すべく駆け出す。

「む?」

それに気付いたメイカーはガトリングの砲身をイーノックに向け、乱射した。

「くっ!」

イーノックは攻撃を喰らわないよう、走り回ってかわす。あまりに激しい攻撃に、近寄ることができない。

「選択を間違えたか…まぁいい。イーノック!」

ルシフェルは丸い物体を投げ、イーノックはそれを受け取って盾にし、メイカーの攻撃を防ぐ。この物体はベイルという武器で、本来は分解して両腕に装備し相手を殴る武器なのだが、このように盾として使用することもできる。イーノックはベイルを使い、メイカーに隙ができるまで待つことにした。

 

 

 

シード軍団の先頭を突き進むオンパシード。

「行かせない。」

その前に立ちはだかったのは、かなでだった。と、オンパシードは歩みを止め、呟く。

「美しい…」

「えっ…」

突然褒め言葉をかけられ、たじろぐかなで。

 

しかし、オンパシードにとってそれは、褒め言葉などではなかった。

「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

腕に付いているパラボラから超音波を放つオンパシード。かなではハンドソニックでガードするが、ハンドソニックは砕け散ってしまい、やむなく回避する。オンパシードはパラボラから発する超音波によって、ありとあらゆるものを割ることができるのだ。

「美しいものなど壊れろ!!割れろ!!消えてしまえ!!」

なおも執拗にかなでを攻撃するオンパシード。彼の中には、美しいものが大嫌いな霧島がいる。オンパシードにもその性癖が反映されているため、美しいものを優先して狙ってくるのだ。

かなでは再びハンドソニックを生成し、格闘戦を挑む。しかし、オンパシードは力も強く、また防御力も非常に高い。うまくダメージを与えられないうちに、また超音波を喰らってしまう。

「ガードスキル・ディストーション。ガードスキル・メトロノームver5」

今度はディストーションを発動させ、メトロノームで最大まで強化して受け止めるかなで。

 

しかし、

 

ピキキキ…パリーン!!

 

なんと、ディストーションの防御壁までが割られてしまった。この防御壁は、あらゆる攻撃を歪曲させるエネルギーフィールド。電磁波や超音波のような攻撃は波そのものを歪曲させられて消滅してしまうのだが、どうやらオンパシードが放つ超音波のパワーは普通ではないらしい。すぐさま回避するかなでだったが、

「見切ったわ!」

「あっ!」

オンパシードはかなでが回避する方向へ先回りし、かなでの頭を殴った。宙を舞うかなで。

「うっ…くっ…」

頭が脳震盪を起こし、視界もぼやけて何も見えない。

「ふんっ!」

「ああっ!!」

這いつくばるかなでを、オンパシードは容赦なく蹴り飛ばす。視力はいまだに戻らず、頭がくらくらして立つことすらできないかなで。

「そろそろお見舞いしてやろうかい。」

オンパシードは、自分の頭部にあるパラボラから超音波を撃つべく、チャージを始める。

「んっ…うぅぅっ…!」

懸命に立とうとするかなでだが、やはりまだ立てない。

「フヒヒヒ…」

オンパシードの下卑た笑い声が聞こえる…。

 

 

 

 

 

 

「お?何だ、まだ席取れてないのかよ。」

騒動から少し離れた場所へ、クーガーが現れた。一緒にいるのは、理事長のカーネル、校長のヨーダ、道徳担当の老婆の教師エゼキエル、現代社会担当の老人の教師アザゼル、そしてセフィロスだ。他にも教師はいるのだが、皆用事があるらしく、到着が遅れている。

「っ!あれは!」

追い詰められているかなでを発見するセフィロス。

「なぜ生徒達が…それより少しまずそうですな…」

生徒達が場所取りに協力していることを疑問に思いながらも、かなでの身を案じるアザゼル。

「…むっ!?」

と、ヨーダはカーネルから、怒りのフォースを感じ取った。

 

 

次の瞬間、

 

 

「ぶるぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カーネルは二枚の翼と四本の腕、長い尾を持つ異形の怪物となり、戦いの真っ只中に飛び込んで、オンパシードを蹴り飛ばした。

「ぬおぅっ!?」

吹っ飛ぶオンパシード。

「カーネル…先生…!?」

ようやく視力を取り戻したかなで。しかし、

「カーネル?カーネルゥゥゥ!?否!!いぃぃぃなぁぁぁッッ!!」

カーネルは自分の呼び名を凄まじい剣幕で否定し、今の自分の名を名乗る。

「我が名はカオス!!混沌を司る神なり!!!」

そう、この異形の怪物こそカーネルの真の姿。混沌を司る神、カオスなのだ。カーネルがこの姿になることは滅多にないが、何か自分にとって腹立たしいことがあると、ぶちきれてこの姿になる。

「パクることは許されん!!!」

叫びながらオンパシードへと襲いかかったカオスは、その圧倒的な力でオンパシードを痛めつける。

「かなで!」

そこへセフィロスが駆けつけ、かなでを支えた。

「大丈夫か!?全く、何をしているんだお前は!」

「ごめんなさい。あたしも…お父さんの役に立ちたかったから…」

「かなで…」

セフィロスは娘の気持ちに胸を打たれ、とりあえずかなでを安全な場所まで運ぶことにした。

 

 

 

 

 

「…」

メイカーはイーノックに攻撃しつつ、オンパシードを圧倒するカオスを見ていた。

「どうやら、あの怪物を先に倒す必要があるようですね。」

カオスの力に危険を感じたメイカーは、ガトリングをミサイルランチャーに変化させ、イーノックとカオス両方への攻撃を行う。

「ぬんっ!!」

飛んできたミサイルを弾き飛ばしながら、オンパシードと戦うカオス。

 

しかし、弾き飛ばしたミサイルのうち一発が、ゴルベーザに向かって飛んでいってしまう。

「兄さん!!」

それをいち早く察知したセシルはパラディンに変化し、ゴルベーザの盾となった。

「ぐああっ!!」

「セシル!!」

ゴルベーザはセシルが自分の盾になってくれたことに気付き、崩れ落ちたセシルを介抱する。

「セシル!!」

「兄さん…逃げて…」

パラディンは暗黒騎士と比べて防御力が低い。加えてメイカーのミサイルは一発一発が強力なので、セシルはダウンしてしまった。

「セシル…」

弟を倒されたことを悔やむゴルベーザ。

 

その時、

 

「まさかこのままで終わるなんてことはないでしょう?」

戦いに参加していたエゼキエルが、いつの間にかゴルベーザの側に来ていた。

「エゼキエル先生…」

ゴルベーザは一度エゼキエルを見てから、メイカーを見る。

 

流れ弾とはいえ、愛する弟を傷付けた憎い敵…。

 

「行きなさいゴルベーザ!弟の仇を取るのです!!」

 

エゼキエルに促されたゴルベーザはセシルをエゼキエルに預け、メイカーを睨み、

「いいですとも!」

メイカーの隣へと瞬間移動した。

 

ゴルベーザは屈強な外見とは裏腹に、格闘ではなく、様々な魔法や超能力を操って戦う。

「コズミックレイ!!」

「ぐわっ!!」

ゴルベーザは両手から強烈な電撃を浴びせ、メイカーを吹き飛ばした。

「今だイーノック!!」

メイカーにできた大きな隙を突くべく、ルシフェルは円形の武器をイーノックに渡す。同時に、イーノックの周囲にビットが展開された。これはガーレという武器で、ビットを遠隔操作して遠距離から敵を攻撃する武器だ。ちなみにこのビットは射撃型ではなく、突撃型である。

「狙い撃つぜ!!」

叫んだイーノックはガーレを操作し、ビットをメイカーにぶつける。

「ぐおわっ!!」

ダメージを受けてセルメダルを散らすメイカー。

「!!」

レスティーは見逃さなかった。

 

 

メイカーの身体から、一枚だけ色違いのメダルが排出されたのを。

 

 

レスティーは瞬間移動してメダルを掴み取り、素早く離脱する。予想通り、色違いメダルの正体はメイカーのコアメダルだった。

「皇魔!!」

レスティーはあらかじめ集めてあるメイカーのメダルと一緒に、今手に入ったメダルを投げる。エンズはメダルを受け取ってベルトに装填し、スキャナーでスキャンした。

 

〈レーダー!ジュウ!ミサイル!レ・レ・レジュミ〜♪レ・レ・レジュミ〜♪〉

 

エンズは灰色の戦士、エンズ レジュミコンボへとコンボチェンジする。

エンズは小型のガトリング、ジュウガトリングを両腕に生成し、右のジュウガトリングで屑シード。左のジュウガトリングで花見客を攻撃する。左側には麻酔弾が装填してあり、威力も最弱にしているため、何の心配もない。これが、ジュウコアメダルの力だ。ジュウガトリングから無尽蔵に弾を撃ち、弾の種類の設定や、威力の調節なども自由自在なのである。続いて、両足に小型のミサイルランチャーを生成するエンズ。こちらも右で屑シードを、左で花見客を攻撃。右は実弾だが、左のミサイルは催眠ガス入り。しかも、ただ撃っているわけではない。エンズが使っているレーダーコアメダルは、非常に高い認識能力を与えるメダル。半径120km圏内における特定の対象を完璧に認識し、位置を割り出す。また、ミサイルコアメダルによって生み出すミサイルは超高性能なホーミング機能を持ち、認識した相手を確実に追尾、破壊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

モニターからこれらの戦闘を見ながら、またしてもケーキを作っている光生。彼は近くで別の仕事に勤しんでいるエリカに訊いた。

「里中君。前に私がした武器と闘争本能の話を覚えているかね?」

「はい。闘争本能という欲望が数多くの優れた武器を生み出した、でしたっけ?」

「その通り。だが、欲望だけでは武器は造れない。その武器に伴った技術が、文明が必要だ。」

確かにそうだ。例えば、何の技術も文明もない原始時代に、その時代に生きる原始人達に、銃やミサイル。戦車などの現代兵器を造れと命じてみよう。果たしてそれらの武器は造れるのだろうか?

 

答えは…まぁ言うまでもないだろうが、無理だ。石や木材などで、鉄やら火薬やらが必要になる現代兵器を、造れるわけがない。

 

だが原始時代の人間達は、時が経つとともに石器を、青銅器を、鉄器を、高度な道具を作り上げていった。

 

なぜ作れたのか?答えは簡単だ。こんなものが欲しい、と思ったから。しかし、いくら欲しいと願っても、ないものは手に入らない。

 

なら作ればいい。

 

そういう結論に至った人間達は、自分達が欲するものを、そして、それらを生み出せる文明を作り上げた。

 

「欲しい、作りたいと望む欲望は、文明すらも加速させる!今ある我々の快適な生活は、先人達の欲望から始まったのだ!!」

光生はケーキを完成させた。

 

 

「素晴らしいッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈スキャニングチャージ!〉

 

ベルトをスキャンするエンズ。レジュミコンボの固有能力は兵器生成。ありとあらゆる兵器を産み出すことができるのだ。この能力によって全身に銃やらミサイルやらレーザー砲やらを装備したエンズは、カオスに向かって叫ぶ。

「カオス!下がれ!!」

「!!」

それを聞いてカオスは素早く退避。カオスの離脱を確認したエンズはオンパシードに向けて、全身の兵器を一斉に発射する技、レジュミデストロイヤーを発動。

「デヤアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

オンパシードは断末魔を上げ、取り込んでいた霧島を残して砕け散った。

「おのれ…何という…!!」

既に残った手勢は僅か。エンズは自分のコアメダルでパワーアップしている。勝ち目がないと悟ったメイカーは、悔しがりながら退却していった。

 

〈CORE BURST!!〉

 

ビーツブレイザーにヒッサツコアメダルをセットしたビーツは、

 

「デストラクションボイス!!」

ビーツブレイザーから特大の光線を放つ。

 

〈LIGHTNING SONIC,BURNING DIVIDE,SPINING DANCE,BLIZZARD CRASH〉

〈WILD RAVE〉

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

ポーカーもワイルドレイヴを喰らわせる。

 

これにより、残った屑シードは全滅した。あらかじめ花見客を全滅させてあるので、今立っているのは、ロストグラウンド学園の陣営だけ。他に敵が現れる気配もない。大勝利だ。

「いや、勝利とは言い難い。」

しかし、この勝利を認められぬ者がいた。ゴルベーザだ。彼は自分の愛する弟、セシルを守れなかった。そのことがこの勝利を、勝利と認めさせないのだ。

「セシル…安らかに眠れ…」

セシルを抱き抱え、静かに黙祷するゴルベーザ。

 

 

「僕は…死んでないよ…」

 

 

セシルから声が。なんと、セシルは生きていた!!

「セシル!!」

感極まってセシルを抱きしめるゴルベーザ。

 

その後、セシルは皇魔が持っていたポーションによって回復し、事なきを得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事花見の場所取りを完遂させた皇魔達。彼らの功績を称え、カオスは彼らにも花見の同席を許した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

時計の針も午前0時を差そうとしている。皇魔は二つに増えたベッドの片方で、熟睡していた。普段彼は奇襲に備えてすぐ起きられるよう、眠りは意図的に浅くしているのだが、今回はそんなことなど気にならないくらい疲れていたのだ。

 

 

しかし、

 

 

「皇魔。皇魔!」

レスティーは、どうしてかそんな今の彼を起こそうと揺り動かしている。

 

そして次の瞬間、

 

「皇魔!!」

「ぐふぅっ!?」

レスティーは皇魔のみぞおちにエルボーを叩き込み、皇魔は吐血せんばかりの勢いで酸素を吐き出した。

「何をする!!」

当然皇魔は激怒するが、レスティーは全く意に介さず、爽やかな笑顔でとんでもない提案をする。

「花山峠に行きましょ♪」

「何!?」

皇魔としては願い下げだった。なぜ好きこのんであのような場所に行かなければならないのか、全く理解できない。

「大丈夫よ。私が超能力で、この街にいる人達から花山峠のことを忘れさせてるもの。」

確かに、それなら問題ない。ということで支度を始める皇魔。やがて二人で家を出てから、皇魔は気付いた。

 

始めからそうすればよかったのではないかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花山峠。

今はレスティーが街の住人達の記憶から、一時的にこの場所のことを消しているため、誰もいない。

「一体何の用だ?」

安眠を妨害され不機嫌な皇魔。レスティーはある方向を指差した。

 

 

 

 

皇魔は思わず息を呑む。

 

 

 

 

レスティーが指を差した方向には、周りにある桜と比較にならないほど美しい桜が一本、あったからだ。

 

レスティーの話では、この桜は魅了桜と呼ばれる、魔力を秘めた桜らしい。その名の通り、他の桜を圧倒する美しさと魔力を使って周囲の人間の心を惑わす桜で、このシーズンは桜の魔力が最大まで高まり、街全体まで散布される。魅了桜の存在が、花山峠を修羅峠に変えていたのだ。

「って、あのシードの親になってた人に教えてもらったの。」

なんと、レスティーにそれを教えたのは霧島だった。ちなみにシードから解放されたあと、

『いやぁ、美しい桜だ!何であんなに嫌っとったのかのぉ?』

と言っていた。どうやら、性癖が治ったらしい。

皇魔は、自分が花見をした場所が一番の特等席だと思っていたので、こんな桜があったことに少し驚いている。

「魅了桜の場所を知ってたのはあの人だけらしいわ。これ以上争奪戦が起きないように切り倒したかったけど、争奪戦が邪魔でできなかったんですって。それで、私達に魅了桜を切り倒して欲しいそうよ」

「…なるほど。」

皇魔は納得した。そういえばここまでの道がやたらと入り組んでいた気がするし、魅了桜の目的が人々を惑わすことなら、どうにかして処分しなければならない。

「美しさは罪。綺麗すぎるのも困りものってことね」

肩をすくめるレスティー。

「…美しさは罪、か…」

皇魔は魅了桜を見上げ、どこか寂しそうに呟いた。

 

 

 

 

 

 

魅了桜は二人の手によって処分され、以後、花山峠で争いが起こることはなくなったという。

************************************************

次回、

仮面ライダーエンズ!!

 

?「俺は天才だ!!天才は、何をやっても許されるのだ!!」

 

?「知ったことか!!」

 

皇魔「何だこれは…涙が止まらぬ…!!」

 

第二十一話

北斗神拳と番長と偽りの天才

 

 

レジュミコンボ

 

エンズがレーダー、ジュウ、ミサイルのコアメダルを使って変身した、銃火器コンボ。

 

半径120km圏内の敵を正確に見つけ出し、様々な兵器を生成して撃破する。

 

必殺技は、全身に兵器を装備して一斉射撃を仕掛ける、レジュミデストロイヤー。エンドオブワールドに似ている。威力や射程は調整が可能で、無限に撃ち続けることもでき、この技一つで世界を滅ぼせる。

 

パンチ力 200t

キック力 390t

ジャンプ力 ひと飛び150m

走力100mを 4,5秒

 

 

レーダーコアメダル

 

メイカーのコアメダル。エンズの頭部をレーダーヘッドに変化させる。

 

認識能力を強化するメダルで、半径20km圏内の敵の位置を正確に把握することができる。ロックオンも可能。

 

 

ジュウコアメダル

 

メイカーのコアメダル。エンズの腕部をジュウアームに変化させる。

 

ジュウガトリングという小型のガトリング砲を生成できる。また、弾の種類や威力は調整が可能。

 

 

ミサイルコアメダル

 

メイカーのコアメダル。エンズの脚部をミサイルレッグに変化させる。

ミサイルランチャーを生成できるだけでなく、爆発するキックを叩き込めるので、接近戦でも威力を発揮する。ミサイルには超高性能なホーミング機能があり、レーダーコアメダルのロックオンと組み合わせることで、驚異の戦略兵器と化す。

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