真・恋姫†無双 〜我天道征〜 第7話
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注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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こうして曹操の仲間になった俺は、彼女の城へと一緒に戻ることになった。

城へと着くと、兵士たちと別れ、曹操達3人は城内へと入っていく。

何をどうしたらいいのかわからない俺は、彼女達の後をついていくことにした。

 

 

しばらく歩くと、前方から一人の女の子がこちらへと駆けてきた。

 

??「華琳様〜!」

曹操「あら桂花、留守番ご苦労だったわね。」

 

桂花と呼ばれたその子は、なぜか頭にネコミミのついたフードをかぶっていた。

 

??「いえ、これくらい何でもございません。

   それより、今回の賊討伐はどうでしたか?お怪我などは、されておりませんか?」

夏侯惇「そんなことあるものか!この私がついているのだ、華琳様の御髪一本触らせるものか。」

??「うっさいわね。私は今、華琳様と話してるのよ。むしろ、春蘭と一緒の方がもっと不安よ。」

夏侯惇「なにー!」

??「なによ!」

夏侯淵「落ち着け、姉者。桂花も、あまり姉者を煽るな。」

夏侯惇「う、うむ。」

??「ふん。」

 

その子と夏侯惇が一触即発みたいな空気になったが、それを夏侯淵が仲裁する。

その手慣れた感じから、この諍いは1回や2回じゃないんだなーと思った。

 

 

夏侯淵「今回、賊とぶつかることはなかったのでな、華琳様が怪我をするような事態にはならなかったよ。」

??「どういうこと?」

曹操「その件も含めて話をするから、玉座の間に向かうわよ。一刀、あなたもついてきなさい。」

一刀「あ、ああ。」

 

俺はそう答え、また曹操達の後をついていく。

 

 

ついていくのだが・・・

 

一刀(あの、俺何かしましたか?)

 

ネコミミフードの子が、ちらちらとこっちを見ては、呪い殺さんばりの眼で睨みつけてくる。

初めは俺の服が珍しくて見ているのかと思ったが、あきらかに敵意を向けている。

一言も話してないし、今回初対面のはずだ。

 

 

なにか気にさわることでもしたのかと考えている間に、玉座の間へと着いた。

そこで今回の賊の話、村の話、そして俺の話が、彼女へとされたのだ。

 

??「そんなことがあったのですか。」

曹操「ええ。そして彼が、先ほど話にでてきた天の御遣いよ。 一刀、自己紹介なさい。」

 

一通り話が終わり、俺は自己紹介をすることになった。

 

 

一刀「え〜、初めまして。北郷一刀って言います。これからよろしくお願いしますね。」

 

先ほどずっと睨まれていたこともあり、俺は努めて丁寧に挨拶をし、笑顔で手を差し出した。

しかし彼女から返ってきた答えは、俺の予想の斜め上をいっていた。

 

??「汚らわしい手で私に触るんじゃないわよ!下品で、粗野で、馬鹿な男ごときが。

何、そのへらへらした顔は、どうせなにかいやらしいことでも考えてるんでしょ。

だから男なんて嫌なのよ、とっとと死んでくれない、それが嫌ならせめて消えてちょうだい。」

 

これでもかと言わんばかりの罵詈雑言の嵐がとんでくる。

俺は固まった笑顔のまま、曹操へと助けを求める。

 

 

曹操「ああ彼女、ちょっと男が苦手なのよ。」

一刀「ちょっとって・・・」

 

俺はそれを聞いて、ちょっとなんてレベルじゃねえぞ、と心で突っ込んだ。

彼女の言葉と放たれる殺気は、まるで親の敵にでも対する様なものだ。

 

 

俺がどうしようかと悩んでいると、曹操が助け船を出してくれた。

 

曹操「桂花、一刀は私が認めた者よ。その彼が名乗ったのだから、あなたも名乗りなさい。」

??「で、でも、華琳様。」

 

彼女が露骨に嫌そうな顔をして、それを拒否しようとする。

しかしそのことで、曹操の顔つきが変わり彼女を睨む。

 

曹操「あら、桂花。貴方、いつから私に逆らうようになったの?」

??「いえ、そのようなことは。」

曹操「なら、ちゃんとできるわよね?」

??「はい・・・」

 

そんな会話がなされた後、彼女は渋々と了承し、こちらを睨みつけながら自己紹介をはじめた。

 

荀ケ「私は姓は荀、名はケ、字は文若よ。二度は言わないから、一回で覚えなさい。」

一刀「よ、よろしく。」

 

俺は顔を引き攣らせながら、返事を返した。

 

 

そんな顔合わせが済んだ後、曹操が俺に注意をしてきた。

 

曹操「それと一刀。あなたは今後、天の御遣いを名乗っては駄目よ。」

一刀「え?なんでだ?」

曹操「天とはつまり、天子である皇帝陛下のことよ。

   もし、陛下以外で天を名乗るものがいれば、それは陛下に対する反逆行為と同じ。」

一刀「なるほど。そしてそれを匿っている者も、同罪になりかねないと。」

曹操「ま、そういうことよ。」

一刀「わかった。まあこっちも、天の御遣いって呼び名は堅苦しいから良かったけど。」

 

そんなこんなで、俺は天の御遣いではなく只の北郷一刀として、ここで世話になることになった。

 

 

 

 

 

 

 

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次の日、何をすればいいのかわからない俺は、曹操の所へ聞きに行くことにした。

さすがに、何もしないで世話になるのは気が引ける。

 

 

コンコン

 

曹操の執務室の前まで行き、その扉をノックする。

 

曹操「誰?」

一刀「あ〜、俺、北郷一刀なんだけど。」

曹操「一刀?入ってきなさい。」

 

曹操から入室の許可を得て、室内へと入る。

そこには、机に向かって仕事をしている曹操と、その傍で竹簡を抱える荀ケがいた。

 

 

曹操「一刀、さっきのは何?」

一刀「さっきの??」

曹操「扉を叩いたでしょ。あれは貴方の国の風習か何かなの?」

 

曹操がそんなことを聞いてくる。

この時代って、まだノックのこと知らないんだなと思い、説明することにした。

 

一刀「ああ、あれはノックだよ。」

曹操「のっく?」

一刀「何て言えばいいのかな。相手に、訪問や入室を知らせる合図とでもいうのかな。」

曹操「へー、確かに便利ね。」

 

曹操が感心したように頷いている。

まさかノック一つでそこまで感心されるとは、そんなことを思いながら、本来の用件を話す。

 

 

一刀「ノックは一旦置いといて、曹操、何か俺に出来る仕事はないか?」

曹操「仕事?」

一刀「ああ。さすがに世話になってるのに、何もしないってわけにはいかないから。」

曹操「ふーん、殊勝な心がけね。桂花、何か仕事はあるかしら?」

荀ケ「いえ、こんな頭の中が全てすけべなことで一杯で、

発情期の犬のように腰を振ることしかできない男にまかせられる仕事などありません。」

 

 

荀ケはそう言って、一蹴してしまう。

しかし、それで引き下がるわけにいかない俺は食い下がる。

 

一刀「いやいやいや、いくらなんでもそれは。」

荀ケ「じゃあ、内政の経験はあるの?」

一刀「うっ。」

荀ケ「軍を指揮したことは?」

一刀「ううっ。」

荀ケ「はっ、やっぱり腰を振るぐらいしか能がないみたいね、駄犬。」

一刀「ううううう・・・・・。」(俺、何か悪いことしたっけ?)

 

荀ケのあまりの態度に、俺は軽く半泣き状態だった。

 

 

曹操「はぁ〜。まあ、今のところ貴方に与えられる仕事はないわ。」

一刀「え、でも・・・」

曹操「それじゃ、しばらくは街の様子を視察してきなさい。」

一刀「視察?」

曹操「そうよ、街を見て回って何か気付いたことがあったら、報告書に纏めて提出なさい。」

一刀「わかった。何か気付いたことがあったら、報告させてもらうよ。」

 

曹操はそう言ってくれるが、ようは街でも見て回ってろってことね。

まあ、元々一学生だった俺が、政治や軍事に口出しできるわけないし、しょうがないんだけど。

俺は役立たずなことに軽く落ち込みながらも、視察で頑張ろうと決心する。

 

 

曹操「ああ、そういえば。今日は秋蘭、夏侯淵が街の警邏に出ているはずだから、一緒に行動なさいな。」

一刀「夏侯淵が?了解、そうさせてもらうよ。」

曹操「まだこの時間なら、門の付近にいるでしょうから、急いでいきなさい。」

一刀「ああ、ありがとう。それじゃ、行ってくる。」

荀ケ「なにか問題起こして、そのまま捕まってしまえばいいのに。」

 

俺はそう曹操にお礼をいって、夏侯淵の元へと向かった。

荀ケが何か言っていた気がするが、それは聞かなかったことにした。

 

 

 

 

 

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≪初仕事は、デート?≫

 

 

門の所へ着くと、夏侯淵と武装した兵たちがおり、今まさに出発しようとしていた。

 

一刀「おーい、夏侯淵!待ってくれー!」

夏侯淵「ん?北郷か。 私に、何か用か?」

 

俺が声をかけると、夏侯淵は立ち止り、俺へと向き直ってくれた。

 

一刀「いや、曹操から街の視察の仕事をもらってさ、行くなら夏侯淵と一緒に行ったらどうかって言われて。」

夏侯淵「華琳様から?」

一刀「ああ。」

夏侯淵「わかった。なら、警邏のついでに街の案内もすることにしよう。」

一刀「ありがとう、夏侯淵。助かるよ。」

夏侯淵「華琳様のご命令だ。気にするな。」

 

こうして俺は、夏侯淵たちと一緒に街を回ることになった。

 

 

ガヤガヤ ガヤガヤ ワイワイ ワイワイ ガラガラガラガラ

 

一刀「賑やかだな。」

夏侯淵「ここは、街の中心の大通りだからな。特に人通りが多いんだよ。」

 

俺はそんな感想を漏らしながら、街の様子を見て回る。

そこでは、威勢のいい声で呼び込みをしてるおじさんが。

晩飯の買い物だろうか、店に並んでいる商品を選んでいる主婦が。

空き地らしき所で遊んでいる子供の姿が。

みんなが、笑顔で過ごしていた。

 

一刀「そして、良い街だな。」

夏侯淵「ふふっ。そう言われると、頑張ってきた甲斐があるな。」

 

俺の言葉に、夏侯淵はどこか嬉しそうにそう答えた。

 

 

夏侯淵「だが、世の中にはこの平和を壊そうとする輩も多い。」

一刀「ああ。」

夏侯淵「だからこそ、そんな者たちに対するため、我々のような力も必要なのだがな。」

一刀「そうだな。」

 

俺はあの村でのことを思い出す。

あの時のことを思い出すと、いくら後悔しても悔やみきれない。

だから俺は、今度こそ守り切るんだと心に誓う。

 

 

一刀「・・・・・・」

夏侯淵「すまない。少し暗くなってしまったな。」

一刀「いや、気にしないでくれ。」

 

考え込んでいた俺の様子を見て、夏侯淵が気を使ってくれる。

 

夏侯淵「北郷、視察なのだろ。なら、なにか気になることがあったら聞いてくれ。」

一刀「いいのか?警邏中だろ?」

夏侯淵「構わぬさ。それくらいなら、警邏に支障はない。」

一刀「ありがと。じゃあ、さっそく何だが・・・」

 

俺はこうして、気になったことを夏侯淵に質問しながら、街を見て回った。

 

 

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そして、お天道様が真上にとさしかかった時、

 

ぐ〜〜!

 

一刀「あっ!」

夏侯淵「ふっ。そういえば、もうそろそろ昼時だな。

    一旦解散とする。集合は一時後(約1時間)、各自遅れるなよ。」

 

俺の腹の虫が鳴きだし、それに気づいた夏侯淵が食事休憩にしてくれた。

 

 

一刀「悪い。気ぃ遣わせて。」

夏侯淵「時間的にも、ちょうど良かったさ。北郷は、食べるものを決めているのか?」

一刀「う〜ん、どれも旨そうなんだけど。なにかおすすめってある?」

夏侯淵「ここら辺なら、よく行く点心の店があるが、それで構わぬか?」

一刀「おっ、本場の点心かー。いいかも♪そこにしよう。」

夏侯淵「本場?」

一刀「あー、気にしないでくれ。それより、はやく行こうぜ。」

 

俺はそう誤魔化して、夏侯淵おすすめの店へと行くことにした。

 

 

 

一刀「うっま〜〜い♪」

夏侯淵「口にあったようだな。」

一刀「あうなんてもんじゃないよ。なんだコレ。どれもこれも旨すぎる♪」

 

餃子、小籠包、あんまんなどなど。

出てきた料理はどれもこれも絶品で、俺は夢中で口に運ぶ。

夏侯淵はそんな俺の様子をみながら、優雅に食事を口へと運ぶ。

 

 

一刀「はほうへん、ほんふぁほひしいほほろ」

夏侯淵「きちんと飲み込んでから話せ、北郷。」

一刀「(むぐむぐむぐ、ごくんっ)夏侯淵、こんなおいしい所を案内してくれてありがとう。」

夏侯淵「気にいってもらえてなによりだ。」

 

俺がお礼を言うと、夏侯淵は薄く微笑む。

 

 

一刀「しかし、夏侯淵みたいな美人と二人で食事なんて、まるでデートしてるみたいだな。」

夏侯淵「でーと?」

 

俺の言葉に疑問をもった夏侯淵が、質問してくる。

 

一刀「ああ、デートってのは、仲の良い男女が一緒に出掛けること。こっちだと、逢引とかかな。」

夏侯淵「なっ!?」

一刀「ん?どうかした、夏侯淵。なんか顔が赤いけど。」

 

夏侯淵をみると、なぜか少し顔を赤くしている。この中、少し暑いのかな?

 

夏侯淵「いや、なんでもない。気にせず、食事を続けてくれ。」

一刀「そうか。ならいいけど。」

 

まあ、本人が大丈夫っていうなら問題ないだろ。

俺はそのまま、おいしい食事を続けることにした。

 

 

 

 

 

 

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【side 夏侯淵】

 

先ほどの北郷の発言には驚いた。まだ、若干ドキドキしている。

確かに、男女二人でこうして食事をしているのだ、逢引に見えてもなんら不思議はない。

 

夏侯淵(私がこんなに動揺しているというのに、こいつはなんとも思わんのか?)

 

しかし、そんな発言をしたにも関わらず、北郷はなんら変わることなく食事を続けている。

天然の女たらしなのか、はたまた朴念仁なのか。

 

夏侯淵(・・・なんとなくだが、こいつはその両方な気がするな。)

 

私は何故だかわからないが、その考えに至った。

そして、心を落ち着かせるためお茶に口をつけることにした。

 

 

その時、

 

??「泥棒だーーー!!」

夏侯淵「!!」

一刀「!!」

 

外から、そんな声が聞こえてきた。

 

夏侯淵「北郷、お前はここで待っていろ!」

一刀「おい、夏侯淵。」

 

北郷が何か言っているが、私はそれに構わず外へと飛び出していった。

 

「「「きゃー!」」」「「「うわー!」」」

賊「どけ、どきやがれ!!」

 

そのまま通りまで行くと、前方から刀を持った賊3人が人混みを抜けて、こちらへと向かって来ていた。

どうやら商品を奪い、そのまま逃走をしているようだな。

 

周りを見渡すが、まだ警備の者は来ていなかった。

しかたないと、賊達の前に立ちふさがる。

 

 

賊「ん、女?」

夏侯淵「おとなしく捕まれば、手荒なまねはしないがどうする?」

賊「は!?女一人で、どうしようってんだ。」

賊「どきやがれっ!!」

 

そう言って、賊の一人がこちらへと向かってきた。

 

夏侯淵「無手はあまり得意ではないのだが、貴様らごときなら。」

 

私はそうつぶやいて、その賊の手を取る。

そしてそのまま足を払い、背中から地面へと叩きつける。

 

ドスンッ  賊「うぐっ!」

 

賊はそんな声をあげて、そのままのびてしまう。

 

 

賊「なっ!?」

賊「この野郎、よくも!」

 

もう一人の賊が、仲間をやられたことに怒り、何も考えずに突っ込んでくる。

 

夏侯淵「はっ!」

 

ガッ ズザー

 

私がその賊の側頭部に蹴りをいれると、そいつはそのまま地面を滑って気を失う。

 

 

夏侯淵「さあ、どうする?おとなしく捕まるか?それとも、この二人みたいにのされたいか?」

賊「く、くそー。」

 

そう私は、最後の一人に問いかける。

しかし、この時の私は完全に油断していた。

 

 

賊「! へっへっへっ、動くんじゃねえ!!」

子供「うわーーん。」

夏侯淵「なっ!」

 

あろうことか、そいつは人混みの中から子供を人質にとった。

 

夏侯淵「貴様!その子を離せ!!」

賊「そういわれて、素直に離すわけがないだろ。とっとと、そこをあけろ。」

夏侯淵「くっ。」

賊「いや、てめえには虚仮にされたからな、ここで服でも脱いでもらおうか。」

夏侯淵「なっ!?」

 

人質をとり余裕がでてきた賊は、私にそんな要求をしてくる。

 

 

賊「おっと、嫌なら別にいいだぜ。このガキがどうなるかな〜。」

子供「うわ〜ん。」

夏侯淵「貴様。」

 

私がためらっていると、賊はその子供に刀を突き付ける。

 

夏侯淵「くっ、わかった。だから、その子に手を出すな。」

賊「はじめから、そうすればいいんだよ。うひひひひ。」

 

賊はそう言って、下品な笑い声をあげる。

私は衆人環視の中、服に手をかけ脱ごうとする。

 

 

 

 

 

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ヒュ〜ン

 

その瞬間、何か丸いものが綺麗な放物線を描いて飛んでいく。

それはそのまま、賊へと向かい。

 

ペタッ

 

賊「あちーーー!!!」

 

賊の顔へと当たる。

どうやら、それは胡麻団子のようで、その熱さに賊は子供を手放す。

 

 

??「ああ、やっちゃった。」

 

そんな言葉が聞こえ、そちらを向くとそこには、

 

一刀「あ〜、大丈夫ですか?」

 

北郷がいた。

 

賊は一瞬北郷を睨むが、自分が子供を離していることに気がつき、慌ててしゃがみ込もうとする。

しかし、

 

一刀「すいません!」

 

ゴチッ

 

賊「ぐっ。」

一刀「いたっ。」

 

いきなり謝りだした北郷と頭をぶつけあい、よろめいていた。

その隙に、子供の母親だろうか、一人の女性がその子供を抱き上げ、その場から離れた。

 

 

賊「このガキがー!!」

 

賊がそのことに怒り、北郷へと刀を振るう。

 

一刀「うわ〜。」

賊「なっ?」 ドサッ

 

が、いきなり北郷がしゃがみ込んでしまったため、その北郷につまずき転んでしまう。

 

一刀「ああ、すいませんって、とっとっと、うわ〜。」

ゴスッ

賊「ぐえっ!」

 

いきなり立ち会った北郷がフラフラしだし、尻もちをつくと同時に、賊の首元へと肘をいれる。

それをくらった賊は、うめき声をあげて気絶した。

 

 

「「「わああぁぁぁーーーー。」」」「すげえぞ、兄ちゃん。」「運がいいな。」

 

その瞬間、あたりからは歓声が響く。

 

母親「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか。」

子供「ありがとう、お兄ちゃん。」

一刀「いやいや。たまたまですよ、たまたま。」

 

北郷は親子の礼に対して、助けたのは偶然だという。

確かに、傍から見れば偶然が重なったように見えるだろう。

だがあの北郷の動き、子供の救出から賊を倒すまでの流れ、全て狙ってやったものだ。

私は先ほどのやりとりで、北郷がかなりの武をもっていると確信した。

 

 

そんなことを考えていると、やっとここらの警備隊のものがやって来た。

 

警備隊「か、夏侯淵将軍!? 申し訳ありません!到着が遅れました!」

夏侯淵「構わん。この賊どものこと、まかせたぞ。」

警備隊「りょ、了解しました。」

 

私はのびている賊どもを、警備隊の連中にまかすことにした。

 

 

夏侯淵「すまんな、北郷。おかげで助かった。」

一刀「なんのこと?」

 

北郷はそういってとぼける。

 

夏侯淵「いや、なんとなく言いたかっただけだ、気にするな。」

 

北郷の気づかいに、私はそれだけ言ってその話を終わりにする。

その後は、また北郷の視察に付き合いながら、警邏をおこなったのだった。

 

 

その夜

 

夏侯淵「以上が、今日の出来事です。」

曹操「そう、御苦労だったわね。秋蘭。」

夏侯淵「いえ。」

 

私は華琳様の閨で、今日の北郷の視察についての報告をしていた。

 

 

曹操「しかし、一刀の武。賊ごときなら、茶番を演じる余裕さえあるということね。」

夏侯淵「はい。」

曹操「ほかには、何もなかったのかしら?」

夏侯淵「ほかに、ですか?」

 

( 一刀「夏侯淵みたいな美人と二人で食事なんて、まるでデートしてるみたいだな。」 )

 

私はあの時のことを思い出す。

 

曹操「秋蘭、何かあったのかしら?」

夏侯淵「いえ、特別ご報告するようなことはありません。」

曹操「そう。ならいいけど。」

 

私の異変に華琳様はお気づきになられたが、あえて聞いてくることはしなかった。

 

 

曹操「さてと、それじゃ秋蘭には褒美をあげなくてはね。」

夏侯淵「華琳様。」

曹操「今日は、たっぷり可愛がってあげるわ♪」

夏侯淵「はい。」

 

こうして私は、華琳様とその晩を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

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≪天の知識の有用性≫

 

【side 一刀】

 

その後も、俺は視察を続け、夜に報告書を作成するという日々を過ごした。

慣れない文字や作業のため、思ったよりも時間がかかる。

そして、曹操に頼まれた日から1週間が経った。

まだまだ未完成だが、これ以上はまずいと思い、せめて書けたものだけでも持っていくことにした。

 

 

コンコン

 

曹操「一刀かしら?」

一刀「ああ、ちょっといいか?」

曹操「ええ、入ってらっしゃい。」

 

ガチャ

 

俺は再び、曹操の執務室へと入る。そこには、前と同様の位置に座る曹操がいた。

この前と違うといえば、荀ケがこの場にいないことくらいだろう。

 

 

曹操「それで、何の用かしら?」

一刀「報告書、まとめた範囲だけでも持ってきたんだけど。」

曹操「報告書?」

一刀「えっ!?曹操が言ったんじゃないか、まさか忘れたのか。」

曹操「冗談よ。まあ、あんまり遅いんで、忘れかけてはいたけどね。」

一刀「うっ。」

 

曹操のそんな一言に、俺は一気にばつが悪くなってしまった。

 

 

一刀「す、すまん。まだこっちの文字に慣れなくて。

   それに、報告書なんて初めて書くから、どうしても時間が掛かっちまって。」

曹操「まあ、あなたが天の国から来たというなら、これくらいはしかたないのかもね。」

一刀「あ〜、そんなわけで、まだ全部じゃないんだけど、かけたやつだけでもとね。」

曹操「わかったわ。後で読ませてもらうから、そこに置いておきなさい。」

 

曹操はそう言って、机の空いたスペースを指さす。俺はそこに、もってきた竹簡を置く。

 

一刀「じゃあ、俺はもう少し街を見て回りたいから行くな。」

曹操「そ、まあ頑張りなさい。」

 

俺はそういって曹操の執務室を後にし、街へと向かった。

 

 

 

街につき、いつも通りぶらぶらと歩き回る。

 

店主「お、兄ちゃん。今ちょうど蒸しあがったところだ、買ってかないか?」

一刀「お、うまそう。じゃあ一つちょうだい、おっちゃん。」

店主「あいよ。」

 

すると、饅頭屋のおっちゃんに声を掛けられたので、一つもらうことにした。

ちなみに金は、支度金ということで城についたその日に、曹操からもらったものだ。

蒸かしたてのあんまんをおっちゃんから受け取り、かぶりつく。

 

 

一刀「あむ、うーん、うめ〜♪やっぱ、おっちゃんの所のあんまんは絶品だな。」

店主「嬉しいこと言ってくれるねー。」

一刀「あぐ、むぐむぐ。ところで、最近どうよおっちゃん。」

店主「ん?ああ、やっぱり西地区のほうに、ガラの悪い連中が集ってるらしいな。」

一刀「警備隊のほうは?」

店主「向こうも回ってるみたいなんだが、あまり数がいねえらしいな。」

一刀「もぐもぐ、そうなんだ。ゴクン。あんがと、おっちゃん。また来るよ。」

店主「おう、いつでもきな。」

 

一通り話を聞き終えた俺は、おっちゃんに別れを告げ、再び散策に戻る。

 

 

またしばらくすると、今度は子供の集団に囲まれる。

 

男の子「わあー、北郷の兄ちゃんだ。」

女の子「あそんで、あそんで。」

男の子「どうせヒマでしょ。」

一刀「まったく、しゃあない少しだけだぞ。」

子供達「「「「「わーい♪」」」」」

 

 

俺はそのまま、子供たちの遊び相手になってあげる。少し虚仮にされてる気もするが。

ある程度遊んだ後、俺は子供達に質問をする。

 

一刀「なあ、みんな。みんなの周りで、困ってる人っていなかったか?」

女の子「あ。村のお婆ちゃんが、畑仕事が大変だっていってた。」

男の子「父ちゃんが、小遣い少ないって泣いてた。」

男の子「お母さんが、最近野菜が高いって言ってた。」

女の子「働きたくないって、近所のお兄ちゃんが叫んでたよ。」

 

俺の質問に、子供達は色々と答えてくれる。

大人の話も重要だが、子供達はそんな大人達をよく見ている。

だからこそ、子供たちの意見と言うのは、フィルターを通していない純粋なものともいえる。

 

一刀「そうか、みんな色々と困ってるんだな。ありがとう、参考になったよ。」

男の子「どういたしまして。」

女の子「もういいの?」

男の子「もっとあそんでよ。」

一刀「悪いな、また今度遊んであげるから。じゃあな。」

 

俺は再び、街の散策へと戻る。

 

 

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そうこうしているうちに、結構な時がすぎた。

 

ドドドドドドドドドドドッ

 

ものすごい音が聞こえる。

俺がその音の方角を見ると、その先にものすごい砂煙があがっている。

 

一刀「なっ!?」

 

そしてそれは、こちらに一直線に向かって来ており、そして、

 

夏侯惇「ほん、ごっーーーー!!!!」

 

ものすごい形相の夏侯惇が、俺の前でとまる。

 

 

一刀「か、夏侯惇?」

夏侯惇「いくぞ、さっさとこい!」

 

俺がまだ状況をのみ込めていないにも拘らず、夏侯惇は俺の手を取り、ズカズカと歩き出す。

 

一刀「な、いきなりなんだよ、夏侯惇。」

夏侯惇「うるさい。華琳様が貴様を呼んでいるのだ。」

一刀「曹操が?なんで??」

夏侯惇「知るか!ごちゃごちゃ言わず、貴様は黙ってついてくればいいのだ。」

一刀「ついて行くっていうか、引っ張られて、うわっ」

 

俺はそのまま、夏侯惇に引きずられるようになりながら、城へと連れて行かれた。

 

一刀(俺、なにか失敗しちゃったかな?)

 

と、そんなことを考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

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【side 曹操】

 

私は、今日の分の政務をこなしていく。

そしてそれが、ある程度きりのいい所まで終わった時、一刀の置いていった竹簡が目に入る。

 

曹操「そういえば、まだ見ていなかったわね。」

 

そんなことを思い、そのうちの一つに手をのばす。

 

 

中を開いてみると、それはひどいものだった。

文字はなんとか読めるが汚く、文法なんて滅茶苦茶だ。

 

曹操(はやまったかしら?)

 

そんなことを考えながら、何とかその報告書を読解していく。

初めこそ、駄目な所に目がいってしまったが、読み進めていくうちに私の手は震えだした。

そこに書かれていた内容は、今までとはまったく違った視点からものごとを捉えており、その解決策も画期的といえる。

私は興奮して、他の竹簡にも目を通していく。

そしてそのどれもが、今まで考えもつかなかった内容ばかりだった。

 

 

曹操「だれかある!」

兵士「はっ!」

曹操「春蘭に、すぐさま一刀を連れてくるようにと伝えなさい。」

兵士「御意!」

 

この竹簡のものだけでは不十分と考えた私は、すぐさま一刀を呼びに行かせる。

 

 

そして玉座の間に、私と秋蘭、桂花が集る。

しばらくすると扉が開き、

 

夏侯惇「華琳様、北郷のやつを連れてまいりました。」

一刀「うわっ。」

 

春蘭が一刀の手を引き、やってきた。

 

曹操「ごくろうさま、春蘭。」

夏侯惇「いえ、華琳様のご命令なら、北郷の一匹や十匹。」

一刀「俺は猫か!ったく、いてて。」

 

一刀はそう言いながら、自分の手をさすっていた。

 

 

一刀「曹操、何かあったのか?あー、もしかして、報告書の中身がひどすぎたとか?」

曹操「いいえ、違うわ。まあ、読みづらかったのは確かだけど。」

一刀「それじゃあ。」

曹操「一刀、ここの警備隊についてのことなのだけど、これはどうゆうことかしら?」

 

私は一刀からの報告書を手に取り、説明を求める。

一刀は私の近くまできて、その部分に目を通す。

 

一刀「ああ。それは、こっちの方から人員を捻出すれば可能かと思って。」

曹操「こっちの、あるばいと?ってやつの、ここなのだけど。」

一刀「それは、仕事の評価に対して、差をつけてやるっていえばいいのかな。」

曹操「ふーん。それじゃ、この新型の炉や水車の案なのだけど。」

一刀「それは、俺も知識として知ってるだけだから、可能かどうかは技術者との打ち合わせが必要かな。」

曹操「それじゃ・・・」

 

こうして私は、気になった内容を次々と一刀に質問していく。

 

 

一通り質問を終えると、呆然としている3人を呼び、一刀の報告書を読ませる。

 

荀ケ「なっ!」

秋蘭「こ、これは。」

春蘭「???」

 

二人は、その内容に驚き言葉を失う。

まあ、春蘭は予想通りの反応なのだけど。

 

 

曹操「桂花。一刀のこの献策、あなたはどうみるかしら?」

荀ケ「そ、それは・・・」

 

桂花は言いづらそうに、口ごもってしまう。

 

曹操「桂花。いくら悔しくても、目を曇らせては駄目よ。この曹孟徳に仕えるのならば、公正に判断なさい。」

荀ケ「はい。今すぐ実現するのは難しいですが、これらをうまく活用すれば、今までの数倍以上の国力を得ることも可能かと。」

 

桂花は、悔しそうな顔をしながらもそう告げる。

 

 

曹操「一刀、これはまだ全部ではないと言っていたわね。」

一刀「あ、ああ。いくつか気になる点や、その案もあるけど、まだ纏まってないんだ。」

曹操「なら、しばらく桂花や他の文官数名をつけましょう。なるべく早く、それを纏めて提出なさい。」

一刀「お、おう。」

曹操(ふふ。まさか武官として目をつけていたのに、文官としてこんなに使えるなんてね。)

 

私は予想外の一刀の能力の高さに、良い拾いものをしたとほくそ笑む。

 

 

曹操「一刀。貴方に、私の真名を許すわ。華琳よ、次からはそう呼びなさい。」

「「「「なっ!?」」」」

 

私の言葉に、4人が驚いた顔をする。

 

夏侯惇「華琳様。このようなやつに、華琳様の真名を許すなどなりません!」

荀ケ「そうです、春蘭の言うとおりです。こんなすけべなことしか考えてなさそうな、

万年発情精液男に真名をお許しになっては、神聖なる華琳様の真名が穢れてしまいます。」

一刀「そ、そこまで言わなくても。」

 

春蘭と桂花が、必死に反対する。

一刀はそんな桂花の発言に、少し落ち込んでいるようだ。

 

 

曹操「二人とも。私は一刀の能力を認めた、だから真名を許したの。

   桂花。貴方なら、一刀の持ってきたあの報告書の凄さ、わかるわね。」

荀ケ「は、はい。」

曹操「あそこまで力を示し、真名を許さないのでは、この私の沽券に関わるわ。わかってくれる、二人とも。」

夏侯惇・荀ケ「「御意」」

 

二人はしぶしぶながらも、納得してくれたようだ。

 

 

一刀「あー、じゃあ、華琳でいいのか?」

華琳「ええ、そうよ。」

一刀「わかった。できれば俺も真名を返したいんだが、俺の国には真名の風習がないんだよ。

   だから、俺のことは好きに呼んでくれて構わないよ。」

華琳「あら、そうなの。なら、今まで通り一刀と呼ばせてもらうわね。」

一刀「わかったよ、華琳。」

 

私達はこうして真名の交換を行った。

 

-11ページ-

 

のだが、

 

一刀「えっと、華琳。」

華琳「なにかしら?」

一刀「あの二人なんだが。」

 

一刀が指さす方向をみると、ものすごい殺気を放ちながら一刀を睨む、春蘭と桂花がいた。

 

一刀「名前を呼ぶたびにあれだと、少し気まずいんだが。」

華琳「そうね。それじゃ、あの子たちの真名も預けましょ。」

「「「「なっ!?」」」」

 

先ほどより驚いた顔をする4人がいた。

 

 

一刀「真名は神聖なものなんだろ。本人が許してないのに呼ぶのは」

華琳「あら、私が命令すれば、そんなの関係ないわよ。ねえ、貴方達。」

「「「はい。」」」

 

春蘭と桂花は、あきらかに嫌そうな顔をしてるわね。

秋蘭は、まんざらでもなさそうね。

二人の困った顔をみたい私は、命令をしようとしたが、それを止める者がいた。

 

 

一刀「華琳。俺はそんな無理矢理、真名を許してほしくはない。」

華琳「一刀、私に刃向かうのかしら?」

 

私は一刀を軽く睨み、覇気をぶつける。

 

一刀「ああ。こればっかりは、譲れない。」

 

しかし一刀は、それすらものともせず、私に意見する。

 

一刀「華琳のことも、みんなの真名のことも、俺が認めてもらえば済む話だろ?」

華琳「それができないから、こうしようとしたのだけど。」

一刀「それでもだ。どうしてもというなら、俺はここを去る。」

 

一刀ははっきと、私に宣言した。

 

 

華琳「ふぅー、わかったわ。この件はなかったことにしましょう。」

一刀「ありがとう、華琳。」

華琳「但し、あそこまではっきし言ったのだから、ちゃんと認めてもらいなさいよ。」

一刀「う、頑張るよ。」

 

 

 

-12ページ-

 

華琳「それと一刀。今晩、私の部屋に来なさい。」

一刀「は?」

 

私の言葉に、一刀は間抜け面で驚く。

 

華琳「天の国に興味が湧いたから、その話をしてちょうだい。」

一刀「あ、ああ、俺の国の話ね。そ、そうだよな。あははは。」

荀ケ「華琳様、危険でございます。

こんな性欲の塊みたいな男と一緒の部屋になんて、もし襲われでもしたら。」

夏侯惇「そうです。せめて、私もご一緒に。」

華琳「大丈夫よ。もし、一刀が襲ってくるようなことをすれば、私直々に首を刎ねてあげるから。」

 

私は心配する二人をなだめ、絶を構えて見せる。

 

 

夏侯惇「それならば。北郷、華琳様のお手を煩わせるようなことはするなよ。」

荀ケ「そうよ。そんなことになる前に、自分で死になさい。てか、今すぐ死んでちょうだい。」

一刀「そんなことしないよ。はぁ〜。」

 

二人の態度に、一刀は少し困った顔をしていた。

 

華琳「まあ、そうゆうわけだから。ちゃんと来なさい。」

一刀「了解。」

 

そんな会話して、その場は解散となった。

 

 

 

そして夜になり、

 

コンコン

 

一刀「華琳、俺だけど。」

華琳「ええ、入ってらっしゃい。」

 

ガチャ

 

一刀「失礼しますっと。」

 

一刀が、のっくをして私の部屋へとやってきた。

 

 

華琳「そこら辺の椅子にかけなさい。」

一刀「あ、ああ。」

華琳「何、緊張してるのかしら?」

一刀「そりゃ、夜中に華琳みたいな可愛い子と部屋で二人っきりなんて、緊張しないはずないだろ。」

華琳「ふふっ。だけどもし手を出したら、わかってるわね?」

一刀「出さないよ。はあー、少しは信用してくれ。」

 

そう言って一刀は、苦笑いを浮かべる。

 

一刀「それじゃ、何を話せばいいのかな?」

華琳「別になんでも構わないわ。今日は、雑談をしたくて呼んだのだから。」

一刀「そうか、なら・・・」

 

そこから、一刀の天の国の話が始まった。

馬よりも速く移動できる乗り物、はては空を飛んでしまうものまであるという。

電話と言う、遠くの人と会話ができるからくり。一刀も持っているが、相手がいないとダメらしい。

見たこともない衣装。食べたこともない食べ物。聞いたこともない知識。

 

一刀の話は、どれもこれもこの世のものとは思えず、まるで物語を聞かされているようだった。

 

 

話を聞いていくうち、私は無意識に一刀の顔を見るようになっていた。

彼の笑顔を見ていると、胸の奥が温かくなっていく。

彼の声を聞いていると、寂しさが消えていく。

なぜかはわからない。だけど、彼との時間は私の心を満たしてくれる。

しかし、そんな楽しい時間は、あっという間に過ぎて行く。

 

 

一刀「っと、結構長いこと話しちゃったな。もう遅いし、そろそろ戻るよ。」

華琳「え、ええ。そうね、こんな遅くまで悪かったわね。」

一刀「いや、構わないさ。俺は華琳と話せて、とても楽しかったよ。」

 

一刀はそう言って、私に笑顔を向けてくる。

 

一刀「それじゃ、おやすみ華琳。」

 

一刀がそう言って背を向ける。

その瞬間、言い知れぬ寂しさが私を襲った。

そう思った時、すでに私は彼の服の裾を掴んでいた。

 

 

一刀「えっ。華琳、まだ何かあるのか?」

華琳「ええ、一刀。もう一つだけ、話を聞かせてくれないかしら。」

一刀「まあ、華琳がいいなら構わないけど。」

華琳「そう、ならこっちへきて。」

 

私はそう言って、寝台に腰かけ、一刀をその横に座るよう促す。

一刀は戸惑った表情をしていたが、観念したのか横に腰かけた。

 

一刀「で、何の話をすればいいんだ?」

華琳「ええ、それは」

 

 

この時の私は、どうかしていたのだろう。

一刀の胸元に手を置き、顔を見上げる。

 

華琳「天の国では、男女はどのように睦事をするのかしら?」

一刀「か、華琳。」

華琳「一刀。教えてくれないかしら、私に。」

一刀「え?え?え?いや、それは、その、なんていうか」

 

その時の一刀は赤面し、狼狽していた。

私はそれでも構わず、一刀へと迫る。

 

 

一刀「華琳、勘弁してくれ。手を出したら、首を刎ねるんだろ。」

華琳「確かにそう言ったわね。だけど、私から手を出す分には、構わないわよね。」

一刀「なっ!」

 

そんなことを言ってるうちにも、どんどん私と一刀の顔は近づいていく。

あと少しで、触れ合いそうになる。そんな時、

 

 

夏侯惇「華琳様。北郷のやつに、何もされておりませんか?」

 

ビクッ

 

部屋の外から、春蘭のそんな声が聞こえてくる。

私達二人はその声に驚き、近づけた距離を遠ざける。

 

一刀「はは、ははははは。さ、さーて、もう夜も遅いし、そろそろ寝るか。おやすみ、華琳。」

華琳「ええ、おやすみ一刀。」

 

一刀がそれをきっかけに、逃げるようにして部屋の入口へと向かう。

私も幾分か冷静になり、一刀に就寝の言葉をつげる。

 

 

夏侯惇「華琳様、無事でしたか。」

華琳「ええ、私は大丈夫よ。そろそろ遅いし、もう寝るわ。」

夏侯惇「はい、かしこまりました。おやすみなさいませ、華琳様。」

 

扉をあけると春蘭がいた。

私の無事を確認すると、北郷を連れて部屋を出て行った。

 

夏侯惇「北郷。貴様、華琳様に手を出してなどいないだろうな。」

一刀「してない、してない。俺『は』何もしてないから。」

 

部屋の外から、そんな一刀と春蘭の会話が聞こえてくる。

 

華琳(俺『は』、か。)

 

 

私はあの時のことを思い出す。

すると今更になり、なんてことをしたのだろうと思い、顔が熱くなってくる。

私はその恥ずかしさから、頭から布団を被るようにして寝台へと潜り込む。

 

なんであんなことをしたのかわからない。

だけど、悪い気はしなかった。

私は、そんな理解できぬ感情に戸惑いながら、眠りへとつくのだった。

 

北郷一刀へのこの気持ちが何なのか、まだ気付くことなく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

-13ページ-

 

あとがき

 

sei 「ということで、第7話はここまでとなります。

   当初の予定では、春蘭・桂花もいれる予定でした。

   しかし、何をどう暴走したのか、華琳・秋蘭でそこそこ書いてしまったので、ここで投稿することにしました。

 

 

   初めての拠点風パートなので、各キャラと一刀のカラミがうまく表現できているか不安ですね。

   また、タイトルっぽいのもつけてみました。結構難しいもんですね。

   まあ、少しでもその良さが伝わればいいなと思います。

 

 

   それでは、今回のゲストを紹介します。こちらの方です。」

 

 

 

秋蘭「私がゲストらしい、よろしく頼む。」

 

sei 「はい、今回は魏の中で怒らせたら一番怖い? 秋蘭さんです。」

 

秋蘭「ん? sei よ、何か余計なことを言っていたが?(ゴゴゴゴッ)」

 

sei 「い、いえいえ、気のせいです気のせい、私は何も言っておりません。」

 

秋蘭「まあいい、今回は見逃してやろう。」

 

sei 「は、はい。ありがとうございます。(やっぱこえ〜)」

 

秋蘭「今回北郷は、色々と献策していたようだな。」

 

sei 「やっぱり一刀君と言えば、天の知識を披露すべきだと思いましたので。」

 

秋蘭「具体的には、どんなことを書いてきたのだ?」

 

sei 「まず原作でもあった、警備隊の案に、アルバイト、町割りについてですね。

   他だと、新しい炉や水車の案、農作物の栽培方法などです。」

 

秋蘭「けっこうあるな。大丈夫なのか?」

 

sei 「ああ、そこは細かくかくつもりないんで、問題なしです!」

 

秋蘭「はあー、いいかげんな作者だ。」

 

 

 

秋蘭「次にコメントについてだな。」

 

sei 「はい、毎回毎回、多くのコメントありがとうございます。」

 

秋蘭「今回はやはりというか、魏√になったことについてが多かったな。」

 

sei 「そうですね、紆余曲折しすぎて混乱させましたから。」

 

秋蘭「他の作品との違いや、今後の展開に対する期待と不安が目立つな。」

 

sei 「ならその期待に応え、私らしさを出してやりますよ。はっはっはっ!」

 

秋蘭「自信満々の発言はいいのだが、sei よなぜ足が震えているんだ?」

 

sei 「武者ぶるいです。」

 

秋蘭「なんで体中から、そんなに汗を流しているんだ。」

 

sei 「ここ最近、暑いですよね。温暖化の影響ですしょうか。」

 

秋蘭「・・・・・」

 

sei 「・・・・・」

 

秋蘭「これ以上突っ込むと、色々限界そうだな。まあ、その、なんだ、頑張れ。」

 

sei 「・・・はい。」

 

 

 

sei 「そんなわけで、今回はこれで終わりとなります。次回は」

 

秋蘭「姉者と、桂花の拠点ということか。」

 

sei 「はい。それと、プラスアルファもつけたいなと考えてます。」

 

秋蘭「プラスアルファ?それは誰なんだ?」

 

sei 「まあ、それは秘密ってことで。次回のお楽しみに。」

 

秋蘭「わかった。次回は姉者の話だからな、よかったらまた読んでほしい。」

 

 

 

 

説明
曹操との出会いにより、この世界の人々を救うことを決意する一刀。
そんな一刀は、曹操の仲間となり共に行動することに。
一刀と曹操達との、奇妙な生活が始まろうとしていた。


当初の予定は、4人全員の拠点だったはずなのに、なぜか2人に。
まあ、こんな適当な作家ですが、どうぞお読みください。
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コメント
ちょっと〜華琳様デレるのはやすぎんよ〜(だがそれがいい)(はこざき(仮))
風見海斗 様>ずっと「だれかある」だと思ってました。日本語って難しいですね・・・(sei)
「だれかある」ではなく、「たれかある」です。「だれ」の部分を漢字にしたら間違えにくいと思いますよ。(風見海斗)
デューク 様>そうですよね。デレ華琳は正義ですよね!(sei)
良いねえ、この華琳♪デレデレ♪(デューク)
オシリス 様>デレすぎた気もしますが、こんな華琳もありですよねw(sei)
アーモンド 様>楽しんでもらえてよかったです。続きは鋭意制作中?です。(sei)
本郷 刃 様>デレ華琳♪デレ華琳♪デレ華琳♪デレっぷ(グシャ踏)(sei)
鬼神 様>ありがとうございます。頑張りますね。(sei)
イマ 様>光速すぎて、拠点パート2・3個すっとばしてる気がしますよw 加減って難しいですね。(sei)
陸奥守 様>今思うと、華琳デレるの早いですねw 妄想が暴走しすぎました orz(sei)
アルヤ 様>まあ同じ一刀君なので、これくらいはできるかなと思い、頑張らせてみましたw(sei)
Satisfaction 様>無意識に女性をおとす、それが自分の考える一刀クオリティです!(sei)
shirou 様>一刀の動きは自分の妄想ですが、やっぱり同じようなことをしてる方がいましたかーw(sei)
この華琳いいわ〜(オシリス)
一気に読んでしまった。続きはよぉ。(アーモンド)
華琳可愛い!華琳可愛い!華琳可愛い!華り(ドゴッ殴)ごふぁっ!(本郷 刃)
おもしろかったッス! 続き楽しみにしてるッス〜。(鬼神)
光速で落ちましたね、華琳と秋蘭。是非とも濃密なイチャラブな展開を宜しくお願いします。ここまで恋愛の発展具合が早いと、呉√みたいに子供が出来て外史に留まり続けそうな展開になりそうですね。(イマ)
華琳がデレるの早いな。たまには難攻不落な女の子が見たい気がする。(陸奥守)
文官として原作呉√並みの働きをしてるな。(アルヤ)
一刀の動きが僕には『ド』で始まる有名な漫画のキャラの動きに似てる気がしましたwやっぱり一刀は無意識にこういったこと言いますねーw次も楽しみにしてます(ミドラ)
某格闘漫画の渋川先生の動きを一刀がwさてさて次にくすぐるは誰の女心か?次回も期待しております。秋蘭は怒らせたら・・・・・・・ダメデスヨ。(shirou)
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