コドクノツヅキ
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今日は高校の入学式である。

 

俺は学校へと向かう長い長い坂道を登っている。

これから続くであろう高校生活は、朝のハイキングから始まるのか。

退屈になるだろう高校生活で、何も思い出にならないよりはマシか?

 

 

退屈な入学式がやっと終わり、俺は自分の教室へ足を運んだ。

ホームルームで担任の先生の自己紹介や、明日から必要なものを聞いた。

今は余った時間を利用して、クラス全員の自己紹介なんかをしている。

適当に聞き流してはいるが、たかだか30人、名前はすぐに覚えるだろう。

 

そんなことを考えていたら俺の番になった。

俺は「よろしく」だの当たり障りのないことを言って席に座った。

そして後ろの席の奴の番である。

 

「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、 未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

 

こんな頭のおかしい奴が俺の後ろかよ。「高校デビュー」でも狙っているのだろうか。

あまり関わるとロクな事がなさそうだったので無視することにしよう。

ただ、顔くらいは拝んでおこうと思い、振り返る。

……顔はいいな。 ただ、不満が一杯といった表情ではあるが。

 

俺はこれから始まるであろう高校生活が、ロクでもないものだろうと思った。

 

______________________________________

 

四月一杯は顔を覚えるために席替えがなかった。

 

俺が観察している限りでは,涼宮ハルヒは髪型を毎日変えているようだった。

 

法則に気付いてから一週間たった月曜日、俺はうっかり涼宮ハルヒに声をかけてしまった。

 

「なあ、曜日によって髪型を変えているが、何か意味があるのか?」

「いつから気付いたの? これは宇宙人対策よ」

 

涼宮ハルヒは、そこまで言うとハッと気付いた様な表情で俺の目を睨む。

「アンタ、どこかであったことがある?」

 

「いや」と答えると、涼宮ハルヒは何かを考え込み席についた。

 

 

その日の昼休み、朝倉が興味深そうに俺に話しかけてきた。

 

正直、仲が良いと思われるのは嫌だった。

涼宮ハルヒとは仲が良い訳でも悪い訳でもなく、なんとなく話しただけだ。

もし涼宮ハルヒが普通の人間だったら俺も特に嫌だとも思わないだろう。

俺まで変人扱いされたらたまったものではない。

 

――涼宮ハルヒが良くも悪くも普通でないことがクラスの常識にまでなっていたからだ。

 

 

……涼宮ハルヒは、五月中に一通り部活に仮入部した後、全て辞めた。

性格はともかく能力が高い為だろうか、運動部に四六時中付け回されたり、

辞める辞めさせないで揉めていたりしたこともあった。

 

無論それだけではなく、休み時間になると怪しげなまじないの本を読んだり、

教室の外へ出て奇怪な行動を取ったりしていたのが思い出される。

 

……

 

ある日、涼宮ハルヒが俺の席の前にやってきた。

俺が黙って彼女を見上げていると、突然襟をつかまれた。

 

「アンタ部活とかやってんの?」

「いや、やってないが……」

「なら今日の放課後に私についてきて」

なんとなく俺は涼宮ハルヒについていくことになった。

 

放課後に、俺と涼宮ハルヒは文芸部室へ連れられて行った。

部屋の中には眼鏡をかけた知らない女子生徒が1人居るだけだった。

「じゃーん!今日からここが私達の部室よ!」

「お前、文芸部にでも入るのか?で、俺はなんでここに連れてこられたんだ?」

 

涼宮ハルヒの話では、ここは文芸部の部室ではあるが、

涼宮ハルヒが考えたという、部活動をするために借りることになったそうだ。

で、俺がここに居る理由は? その部活動とは何の関係があるのだろうか。

 

「あんたも私と一緒にやるのよ」

「はぁ?何言ってんだお前は?ところで、どんな活動内容なんだ?」

「まだ決めてないわ。とりあえず明日もココに来てよね。来ないと死刑だから!」

 

……正直期待はずれだった。

バカだったな。 風呂に入ってとっとと寝よう。

 

 

翌日、俺は少しイライラしていた。 昨日の俺をぶん殴ってやりたいくらいだ。

学校は山の上にあるから、ダルさとイライラが増す。

とにかく脚を動かして昨日の件を忘れようと思ったとき、後ろから谷口が話しかけてきた。

「なぁお前、昨日の放課後に涼宮ハルヒと何やってたんだ? あんまりあいつとは関わらない方がいいぜ。 俺は前の中学で同じクラスだったからよく分かる。話せば長くなるから言わないが、とにかく関わるのはやめとけ」

 

言われなくても分かってるさ。入学式の日に既に気付いた。気の迷いだ。

 

そしてその日の放課後

 

「先に行ってて!」と言って涼宮ハルヒはどこかへ走っていってしまった。

とにかく文芸部の部室へ行ってみるか。

どうせ暇だし、あの涼宮ハルヒが何をやろうとしてるのか気になる。

 

 部室の扉を開けて室内を見ると、昨日の女子生徒が1人で読書をしていた。

彼女は正真正銘の文芸部員であるらしかった。

「ごめん、邪魔じゃないかな?」と俺は話しかけてみた。

「……あなたは邪魔じゃない」という返事が返ってきた。

特に話すこともないので、それ以降は黙って涼宮ハルヒが来るのを待った。

 

さて、どうしたものか。 もしかしてこれは俺を文芸部に入部させる為の罠なのか?

目の前にいる女の子は、黙って本をめくったりしていたが、そのうちウトウトと

眠そうに首を揺らし始めた。 そんな様子をぼんやりと観察していると部室の扉が急に開いた。

 

 

「やあごめんごめん。捕まえるのに手間取っちゃって!」と言いながら

涼宮ハルヒが女子生徒を引っ張りながら入ってきた。

その女子生徒は、俺たちを見て少しビックリしたように、一瞬目を見開いた。

 

「なんなんですか……? ここどこですか? なんで私、連れて来られたんですか?」

怯えたように様子を伺う女子生徒は、俺達と同じ疑問を持っているようだった。

 

 

「あなた何か部活動やってる?」

「あの、書道部に……」

「ならそこ辞めて、うちの部に入って」

「あの…。嫌です……もう帰っても良いですか?」

と言って、女子生徒は帰ってしまった。

 

その女子生徒が何組の人間かは知らないが、俺まで変人だと思われたのは間違いないだろう。

どうしてくれるんだよ涼宮ハルヒ。

 

「もう俺も帰っていいか?」

「ダメよ」

「なんでだ。 お前が何をやろうとしてるのかは知らないが、ロクでもないことだろう。だから俺は帰る」

 

______________________________________

 

 

あれから半年ほど経つだろうか、気が付けば12月の始めだった。

 

何度席替えをしても、背後霊のように俺の後ろにまとわり憑く涼宮とは、もう半年くらい会話をしていない。

 

最初は「なぜ来ないのよ!」と抗議されたものだが、無視をしているうちに話しかけられることも無くなった。

 

まぁ、特に話すようなこともないし、

何よりも、そんなことしたらクラスの連中から変な目で見られる様になるかもしれない。

 

なんせ、今やコイツはクラスの、いや、全生徒の嫌われ者だからだ。

涼宮に反感を持つ一部の生徒がちょっかいを出したりしていたが、いつしか不自然なほど沈静化していた。

ちなみに涼宮は入学当初の元気が無くなっていき、今では根暗な女だ。

 

そういえば部活はどうなったのだろう。

様子見に放課後にでも文芸部の部室へ行ってみるか。

 

 

放課後、俺は文芸部の部室の扉を開けた。 中にいたのは涼宮だけである。

 

「あ、いらっしゃい……」といい、涼宮が嬉しそうに微笑んだように見えた。

「ここに来るのも久しぶりだな。 そういえばもう1人の女子はどうしたんだ? ほら、眼鏡をかけてた女の子」

 

涼宮ハルヒは下を向き、「あたしのことが嫌で出ていったみたい……」と言った。

……それもそうかもな。誰もお前になんか近寄りたくないぜ。 近寄った時点で電波の仲間入りだ。

 

「なぁ涼宮、ちょっとここにいていいか?」

魔が差した、と言うべきだろうか。 俺はそんな風に口走った。

どうせ家に帰ってもやることは無いし、どんな活動をするのか興味がある。

 

「はい、いいですよ」

涼宮は驚いたような顔で俺を見つめた。

 

…家に帰ったほうが良かったかもな。 涼宮はずっと1人で本を読んでいるだけだった。

俺は時計を観ながらそわそわしていると、涼宮はそれを悟ったのか、

「あの……何かゲームでもやりましょうか?」と言い、部室の棚からオセロを引き出してきた。

 

俺は涼宮と他愛の無い会話をしながら、ぼんやりとオセロをやっていた。

 

「涼宮先攻でいい。 ところで、このオセロ、あと棚にあるゲームはどうしたんだ?」

「一学期にね、転校生が来たでしょ?その子をここに誘ったんです。 そのとき、このオセロをしたりして遊んでたんです。でも、ある日突然こなくなってしまって……。 その後に直接理由を聞きにいったんです。そしたら、私とは関わりたくないって……」

 

なるほどね。

 

チラリと時計を見ると、4時半時になろうとしていた。

「じゃあ俺そろそろ帰らしてもらうわ。 早く帰らないと暗くなるから解散でいいな」

「あ、はい。今日はどうもありがとうございました」

殆ど黒になった盤面から石を片付け、俺は退室した。 

 

 

翌日の放課後もなんとなく文芸部室へ向かった。

 

今日も昨日と同じく文芸部室で涼宮とオセロをしている。 涼宮は強かった。

10ゲームくらいやって、結局1度も勝てなかった。

 

「あの、ごめんなさい……私ばかり……」

「いや、いいって。むしろ本気で来てくれた方がいいかな」

「ごめんなさい……」

 

気付いたら外は真っ暗になっていた、さすがに12月にもなると日が落ちるのは早い。

本格的に冬になろうとしているため、夜は特に冷える。

通学路の暗い坂を俺は下っている。隣には涼宮が白い息を吐きながら歩いていた。

さすがに暗い道を女の子一人に歩かせるわけにはいかないからな。

 

「あの、、明日も私とオセロをやってくれますか?」

「いいぜ。でも負ける気は無いからな。 あー…それと手加減はしないでくれよ」

「は、はい」

 

俯いた彼女の顔は良く見えなかったが、微笑んだように見えた。

やれやれ、明日もサボらずにここに来ちまうんだろうな。

 

 

次の日の朝、教室で俺は涼宮に話しかけた。

「今日も文芸部室行くからな」

 

涼宮は急に周りを見回し俯いた。

 

「どうしたんだ?」

「あの……教室で私と話すと他の子に……」

「他の連中には関係ないだろ。それに俺は他の人間に嫌われてでもお前と話すぜ。俺の意思だからな」

「でも……」

 

それっきり涼宮は黙り込んでしまった。俺に気を使っているのだろうか。

昼休みにまた話しかけたが、もじもじするだけで口を開いてはくれなかった。

 

 

放課後、俺は教室で10分ほど待った後、文芸部室へ行った。

昼休みに涼宮が、「私よりも10分くらい後に来て欲しい」と書いたメモを寄越したからだ。

理由は、俺と涼宮が一緒に歩いていると俺に害が及ぶかららしい。 つまらない事を気にする奴だ。

 

「いらっしゃいませ」

 

文芸部室の扉を開くと、涼宮が軽く会釈をして迎えてくれた。

パイプ椅子に座った俺を、涼宮はもじもじしながら見ている。

 

「どうしたんだ?」

「あの……怒らないで聞いてくれますか?」

「ああ、怒らないぜ。」

「お、おせんべいを焼いてきたんです。もしよかったら、食べてください……」

 

涼宮は鞄の中から煎餅の入った袋をそっと取り出した。

 

 

――――そう言えば昨日の帰り道、涼宮に好きなお菓子はあるか、と質問された。

俺は適当に煎餅と答えておいたのだった。……まあ、好きと言ったら好きか。 

ところで、煎餅って家庭でどうやって作るんだ?

 

「小麦粉と卵で作れるんですよ。作り方は以前、テレビ番組でやってたのを覚えてて……。 早く作る場合は、オーブンで乾燥させるんですよ……ってそんなこと興味ないですよね。 えへへ」

 

適当に答えた俺に、そんな苦労をして作ったのか。

 

「ありがとな」

「はい……」

 

涼宮は顔を真っ赤にして、下を向いてしまった。

煎餅は俺の好きな甘辛い醤油味で、そして美味かった。

「ところで、休みの日って何やってるんだ?」

 

 

涼宮は下を向きながら答えた

「読書したり……テレビを観たり……」

「なあ、明日、俺と一緒に街に行かないか? 暇があれば、だけどな」

涼宮は小さな声で「はい」と返事をした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

次の日、俺と涼宮は映画館に行った。 特に面白くもないが、

つまらなくもないという映画だった。彼女はとても喜んでいるようだった。

その後、ファミリーレストランに入って昼飯を食べ、そして家に帰ることにした。

 

勘定を済ませ、ドアを開けて涼宮に外へ出るよう促す。

 

「お、キョン、何やってんだお前?」

 

ふと歩道の方を見ると、谷口が居た。 そういえば谷口の家もここの方向か。

涼宮は黙って後ずさり、そっぽを向いてしまった。

 

「ああ、飯を食ってたところだ」

「なあ、後ろに居るの涼宮だよな? お前らもしかしてデートか?キョン、涼宮に関わるのだけはやめとけ。 こいつに関わるとロクなことがないからな」

 

 

涼宮は下を見ながら 「ごめんなさい……」 と言った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――肌寒い夜だった。 俺は涼宮と映画を見に来ていた。

最初はそう、気まぐれだったっと思う。 まさか、俺があの涼宮ハルヒを映画に誘うとは仏様も思わなかったであろう。

正直誘った俺が一番困惑していたのだから。

 

映画館を出たとき、偶然にも谷口と会った。

 

「お、キョン、何やってんだお前?横にいるのは涼宮だよな? なんだお前らデートか? キョン、涼宮に関わるのだけはやめとけ。 こいつに関わるとロクなことがないからな」

「おい谷口、中学時代何があったか知らないが、そういうことを言うのは男らしくないんじゃないか?」

「キョン……君。 ごめんなさい、私が悪かったの。 あの、帰るから、谷口君も怒らないで」

 

涼宮は自分の両手を軽く握り、背を向けた。

俺は彼女の手をつかもうとしたが、彼女は俺の手をすり抜け……人ごみの中に紛れて消えた。

 

―――――――――――

 

 

翌日俺はいつも通り俺は学校への坂道を上っている。

 

昨日は寝るまで、なぜ俺は映画に誘ったのかを考えていた。

今は山の冷たく湿った空気が、俺の思考を麻痺させる。

寒いのは堪えるが、無感情に考えを纏められる事に感謝した。

 

 

……

 

教室に着くと、意外にも涼宮は既に来ていた。相変わらず一人ぼっちで、黙ったままで。

 

「おーす、おはよう」

クラスの何人かは俺に軽く挨拶を返したが、相変わらず涼宮は黙っている。

 

「なあ」「……」 「俺はお前にも挨拶してるんだけどな」

 

涼宮は顔を下に向けたまま、小さな声で「おはよう」と呟いた。

谷口は少しこちらに顔を向けると、片眉を少し下げ、また前に向きなおした。

 

クラスの連中は不思議そうな顔をしていた。数人の女子はこちらを見てニヤニヤしている。

新しい「いじめ」と勘違いしているんじゃないだろうか。

 

昼休み、購買から帰ってきた俺は涼宮に向かって椅子に座る。

三分の一ほど減っている涼宮の弁当箱の前に二つ、紙コップに注がれたお茶を置いた。

彼女は少し怯えたように顔を上げた。

 

「……あの、こういうのは止めた方がいいと思うの」

「冷めるぞ、飲めよ。 別に悪いもんは入ってねえから」

 

俺は黙ってパンを食べる。 涼宮は結局飯を食い終わるまで、お茶に手をつけていなかった。

 

自分のコップに残ったお茶を飲み干す。 やっぱり時間が経つと冷めているもんだな。

すっかり冷めてしまった彼女のお茶を、自分のコップに移して飲み干した。

俺はストーブの上に置かれたヤカンから、新しいお茶を二杯注いできた。

 

「あの…」 「食後は喉渇くだろ? 熱くて飲めないのなら少し冷ますぞ」 

二回お茶に息を吹きかけたあたりで、涼宮は俺の手からお茶を取りちびちびと飲み始めた。

谷口はそんな涼宮の仕草にいらついているようだった。

 

「あなたまで皆に嫌われる」

 

ふと、涼宮はそう言った。

 

「別に」と、俺は答えた。別に深い理由など無いのだ。……俺が涼宮を無視していた事のように。

 

―――――――――――

 

あれから二週間ほど経っただろうか。

 

クラスで涼宮と他愛もないことを話していていると、意外な人物、柳本が俺の側に寄ってきた。

 

「ねえ、キョン君。 来週の金曜日って空いてる?」

 

このときの俺は、かなりのアホ面をしていたに違いない。 そのくらい意外だったからな。

 

「まあ、別に断る理由もないが…返事はもう少し待ってもらえないか?」

俺がそう答えると柳本は少し表情を動かした。 何を考えているのかはわからないが。

 

涼宮の方を振り返って見ると、彼女は慌てたように視線を逸らした。

 

 

 授業が終わり、俺はいつものように部室でハルヒと14時半くらいまでトランプをしていた。

俺は肘をテーブルについて、カードをぼんやりと眺めている。

…涼宮は俺の手持ちの札からジョーカーを残し、カードを机に叩きつけた、

 

「上がりです。 キョン君もそろそろ時間だから…もう解散です」

「ババ抜きも強いんだな」 ハルヒは少し笑い、俺の背中を押して部室から追い出した。

 

 文芸部部室から追い出されてしまった俺は、仕方なく集合場所に向かっていた。

駅前の広場に着くと、私服姿の柳本が俺に気づき手を振った。 他にも数人集まっている。

「五分前、ちょっと早いけど行こうか。…凄い、丁度だね。みんな揃った」

 

柳本を先頭に、俺たちは歩きだした。

 

メンバーは先頭から柳本、日向、鈴木の女子3人と垣ノ内、花瀬、松代の三人。

同じクラスの連中ではあるが、かなり珍しいメンバー構成である。

正直、何の集まりか聞かされていない。「気が向いたら来てね」とだけ言われていたから。

(正直来る気は無かった)おまけに私服のグループの中で、俺一人が制服だから凄く目立つ。

俺たちは駅そばのファミレスの一角に陣取ると、適当に注文を取り出した。

 

「ところで、キョンはこんな時間まで学校に居たのか? 部活もやってないじゃないか」

垣ノ内はメニューを俺に渡し、しげしげと俺の顔を見る。

「さっきまで遊んでたんだよ。 …ん、俺はこの『きなこ餅パフェ』にするか」

鈴木と日向はメニューをいつまでも眺めて離さない様子なので、柳本にメニューをそっと回した。

 

「涼宮か?」 垣ノ内は小声で言う。

 

一瞬、柳本は受け取る手を止め、少し顔をゆがめた。

 

「……ああ。」

「そうだ、まだ今日の趣旨を話して無かったね」

俺達の話を遮るように、柳本は声を被せた。

 

 

翌日、昨日のメンバーと買い物に出かけた。

柳本によると、なんてことはない、明日クリスマスパーティを開くとのことだったのだ。

 

俺たちは近くの大型ショッピングセンターへ行き、でかいショッピングカートが大盛りになるくらいの買い物をした。

時々柳本がこちらを見ては口元を緩めている。 まるで、いたずらを仕掛けた子供のように。

でも、彼女の表情には曇りが見える。 何かを気にしているのか?

俺は帰り際にショッピングセンターの隅で柳本を捕まえると、明日のパーティーには参加しない事を伝えた。 

 

「何で!? ここまで参加しておいて何を言ってるの!?」

柳本は俺の胸倉を掴むと堰を切ったように言葉を放つ。 俺はびっくりして何も言えなくなった。

…柳本がここまで感情的になったところを見たことが無かったからな。

 

「ああ、その件なら……代わりといっちゃなんだが、榊と朝倉を呼んでおいたから問題はな――」

「あなたが来ないと話にならないでしょう!」とだけ言うと柳本は泣き出した。

騒動に気づいた他の5人は、興味深そうに俺たちを遠巻きに眺めていた。

 

 

ショッピングセンターの隅にあるベンチに、二人腰掛けていた。 柳本は泣き疲れたのであろうか、黙ったまま下を向いていた。

 

「……なあ、本当は別の目的があるんだろ?」

俺が問うと、柳本はびっくりしたような顔でこちらを見た。

「涼宮か」 と言うと、黙ったままコクリと柳本は頷く。 ……やっぱりそうか。

「詳しくは聞かない、俺も似た様なものかも知れないからな」

 

ペットボトルのお茶を飲んで、窓から外を眺める。

「あのさ……」 と柳本はゆっくりと言葉に力を込め、話し出した。

 

「五月に涼宮さんが部活動巡りをやっていたのは…あなたも知ってるでしょ、あの時かな。 ……雨が降っていた日だった。 突然涼宮さんが仮入部届をもって体育館にやって来たの。 正直ね、あの四月の自己紹介もあったから……彼女が来たときはびっくりした」

 

彼女は少し遠くを見つめている。 気のせいだろうか、その眼差しからは”嫌い”というような感情は見えない。

……これは“あこがれ”といえばいいのだろうか。なんとなくだが、そんな気がする。

実際、話をしながら柳本の表情は楽しそうにコロコロと変化している。 

 

「……でね、試しにボールを持たせてみたの。 とても初めて触ったようには見えなかった。  うまく言えないけど、私は、この人ならきっと凄い選手になれる!って思ったの。 でも、次の日に彼女は新体操部には来なかった。 わたし……」

 

柳本は胸に手を置き、苦しそうな表情を見せる。

 

「そのあと何度か涼宮さんと話をして、彼女にもう一度部活に入るようにお願いしたの。 そうしたら…彼女、ごめんなさいって、もうつまらないから新体操はやらないって。 わ、私、悔しく……なんだか好きな新体操を馬鹿にされたような気がしたの。

凄く悔しくて、ね……眠れなかった! もうあんな人とは関わりたくないって思ったの」

 

柳本の声はうわずり、肩は震えていた。 彼女は俺を上目気味に睨み、襟をつかんだ。

 

「キョン君が彼女と仲良くしているのを見たとき、思ったの。一人にしてやればどんなに惨めな気持ちになるかって。 涼宮さんにも私と同じ気持ちを味わってもらおうと思った! だから!……そう、あなたを誘ったのはそういう理由。

どう、私ってバカみたいでしょ。軽蔑したでしょ。 何か言ったらどうなの!?」

 

柳本は俺の襟を掴み、前後に揺さぶる。

 

「いや……気持ちはわからないでもない。 涼宮がした事の結果だ」

 

……再び泣き出してしまった柳本が落ち着くまで、俺はただ待っていた。

 

「さあ、さっさと飾り付けをしないと日が暮れちまうぞ」

 

17時半頃、まだ足取りがおぼつかない柳本を連れ、ショッピングセンターを出た。

後ろには大荷物を抱えた見物人を5人も引きつれてな。

ショッピングセンターを出てまもなく、俺の携帯に着信があった。 相手は…朝倉からだ。

 

「キョン君、日向さんちに行くの中止! …今から学校に来て!」

 

かけてくる相手も意外なら、内容も意外だった。

 

「驚かないでよ! 多目的室を借りたから、そこで明日のパーティーやるから! 早く来て!」

 

俺がそのことを伝えると、連れの奴らは案の定驚いていた。

 

「遅いよ」

 

学校に着き多目的室に向かうと、デートで待ちぼうけを食らったような顔をした朝倉が待っていた。

 

「悪い、大荷物だったからな」

俺は学校の坂前から後ろ手で引いていた柳本の手を引き寄せる。

 

「ひどい! 荷物扱いするんじゃない!」 柳本は俺を軽く叩く。

「その元気があればもう大丈夫だな」

 

俺が笑うと、柳本は恥ずかしそうに下を向いて、また俺を叩いた。 …今度は少し強く。

 

 

「ところで朝倉、どうやって多目的室を借りたんだ?」

「交渉術のたまものよ。 普段いい子ちゃんにしてるからあっさりOKをもらえたわ」

「しかし、今回はやけに積極的なんだな」

「私、意外かも知れないけど退屈なの嫌いなの。 意外でしょ?」

「いや、そうでもないぜ。 案外食わせ者なんじゃないのか」

 

そう言うと朝倉は少しニヤっと笑い、ウインクした。

 

クリスマスパーティーの準備を適当に切り上げ、俺は仕度をして家路へとついた。

 

途中、俺はいろいろと考えていた。

鈴木がやけに嬉しそうな顔をしていたこと、柳本の事、やけに積極的な朝倉の行動。

……そして、部室から俺を追い出したハルヒの笑顔。 何かが心の端に引っかかった。

 

俺はどうするべきかと考えた瞬間、胸ポケットに入った携帯が振動しだした。

見ると、柳本からのメールだった。

 

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from:柳本

sub :クリスマスパーティ

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今日はみっともない所を見せ

ちゃったかな。

 

…でも、なんかすっきりした

ありがとう。

 

明日のクリスマスパーティ、

楽しみにしてるよ。

 

('-^)-☆

 

P.S もう気にしてないから

涼宮さんも連れてきて。

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俺は携帯を閉じ、ポケットに入れる。

日がすっかり落ちてしまっていたが、なぜだかあまり寒さを感じなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

携帯電話をとり、ハルヒの番号を電話帳から開く。

七回ほどコールしたところでハルヒが出た。

 

「あ、あの、もしもし……」

 

なんとも間の抜けた声である。

直接話してばかりだから、びっくりもするか。

 

「明日暇はあるか?」

「あの、明日は……その……」

「じゃあ、暇じゃなかったら12時に制服を着て、駅まで来てくれ」

「約束……あるんでしょ? 約束破るのはだめじゃない……。わたしなら……」

「ああ、言い忘れてたな。 クリスマス会は皆を学校に集めてやることになった。 心配はいらないから来てくれよ」

「あ……はぃ…」

「じゃあまた、明日な」

「う、うん…」

 

俺は携帯を閉じると枕もとに放り、眠りについた。

 

 

……

 

翌日の昼、俺は駅へと向かっていた。朝見たニュースによると

この冬一番の冷え込みらしい。 暖冬傾向にあるとはいえ寒いもんだ。

駅前に着くと既に改札前にハルヒが来ていた。

 

 

涼宮は俺に気がつくと、ぺこりと一度お辞儀をした。

よく見ると、彼女の頬が桃のように赤く染まっている。寒さの為だろうか?

 

「なあ涼宮、どのくらい待った?」

「え、えと、ついさっき…です」

「うそつけ、結構待ったんだろ? 顔に書いてあるぞ」

 

事実、彼女の肌は乾燥し、唇も荒れているみたいだ。

……それに、なんだか少しやつれているような気がする。

 

「……一時間くらい」 と、涼宮はぼそりと呟いた。 

 

「はぁ、お前な…。 これやるから使えよ」

俺はポケットの中からまだおろしたてのリップクリームを取り出すと涼宮に手渡した。

 

「あ、あの、これ…その……」

「乾燥してるぞ。やるから使えよ」

そう言うと涼宮は軽く頷き、リップクリームをつけた。

 

「ずっと待ってくれたのはいいが、お前に風邪でもひかれたらな……」

「うん、ごめんね」「謝る必要はないが、無理はするな」

涼宮は真っ赤になって頷いた。

 

それにしても、たった数ヶ月ではあるが、あの涼宮が随分とおとなしくなったもんだ。

そうこうしているうちに学校に着いた。

 

「早かったね」

多目的室につくと、そこにはパーティー企画のメンバーと朝倉が待っていた。

 

「お前らこそ、まだ30分くらいは早いぜ」

「ところで涼宮さんは?」

「ああ、廊下まで来てるが…やっぱりちょっと気にしてるみたいだ」

 

俺がそう言うと柳本は廊下にパッと出て、ちょっとしてから涼宮を捕まえて戻ってきた。

朝倉はおろおろしている涼宮を見ると、満足げに微笑んだ。

 

 

「さあ、始めましょうか」

柳本はにっこりと微笑み、そう宣言する。 昨日の事が嘘のように清清しい表情だ。

 

「よう、今日はいい感じだな」

「そうね」 と答え、柳本は微笑んだ。 正直、ここまで柳本って可愛かったかな?

女の子の涙は武器って言うけど、やっぱり笑顔の方がいいもんだな。

……いや、昨日の涙の効果もあるのかもな。 顔を見ると正直ドキドキしちまう。

 

涼宮はというと、阪中さんと言ったかな? クラスの一人と話し込んでいる。

阪中さんの方から涼宮に話し掛けてきたのは、正直予想外だったが。

 

その様子をずっと伺っていると、ふと涼宮と視線が合った。

涼宮は真っ赤になって俯く。 話の内容を聞かれればそりゃ恥ずかしくもなるよな。

……それにしても涼宮は赤面症なのだろうか。あんな様子ではクラスに馴染むのも

大変そうだ。 まあ、切っ掛けが掴めれば涼宮だって変わるだろう。

 

「キョン君、あっちでちょっと話さない?」

柳本は俺の袖を引っ張って、真中辺りにいたグループの中に引きずっていった。

ふと涼宮の方を見ると目が合った。

 

参加者で歌を歌ったり、プレゼント交換やレクリエーションをした。

いわゆる普通?のクリスマスっぽい行動だが、たまにはこういうのもいいな。

今回は健全な交流会ということで、午後3時には解散となった。

涼宮は阪中さんや由良さんに連れられて帰っていった。

 

「余り者同士、一緒に帰ろうか」 と柳本は言い、俺の手を引く。

俺は柳本と駅で別れる。 少し青春っぽいシチュエーションか?

「それじゃあ、またね」 「ああ」 軽く手を振り、駅で別れた。

 

 

その日の夜は家族ともう一度クリスマス会をやって、床についた。

 

―――――――――――――――

 

 

「……あの、キョン君。 ねえ、起きてよ」 体を揺すぶられる。

妹よ、学校は冬休みだから早く起こさないでくれ。 頼むから。

 

……目を覚ますと、妹ではなく制服姿の涼宮だった。

辺りを見渡してみる。 帰って寝たと思ったが、そこは学校だった。

 

「ここ、変なの」 少し怯えた様子で涼宮はそう言った。

 

俺は顔をゴシゴシとこすり、辺りを見回す。 周りはハッキリと見えるのに、薄暗い。

人気のない学校とは、こんなに不気味なものだったか?

 

「ここ、人が居ないみたいなの。 探してみたけど、誰も居なくて、学校から出られなくて、ここに来たらキョン君が寝てて……」

「人が居ないか、学校であることは間違いだろうが……」

 

どんよりと灰色に染まった空に、薄暗い雲が渦巻いている。 こんな風に雲が渦巻く状況なんて見た事がなかったが……。

 

「とりあえず冷えるな。 そういえば部室にオイルヒータがあったか」

涼宮はコクリと頷いた。

 

 

俺と涼宮は文芸部室の中で並んで机に座っていた。

室内であるにもかかわらず、吐いたが息が白く沈んで行く光景は、なぜだか幻想的だ。

ロッカーに仕舞ってあった涼宮のカーディガンを肩にかけたまま、二人で震えていた。

 

オイルヒータにより室内の温度は少しずつ上がっているとはいえ、全く難儀なものだ。

涼宮は手を口の前ですぼめ、寒そうにすり合わせていた。

俺は自分の手を涼宮の手の上を覆うようにかぶせる。涼宮は一瞬体を強張らせた。

なんという冷たい手なのであろうか。 ……母さんが言うには女の子は冷え性が多いんだっけな。

 

「しかし、オイルヒータって奴は何でこう温まるのが遅いんだろうな。  ハロゲンヒータでもあれば直ぐに暖かくなったのにな。」

 

涼宮はくすくすと笑い、こう言った。

 

「わたしは、オイルヒータ好きですよ。 オイルを温めて、それからじっくりと部屋を暖めてくれる。スイッチを切ってもしばらく暖かい」

「こういうときはパッと暖めてくれるほうが良いと思うな、遠赤外線でパッと温めて欲しい気分だ。 寒すぎる」

「今もあったかいです」涼宮は下を向いたままそう呟いた。

「ところで、なんで学校に来ちまったんだろう。記憶が正しければクリスマス会が終わった後に、家に帰って寝たと思ったんだが……」

 

「そうなの! わたしも不思議なんだけど、いつの間にか学校にいて。 でね、これは夢じゃないかなって」

「夢だったらリアルに寒くしないで欲しいもんだな」

「そうだね」 涼宮は下を向いてくすくすと笑っている。

「……なあ涼宮。 何で口調とか変えたんだ? 一学期はそんな雰囲気じゃなかっただろ」

 

どうせ夢だ。 聞きたいことを聞いておこう。

 

「わたしね、どうやったら皆と仲良くなれるか分からなかったの。 今までは頑張って勉強して、スポーツも頑張って……そうすれば皆は褒めてくれた。 でも、それは間違ってたの。気付いたら独りだった。 あたし、寂しかった。」

 

最初に涼宮と会ったときから感じていた違和感。涼宮は人との付き合い方を知らなかったのだろうか。

今まで感じたことのない感情が湧きあがってくる。 この感じは何と言えばいいのか。

 

「でもね、キョン君は気付いてくれた。 分からないから怖くて……こう喋ってみたら……」

何故だろうか、寂しさに似た感情が俺を満たす。 俺は黙って涼宮を抱きしめた。

「意味分からんな。 その理屈、何も知らない子供みたいだ」 ……返事はない、涼宮は眠っていた。

 

何時の間にか部屋も暖まり、俺は涼宮を抱えたまま、まどろんでいった。

 

 

―――――――――――――――

 

俺はハルヒと向き合い、見つめ合う。

ハルヒは俺を長机に押しつけると、人差し指で頬をいじくりまわす。

おい、やめてくれ! 変だぞ! 柔らかくて、ちょっと良いニオイがする。

ハルヒはオアアアアアと喉を鳴らし、俺の目を見つめ―――

 

「キョンくんキョンくん、起きてー」

 

薄目を開けてみると家の飼い猫のシャミセンがどアップで映る。

俺の上には妹が馬乗りで、厭そうな顔をした猫の肉球を押しつけていた。

「お前な、もっと飼い猫をいたわろうと思わないのか?」

「キョンくんおきた! シャミえらい!」

 

確かにおもちゃにされて怒らないシャミセンは偉いかも知れない。

……それにしても俺はなんて恥ずかしい夢を見たのだろうか。

 

「ったく、今日は休みじゃないか」

「キョンくん、今日は買い出しの日だよー」

 

そういえばそうだったっけな……。 

 

 

 

俺は妹を連れて町に買出しに来ている。繁華街はすっかりと様変わりして新年を迎える準備に入っていた。

正月用の乾き物や飾り、そして妹の為に七割引処分中のクリスマスケーキを購入して帰宅することになっている。

 

「なあ、お前昨日もケーキを食ったんだから今日くらいは食わなくても良いんじゃないか」

「キョンくん大丈夫、お菓子はベツバラだから。 あ、じゃあキョン君の分も食べちゃおうかな」

「お前なあ、ほどほどにしないと太るぞ、」

「キョン君の意地悪!」

 

妹はあっかんベーをすると走り出し、俺が止める間もなく人にぶつかってしまった。

 

「ああ、すみません。ほら、お前も謝れ」

「おねえさん、ごめんなさい」

「――あれ、キョン……君?」

 

顔を上げると、豆鉄砲を食らった様な顔をして、ハルヒが立っていた。

 

 

 

それから30分後、買い物を済ませた俺たちはぶらぶらと光陽公園を散歩している。

妹は俺とハルヒの周りをちょろちょろと走り回っていた。

 

「今日は妹さんと買い物だったんですね。……ふふ、仲がよさそうですね」

「ああ、見ての通りだが、この前言った通り口調は丁寧じゃなくてもいいんだぞ」

 

……しまった。 ハルヒに話したとか、そりゃ夢の話じゃないか。

 

「そ、そうだね。 でも、急に変えるとちょっと恥ずかしいかな」

 

どうやらハルヒは気付いていないようだ。 助かった。

 

「ところでハルヒ、年が明けたら初詣に行かないか? …予定があるなら構わないが」

「う、うん。 大丈夫」

 

ハルヒは下を向いたままそう呟いた。

 

「――ねえ、お姉ちゃんはキョンくんの、かのじょ?」

 

不意に妹が声をかけてきた。

 

「……お前な」

「あ、あのね、あたしそんなのじゃないのよ。お兄さんは大切な……お友達なの」

 

 

_________________

 

 

年が明け、初詣に出かける事になった。 気温は摂氏3℃、吐く息は白い。

俺たちは駅前で待ち合わせをして、俺の家の近くの神社に向かう。

メンバーはハルヒ、クリスマス会企画の6人、谷口、そして朝倉だった。

……このメンバーになったのは、俺が電話をかけて初詣へ一緒に行く約束をしたからだ。

 

俺たちの少し後ろに3歩下がったままハルヒが付いてくるので、

時々振り返ってはハルヒが遅れていないかを確認する。

たまに目が会うと、ハルヒは気付いたように小走りしていた。

 

「なあ、キョン。 お前は涼宮と二人で来ると思ったんだけどよ、なんで皆を誘ったんだ?」

谷口は俺に言った。

 

「……そうだな、今までハルヒの奴と過ごした感じだと、 アイツも人付き合いが必要かなと思ってな」

「……ふーん、そうか。 でも、アイツ中学時代は割と人付き合いはあったぞ」

 

「そうか? しょっちゅう赤面したり、言葉を詰まらせたりしてるんだがな……」

「……そうか。 で、キョンはどう思うんだよ」

「…? ハルヒをか? もうちょっと元気が出たら良いとは思うが……」

 

谷口は溜息をつき、額に手を当てる。

 

「お前さ……まあいい。 せいぜい頑張れよ」

「意味がわからん奴だな。 そういや、お前もやたらとハルヒに絡むな」

「まあ、そう言えばそうか……。 別に俺は……そうか。 そうなのかもな」

「ますます意味がわからんな。 お前、熱でもあるのか?」

「……まあ、そんなところか、はぁ……お前に言われると凹むぜ」

 

谷口は何かを考える様に目をつぶった後、苦笑いした。

 

「ほら、涼宮が遅れ気味だから引っ張って来いよ」

「あ? ああ」

 

谷口に背中を叩かれ、涼宮の手を引き、他のメンバーと合流した。

 

「ねえ、涼宮さん、あっち行ってみない?」

日向達は出店の方へハルヒを引っ張って行き、谷口はナンパをするのだろうか、どこかへいってしまった。

気付けば柳本と二人、取り残されていた。

 

「みんな楽しそう。  朝になったばっかりなのに」

「元気があった方が良いんじゃないか?  ハルヒの奴も他の奴と仲良くなったほうが良いだろうしな」

 

柳本は真面目な顔で俺の顔を覗き込んでくる。

 

「ところで、キョン君は涼宮さんと付き合ってるの?」

「いいや、どっちかって言うと……保護者、いや、なんだろうな、わからん」

「そうかな、結構うわさになってるけど。 ほら、毎日のように二人でいたり……」

「ああ、部室でボードゲームとかをやったり、散歩したり程度だが」

「ふーん、なんだか恋人みたいだけど?」

「そんなんじゃ無いだろう。 ……ハルヒもいい友達って言ってる」

「ふーん……そう。 じゃあ、こうすれば私達も恋人に見えちゃうかもね」

 

柳本は俺に腕を絡める。 冬服越しではあるが、硬い感触ではあるが、その、な。

 

「キョン君、そこのたこ焼きでも食べない? おごるよ」

「腹が減ってるなら素直に言っていいぞ」

「うるさいわね、人が食い意地張ってるみたいに言っちゃってさ」

「冗談だよ。 謝りついでに俺が出すから許せよな」

「うーん、まあ今回はそのくらいで許してあげないでもないかな」

 

 

柳本は嬉しそうにたこ焼きを頬張り、熱そうにはふはふと言っている。

 

「焦って食うと火傷するぞ……」

 

そう言った瞬間に柳本は俺の口にたこ焼きを突っ込んだ。しかも丸ごとかよ。

はふはふ言いながら涙目になっている俺を見て、柳本は笑っている。

 

「こういうのも美味しいんじゃない?」

 

既にたこ焼きを飲み込んでいた柳本はそう言った。

 

「いろいろ熱いみたいだねえ」 「青春ってやつ?」

 

顔を上げると一緒に来た連中が冷やかして笑っていた。

朝倉も俺の目をじっと覗き込み笑う……ハルヒも笑っていた。

 

無理にたこ焼きを飲み込んだせいだろうか、その日はずっと胸焼けがしていた。

 

 

 

年が明けて新学期になった。

 

ハルヒは徐々にクラスに馴染んでいき、最近ではクラスの連中とも話している姿をよく見かける。

俺は机に頬杖をついて、ぼんやりとハルヒを見ている。俺の役目もそろそろ終わりかな。

ふとハルヒと目が合う。 俺の視線に気付いて、彼女は少し微笑んだ。

 

この頃、ハルヒの奴が笑うのをよく見かけるようになり、俺は安心していた。

そろそろ俺たち二人の部活動も終わるときが来たのかもな。

 

「なあ、ハルヒ。 たまには文芸部を休んで気晴らしに遊びに行ってみたらどうだ?」

 

ハルヒは少し困ったような顔をした。

 

「でも、あたし部長になったし……部員もいるじゃない? だから……。」

「別に俺に構わなくても大丈夫だぞ。 最近は阪中とか割と仲がいいじゃないか。」

「そうだね、たまには息抜きしなきゃ息が詰まっちゃうものね。」

 

ハルヒはにっこりと微笑んだ。

 

「あ、そういえば……なんでもない。」

「そうか、じゃあ明日は部活を休んでみるか。」

「そうね。」

 

俺たちは適当に部活を切り上げ、家に帰った。

 

帰り道でたまたま柳本と会い、カラオケに誘われた。

ぼんやりと OK しちまったが、そう言えば二人か・・・…。

 

「キョン君はどういうの歌うの?」

 

柳本はリモコンを見ながら、せわしなくスタイラスを動かしている。。

 

「そうだな、ちょっと前のビジュアル系とか、POP な奴が多いかな。

 まあ、親父の影響もあるが、古い歌謡曲も歌えるぜ。」

「結構変わってるんだね。私も結構そういうの好きだな。」

「で、ジャニ系の歌える?」

「まあいけるぜ。そんなにうまく無いけどな。」

 

柳本はリモコンとマイクを渡してきた。

 

「ほら、キョン君も好きなの選んで。あ、これ主旋律よろしく。私ハモるから。」

 

既に予約画面には 3 曲入っており、前奏が始まっている。

 

「おいおい、どうやって選べばいいんだよ。」

「ふふふ、歌いながら入れるのも重要なスキルだよ。」

 

なんだかんだ言って柳本は二人で歌う曲と、可愛い感じの恋愛ソングを混ぜて入れている。

俺が入れるようにインターバルは設けてあるわけか。……ってどれだけ歌うんだ?

 

部屋のインターホンが鳴り、残り時間を告げる。

たまには忙しく過ぎる時間も悪くないな。

 

「ねえ、店員さんには恋人とかに見えるのかな?」

「そうか? たまに谷口とか国木田と二人でカラオケに来るけど無いな。」

「それは恋人に見られるほうが可笑しいって。」

 

柳本はケラケラと笑っている。

 

「ねえ、本当に恋人になってあげようか?」

「馬鹿言え、お前は可愛いんだから妥協するなよ。」

「……それがね…なかなか居ないから困るんだよね。」

「そりゃ苦労しそうだな。」「そうね。」

 

正直、最近の柳本は可愛く見える。

 

 

翌日の朝、珍しくハルヒから話し掛けてきた。

 

「ねえ、キョン君はどこか遊びに行ったの?」

「ああ、カラオケに行ってきたぞ。」

「あたしも阪中さんたちとお買い物に行ってきたの。」

 

ハルヒが周りと馴染んでいくことは喜ばしいことだ。…少なくとも俺と二人で居るよりかは。

 

「そうなんだ……今日も部活休みにしておこうか! たまには二連休!」

「二連休ねえ……。 そういや最近は文芸部に入り浸りだったな。 まあ、いいぜ。」

 

今日のハルヒは変だ。

 

体育の授業、嫌なマラソンの時間。 ストレッチをしていると谷口が俺に話し掛けてきた。

 

「キョンお前さ、涼宮の奴寂しそうにしてたぞ。 行ってやったらどうなんだ?」

「そうか? 阪中あたりと遊んでいたんじゃないのか?」

「いいからお前が行ってやれよ。」

「何で俺が。 友達なら他にも居るだろ。」

 

谷口はニヤリと笑い、俺にこう言った。

 

「どうせお前のことだから、お友達とか言われてスネていたりするんだろうな。」

「……バカ言うな。」 「へっ、そうならいいけどな。」

 

俺はただ、ハルヒが幸せならそれでいいと思う。

 

……

 

「ねえ、キョン君、知ってる? 昨日文芸部に男子が入ったんだってさ。」

 

翌朝、朝倉の奴が嬉しそうに話しかけてきた。

 

「そうなのか、ようやく部活動らしくなりそうだな。」

「部員も戻ってきたそうよ。 そうそう、昨日生徒会が…」

 

『文芸部報を作らないと、予算を減らす。場合によっては廃部もありうる』

 

「って言ってたけど、いいの?」

「そうか、それは忠告として受け取っておく。」

 

……朝倉が時折見せる笑顔が気になる。 普段は作り物のような笑顔が時折本当の輝きを見せる。 

子供が時折見せるような、少し悪意を含んだ笑顔……首筋に痺れが来るような感覚がある。

 

朝倉の提案もあり、文芸部室に行くことにした。 たったの二日なのに、久しぶりのような気がする。

例のいなくなった転校生―――古泉と言っていたかな? ソイツがわざわざ入部したらしい。

 

「僕は古泉と言います……始めまして、ではないですね。 これからはよろしくお願いします。」

「ああ。よろしくな。」

 

古泉は事情で入部出来なかったと言っていた。 どこまで本当なのか?

近頃おかしいことが多すぎる。 だが、現実として部の存亡がかかっているからそうは言ってられない。

俺たちはしばらく本作りに全精力を注ぐために部室に通って小説を書くことになった。

 

「なあ、長門さんだっけ。 何で協力してくれるんだ?」

「……もともと部員だから。 それに今居なくなられたら困る。」

「そうか。」

「…まあ、あまり気にしない方がいいですよ。」

 

居なくなる? 無くなるの間違いではないのか。 なぜ今なんだ?

 

「ねえ、皆! 文芸部報の表紙を書道部が提供してくれるんだって。」

 

沈黙を破ったのはハルヒだった。

 

「キョン君、なんでそんな難しい顔してるの?」

 

ハルヒは俺の顔を覗き込んでくる。

もう疑念を晴らす材料なんて見つからない。

 

「……いや、団長が遅いからな。」

「キョン君それ酷い! あたしは部長として……。」

「ははは、冗談だよ。 お疲れさん。」

 

ハルヒは頬を膨らましているが、目は笑っている。

今は余計なことを考える必要は無いとは思うが……俺の気のせいだといいんだが。

 

________________________________________________________

 

小説が一向に進まない俺は、部室に居残っていた。

外はすっかりと暗くなっており、寒さが身に沁みる。

 

「あの、お話があります……。」

 

―――朝比奈みくる。五月の終わり頃にハルヒが連れて来て、帰ってしまった女生徒。

……そして、文芸部報の題字を書きたいと言ったのも彼女だった。

 

「表紙の件ですか?」

 

彼女は少し黙り、こう切り出した。

 

「いえ……涼宮さんのことです。」

「? …もしかして、五月頃のことで何か気にしていたりするんですか。」

「……違うんです。 彼女を助けてあげてください。」

 

申し訳なさそうに俺を見て、彼女はそう言った。

 

「ああ、小説なら頑張って書きますよ。」

「違うんです! あの……やっぱりあなただったんです!」

「俺? 何がです? 」

 

朝比奈さんはハッとしたように目を見開き、おろおろし始めた。

 

「ああ、どうしよう、何でわたし…どうしよう……。」

「朝比奈さん?」

 

朝比奈さんは体をビクつかせて、こちらの様子を伺っている。

 

「ああ、ハルヒなら周りに馴染んで来てるから大丈夫ですよ。」

「違うんです、ああ、こんなの規定事項じゃないのに……」

「朝比奈さん?」

 

「ごめんなさい」

 

朝比奈さんが俺の首筋に手を当てた。

痛……

 

……

 

俺が気が付いたのは夜だった。

どうやら校舎の壁に寄りかかって寝てしまっていたようだ。

妙に蒸し暑いのでブレザーを脱いだ。

 

妙な違和感を感じて辺りを見回した。 ……ここは北高じゃない。

出口を探してフラフラと歩いていると、校庭に出た。

 

校庭には白線で落書きがしてあり、そして校庭の隅で女の子がうずくまっていた。

 

「おい、どうしたんだ?」

「あんた、宇宙人なの?」

 

女の子はそう言い、顔を上げ……

 

「ハルヒ……?」

「!! あんた宇宙人!名前はなんていうの! ああ、良かった、届いたんだ、メッセージ。」

「いや、俺は宇宙人じゃない。」

「嘘よ!あたしの名前当てたじゃない! あたしまだ自己紹介してないから!」

 

小さいハルヒはえらく興奮した様子で俺を見ている。……これは夢か?。

期待に応えてやるくらいはいいかもな。

 

「俺の名前はジョン・スミスだ、訳あってそう名乗っている。」

「ジョン! ありがとう!」

 

ハルヒは俺に抱きついて来た。

 

「こんな、ちっぽけなあたしに気付いてくれて、嬉しい。」

「どうしたんだ?」

 

俺にはかけてやる言葉が見つからなかった。

……彼女は小さな肩を震わせて、俺のシャツを掴んでいた。

 

……頭をそっと撫でてやる。

 

「ジョン、また会えるよね。」

「ああ。」

 

ハルヒは俺の言葉を聴くなり何処かへ行ってしまった。

 

 

「ごめんなさい」

 

朝比奈さんの声が聞こえた気がした。

 

……

 

衝撃を感じたような気がして跳ね起きると、そこは図書室だった。

やたらと冷える。 どうやら寝汗をかいていたみたいだ……。

気が付くと文芸部報の表紙が置いてあった。

 

………

 

俺たちはなんとか百部の冊子を作り終えた。

意外と人気があるらしく(無料ではあるが)、即日完売状態だった。

 

俺はペラペラと部報をめくり、部室の棚に戻す。

暗くなる前に女子を帰し、今は古泉と二人、片づけを終えたところだ。

 

「あなたは神様が居ると思いますか?」

 

唐突に古泉が語りかけてくる。

 

「お前の小説の話か? 出来は良かったと思う。……勧誘ならお断りだがな。」

「いえいえ、とんでもない。 もしもの話です。」

「神とやらが居るかは分からんが、完璧な奴は他者に興味を持たないだろう?」

 

「では、別の質問を。 あなたが好きな人が、他の誰かを好きだったら?」

「その人が本当に幸せなら、そっちの方がいい。」

「……同感ですね。」

 

古泉は少し間を置いて、複雑そうな表情を見せた。

 

「よく分からない奴だな。 じゃ、帰るぞ。」

「見守るのも悪くないですよ。」

「ストーカーはやめておけよ」

「ははは、ご忠告ありがとうございます。」

 

「……守らなければならないのは恋敵ですが。」

 

去り際に、古泉は確かにそう言った。

 

……

 

「よう、キョン。 涼宮に何かしたのか?」

 

ある日、唐突に谷口が言った。

 

「いや、別に。 どういうことだ?」

「いや、今日はずっと涼宮がお前の後に付いて来てるぞ。」

「え、そうなのか?」

 

俺はあえてハルヒを確認しなかった。

 

「お前もいい加減にはっきりしろよ。」

 

谷口はそれだけ言うと何処かへ行ってしまった。

ハッキリする、か。

 

とりあえず屋上へ上がり、ドアの影に隠れるように座った。

しばらく待っていると、ハルヒがドアの隙間から頭を出してキョロキョロしだした。

 

「あ、あれ……?」

 

「よう。」

 

スチールの扉に頭をぶつけてハルヒがうずくまっている。

 

「ハルヒ、っっ……お前面白いなっくくく……。」

「酷いよ、びっくりさせるなんて。 あたた……。」

「どうしたんだ?」

「えっ、きっ、奇遇だね……。」

 

面白いくらい動揺しているハルヒ。

からかうのもいいが、真面目に訊いてみるとするか。

 

「……そりゃねーよ。」

「偶然会ったみたいだね!」

「言い方の問題じゃない、どうしたんだ。」

 

少し困ったような顔で、ハルヒは呟いた。

 

「……聞いても笑わない?」

「……わからん。」

「変なところは真面目なんだから。」

 

ハルヒは俺の隣に腰掛けると、そっぽを向いたので、そのまましばらく黙ってみることにした。

 

「あのね、あたしが死んじゃう夢を見たの。それで、凄く寂しくなって……。」

「子供みたいだな。」

「……だって、あたしが死んだら……きっと……あなたは忘れる。」

 

ハルヒは俺のブレザーを握り締め、頭を胸にうずめてきた。

 

「ごめんね、友達なのに……こんなこと、ずるいよね。」

「…なんで友達なんだ? 俺は……。」

「だって、友達の方が……長く続くって言うじゃない……。」

「その理屈はおかしい。 たとえばな、ずっと一緒の夫婦だっているだろ?」

 

俺はハルヒの額に軽く口付けをした。

 

「俺はお前が気になる……というか好きだ。理由はわからん。だから、一緒にいて理由を探したい。

「……うん」

 

ハルヒは顔をあげて俺の目をまっすぐ見てくる。

「あたしも、好き。 ……でも。」

 

ハルヒは再び視線を落とした。

 

「俺は多分一生お前を忘れない。 ……例えばこの先別れることがあっても。」

 

______________________________

 

冬が過ぎようとしていた。

季節はずれの大雨も過ぎ、風も暖かい。

 

久々の部活の休み。 ハルヒはいつものように俺に語りかけてくる。

 

「ねえ、キョン。 今日は家に遊びに来ない?」

「ばっ、何言い出すんだよ。」

「あんた、今いやらしいこと考えてたでしょ?」

「ああ。」

 

「……馬鹿。 残念ながら、今日は近所の男の子が勉強しに来るのよ。」

 

……結構マジで残念だったりする。

 

「何鼻の下伸ばしてるのよ。」

「え、嘘だろ。」 「……やっぱり合ってるじゃない。」

 

ハルヒは俺の鼻に軽くパンチを入れる。 …これは結構痛い。

 

「バカキョン。」

「お前な、結構痛かったりするぞ。」

 

今の俺、涙目だと思う。

 

「あ、涼宮のお姉さん。」

「あ、ハカセ君。 丁度いいところに来たわね。」

 

利発そうなその男の子はきっと、家庭教師の教え子なのだろう。

青信号を渡り、こちらへと向かってくる。

 

……青信号なのに、エンジンの回転音を上げて大型車が突っ込んでくる。

 

 

……・・うっすらと目を開けると、ハルヒに抱えられた男の子が見えた。授業で習った払い腰も役に立つらしい。

なんだか寒い。 水溜りにはまっているらしい。 これからハルヒん家行くのにどうする……。

___________________________________

 

涼宮ハルヒは事故の後、ショックで記憶を失っていた。

しかし、不幸にも彼女は失ったものを思い出し、自分を許すことは無かった。

 

世界が滅びるようなこともなく、いつしか涼宮ハルヒの記憶は、

死んでしまった語り手とともに失われてしまった。

それが彼女の望みだった。

 

 

終わり

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投稿時のバージョンじゃなくてPixivに置いてたときの奴です
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涼宮ハルヒの憂鬱

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