英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 335
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〜アクシスピラー第三層・外〜

 

「クッ……。てめえ……いつの間にそこまでの功夫を……」

「ヴァルター……あんたは確かに天才だ。だが、その才能ゆえにどうしても積み重ねが欠けるんだ。そして功夫とは、愚直なまでの繰り返しの鍛錬で積まれてゆく……。だからこそ格下の俺の拳があんたにも届くんだ。」

エステル達が装甲獣達を掃討し、2人の状況を見守っている中、信じられない表情で呟いたヴァルターの言葉にジンは静かに答えた。

「………………………………。ククク……格下か。ジジイのやつはそうは思ってなかったみたいだぜ?」

「………え……………」

しかし不敵に笑いながら言ったヴァルターの言葉に呆けた声を出した。

「ジジイは俺に言ったのさ。活人、殺人の理念に関係なく……素質も才能も……てめえの方が俺よりも上だとな。」

「なっ……!?」

「そしてジジイは、より才能のある方に『泰斗流』を継がせるつもりでいた。……それが何を意味するのか鈍いてめぇにも分かるだろうが?」

「だ、だが……。俺があんたよりも格上なんてそんなの冗談もいいところだろう!?それに師父が、キリカの気持ちを無視してそんなことをするはずが……」

ヴァルターの話を聞いたジンは信じられない表情で戸惑った。

「……ククク……だからてめぇは目出度いんだよ。流派を継ぐわけでもないのに、師父の娘と一緒になる……。そんなこと……この俺が納得できると思うか?」

「………………………………」

「だから俺は、てめぇとの勝負で継承者を決めるようジジイに要求した。だが、ジジイはこう抜かしやがったのさ。『―――ジンは無意識的にお前に対して遠慮をしている。武術にしても、女にしてもな。お前が今のままでいる限り……あやつの武術は大成せぬだろう』と。」

「…………な………………」

ヴァルターの話をさらに聞いたジンは驚いた!

「クク……俺も青かったから余計に納得できなかったわけだ。そしてジジイは、てめぇの代わりに俺と死合うことを申し出て……そして俺は―――ジジイに勝った。」

「………………………………」

「ククク……これが俺とジジイが死合った理由だ。お望み通り答えてやったぜ。」

「………………………………。俺はずっと確かめたかった……。師父がなぜ、あんたとの仕合いに立ち合うように言ったのかを……。ようやく……その答えが見えたよ。」

「……なんだと?」

不敵に笑っていたヴァルターだったが、ジンが呟いた言葉を聞き、眉を顰めた。

 

「ヴァルター……あんたは勘違いをしている。これは俺も、後でキリカに教えてもらったことなんだが……。あの頃、リュウガ師父は重い病にかかっていたそうだ。悪性の腫瘍だったと聞いている。」

「……な……!」

そしてジンの説明を聞いたヴァルターは驚いた。

「だからこそ師父はあんたとの仕合いを申し出た。無論、あんたの武術の姿勢を戒める意味もあっただろうし……未熟な俺に、武術の極みを見せてやるつもりでもあったのだろう。だが、何よりも師父が望んだものは……武術家としての生を一番弟子との戦いの中で全うしたいということだったんだ。」

「………………………………。……クク……なんだそりゃ……。そんな馬鹿な話が…………あるわけねえだろうが……。じゃあ何だ?俺は体よく利用されただけか?そうだとしたら……俺は……」

ジンの話を聞いたヴァルターは皮肉気に笑った。

「確かにそれは……身勝手な話なのかもしれん。だが、強さを極めるということは突き詰めれば利己的な行為なんだろう。それが、俺たち武術家に課せられた宿命といえるのかもしれない。だからこそ師父は……あえて己の身勝手さをさらけ出した。そうする事で、あんたや俺に武術の光と闇を指し示すために……」

「………………………………」

「……ヴァルター、構えろ。」

自分の推測を聞いて黙っているヴァルターに拳を構えたジンが言った。

「なに……?」

「師父とあんたから学び、遊撃士稼業の中で磨いてきた『泰斗』の全てをこの拳に乗せる。そして、修羅となり闇に堕ちた不甲斐ない兄弟子に活を入れてやる。多分それが、あんたの弟弟子として俺ができる最後の役目のはずだ。」

「………………………………。……ケッ…………ずいぶん吹くじゃねえか…………。だったら俺は、結社で磨いた秘技の全てを拳に込めてやる……。『泰斗』の全てを葬るためにな。」

ジンの説明を聞いたヴァルターは舌打ちをした後、拳を構え、そして

「………………………………」

「………………………………」

2人は身体全体にすざましい気を纏って、睨み合った!

「はあああああああっ……!」

「こおおおおおおおっ……!」

2人がさらに気を練り始めると、空気が大きく震えた!

(す、すごい……)

(このままだと片方は……)

2人の様子をエステル達は驚きながらも見守っていた。

 

「おおおおおおおおっ!」

「らあああああああっ!」

そして2人の攻撃が同時に交差した!

「………………………………」

「………………………………」

交差した2人はお互いを背を向けた状態で微動だにしなかったが

「…………くっ………………」

ジンが地面に膝をついた!

「あ……」

「ジ、ジンさん!?」

それを見たエステル達は驚き

「ククク…………仕方ねえやつだ……」

ヴァルターはジンの方を振り返り、煙草に火をつけた。

「……それだけの功夫を宝の持ち腐れにしてたとはな……。クク……ジジイの言うことが…………ようやく分かったぜ……。……ふぅ……美味ぇ……。本当に……タバコが………………美味ぇ…………」

そしてヴァルターの手から煙草が落ちると、ヴァルターは地面に倒れて気絶した!

 

「も、もしかして……」

「うん……ジンさんの勝ちみたいだね。」

それを見たエステル達はジンにかけよった。

「ジンさん………やったわね!」

「お見事です。」

「うんうん!まさか、このとんでもない男に真剣勝負で勝っちゃうなんて!」

シェラザードとペテレーネは勝利の祝福の言葉をかけた。そしてエステルは2人の言葉に何度も頷いて答えた。

「……いや………」

一方ジンは静かに首を横に振った後立ち上がった。

「勝てたのは、俺が『泰斗流』を背負っていたからに過ぎんさ。もしあいつが『泰斗』の正当な使い手としてこの勝負に臨んでいたら……倒れていたのは多分、俺の方だっただろう。」

「も〜、そんなことないってば。それよりジンさん……ケガとかしてるんじゃない?」

「手当、しておきましょうか?」

「いや……大丈夫だ。……ヴァルターのやつもしばらくは目を覚まさんだろうし、このまま放っておいていいだろう。今はとにかく上を目指すぞ。」

エステルとヨシュアの言葉に首を横に振って答えたジンは端末を見て提案した。

「……うん!」

「それじゃあ奥にある端末を操作しましょう。」

そしてエステル達は端末を操作し、先に進み、また同じようにゲートが先を阻んでいたので、外に出て端末を探すとまた、執行者が待ち構えていた。

 

〜アクシスピラー第四層・外〜

 

リーン…………

 

エステル達が外に出ると鈴の音が聞こえてきた。

「フフ……よく来たわね。」

そしてエステル達が鈴の音が聞こえてきた方向を見ると執行者――”幻惑の鈴”ルシオラが待ち構えていた!

「あ……!」

「”幻惑の鈴”……貴方か。」

「”幻惑の鈴”………じゃあ、貴女がイリーナ様とプリネを眠らせた……!」

「ルシオラ……姉さん。」

ルシオラに気づいたエステルは驚き、ヨシュアが呟いた言葉を聞いたペテレーネはルシオラを睨み、シェラザードは複雑そうな表情をしていた。

「ブルブランとヴァルターを破ってここまで辿り着くなんて……なかなかやるわね、貴女たち。フフ、それと貴女と邂逅するのは初めてね、”闇の聖女”。シェラザードが随分お世話になったようね?貴女とは一度会っておきたかったわ。」

ルシオラは感心した後、興味深そうな表情でペテレーネを見て言った。

「………私も貴女とはお会いしたかったですよ、”幻惑の鈴”。リウイ様達の従者として……プリネの母として………貴女は絶対に許しません。」

ルシオラに言われたペテレーネは静かに答えた後、ルシオラを睨んだ。

「姉さん……約束を果たしてもらうわ。今度会った時には、ハーヴェイ座長のことをちゃんと話してくれるって……」

一方シェラザードは決意の表情で尋ねた。

「ああ……彼を殺した理由だったかしら?」

「…………ッ…………」

「そうね……。………………………………」

自分の言葉を聞いて複雑そうな表情をしているシェラザードを見た後、ルシオラはしばしの間黙った後、シェラザードに問いかけた。

 

「……ねえ、シェラザード。貴女にとって、座長はどんな人だったかしら?」

「そ、そんなの決まってるじゃない!孤児だったあたしを拾って育ててくれた恩人よ!あたしは両親の顔なんて全然知らないけど……お父さんってこういう感じなのかなってずっと思っていた……。……なのに……それなのにどうして……!」

ルシオラの問いかけに迷う事もなくシェラザードは答えた後、泣きそうな表情になったが

「そう……暖かくて優しい人だったわね。でもね、旅芸人の一座なんて優しいだけじゃやって行けないの。汚い取引をしたり、女の芸人に客を取らせたりするところもあるわ。でも座長は……あの人は一切そんなことをしなかった。そうして私財を使い果たして……莫大な借金を背負ってしまった。」

「う、うそ……!?だって座長、そんな素振りなんて全然……」

ルシオラの話を聞き、信じられない表情をした。

「フフ、人が良いくせにとても芯が強い人だったかしら。私たちに悟られないようあちこち資金繰りに奔走して……。……そして最後に一座を手放すことを決意した。」

「!!!」

「知り合いの裕福な貴族に一座を丸ごと預けようとしたの。自分がこのまま座長を続ければ私たちに苦労をかけることになる……。ならば、信頼のおける人に面倒を見てもらった方がいい……。……そう考えたみたいね。」

「そ、そんな、どうして……。相談してくれたらあたしたちだって協力して……!」

「話を打ち明けられた時は私も同じように説得したわ。でも、あの人は頑ななまでに聞き入れてくれなかった。不甲斐ない自分がいたら私たちのためにならない……そう思い込んでいたみたいだった。」

「………………………………。それが理由で…………姉さんは座長を……?」

真実を知ったシェラザードはしばしの間黙り込んだ後、静かに尋ねた。

「ええ、そうよ。私にとって、彼の決断は許しがたい裏切りでしかなかった。安らぎと幸せを与えておいてそれを取り上げるなんて……そんな事をするくらいなら最初から手を差し伸べて欲しくなかった。だから、私はあの人を殺したの。」

「………………………………。……だったら…………あたしはどうなるの?」

「え……?」

迷う事もなく答えたルシオラだったが、シェラザードの問いかけに驚いて呆けた声を出した。

「あたしは……座長と姉さんから安らぎを与えてもらったわ……。スラムで感じたことのない暖かい気持ちに満たされていた……。でも……座長が死んで…………姉さんまで去ってしまって……。そんなの…………もっと酷い裏切りじゃない!」

「……ふふ、そうね……。シェラザード。あなたは私を恨む権利がある。その恨みをもって立ち向かってくるといいわ。」

シェラザードの言葉を聞いたルシオラは皮肉気に笑った後、霧の式神を2体召喚した!

「姉さん……!」

「私ごときを倒せないようではこの上で待ち受ける者たちには遠く及ばないでしょう。”幻惑の鈴”の舞……見事、破ってごらんなさい。」

 

そしてエステル達はルシオラ達との戦闘を開始した…………!

 

 

 

 

説明
第335話
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タグ
イリーナ復活 エウシュリー無双 エステル最強キャラ化 カリンも復活 メンフィル無双 他エウシュリーキャラも登場 幻燐の姫将軍 碧の軌跡 空の軌跡 零の軌跡 

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