恋姫〜一刀と天下覇道の三剣〜
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  第一章少年期

    六話「二頭の強馬」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「すいません村長さん、見ず知らずの俺達を泊めてもらって……」

 

 

 

  「いやいや、村を救ってくれた恩人に、それに子供を野宿させるほどワシは薄情な人間じゃあないぞ」

 

 

 

  あの後、村長さんの家に厄介になる事にした俺達は、そのまま夕餉をご馳走になっていた。

 

 

 

  村長さんによると、ここは擁州の京兆にある村だそうだ。

 

 

 

  「しかし、お主等の様な子供が、まさか『白銀の子狼』と『黒銀の子狼』とわ」

 

 

 

  「ん? なんですか村長さん、自分で言うのもなんですけど俺の二つ名は『白銀の弧子狼』ですよ?

   それに『黒銀の子狼』ってが……華陀のことですか?」

 

 

 

  「そうじゃそうじゃ、北翔殿の弧子狼というのはお主が一人で旅をしていた時の名じゃ、今では華陀殿と共におるから子狼に、華陀殿は黒い服に銀の武器を所持しておるから『黒銀の子狼』という名が付いたのじゃ。

   そうそう、最近ではお主等2人を合わせて『双極の銀狼』と呼ばれもしてるのぉ」

 

 

 

  「おぉ! 一刀をお揃いか、悪い気分ではないな!!」

 

 

 

  「『双極の銀狼』…………また中二な二つ名が付いたな……」

 

 

 

  最近やっと二つ名への体制が付いてきたけど、やっぱり恥ずかしい気持ちがまだ何処かにある。

  隣では凱が嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら飯を食べている、どうやら気に入ったようだ。

 

 

 

  「そういえばお主等、こんな涼州には何か用でもあるのかの?」

 

 

 

  村長さんが不意に俺達に尋ねてきた。

 

 

 

  「あぁ言ってませんでしたか?

   俺達は涼州に馬を買いに行く所なんです」

 

 

 

  「馬を?」

 

 

 

  村長さんは聞いた瞬間何かを考えるように手を顎に当てた後、俺達に言った。

 

 

 

  「北翔殿、華陀殿。

   お主等にはワシの大切な村を、家族を救ってもらった。

   ワシはお主等にもっともっとワシ等村の者の感謝を受け取って貰いたいのじゃ。

   じゃからお主等が馬を探しておるなら、ワシの人生で最高の馬をお礼として受け取って貰いたいのじゃ………どうじゃろうか」

 

 

 

  「本当ですか!」

 

 

 

  凱が身を乗り出しながら村長さんに訊ねる。

 

 

 

  「落ち着け凱! けど良いんですか?

   俺達は一宿させてもらうだけでも十分ですよ」

 

 

 

  「いや、それではワシの気が納まらんのじゃよ。

   幸い、一月ほど前にその最高の馬が二頭も生まれたのじゃが…………どうしてか全く人を乗せようとしないのじゃが、恐らくお主等なら大丈夫じゃろう」

 

 

 

  ………なるほど、厄介払いも含まれてるお礼……か、俺達にも悪い話じゃない。

  それにここは司州、今の俺の本来の目的地は別の所にある。

  ここで馬を手に入れば目的も早く終わる。

 

 

 

  「いいじゃないか! 一刀もいいだろ!」

 

 

 

  「そうだな、俺達にも悪い話じゃない。

   村長さん、そのお話、ありがたく受けさせていただきます」

 

 

 

  俺は座ったまま頭を下げながら村長さんに言う。

 

 

 

  「これこれ頭を上げい! これはお礼だと言っておろう?

   それに2人とも気づいておるのじゃろう、ワシは厄介モノをそなた等に押し付けようとしておるのじゃぞ?」

 

 

 

  やっぱりな……。

 

 

 

  「だけど俺達にとっても悪い話じゃない」

 

 

 

  「華陀の言うと通りです。

   ここで馬が手に入れば、俺達はその分の代金を路銀に変えることができますから、それに村長さんの言葉から察するに相当な馬なんでしょ?」

 

 

 

  俺は意味有りげな笑みを村長さんに向ける。

  俺の笑みを見て、村長さんは一瞬驚いたがすぐにニヤリとした笑みを俺に向けながら言ってきた

 

 

 

  「おぉ、ここまで言っても受けてくれるとはありがたい。

   さよう、本来馬は自分の実力と同等、もしくはそれ以上のしか乗せん。

   今回その二頭は他の馬よりも遙かに速く走る事ができる、普通の馬の速さが壱だろすると、その二頭は壱拾の速さで走りおる。

   その二頭は、生まれてまだ二月しか経っていないのに、すでに体は大人の馬より少し小さいくらいにまで成長しておるのじゃ……。

   二頭の気象は荒く、普通の者は決して受け入れようとしない、じゃがお主等の実力ならきっと受け入れられるじゃろぅ……」

 

 

 

  …………正直驚いている。

  生後二ヶ月で既に大人の馬と変わりないほど大きい子馬。

  そして大人の馬よりも遥かに速いというのだ。

  驚きと同時に見てみたい≠チて気持ちが沸いてくる。

 

 

 

  「どうじゃ、興味を持ったかの?」

 

 

 

  村長さんはまたニヤリとした顔で俺を凱を見比べた。

 

 

 

  「…………正直、見てみたい≠チて欲が溢れ出てくる感じです」

 

 

 

  俺は今の正直な気持ちを言った。

 

 

 

  「俺もです。 会ってみたい、見てみたいって気持ちです」

 

 

 

  凱もそう答えると、村長さんは満足ってくらい笑顔で言った。

 

 

 

  「ほっほっほっ、それはなにより!

   ワシはではあの二頭を扱えん。

   じゃからお主等にその二頭を貰ってほしいのじゃよ。

   その方があの二頭も幸せじゃろぅて。

   ……さて、今日はもう夜じゃからゆっくり部屋で休むといい。

   明日の前の猿刻に二頭の元に案内しよう」

 

 

 

  「はい(わかりました)」

 

 

 

  「ほっほっほっ良い返事じゃ」

 

 

 

  村長さんは頬笑みながら満足げに言った。

 

 

 

  その後、俺達は村長さんと他愛もない話しながら夜を明かした……。

 

 

 

 

 

 

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  そして翌朝、俺達は朝餉をご馳走になった後、旅に戻る準備をしていた。

 

 

 

  「なぁ一刀、もしここで馬が手に入ったら次は何処に行くんだ?」

 

 

 

  「うぅ〜ん、馬が手に入らなかったら西平、手に入ったら天水だな」

 

 

 

  俺の答えに凱は首を傾げる。

  ……まぁ、俺も凱と同じ立場だったら絶対疑問に持つだろう。

 

 

 

  「なぜだ? 天水には何かあるのか?」

 

 

 

  「折角ここまで来たんだ。

   天水の太守、董君雅を見て行きたいと思ってな」

 

 

 

  それはあくまで表の理由、本当の目的は三国士においてもっとも愚かだった者、悪逆非道を行った暴君、『董卓 仲頴』を見ること。

  そして今後の俺達の生涯になるのなら、今の内から友好を結んでおいた方が後のためになる。

 

 

 

  「それに急ぎの旅でもないんだし、観光だと思ってゆっくりしようぜ」

 

 

 

  「……それもそうだな、次はいつ大きな街に着けるかわからないしな、この辺りで必要なモノを補充しておく必要もあるし、……たまにはゆっくりするか」

 

 

 

  「そうそう、それに長安への道の途中に温泉が湧き出ている所があるらしい、そこに寄って疲れを癒そうぜ」

 

 

 

  「お、いいな。

   温泉は俺も好きだからな、それに湯を採って行けば、効能によっては薬の素材にもなる」

 

 

 

  よし! これで凱はなんの疑いもなく長安へ行くだろう。

  ん? そういえば涼州って言えばもう一つ何かあったような…………なんだっけ?

 

 

 

  俺の中で急浮上した疑問の答えを必死に考えていると、庵の間から村長さんが声をかけてきた。

 

 

 

  「お主等、そろそろ馬小屋へ案内しようかの」

 

 

 

  「あっ、はい(わかりました)」

 

 

 

  俺達は荷物を持つと村長さんの付いて行く。

 

 

 

  しばらく歩くとそこには少し大きな馬小屋があった。

 

 

 

  「ここじゃ、ここに例の二頭が居る。

   ワシがここまで連れてくるから少し待ってなさい」

 

 

 

  そういうと村長さんは馬小屋へと入っていった。

 

 

 

  数分後、村長さんは二頭の馬を連れて出てきた。

 

 

 

  今、顔の表情が唖然としているのが分かる、凱も同じだろう。

 

 

 

  目の前にいる二頭の馬、その二頭の外見は他のどの馬とも違っていた。

 

 

 

  一頭は赤、体は力強い深紅、瞳の色は赤、鬣から尻尾の毛までがオレンジの馬、まるで焔を思わせるその馬は、かの三国士でも有名な馬、『人中の呂布』の愛馬にして名馬、

 

 

  もう一頭は蒼、体は鮮やかな蒼、瞳の色は黒、鬣から尻尾の毛までが水色の馬、まるで透き通った水を思わせているようだった。

 

 

 

  唖然としている俺達をよそに、村長さんは口を開いた。

 

 

 

  「この二頭がお主等に貰ってほしい馬、赤兎馬と蒼兎馬じゃ!

   色は違うがこの二頭は双子じゃ、……実力は折り紙つきじゃぞ?」

 

 

 

  誇らしげに言う村長さんは手綱を放し、少し離れた。

  そして俺は一頭へを歩みを進める。

 

 

 

  紅い馬、赤兎馬の前までくると、俺は自然に手を赤兎馬の頬においた。

  すると赤兎馬は目を閉じ、ぶるるっっと鳴いた。

  俺は静かに赤兎馬の横に移動し、そっとその背に乗った。

  赤兎馬は俺が乗っても暴れることなく、まるでずっと待っていかのように俺を受け入れてくれた。

 

 

 

  横を見ると凱も蒼兎馬に乗っている、蒼兎馬も赤兎馬のように暴れることなく凱を受け入れていた。

 

 

 

  「………驚いた、まさかこんなに簡単に二頭がお主等を受け入れるとは………」

 

 

 

  村長さんは信じられないっと言うような声で呟き唖然としていた。

  やがで正気に戻ったのか今度は俺達に声をかけてきた。

 

 

 

  「どうじゃ、気に入ったかの?」

 

 

 

  「はい、もう最っ高です!」

 

 

 

  「俺も気に入りました、ありがとうございます」

 

 

 

  凱ははっきりと、俺は内心興奮しながらも冷静に返事をした。

  俺達の返事を聞き、村長さんはまた満足そうに笑った。

 

 

 

  「そうかそうか、それはよかった。

   大切にしてやってくれよ? その二頭はワシの息子みたいなモノじゃからな」

 

 

 

  「「はい!」」

 

 

 

  こうして俺達は目的であった最高の馬を手に入れた。

  誤算だったのはその馬が予想よりもずっと良い馬だったということだ。

 

 

 

  「これからよろしくな赤兎」

 

 

 

  「ぶるるっ」

 

 

 

  俺はそっと呟くと、赤兎も小さく返事を返してくれた。

 

 

 

 

 

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  あとがき

 

 

  今回の話はどうでしたか? 最後なんか中途半端じゃないですか?

 

 

  昨日やっと進学先の大学を2校まで絞り込んだオシリスです。

 

 

  いやー、やっぱりメンドクサイデスヨネ受験生ッテ、最近ストレスホッハですよ。

 

 

  ストレス発散の為に小説考えてますけど、逆にストレス溜まりそうで怖いです(− −;)

 

 

  さて、今回は早くも馬を入手した一刀たちですが、今回馬の色をどうするか非ッッッ常になやんだんです。

 

 

  当初の予定では白黒だったんですけどね、途中弟に質問したら「三国士だったら赤兎馬だろ? もしも赤兎馬にするんだったら蒼でよくない?」って答えが返ってきたので、悩みに悩んで赤蒼にしました。

 

 

  それではまた次回お会いしましょう!

 

 

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コメント
一刀たちは大変な馬を手に入れました・・・と。言うわけで馬をゲットですね次も楽しみにしています(雪猫)
続き楽しみにしてるッス〜。(鬼神)
赤兎馬と蒼兎馬ですか良い名前ですね。それに滅茶苦茶速そうwwww(神帝)
一刀たちは目的以上の馬を手に入れましたか、それにしても二つ名がw次回も楽しみにしています(ミドラ)
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