DAシリーズ二次創作者さんにお題より「19:対峙」 |
背負った剣に手をかけながら、どこかでこうなるだろうという思いが確かにあることに、フェンリスは気づいた。多くの理屈ではなく、感覚的に、おそらくそれはこの男ホークと出会ってから少なからず抱いていたものだ。
彼が、嫌いなわけではない。彼の考え方の全てを理解は出来ないが、理解できるものもある。共にいることは苦痛ではなく、どころか今までにない安堵を覚えたこともあったし逆もあった。友人、と当たり前のように彼が使う言葉に対する違和感はこの七年という月日で少しずつ薄れていた。彼とは決してわかりあえないと思える部分がある一方、まるで無二の親友であるような錯覚を覚えた時もある。子供染みた言葉をぶつけても怒ることもなく、わかったような口を聞くわけでもないが淡々とこちらの言葉を受け止め聞き流してくれたことは、大分有難かった。
「まあ、お前とは多分こうなるだろうなあと思ってはいたが」
相変わらずの軽口は、まったくいつもの調子だった。「お前もそう思ってるな?フェンリス」くく、と小さく笑うのだから、この男は食えない。いっそ悲壮に顔を歪めて覚悟を決めてくれたのならば、こちらとしても剣を振り下ろす勢いに躊躇いはないのだが。
つられて、つい口端を歪めてしまう。
「……まったく、ふざけた男だ」勢いをつけて背から下ろした剣の重さは、筋肉を経てフェンリスに現実を確認させてくる。そういえば、こうして向き合うのは初めてかもしれない、そういう妙な感慨がフェンリスの脳裏を過ぎった。
魔道士を助ける、力になる、そう公言して憚らないリジェイ・ホークという男と魔道士を仇と憎み嫌うフェンリスが、何故行動を共にし酒を酌み交わし談笑などできていたのか、考えてみれば妙な話だ―フェンリスの中に根強く刻まれている価値観からすれば、それは妙なことだった。
フェンリスのそれは立派な偏見である一方で人生に刻まれた揺るぎのない価値のようなものでもあるし、ホークにしてみても似たようなものだ――そういうことは、七年という月日を経てみれば互いにいやでも理解せざるをえなかった。
それでも、共に肩を並べて戦うことはあれど逆は今の今まで一度もなかった。今こうしていても、フェンリスは彼をやはり嫌いだとは思えないし、憎しみも感じることはない。
彼は恐らく友人だ。己の人生の中でも数少ない、友人、そう呼んでもよい男だ。
だからこそ俺は、俺の生き方を歪めるつもりはない。
「それをお前はよく知ってるという顔をしているな」まるでこれから、とびきりの悪戯でもしかける子供のような笑みだ。遊びではない、これから命のやり取りをする、そういう空気を微塵も感じさせることはない。極限までリラックスして、だからこそ自然な無駄のない動きが出来る――ホークがそうした事を言葉にした事はなかったが、自らの肉体こそ武器とするフェンリスにはそれがよくわかった。間違いなく彼は全力で来る。その予感に、フェンリスの胸の奥にあたたかな炎がぽっと灯り、鼓動がはやる。その忙しなさは、心地よいものだ。
「俺はお前が、カークウォールで一番ふざけた男だと思っているぞ、ホーク」
返す言葉にホークは楽しそうに笑い、両手のナイフを手早く翻す。
それが、お互いの合図だった。
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洋RPG「DragonAge:Origins][DragonAge2]シリーズの二次創作者さん対象のお題です お題ページはこちら wp.me/p2f5OB-3O |
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