おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 最終話 クリスマスプレゼント
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(前回、末文より)

 

テト:ここだけを一時的に“冥界にある異世界”にしたわ。現世の人間は、現世にある部屋を通り抜けられる

升太:ま、待ってくれ! その先は言わないでくれ!

テト:さぁ、その死神の鎌を握り、私と闘って勝ちなさい! 最後の部活は、永遠の部長である私の部活、“格闘研究部”よ!!!!!!!!

 

<おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪ 最終話 クリスマスプレゼント>

 

(部室棟・屋上部屋・冥界側)

 

 ジャキッ!

 

 テトはすでに升太と距離を取って死神の鎌を構え、臨戦態勢だった。しかし、相手の升太は、いまだ足下に転がっている死神の鎌を持てないでいた。

 

升太:た、確かに前にこの話があったのは思い出したけど、“今になって”、こんなルールを守る意味なんてないじゃないか! チャレンジは20年後の世界で“新歓チャレンジ”という新しい物に引き継がれて、そしてすでにそれは最後を向かえた。最初が冥界とかこだわる必要なんてないじゃないか!

テト:・・・・・・・チャレンジを“引き継いだ“事にしたのは、部室棟の人たち。冥界でのあのチャレンジの発起人はお父様でナビゲーターは私。残った部活については、全て”休止か中止“。”取りやめ“とはお父様ですら一度も言ってない

升太:確かにデスは“チャレンジを取りやめる”とは言っていなかったよ

 

テト:部室棟が現実世界に戻った関係で、めぐみさんと学歩さんの部活は、冥界のチャレンジに戻す事が出来なかったから、”仮“で引き継ぎにしたけど、現実世界で、私の支配下における唯一の場所”屋上部屋“だけは、冥界にあった状態に一時的に戻す事ができる。この最後のチャレンジが”有効“なら、続けなければいけない。これは命の守護者である冥界の者の”義務“であり”責任“

 

升太:君はマスタ事件の後、現実世界に一緒に来るって言ったはずだよね。でも、今、こういう事態になっている。一体どういうことなんだい?

テト:お父様から伝えられたはずよ。“当分いるけど、片が付いたら、戻るかもしれない”って。私は“ずっと現実世界にいる”とは言ってない。チャレンジの最後が私であり、部室棟が無事だろうという確証が得られた時点で、今のこの事態が起こることはわかっていた

升太:教えてくれ! このチャレンジは途中で“取りやめに出来る”ものなのか? デスですら言っていないから、ダメなのかもしれないけど、なんでもいい、活路を見出したいんだ!

テト:・・・・お父様が設定した条件は1つだけ。冥界にあった時、誰もクリアーできなかった事、私の“格闘研究部”で、私を倒して脱出すること

升太:!!!!

テト:つまり、この“ラストバトル”で私に勝たないと、このゲームの終わりはやってこない事になっているの。このチャレンジを消滅させるためには、唯一一人だけの“勝者”が現れないとだめなの

升太:そ・・・そんな・・・

 

テト:マスタ事件の後、私が現実世界にずっといると言わなかったのは、ずっといる事はつまり、“この条件”を満たすことなしに“放っておく”事と同じなのよ。“あなたがプレイヤーであり、まだクリアーしてなくて、ゲームが続行している“事を放って置く、つまり、ずっと目を背け続けていても、ゲームは決して終わらないのよ。そして放っている間、ずっと私と貴方は、”いつか来る最後の対決の日“に怯えて、現実世界で生活する事になるの

升太:そ、そんなこと、“忘れて生きる”事だって出来るじゃないか! 現実世界じゃ、こんな事日常茶飯事なんだぞ!

 

テト:だから、現実の人間達は、“生きる以上、受けて完遂しなければいけない義務と責任”から目を背け続け、その結果、多くの“災難”を受けることになってしまった。自然災害とかそういうのが、いい例ね

 

升太:そんな大きなことかよ! こんなゲーム1つ!

テト:冥界の王“デス”が作った『このゲーム』では、多くの死亡者が出て、桜の木の下に死体を埋め続けてきた。言ってみれば“犠牲者”。“こんなゲーム”なんて言葉では表せない、もっと重要な事。“あなたがあの冥界の部室棟に来る“と決めた時点で、あなたはこの”命を懸けたゲーム“に参加し、関係者になったのよ。運命の車輪はとっくに動いているの・・・・・。もう逃げられない。だからせめてこのゲームの”最後の勝者“になって、この負の連鎖を断ち切って! 私でもお父様でも、このゲームを終了させられない。出来るのは、”貴方だけ“なのよ!!!

 

升太:・・・・・・・・・・・・・・

 

 升太はうつむいた状態で、ゆっくりと足下にある死神の鎌を掴み、しっかりと構えた。

 

升太:・・・・・わかったよ。君だって、“この世界”では、僕が君と互角に闘える事を確認しているからこそ、この対決を仕掛けてきた

テト:そう、あなたはマスタ事件の時、マスタが本来の支配者であるお父様をも撃破した力を持っているにも関わらず、貴方はマスタを一撃で地獄送りした。つまりあのマスタと貴方の力は、貴方の方が上。この部屋の律を司っているのは、お父様だから、今の時点ではあなたにそこまでの力はないにしても、少なくても私と互角の力を有している事は事実

 

 ジャキッ・・・・

 

 升太はゆっくりと死神の鎌の刃先をテトに向け、攻撃姿勢をとった。

 

升太:ああ、今の自分は現実世界の自分にはない力に溢れているよ。マスタ事件以降、自動覚醒されるようになったらしい。もう僕は逃げない、目を背けない。そして最後の勝者になって・・・・・そして、君もデスも救う。“作ってしまった死のゲームの連鎖“、断ち切らせて貰う!

 

 ガチャ!

 

テト:私とて、簡単に負ける訳にはいかない! ナビとして、多くの人間を死へ誘ってしまった“責任”と“義務”と“死人”に敬意を称し、全力で行かせて貰う!

 

升太、テト:ゆくぞ!!!!!!

 

 遂に、一番近くて、一番遠い二人の最後の対決が、始まったのだった。

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升太:うぉぉぉぉおおおお!!

テト:てやぁぁあぁぁぁ!!!

 

 ガキン!!! ガキン!!!

 

 二人はほぼ中央で、死神の鎌を何度か組み合わせ、そして距離を取った。

 

テト:パワー的には互角か。でも、あなたとて“死神の鎌“を使うのはこれが初めて。武器適性は私の方が上!

 

 シャキンッ!!

 

 テトは升太の目の前に躍り出て、鎌の刃先を横にして、思いっきり左から右へ振り抜いた!

 

テト:ソウルスティールよ!

 

 ガキンッ!!!!

 

 しかし、升太は一歩後ろに後退し、中央位置で、上から下に鎌を振り下ろした! 鎌は十字の組みになって、鍔迫り合いを起こした!

 

 ギギギギギ・・・・・

 

テト:な・・・なに! “ソウルスティール”を受け止めた!

升太:ぬぬぬ、今のオレは君と同等以上の戦闘能力を持っているのだ。武器など掴めば全てわかる!

テト:くっ・・・さすがだ・・・・しかし、“熟練した戦闘スキル”は持っていまい!!

 

 シャキンッ!

 

 テトは組んでいた鎌の刃先を上に向け、ちょうど刃先がX字で組み合う状態で、上に振り上げた! 升太の鎌は衝撃で手から離れ、大きく後ろに飛ばされて壁に突き刺さった。

 

 ビィィィィンッ

 

升太:・・・・熟練の技か・・・・。まぁいい、あの鎌はそもそも“邪魔”だったからな

テト:なに?

升太:さっき言ったよね、僕はこの戦いの後、君もデスも救うって。刃物で斬りつけてしまったら、救うことが出来ないからね。君は人間タイプの体になっているわけだから、殺害方法だって人間と同じ。死神の鎌では、即裂傷が原因で死亡だ

 

 シュッ! シュッ!

 

 升太はボクシングのパンチのような慣らしを行った。

 

升太:来な! アイツを地獄送りにした、この必殺パンチを含めて“素手”で闘わせて貰う

 

 ガチャ!

 

 テトは鎌を再度、構え直した。

 

テト:素手で・・・・死神の鎌に・・・・勝てるわけ・・・・ないだろうが!!!!

 

 ブンッ!!

 

 テトは鎌を思いっきり上に振りかぶって、そして升太に向かって真っ直ぐに振り降ろした!!

 

 バン!!!!

 

テト:な・・・・なんという運動性能・・・・

 

 升太はテトの鎌の刃先を“真剣白刃取り”してしまった!!!

 

升太:フンッ!!!!!

 

 パキン!!!!

 

 そして更に両手で押さえた刃をねじり、鎌の刃を折ってしまった!

 

テト:!!!!!

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 升太は鎌の刃そのものを引き抜き、部屋の隅に投げてしまった。

 

升太:これで、君の武器は“棒”だけになったね。今度は棒術かい?

 

テト:そうよ! 棒術よ!

 

 ヒュンヒュン!

 

 テトは升太の手を払いのけ、残った“棒”を回転させて、“棒術”の構えを取った。

 

テト:鎌を捨てたのは失敗だったわね! 今度は鎌よりも“リーチ”があるわ!!

 

 テトは棒の一番手前を左手で持ち、左手を一杯まで伸ばして“突き”で攻撃してきた!

 

テト:行ける!!

升太:笑止!

 

 スパン!

 

 升太は高速で飛んでくる棒の先を右手で左から右へ払いのけてしまった! テトは棒をあまりしっかり持っていなかったため、勢いで棒を離してしまった!

 

 カラン・・・・

 

升太:横向きの武器は、縦向きの攻撃に弱い。さて、これでお互い、素手通しだな

テト:くっぅぅぅ・・・ふんっ!

 

 ザッザッ!

 

 テトは拳法の構えを取った。ついに肉弾戦にもつれ込んでしまった。

 

テト:死神だって、拳法の1つ2つ、玄人並みにできるものよ! 武器なんて無くったって!!

升太:僕は君を助けたい・・・だから・・・・

 

 ビュン!

 

 ボスッ!

 

テト:な・・・なんて・・・・ふみ・・・こみ・・・・

 

 瞬時に踏み込んで間合いを詰めて、高速で突きだした升太の右拳が、テトの腹部を直撃し、そこで止まっていた。

 

升太:全気力を開放!!!!!!!!

 

 ビーーーーーーーン、バーーーン!!!!!

 

テト:ぐふぅぅぅ・・・・・・・

 

 バタン

 

 升太の拳に、升太の持っている気力が全て注入され、輝いた後、そのエネルギーはテトの接触している腹部に染み込んでいった。その後、テトはその場に倒れてしまった。

 

升太:はぁ・・・・はぁ・・・・テト・・・悪い。狭い急所にエネルギーを一気に注入した。人間の体を持っている者なら、“急激なショック”で戦闘不能に陥り、気絶する・・・・・

 

 テトはピクリとも動かなくなってしまったが、“生きている”感触を升太は感じ取っていた。升太の言うとおり“気絶”しているだけだった。

 

升太:はぁ・・・・はぁ・・・・デ・・・デス!!!! どうせこの対戦の“審判”はお前なんだろ! だからお前はこの光景を最初から見ている! とっとと“試合終了”を告げたらどうだ!

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 ヒュン!!!

 

 部屋の反対側のドアの前に、黒いスーツを着た“人間型のデス”が突然現れた。

 

升太:・・・・さっさと審判しろ!

デス:うむ。我が娘は戦闘続行不能、つまり、君の勝ちだ。そして、このゲームはこれにて永久に消滅する

升太:・・・・本音を言うと、こんなゲームを作り出したお前を一発殴りたいところだが、コレまでの事とテトの事もあるから、やめておく。ゲームも終わったしな

デス:それはありがたい

升太:さぁ、気絶しているテトを起こして、異空間を解いて貰い、オレはテトと現世に帰るぞ!

デス:・・・残念ながら、そう巧く話は進まないのだ。ゲームを終了する条件は、テトに勝つことだ。しかし“鍵”は単に勝つだけではない

升太:!!! まだ何かあるのか!

デス:申し訳ないが、テトの肉体は、ゲーム終了の鍵として使われる。死神としての魂は冥界に残るが、肉体は失う。つまり君はテトと一緒には、現世に帰ることが出来ない・・・・

 

升太:な・・・・・なんだと!!!!!

 

デス:娘は知っていたのだよ。この“条件の詳細”を。君にこれを話したら闘ってくれないと判断したのだろう。だから娘は黙っていた

 

 升太は倒れているテトを抱きかかえ、大粒の涙をボロボロ流していた。

 

升太:オレは・・・せっかく・・・肉体を傷つけないような作戦をとって勝ったのに・・・・

 

 細かい光の粒子がテトの全身から抜けだし、どんどん消えていった。同時にデスも足から姿が消えていった。

 

升太:あああ・・・・・・・

デス:君は自動的に現世の屋上部屋に戻ることになる。これで、この件については本当にさよならだ。もう死亡する事以外で、君が冥界に来ることは無い

 

 テトとデスの姿は、もうほとんどが光の粒子に変わっていた。升太はテトの体重を腕で感じることが出来なくなった。

 

デス:最後に言っておくが、冥界でテトの魂と会いたいために、自殺するような事は絶対にやめて欲しい。命の管理者たる私の最後のお願いだ。命はそんな安いものではない。精一杯、“現世を生きて”、それから死んで私に会いに来なさい。冥界の王として、しっかり対応させてもらう

升太:テト・・・・・・そう、少しの間だ。あの部室棟のみんなが俺達に会うために20年間も待ってくれたのと同じように、オレが死亡するだろう、たった数十年の別れだ・・・・。そのときは君は娘の姿のまま、おれはおじいさんになっているだろうけど、それでも、一緒に話そうな

 

デス:ではさらばだ。空間を戻す

 

 パァァァ・・・

 

 そして、テトもデスも見えなくなり、升太は光に包まれていった。

 

***

 

(部室棟・屋上部屋・現世側)

 

 ・・・

 

 暗い部屋の中央で、升太は倒れていた。

 

升太:・・・・う・・・うーん・・・・・は!

 

 升太はようやく起きあがった。その場所は、紛れもなく、いつもの“屋上部屋”だった。違うのは、泣いて目が赤い彼一人だけであること・・・・。

 

升太:・・・・・これで終わったんだ・・・・全て・・・・疲れた・・帰ろう・・・・

 

 こうして升太は、少しフラフラしながら屋上部屋を後にした。

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<後日談>

 

 時は過ぎて、その年の12月24日、クリスマスイヴ

 

 シャンシャンシャン! シャンシャンシャン!

 メリーーーークリーーースマーーース!

 クリスマスパーティのお料理は、是非とも、木之子駅前商店街でお買い求め下さい!

 

 木之子大学に隣接する大きな商店街“木之子駅前商店街”のプロムナードは、クリスマス一色だった。どこもかしこも、派手な電飾で着飾ったクリスマスツリーが立っており、男性も女性もサンタ衣装で、忙しそうに接客していた。

 

 その商店街のアーケード大通りで、よく知っている二人の男女が一緒に歩いていた。

 

ミキ:しかし升太さん、こんな大事な日に町中歩く相手、私でいいんですか?

升太:あ、ああ。別にカノジョいるわけでないし、同年代で知っている女の子、君だけだから。というか、君の方は本当に大丈夫なの?

ミキ:はい、大丈夫ですよ。私は推薦で木之子大学へ行くから結構暇なんですが、他のクラスメイトとか友達、全員、受験で忙しいんですよ。だから今年の友達関係のパーティは、全部中止なんです

升太:あ、そうなんだ・・・・・というか、あの、カレシとかそういうのが・・・・

ミキ:むぅ・・・升太さん、それは言いっこなしですよ。まぁ私もいないんだけどね

升太:あ、ごめん

 

ミキ:ところで商店街に何か用事があるんですか?

升太:あ、うん。あの新歓チャレンジで知り合ったみんなと、今年は部室棟の会議室でクリスマスパーティーでもやろうって事になって、今日、予約して置いたケーキを取りに行く所なんだ。大学関係の内々で決めたことだったんだけど、君も参加する?

ミキ:是非とも! で、ケーキを予約したお店って、どこなんですか?

升太:なんか今、商店街で有名なお店なんだけど“アストラル”ってお店なんだ

ミキ:うぉ! それ、“木之子駅前商店街ガイドマップネットサイト”で一番人気のケーキ屋さんじゃないですか! よく予約取れましたね!?

升太:うん、電話で予約したんだけど、何故か一発で予約できたんだよね。みんなで食べるから大きいヤツ1個予約したんだ

ミキ:わー楽しみ〜♪

 

升太:あ、あのお店だよ

 

 『ケーキのお店 アストラル』

 

 そのお店は確かに大通りにあったのだが、そんなに目立った装飾がされているわけでもなく、いかにも“隠れた名店”という事で建てられたのはわかった。しかし、予想以上に口コミで人気が出たらしく、その店内、店外、どちらも人だかりだった。

 

ミキ:す、凄いですね。店舗の実物は初めてみたけど、いかにもなお店です〜♪

升太:予約したものを取りに行くだけだし、人だかりも凄いから、ちょっと待っててくれる?

ミキ:はい、それがいいですね

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(ケーキ屋『アストラル』・店内)

 

 升太だけが、人をかき分けて店内に入った。店内もそう派手でなく、ある意味“渋い名店”の雰囲気を醸し出していた。

 

レジの女の子:いらっしゃいませ

升太:えっと、クリスマスケーキを予約しました“墓火炉 升太”ですけど、ケーキを取りに来ました

レジの女の子:承知いたしました。少々お待ち下さいませ

 

 レジの娘はこういうと厨房に入っていった。少しした後、戻ってきたのは、レジの娘と予約したケーキが入っている箱と、パティシエであり店長さんと思われる細身のおじさんと、小さな箱だった。

 

レジの女の子:お金はお支払い済みですので、どうぞお持ち下さいませ

 

 レジの娘は大きめのケーキが入った箱を升太に渡した。その後、そのおじさんが、升太へその小さな箱を手渡した。

 

升太:え? これは?

おじさん:当店からのクリスマスプレゼントです。是非ともケーキをお食べになる時に、お開け頂けると、よりお楽しみいただけると思います

升太:はぁ、どうも

おじさん:お買いあげ有り難うございました!

 

(木之子駅前商店街・アーケード大通り)

 

 升太はお店から出てから、ミキと合流し、箱の事を説明した。

 

ミキ:あら! クリスマスプレゼントなんて、粋なコトしてくれますね

升太:うーん、いや、嬉しいんだけど、あのおじさん、どっかで見たことある気がするんだけどなぁ

ミキ:そうなんですか?

升太:まぁいいや。とにかくケーキは生ものだから、ぼちぼち部室棟に行こうか

 

 二人は足早に商店街を抜けて、大学の部室棟会議室を目指した。

 

***

 

(ケーキ屋『アストラル』・店内)

 

おじさん:・・・・升太君、メリークリスマース♪

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(木之子大学・部室棟・会議室)

 

 この会議室は、この20年間で新設された部屋だった。普通の部室の二部屋分ある大きな部屋だった。クリスマスイヴということで、部室棟関係者によって、学内パーティーレベルで装飾されていた。

 

 折り紙で作ったわっかを連ねたリボン

 小さなクリスマスツリー

 ホワイトボードに書かれた面白いネタ満載の文章

 お手製のテーブルクロス

 メイコ教授と海斗教授からの差し入れのお酒とジュースとかお菓子

 ミク教授が作った(主にネギの)お料理

 レン教授が作ったカッティングフルーツ

 ルカ教授からの酢蛸寿司

 

 ガタッ

 

 そして升太とミキの二人が入ってきた。

 

升太:お待たせしました、到着です。そしてミキさんが飛び入り参加です!

 

メイコ:おかえりー、升太君、でかしたぞー♪ 華はたくさんあった方がいいからね! メリークリスマース! うひゃひゃ!

ミク:メイコ教授、もう飲んでいるんですミク〜

海斗:た、楽しいぞぉ! アイスケーキもあるから、どうぞー!

ルカ:おお、待っていたわよ! ケーキ! ケーキ!

リン:こういうクリスマスもいいね〜

レン:うーむ、今回のカッティング、なかなかの出来だ・・・まだまだ腕は落ちてないな!

めぐみ:ララララ〜♪ さぁ、次の曲行くわ!

学歩:こらこら、ナスノヨイチ、がっつくな

 

ミキ:ははは、この人達は変わらないね

升太:そこがいいところなんだけどね。あのー、皆さん、そろそろ正式に始めようと思うんですが、いいでしょうか?

 

全員:異議なーし!

 

升太:で、ケーキ屋さんのパティシエのおじさんから、このクリスマスプレゼントを頂きました。なんか、みんながいる所であけるとハッピーなんだそうなので、ここで開けますね!

 

全員:お〜け〜!

 

 升太は静かに小さな箱を開けた。

 

 パカッ

 

 そこには、赤と黒の服を着た“女の子の人形”が入っていた。そして傍らに“鎌”の様なものも入っていた。

 

升太:・・・・・ちょ・・・・これって・・・・・

 

 升太は入っていた説明書の通り、鎌を手に持たせ、頭をポンと押してみた。

 

 人形はカタカタ動き出した。

 

 カタカタカタカタ

 

ミキ:な、なに? これ可動人形?・・・っていうか、これどこかで・・・・

 

 突然、人形は、“妖精のような小型の人間”に変身し、そして飛び上がって、教壇の上に立ち上がり、右手を挙げた!

 

人形:よぅ! みんな元気してたぁ!? 私こそ、案内役のプロ、新しい体を得て蘇った、その名も、

 

人形以外全員:テト!!!!!!!!!!!!!

 

 人形は前にこけてしまった。

 

(人形の)テト:ちょ! それは私のキメセリフだったのに〜! まぁいいや。人間の肉体はなくなっちゃったけど、お父様が作ってくれた、この人形の体で、今度は、現世で升太を“護衛”いたしますデス!

 

 升太だけは、嬉し泣きして、涙をボロボロこぼしていた。

 

升太:テ・・・テト・・・・

 

テト:はいはい、升太? 今日はクリスマスイヴですよ〜。なんかまーだカノジョがいないみたいだし、せっかく知り合ったミキさんにもモーションかけないから、心配で来ちゃったのだ! これからは、護衛の私“人形のテト”が、升太をしっかりした“大人”に成長させてあげるのだ! 覚悟はいいか?!

 

升太:うんうん、いいよ! よく、帰ってきてくれたぁ、うぉーんうぉーん!

 

 升太はまだ号泣していた。

 

テト:そんな泣き上戸では、カノジョが出来ても嫌われちゃうのだ! これからしっかりみっちり、鍛え直してあげるのだ! じゃ、皆さん、クリスマスイヴ、楽しもうぜぇ、いぇい!!!!

 

全員:いぇい!!!!!!

 

(了)

 

CAST

 

主人公・墓火炉 升太(ぼかろ ますた)=升太:とあるボカロマスター

 

案内役 兼 格闘研究部部長・重音テト:重音テト

 

工学部・生物化学科教授(料理研究部顧問)・初音ミクさん:初音ミク

建築学部・建築学科教授(技術研究部顧問)・鏡音レンさん:鏡音レン

建築学部・建築学科教授(模型研究部顧問)・鏡音リンさん:鏡音リン

 

理工学部・考古学科教授(温泉&お酒研究部顧問)・咲音メイコさん:MEIKO

経済学部・経営学科教授(アイス品評研究部顧問)・工藤海斗さん:KAITO

工学部・植物科学科教授(バトルマスター研究部顧問)・巡音ルカさん:巡音ルカ

 

社会学部・人文歴史科教授(アイドル研究部顧問兼永遠のアイドル)・勇気めぐみさん:GUMI

農学部・農学科教授(ナスノヨイチ研究部顧問)・神威学歩さん:神威がくぽ

 

木之子学園高等部3年生・古河ミキ:miki(SF-A2 開発コード miki)

 

ケーキ屋“アストラル”のパティシエ、兼、店長のおじさん:?

クリスマスプレゼントの人形:?

 

デス、レジの女の子、他:エキストラの方々

説明
○ボーカロイド小説シリーズ第8作目の”おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪“シリーズの最終話です。
☆初めて、ボカロキャラ以外の“ボカロマスター”を主役に、UTAUのテトをヒロインに持ってきました。
○ノリはいつもの通りですが、部室棟という今までと違った場所での対決をメインにしているのがウリです。
○部室棟や大学のモデルは、私の母校です。

☆これにて部室棟の物語はおしまいです。最後は季節物を入れて、ちょっと変わった形で終わりにしました。
☆ラストが格闘研究部なのは、以前のマスタ事件の時にすでにカミングアウトされてましたが、その通りにしました。
☆これまでのご閲覧、本当にありがとうございました!
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タグ
Vocaloid マスター 重音テト 初音ミク 鏡音リン・レン 巡音ルカ インタネボカロ 年長組 AHSボカロ 亜種 

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